イチジクの剪定の仕方の基本を押さえよう
イチジクは育て方も手入れもわりと手間がかからず、植え方や育て方次第で春が終わり季節が変わるころから実をつける、育てて楽しい樹木です。
ただ、さほど手をかけなくても大きく成長し、かなり大規模になってしまうため、時期が来たら剪定していくことはとても大事。イチジクの剪定の仕方や仕立ての方法はいろいろあります。どのように仕立て、どんなふうに剪定していくのかを決めていきましょう。
イチジクの1年の栽培方法
イチジクを育てるにあたって、1年のサイクルを知っておくことは大切です。
イチジクの植え方のちがい、ポイントを押さえた育て方、植え替えのタイミングや肥料の施し方などに留意して、元気のいい木に育てましょう。そして、イチジクの剪定のタイミングをしっかりと守り、長く育てられるようにしましょう。
植えつけは12月~3月ごろ
イチジクの植えつけの時期は重要で、12月~3月ごろの休眠期とします。植えつけは、育て方の中でも重要なポイントですので、時期を間違えないようにしましょう。鉢植えの植木は、根張りのよいものを選ぶようにしましょう。
プランターや庭への植え方として、水はけと保湿性のよい土を作り、深さ50cm程度の穴を掘って植えます。
鉢植えは地際20~30cmで剪定を
イチジクを植えたら作っていこうと考えている形に整えます。鉢植えの場合は地際から20~30cm、庭植えでは鉢植えよりも少し高い地際から40~50cm程度に位置する新芽のすぐ上で、芽を傷つけないように注意して行います。
新芽の上で剪定することで、その芽が大きく成長していくため、必ず芽のありかを確認しましょう。剪定する高さは植え方で異なりますのでぜひ参照を。
開花期は不明
イチジクは「無花果」と漢字で書くことからもわかるように、花がないと思われがちです。しかし、実際には、実の中に花が隠れているため、花は咲くけれど見えないだけなのです。イチジクの実の中には小さな花がたくさん並んでいます。
したがってイチジクの開花期は不明です。
収穫期は夏
イチジクの収穫は夏です。ただし、品種によって、夏果のみ、秋果のみ、両方の3種類があり、収穫期が微妙にことなります。夏果は6月末ごろから8月末ごろ、秋果は夏果が終わってた8月末から10月末ごろです。
夏果秋果両方の品種では、夏から秋にかけて収穫ができます。なお、収穫できるようになるまで、植えつけてから2~3年はかかりますので、焦らずに育てていきましょう。
植え替えも植えつけと同じく11月~3月ごろ
イチジクの植え替えは毎年行うように努めましょう。植え替えをしないままでいると、いざ植え替えしようというときに鉢から抜くのも大変になります。鉢植えの場合、植え替えは11月~3月が適しています。
植え替えでは、古くなってしまった根を切りおとし、土を変えると、根まわりの通気がよくなります。鉢植えから庭植えに植え替える場合も、11月~3月ごろに行いましょう。イチジクも植え替えによってリフレッシュすることが必要です。
庭植えの場合は植え替えならぬ土替えで
イチジクを鉢植えではなく庭植えで育てている場合、植え替えをすることができません。しかし、長く植えていると、根の状態が悪くなってしまいます。
このため、地面に出てきている根を切るほか、木の周りに穴を開けて根を切って、植えてあった土の状態に似ている培養土で土を替える植え替えをすることも大切です。
肥料は鉢植えも庭植えも11月~
イチジクの肥料は、鉢植えも庭植えも、ともに11月からの植えつけの際はたくさんの堆肥を施しましょう。そして、6月、8~9月に追肥として、果樹や野菜用の化成肥料、油かすなどの有機質肥料、緩効性化成肥料を施します。
こうすることで、新芽が増え、着果や結実が促進されていきます。
イチジクの4系統
イチジクには、大別して4つの系統があります。この4つの系統のちがいは、実のなり方のちがいにもなり、剪定の方法もちがってきます。なお、日本で栽培できるのは、普通系とサンペドロ系のほかにはありません。
普通系のイチジクには夏秋兼用と秋果専用の種がありますが、サンペドロ系は夏果専用の種のみで、それそれ剪定の仕方やポイントが異なります。
普通系
普通系のイチジクとは、日本で最も一般的なイチジクで、受粉せずに果実がなるタイプです。夏と秋に実がなる品種のほか、秋果のみなる品種もあり、それぞれ育て方なども違ってきます。
よくあるタイプのイチジクですので、品種なのかは必ず押さえてから育てるようにしましょう。
サンペドロ系
