ささめ針 カン付シブダイ
シブダイってどんな魚?
シブダイはスズキ目フエダイ科の「フエダイ」なのですが、フエダイと言うとフエダイ属のすべてを指す場合が多いので、ここでは「シブダイ」に統一いたします。
魚体自体のシルエットは鯛系なのですが、口が口笛を吹くように尖りそれが名前(フエダイ)の由来です。体の後方の背側に星状の模様が一つ入りシブダイであることが判別できます。
シブダイの生態
シブダイの生息域
シブダイは、回遊型の魚でなく磯に着くタイプの魚です。日本では伊豆諸島から沖縄までの南日本での確認が多く、特に鹿児島県の岩礁帯やサンゴ礁帯ではスポーツフィッシングのターゲットになっています。
沿岸の浅瀬がメインの生息域になりますが、時にはエサの小魚や甲殻類などを求めて汽水域にまで遡上することがある魚です。成魚の体長は50センチ前後にまでなります。
シブダイの活動時間帯
シブダイは夜行性で、日没後から翌朝日の出前までがエサを捕食する時間帯になります。当然釣り方は「夜釣り」がメインになります。
また沿岸部に産卵のために接岸し始めるのがおおむね「梅雨明け後」と言われていますので、夏の夜釣りには絶好のターゲットになります。もちろん船釣りなどまで含めますと季節を問わず狙える魚ではありますが、今回は脂ノリの良くなる夏のぶっこみ釣りのタックルや釣り方等を紹介させていただきます。
本命シブダイは2種類いる
大本命の「シロホシシブダイ」
実はシブダイには種類があります。背中の後方に白い斑点のあるものを「シロホシシブダイ」、黒い斑点のあるものを「クロホシシブダイ」と言います。
幻のシブダイと呼ばれるのはシロホシシブダイの方で、なぜか夏になると釣果が上がり脂乗りも最高になります。水温が低いうちは少し深場で生活し、水温の上がる7月頃から産卵のために沿岸部に接岸するからだろうと言われています。
これはこれで美味い「クロホシ」
一方シロホシシブダイの白い斑点部分が黒い「クロホシシブダイ」もまた美味い魚です。刺身でも煮付けでも料理や食べ方は選びません。やはりお値段的にも高級魚の部類に入るのですが、やはりその全てにおいてシロホシシブダイに一歩及びません。
シブダイと言うとこちらを指す釣り師がいるほど釣りのターゲットとして楽しい魚なので、ほとんどの釣り師がシロホシとクロホシを同時に狙います。
シブダイには偽物も存在します
斑点の無い「赤シブ・青シブ」
フエダイ科の魚種は本当に多く、一目で「これは〇〇フエダイ」と判別するのはなかなか難しいものです。その中には体側に斑点が無いにもかかわらず「シブダイ」と呼ばれているものもいます。俗に「アカシブ」と呼ばれているヒメフエダイや、「アオシブ」と呼ばれているナミフエダイ(画像)などです。
これらに共通して言えるのはどれも「美味い高級魚」であることと「磯から釣れる大物」であることです。ぜひ強力タックルで釣行してみましょう。
地方名「ヤマトベ・ヤマトビー」
奄美地方で「ヤマトベ」、沖縄では「ヤマトビー」と呼ばれている「ニセクロホシフエダイ」は、前出の「アカシブ・アオシブ」とは違い体側に黒い斑点があるにもかかわらず「ニセ」呼ばわりされています。
この魚も群れで沿岸部に居付いている魚で、サビキでもエサ釣りでも釣れるのですが、煮魚などの食べ方で美味しくいただけます。よほど大きければ(40cm程度)お刺身でもいただけますが、やはり脂乗りはイマイチです。
シブダイ釣行時の注意点
シブダイは光を嫌う
さて、ここからシブダイ釣りのポイントを幾つか紹介していきますが、釣り方やタックルよりもまずは釣行時の注意点からです。他の魚同様大潮の時はチャンスなのですが、光を嫌うため満月の大潮より新月の大潮を狙います。
雨や曇りで月光が海面に届いていない時であれば月が出ていても良いのですが、ヘッドライトやランタンの光なども海面に届かないように注意しましょう。夜釣りでライト無しは厳しいですが、気を付けて釣行しましょう。
シブダイの引きは強烈
夏のシブダイは脂乗りが最高潮に達しています。当然泳力も他の魚を上回るため、強力なタックルの用意が必要です。
