クロシビカマスの特徴
成魚の見た目
ひと目見て思い浮かぶ感想といえば、全体的にちょっと強面で、黒い容姿かもしれません。クロシビカマスは炭で焼け焦げたかのような黒さがあることから、ずっと昔からスミヤキ(炭焼き)の別名があるほどです。一度覚えてしまえば、他の魚との見極めはできやすい魚になります。
鋭い歯
口を閉じていればサンマと間違えるくらいで驚異に感じませんが、いったん開いたところを見れば、獰猛そうな鋭い歯をギザギザと覗かせています。中でも前歯は特別で、にゅっと長く伸びていることも特徴的です。後に分かるように、この歯の威力は単純に海中の小魚の捕食に役立つだけには留まりません。
成魚のサイズ
その金属的な細い体は、意外にも大きいサイズにまで成長します。クロシビカマスの成体は、平均で見ても80cmにも達するほどです。ちょっと見た目が似ているサンマがおよそ30cm程度です。もしも海で実際に釣り上げてみれば、サイズ的にかなり大きいと実感します。
幼魚の見た目
親の見た目は炭のような黒さなので、子供もまっ黒焦げなのかと思いきや違っていました。まだ数cm~数十cm程度のクロシビカマスの幼体は、全身が綺麗な銀色をしているのです。それで幼体のほうを釣り上げてみればクロシビカマスだと気づかない人も出てしまいます。
クロシビカマスの名前
漢字で書ける人は少ない
では漢字でこの魚の名を表わせと言われても、書ける人がいないかもしれません。何故ならクロシビカマスの漢字は、普通では使わないような文字を含むからです。黒鴟尾魳、黒鴟尾魣、黒鴟尾梭子魚、黒鴟尾梭魚などと書いて、全てクロシビカマス。これは確かに難しい印象ではないでしょうか。
クロシビとは?
漢字が難しい魚で、クロシビカマスという名前もなかなか意味が分かりません。クロは黒い色、カマスはサバの一種の魚を指します。ではシビ(鴟尾)って何かと調べれば、瓦屋根の家屋の天辺に付く飾りのこと。名古屋城のシャチホコが代表例です。まるで黒い鴟尾のような見た目から名が付いたようです。
クロシビカマスの別名
クロシビカマスには他にも別名が幾つもあります。神奈川でよく使われるスミヤキの名は、本来のクロシビカマスの名前だと言います。三浦半島に行くと、何故かガランチョと呼ばれます。伊豆大島でサビと言うのは錆色を元にし、他にナワキリ、サビタチ、エンザラ、トッパタ、ヨロリなど変わった別名がで呼ばれています。
クロシビカマスの地域別名称例
【千葉】エンザラ、クロサンマ
【神奈川】スミヤキ、ガランチョ、カラス、ケンケラケン、ナワキリ
【静岡】サビタチ、サビ
【和歌山】ヨロリ
【高知】ウケ、ウケサワラ
【英語圏】Snake-mackerel、Bermuda catfish
クロシビカマスの生態
生息する海
東は相模湾から西は鹿児島の南岸にかけて生息地があり、太平洋の温暖な黒潮が流れる、大陸棚のあたりに泳いでいます。クロシビカマスは日本だけに生息するわけではなく、大西洋やインド洋世界の温暖な海にも生息します。日中は水深750mの深海に住み、夜には100m台の浅い海にあがる生態があります。
産卵期と旬
黒潮の水温も徐々に高くなる春から夏にかけてが、クロシビカマスが産卵をする時期です。産卵期にはかなり浅い海で釣れることで知られています。美味しくて旬な時期と言われるのは、産卵に向けて力を蓄えている、秋から初春の頃です。
クロシビカマスの販売と値段
販売する店舗は限定的
旬な頃によく食卓に並ぶ地域と、全く見る影もない地域に分かれるのがクロシビカマスです。ナワキリと呼ぶ三崎など、南関東より南の太平洋側の港町では、お手頃な値段で販売する魚屋を見かける機会が多くなります。逆に日本海側や北国では、価格表示を見かける機会がまるでありません。
小田原での販売は一般的
漁船が網でクロシビカマスを捕獲すれば、高い値段で取引される地域の代表格はスミヤキの小田原、ナワキリの三崎、エンザラの南房総です。特に小田原ではソウルフードとまで持ち上げるくらいスミヤキが好まれ、それだけ連日の水揚げもあり、店頭に並ぶクロシビカマスの供給も価格も安定しています。
クロシビカマスの値段
季節がいつかによりお値段も若干変動しますが、南関東のほうでは1匹あたり700~800円台の販売価格です。クロシビカマスが干物になっても900~1,000円の価格で売られています。切り身ならば200~400円程度の値段で購入できて、他の魚に比較しても価格帯は高くなり過ぎません。(2019/6/12現在)
クロシビカマスの釣り
船釣りや防波堤釣り
浅い海まで上がってくるクロシビカマスは、深海魚の一種とはいえ釣りにチャレンジすれば比較的にヒットしやすい魚です。スミヤキの小田原港やナワキリの三崎港などから釣り船に乗って出発すれば、目指す海域は相模湾南方の大陸棚。防波堤からの遠投で、ヒットすることもある深海魚です。
クロシビカマスのタックル
基本的にアカムツ狙いの時の胴突き仕掛け、或いは比較的に単純な、片テンビン仕掛けが用いられます。クロシビカマスが好んでいるエサは、特にイカやサンマやサバの切り身で、比較的にグルメな深海魚のようです。ただしこの魚は釣り人を困らせる特技があり、特別な対策も必要とします。
縄を切って逃げるからナワキリ