サンペドロ系のイチジクはには夏と秋に実が収穫できるタイプがありますが、日本では夏果だけが実る品種しかありません。この系統のイチジクは果皮が緑色をしていますが、緑だからといって熟していないわけではありませんのでご安心を。
スミルナ系
小アジアのスミルナ地方で栽培されていたことがその名のいわれとなっているのが、スミルナ系のイチジクです。実の中に種を作り、ドライフルーツに向いている品種です。
スミルナ系のイチジクの受粉を手伝うイチジクコバチが日本には存在しないため、日本で育てて実をつけることはできません。
カプリ系
カプリ系は、小アジアやアラビア地方で自生している種です。春から秋にかけて実がなり、楽しく育てることができます。花托の内側に雄花、雌花、虫えい花がありますが、このうち、虫えい花にイチジクコバチが寄生します。
でも、日本にはカプリ系イチジクの受粉を助けるイチジクコバチが存在しないため、実をつけることができません。
イチジクの剪定時期
イチジクを剪定するのに適している時期は休眠している寒い冬の間。夏以降、秋にかけて実をつけるイチジクは、春先以降、大きく成長するため、剪定の時期をまちがえると、切り口から樹液が出てきて、そこから病気になったりと、さまざまなトラブルが起こることも。
植え方によってイチジクの仕立てのポイントは異なる
イチジクを剪定する際、イチジクの植え方で仕立てのポイントが決まります。
植え方のちがいとは、鉢植えか庭植かで、一般に、鉢植えの場合、その木が本来持っている自然の樹形である開心自然形に仕立てやすく、庭植えの場合は好みによって、杯型の杯状形や、手入れがしやすい一文字仕立てなどにしていきます。
イチジクの剪定のポイント①鉢植え
鉢植えでは、開心自然形と呼ばれる一般的な仕立て方で剪定していきましょう。1年目の夏には、3枝ほどを残すように樹姿を作り、1年目の冬には、夏に残した枝をそれぞれ20~30cmの位置で剪定します。2年目からは、冬になったら伸びきった長い枝を剪定していきます。
イチジクの剪定のポイント②庭植え
イチジクの庭植えで杯状形に仕立てていくのもおすすめです。1年目の冬は、主枝を3~4本ほど残した50cmぐらいの位置で剪定し、枝の先端を整えていきます。2年目の冬は、夏に実をつけた枝をはじめ、枝の先端を剪定します。
3年目の冬以降は付け根から2芽ほど残して剪定していき、込み合った部分は間引きします。剪定方法の詳細は、品種別の剪定方法をご参照ください。
イチジクの剪定のポイント③一文字仕立て
一文字仕立てとは、枝が平行になるように横に伸ばすように樹姿を仕立てていく方法です。2本の主枝を左右に伸ばして、結果枝を一定間隔に垂直に立てていきます。
一文字仕立てにすると、樹姿が横広になることから、高所での作業がなくなり、剪定もかんたんにできるようになるほか、収穫などの作業も楽になります。
一文字になるように誘引していく
一文字仕立てに樹姿を作るには、1年目の春の終わりごろ、新梢が伸びはじめた5月を目安に、勢いのいい枝を2本だけ残して30~40cmほどの高さで剪定します。
2年目の冬には地面に対して水平になるように、木材やひもなどで誘引し、枝は20cm間隔ほどに間引きします。3年目以降は、結果枝から伸びた新梢で、芽が多く発生している枝は残し、剪定して誘引していきます。
イチジクの品種別の剪定方法①夏果
夏果の品種では、新しく伸びた前年の枝のてっぺんに芽がつき、これが次の年に実を実らせるようになります。このため、剪定のときにイチジクの枝先を切り落としてしまうと、花芽もいっしょに落とし、結果的に実も実らなくなってしまいます。
夏果の剪定では、あまり切らずに残していくという選択をすることも大切です。
イチジクの品種別の剪定方法②夏秋果
夏秋果の品種では、夏果が2年前の枝の先に、秋果がその年の新しい枝に花芽をつけるため、剪定は2種類の仕方で行います。つまり、秋果の収穫のため、新梢の一部は剪定せず、その他の枝は、夏果のために2~3芽を残して剪定します。
夏秋果のイチジクのすべての枝を剪定してしまうと、夏果を切り落としてしまうことになるので要注意です。
イチジクの品種別の剪定方法③秋果
秋果の品種では、その春に伸びた新梢に花芽がつきます。このため、伸びきって長くなった前年の枝を2~3芽残して剪定するだけで基本的にはOK。春になると新梢が伸びてくるので、勢いのよいのを選んで垂直に誘引していくようにします。
この方法を毎年繰り返していくことで、毎年収穫が期待できます。
イチジクのリフレッシュ剪定とは?
