透明な謎の生物「サルパ」とは?
一見プラスチックかガラスやジェルなどの人工的な造り物のようにも見える、透明な謎の物体。「サルパ」と呼ばれるこの物体は実は海中に棲む生き物で、海の中を浮遊しながら生きる生態「尾索動物」です。
海中でダイバーに目撃されたり、漁業の網に引っかかったり、また浜辺に大量に打ち上げられることもあります。クラゲに似たシースルーな体に内蔵のような物だけがオレンジに透けて見え、海中を漂う姿は「水中の神秘」と言われる謎の多い生態です。
サルパは深海生物?
透明な体にどこが目や口なのか、そもそも目や口が存在するのかもよくわからない謎の生態サルパ。訳の分からない生物といえば深海に多いですが、サルパも海底を漂うプランクトン性の生物で、深海でも海面近くでも見られます。
深海では大量発生して群れを形成することもありますが、海面近くでは単体、あるいは長い糸状のコロニーとして見られることもあります。
サルパは魚?クラゲの仲間?
その透明な外観から誤解されがちですが、サルパはクラゲの仲間でもクラゲの卵でも、また魚でもなく、プランクトン性の生物です。
サルパもクラゲもゼラチン質の透明な体で海中を漂うという共通点がありますが、それ以上の共通はなく、まったく別の生態をしています。樽型で体長数cmのものもいれば、最大で30cmにもなるオオサルパなど64種類ものサルパが存在しています。
サルパはホヤの仲間
その透明な体からは想像もつきませんが、サルパは実はホヤの仲間に属します。ホヤといえば、イソギンチャクのようなナマコのような変わった生物ですがどちらも透明ではありません。
サルパはホヤに近い生物で、中枢神経系が発達しておらず脳も持たずにプランクトンをろ過して食べる「尾索動物」に属します。一方クラゲはイソギンチャクやサンゴの仲間で「刺胞動物」に分類されます。
サルパの生態
サルパは赤道下や温帯、冷帯の海域に生息し日本近海にも生息していますが、最も多くみられるのは南極海です。樽型でプランクトン性の寒天のような体に水を通し、ジェット推進で移動します。
また、吸引した海水を体内のフィルターでろ過して植物プランクトンを捕食します。体長は2~5cmの個体が多いですが20cm程度になるオオサルパという種類もあります。
食べながら移動する?
サルパの生態の最大の特徴のひとつが、食べるのと同時に移動をするという点です。サルパには前端に水を取り込む孔があり、後端には出水孔が開いています。水を取り込んでろ過してプランクトンを摂取し、水は後ろから排出します。
その排出する水の推進力を利用して移動するため、食べるのと同時に移動することができます。
サルパの中に他の生物が入り込むことも
サルパが水を取り込んでろ過し排出する過程で他の生物が入り込んでしまうこともあります。しかしサルパが食べるのは植物性プランクトンですので、食べようとして飲み込んだわけではありません。
体が透明なので入り込んだ物がシースルー状態になり、小さなタコなど中に入り込んだ生物が丸見えで、何とも奇妙な光景が目撃されることもあります。
他の生物に利用されるサルパ
意図せずサルパの中に入り込んでしまう生物もいれば、逆に意図的にサルパを利用している生物もいます。安全なサルパの体内を居住地にしてしまうアミダコや、サルパをくり抜いて自分の家を作り、その中で生活し子育てをするタルマワシという生物も存在します。
また、サンマがオオサルパに卵を産み付けるという事例もあります。海中をゆったりと浮遊するゼリー状のサルパは、他の生物たちにとっても穏やかで安危害を加えない安心できる生物なのかもしれません。
サルパの大量発生
アメリカの東海岸などで、海岸に無数のゼリー状の樽型の生物が大量漂着したというニュースがあります。親指の先程度の大きさの生物、これもサルパです。サルパのエサとなる動物性プランクトンが大量発生すると、サルパ自体も大量発生してしまうことがあります。
2015年には日本近海でも動物性プランクトンが大量発生したためサルパも大量発生し、底引き網漁の網に大量にかかるなど漁業に影響を与えるという事態が起こりました。
サルパは食べることはできる?味は?
サルパに似たクラゲやサルパの仲間であるホヤは食べることができます。特にホヤは好き嫌いが分かれますが、個性的な味や風味で特にお酒のお供として人気の食材です。
ではサルパも仲間なので食べるとおいしいのでは?と気になりますが、実際に食べてみたという人は見つかりませんでした。なんせ食べる気にならないほどの生臭さを発しているらしいので、中々実行に至る人がいないようです。
サルパの生殖方法
サルパの生態のもう一つの特徴が、その生殖方法にあります。サルパは有性生殖と無性生殖を繰り返す珍しい生物です。1体のサルパが雌雄同体のクローンを作り、それが糸状のコロニーとなって最大で15mもの連鎖になります。
成長してバラバラになったクローンは有性生殖して体内で卵を育てて排出し、その個体がまたクローンを作って無性生殖して…の繰り返しで繁殖していくというなんとも珍しい生殖方法をもつ生物です。
また、クローンは1時間で体長の10%という驚異的な早さで成長します。
体内で卵を育てながら雄として生殖
クローンとして誕生しバラバラになったサルパは、1つの卵を持った雌として近くにいる雄が受精させて体内で卵を育てます。その一方で同じ個体の体内で精巣が発達し、近くにいる雌を「前の世代の雄」として受精させます。
その間も体内では「母親」として卵を育てており、成長したら赤ちゃんサルパを体外に放出します。赤ちゃんを体内で育てながらも別の雌と生殖をするという、見た目だけでなく繁殖方法も謎な生物です。
サルパが地球温暖化を救う!?