その困らせる特技とは、先述の名前のところにも登場していたナワキリ(縄切)のこと。昔から釣りをすれば、鋭い歯によって縄を切って逃げる厄介さから、この名が付いていました。他の魚を狙う釣りの時、クロシビカマスがヒットすれば最悪な展開。ナワキリ対策には、強化チューブを使うのがベストです。
沖釣りのおすすめアイテム
【ロッド】1.8mのパワータイプ
【リール】中型電動
【ライン】PE3~4号
【胴突き仕掛け】スナップサルカン、幹糸、クロスビーズL、ムツ17号(針)、シンカー150~200号
クロシビカマスの捌き方
捌き方①ぬめりを落とす
かなり鉄質感のある見た目とは裏腹に、体の表面にはヌメヌメとした感触があるのがこの魚です。ぬめりがあるまま料理することで、クロシビカマスの美味しさを低下させてしまいます。だからまずは包丁でこそぎ落としたり、塩もみをすることでぬめりを除去するところからです。
捌き方②三枚におろす
納得のお値段で入手したクロシビカマスは、うろこと内臓と頭などを落とし、三枚におろすのが捌き方の基本作業です。背中側から包丁を入れて三枚におろしたら、次は小骨の多い腹骨を削ぎ落とします。皮のほうにも小骨が多いですが、焼き魚や煮付けの料理では皮付きで使うのが一般的です。
捌き方③骨切り
とことん小骨が並んだ魚の捌き方で、焼き魚に欠かせないのが、職人芸的な骨切りの作業。三枚におろしたクロシビカマスの身は、皮側から包丁をこまめに入れて小骨を切ります。切断しないように繊細に進めるのが大切です。身が大きくて小骨も多いため、骨切りはまさに骨が折れる作業になります。
クロシビカマスの食べ方①
刺身
水揚げしたばかりで新鮮なお手頃価格のクロシビカマスは、まずは刺身の食べ方をしてみるのが一番です。色合いはグレやヒラメのように綺麗な透き通った白身で、食べたい気持ちを掻き立てます。しかし先程述べた通り小骨だらけの魚なので、三枚におろす捌き方の後にも料理でのコツが必要になってきます。
刺身のレシピ
他の魚の場合とレシピがまるで異なり特殊なのは、クロシビカマスの刺身は小骨を避けるようにして削り取る形になるところです。あまり皮のほうまで切ると小骨が含まれるので、刺身が取れるのは白身の上澄みの僅かな量です。かなりもったいない感じですが、残りの身は塩焼き用として使えばokです。
クロシビカマスの刺身の材料
【クロシビカマス】人数分
【ツマ】大根、わさび、大葉など
クロシビカマスの食べ方②
スキ身の刺身
もうひとつ特殊なレシピによる、スキ身スタイルでの刺身があります。これはクロシビカマスの小骨を避ける意味で、お寿司屋さんでも好まれている調理の方法です。スキ身にすることで普通の刺身とは食感が異なるものになるので、試してみても損はありません。
スキ身の刺身のレシピ
この種の刺身では、まずクロシビカマスを包丁で細かく叩くところからです。叩くことによって身と小骨が分離しやすくなり、身が柔らかく美味しく仕上がります。スキ身にするには、手頃なサイズのスプーンを使用します。三枚におろした部分の背骨の部位からもスキ身ができて、無駄が無い料理です。
クロシビカマスのスキ身の刺身の材料
【クロシビカマス】人数分
【ツマ】大根、わさび、大葉など
【道具】スプーン
クロシビカマスの食べ方③
塩焼き
スミヤキという名前にあやかって炭焼きをしてみたくなるのが、クロシビカマスを手に入れた人の運命かもしれません。塩焼きの料理は下ごしらえをした後に最も単純な調理法ですが、素材の美味しさを引き出しごはんのお供とするには最適な食べ方と言えます。
塩焼きのレシピ
きちんと骨切りを済ませた状態でも、しない状態でもお好み次第です。そのまま網焼きにするか、串刺しにする選択肢もあります。全体に塩をまぶし、焦げないようにクロシビカマスを焼き上げます。ガスのグリルでも良いし、炭火焼きならBBQグリルや七輪を使用して焼き上げてください。
クロシビカマスの塩焼きの材料
【クロシビカマス】人数分
【塩】適量
【炭火焼き】グリル(七輪)、木炭、ライター、トング
クロシビカマスの食べ方④
煮付け
【材料】スミヤキ1匹、生姜5~6切れ、醤油150cc、酒150cc、みりん70cc、砂糖大さじ1、水150cc
小骨も気にせずに素早くひと品を完成させるなら、クロシビカマスの煮付けの食べ方もアリです。和食の代表格と言える煮付けにしてみれば、骨切りした縞模様がおしゃれに食卓を飾ります。煮付けにする場合には、頭の部分の身も美味しく、価格以上の迫力を出すこともできます。
煮付けのレシピ
ぬめりと三枚おろしの下ごしらえが済んだら、鍋で材料全てを煮立て、クロシビカマスを投入します。火力は弱火で、落し蓋をして15分ほど煮込みます。途中で汁を身にかけて、味を染み込ませるのがポイント。極めて単純なレシピで、白いごはんに合う料理は美味しく出来上がります。
クロシビカマス食べてみよう
刺身も塩焼きも色々と
釣りをすれば仕掛けを失う怖さに直面するかもしれない、ちょっとドキドキのクロシビカマス。その味は美味しいのに、太平洋沿岸ではお手頃な値段で入手でき、料理をすれば単純なレシピで進化を発揮する深海魚に興味が湧いて来ました。明日の食卓に取り入れてみたくなりましたね。
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