リフレッシュ剪定で木をリフレッシュ
イチジクの剪定方法のひとつに、リフレッシュ剪定という剪定の仕方があります。これは、イチジクの木をつねに若い状態に保つための剪定方法で、特別な技術が必要というわけでもないのに、木の生産効率が上がり、剪定の仕方もさほど難しいわけではありません。
リフレッシュ剪定という名が示すように、元気を取り戻させる=木をリフレッシュさせる剪定の仕方といえます。
リフレッシュ剪定の仕方とは?
リフレッシュ剪定の仕方は、主枝を新しくする剪定の仕方です。実をつけた結果枝を残し、古い主枝を剪定してしまうことで、木をリフレッシュさせます。古い主枝を剪定することで、発芽が早くなり、実が大きくなるなどの結果が出ています。
また、リフレッシュ剪定を従来の剪定の仕方に戻すのもかんたんで、その間に収穫量が減ることもないため、試しにリフレッシュ剪定をやってみることができます。ぜひお試しを。
イチジクの剪定後の切り口の処理方法
イチジクの剪定を冬眠期の冬に行うのは、切り口から樹液が流れることがなく、イチジクの木への負担を最小限に抑えることができるからです。
しかし、たとえ剪定シーズンに剪定しても、剪定後に雨水などで切り口が腐ったり、切り口からカミキリムシなどの害虫が入ったりすることもあるため、切り口はしっかりと保護する必要があります。
剪定後の切り口には慰合剤を使うとよい
切り口を保護する方法として、切り口に袋などを被せる方法もあります。しかし、大きな木になってくると切り口ごとに保護するのは大変な作業になります。
また、とくに大きな切り口を作ると、切り口を癒合するのに時間がかかるため、害虫や菌などに侵される可能性が高くなります。このため、切り口に慰合剤を使うと便利です。
剪定後の切り口のための慰合剤はいろいろ
イチジクの剪定後の切り口に塗る慰合剤にはさまざまな製品があります。昔から使われている製品のひとつが「トップジンMペースト」ですが、ほかにもさまざまな製品があります。
どの製品がすぐれているという評価はなされていないため、いろいろと使って比較していくとよいでしょう。
イチジクの剪定で注意すること
剪定時期は必ず守ること
イチジクの剪定で最も注意するべきことは剪定の時期です。植え付けからの育て方の中で最も重要で、間違えると実がつかなくなるほか、元気がなくなってしまいますので、必ず剪定の時期を守りましょう。
イチジクの剪定は、冬の冬眠期です。木が育っていく時期に選定してしまうと、実がつかなくなることもありますので注意しましょう。
カミキリムシには要注意
イチジクの剪定をしたら、とくにカミキリムシには注意が必要です。イチジクはカミキリムシが付きやすく、放置しておくと木が枯れてしまうことも。
イチジクの根のあたりに木くずが出ていたり、幹に穴が開いていたら、カミキリムシの幼虫がいる可能性があります。イチジクは育て方が難しくありませんが、カミキリムシには注意が必要です。
イチジクを挿し木で増やす育て方
挿し木の植え方はかんたん
イチジクは、初心者でも挿し木で成功しやすい果樹のひとつです。剪定して切り落とした枝を使って、さっそく挑戦してみましょう。枝の先端だけではなく、前年などに伸びた枝であってもよく育ちます。
剪定でカットした枝を挿し木用に20cmほどに切り落とし、切り口を斜めにして水に1~2時間ほどつけておきます。
イチジクの挿し木の植え方はかんたん
挿し木用の鉢は大きめのものを使いましょう。まず大粒の赤玉土を少し入れて、その上から小粒の赤玉土や挿し木用の培養土を入れます。挿し木用にカットした枝が3分の2ほど土に埋まるように挿して、十分に水を与えましょう。
植え方はすぐにできますが、挿し木を挿す際、切り口が傷つかないように注意しましょう。
発根するまでは日陰で管理
挿し木が終わったら、発根するまではビニール袋などを被せ、土が乾かないように日陰で管理するようにしましょう。日当たりのいい場所で管理すると、土が乾燥するのが早くなるだけではなく、葉が日焼けすることで木が弱くなってしまいます。
芽が出てきたら、鉢植えか庭植えを選び、日当たりのいい場所で管理していきます。カミキリムシなどの害虫には十分に注意して、元気よく育てていきましょう。
イチジクを剪定してたくさんの収穫を
イチジクは家庭菜園としてとてもやりやすい果物です。選定方法をしっかりと覚え、時期を間違えずに行えば、毎年、おいしい実がなります。
いろいろな樹形に仕立てて、楽しく育てていきましょう。たくさん収穫したら、ジャムなどにしておくと、一年を通していただくことも可能です。
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