サルパは地球温暖化を救う切り札になると言われることもあります。その秘密は、サルパが食べる植物プランクトンとサルパが出す糞にあります。サルパが好んで食べる藻は、大気中の二酸化炭素を取り込んで育ちます。
近年は藻類ブルームといわれる植物プランクトンの台量発生が問題になっていますが、サルパはこの藻類を炭素ごと食べてしまいます。
サルパの糞がカギ
また、サルパの糞は炭素を閉じ込めたまま海底に沈む性質があるため、大気中に炭素を戻ることがありません。サルパが食べることによって、地球の炭素循環から除去され、地球温暖化を防ぐのに役立つのではないかと考えられています。
とはいっても、いくら繁殖力の旺盛なサルパとはいえ地球上の余分な炭素を全て除去するには難しいでしょう。ただし、今後植物プランクトンは小型化が進むと考えられているため、それを好んで食べるサルパへの注目はますます高まるだろうと言われています。
サルパ以外にも!謎の透明な生物たち
神秘的な容姿で見る物を惹きつける透明な生物たち。海中にはサルパ以外にも多くの謎の透明な生物が存在します。
タルマワシ
深海のエイリアンと呼ばれるタルマワシは、太平洋に生息する体長約3cmの節足動物です。透明なエビやザリガニのような体に透明なカプセル状の殻のようなものがありますが、これは殻ではなくサルパやヒカリボヤの一部です。
サルパやヒカリボヤの中身だけ食べて、外側は自分の家として生活し卵を産み付けたりします。
カツオノエボシ
透明で青い色が入ったきれいなクラゲのような生物で、春から夏にかけて海辺に漂着するカツオノエボシ。
きれいな見た目でつい触りたくなりますが、別名「電気クラゲ」と呼ばれ刺されると強烈な痛みを伴い、アナフィラキシーショックを起こし死に至る場合もある危険な生物なので触れないようにしましょう。
一体の生物のように見えますが、実はたくさんのヒドロ虫が集まって形成されており、それぞれの個体が役割を持って個体となった不思議な生物です。
オオグチボヤ
水深200~1000mに生息するホヤの仲間、オオグチボヤ。体長は15cm程度で白っぽい半透明な体にその名のとおり大口を開けたような形が特徴的な深海生物です。口のように見えるところは入水孔で、大量の海水を取り込んでろ過してプランクトンを食べています。
日本近海では、富山湾の700~900mの深海域で大規模なコロニーが見つかっています。期間限定の特別展示ですが、国内の水族館で展示されたこともあります。見た目のグロかわいさからぬいぐるみにもなった人気の生物です。
デメニギス
太平洋の水深600~800mの深海に生息する希少な深海生物デメニギスは、緑色の長く膨らんだ目と透明な頭部が特徴的ななんとも深海魚らしいグロテスクで謎な生物です。
透明な生物というとクラゲやサルパ、タルマワシなどのように全身が透けて見える透明か半透明なのに対し、デメニギスは体は黒っぽく頭部だけが中身が透けて見えるという奇怪な形状をしています。
深海魚であるため陸にあがるとすぐに死んでしまい、希少な生物なのでまだ謎が多いですが、深海で捕食するためにこのような形態に発達したとされています。
ジャノメコオリウオ
南極に生息するジャノメコオリウオ(オセレイテッドアイスフィッシュ)は、脊椎動物で唯一血液が透明な魚です。体は若干薄めではありますが透明というほどではありません。
血液が透明な理由はヘモグロビンが含まれていないからですが、なぜそうなったかなど進化のメカニズムについては不明のままです。
心臓が大きく、血漿によって酸素を循環させまた皮膚からも酸素を吸収できることから、ヘモグロビンがなくても生きられると考えられています。
まとめ
クラゲのように透明で海中を浮遊する謎の生物サルパ。時々大量発生することもあるこの謎の生物は、実はホヤの仲間の深海生物で、クローンを作り出すことも有性生殖もできるなんとも奇妙な生態の生物です。
その神秘的な見た目や独自の生態にも関心が集まりますが、炭素を含んだ藻を食べて炭素の循環を断ち切るという地球温暖化防止に役立つ特徴も備え注目されています。
将来、サルパが地球温暖化に歯止めをかけて救ってくれる手掛かりになるかもしれません。
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