磯クロや磯チヌをやられておられる方は多いと思いますが、よく「強烈な引き」などと形容される尾長グレの引きの何倍も強烈に引いて来ると思って下さい。2号程度のタックルでは簡単にのされてしまいます。根に潜られたら一巻の終わりですから、タックル選びは慎重にしましょう。
釣りの基本タックル
フカセ釣り仕掛け(動画)
まずは基本の釣り方の「システム」の紹介です。磯でのシブダイの釣り方の基本は「フカセ釣り」か「ぶっこみ釣り」になります。フカセ釣りは、釣り用語で「馴染ませる」の意味で「フカセる」という言葉を使うことから「仕掛けを潮に馴染ませて釣る」釣り方になります。ですからオモリなどもほとんど使わずエサとラインの重さや「質」で仕掛けを流して釣る釣り方になります。元々はウキも使わず竿の長さのみでの探り釣りだったものですが、今では遊動ウキを使い少し遠目まで狙う釣り方が主流です。
ぶっこみ釣り仕掛け
次は「ぶっこみ仕掛け」について説明します。ぶっこみ釣りは簡単に言えば「エサをぶっこんでおく」待ちの釣りです。当然根掛かりも多く、そのためにフカセ釣りとは対照的に比較的「太仕掛け」になります。仕掛けの造りとしては道糸に「捨てオモリ」、途中に釣り針というシンプルなものです。気を付ける点は捨てオモリのハリスをメインラインのものより細くすることです。最悪根掛かってもオモリを切って仕掛けを守るつくりにします。
シブダイの釣り方①「フカセ釣り」
ウキフカセ釣り
シブダイをフカセ釣りで釣る場合は「ウキフカセ釣り」になります。夜釣りのターゲットであるシブダイ釣りはミャク釣りに近いフカセ釣りではアタリが取れません。そのため電気ウキを使ったウキフカセ釣りが基本になります。底を引きずらない程度(ウツボの確率を減らす)を流して釣りますが、この時使用するウキがポイントになります。使う色は「オレンジ系」にしましょう。光を嫌うシブダイにグリーン系では明るすぎてまったく寄ってきませんから。
シブダイ仕掛け
ささめ針 カン付シブダイ
磯竿は3号以上が必要になります。ラインは道糸5~10号を活性に合わせて使いましょう。基本的に夜釣りはぶりあげになりますから、8号以上がおすすめです。電気ウキは2号前後で、オレンジを幾つか用意しておきましょう。
針はエサに合わせて「シブダイ針」の18号くらいがおすすめです。18号ですとエサはキビナゴになります。もっと大きなエサ(イワシなど)を使う場合はもっと大きな針が必要ですが、推奨は18号です。
シブダイの釣り方②「ぶっこみ釣り」
大物仕掛けで
シブダイのメインの釣り方が「ぶっこみ釣り」になります。ただしシブダイを普通の根魚だと思ってはいけません。特に夏のシブダイの引きは強烈です。磯竿ならば5号以上を用意しましょう。できればぶっこみ用石鯛竿などがおすすめです。遠投する必要が無いため、ラインは根ズレに弱いPEよりもナイロンラインがおすすめになります。
推奨は20号以上のもの。釣り針はシブダイ針の20号以上。捨てオモリのラインを5~6号に設定しておきます。エサは魚の切り身がメインですが、豆アジが手に入ったら泳がせてもいいでしょう。
小さくても大物(動画あり)
この動画の前半3分くらいまでが「シブダイ」を釣りあげるまでになっていますが、「おっきなウツボやでぇ」と暗い磯でやりとりをしています。
揚がって来たシブダイを見るとそう大きい魚体ではありませんでしたが、相手がシブダイだと判明した途端「タモタモ」と慎重になっていましたね。ぶっこみ仕掛けのようですが、かなり太仕掛けなのにもかかわらず、とにかく引きの強い魚です。道具選びは慎重にしましょう。
シブダイの釣り方③「共通のコツ」
付けエサと同じもので寄せる
日が落ちてからが勝負になるシブダイ釣りは、本番前の下準備が大切です。ウキフカセでもぶっこみでも竿出しの前にしておかなければならないのが「カブシ打ち」です。
簡単に言えば寄せエサを撒いておくことなのですが、できればその日に使うエサと同じものを撒きましょう。イワシなら1匹を何枚かのスライスにしたり、キビナゴなら1匹を三等分くらいに切って、仕掛けを作りながら撒いておくと効果的です。
生息域の似た外道に注意
シブダイのポイントにはさまざまな魚種が集まります。グレやチヌなどくらいだと問題は無いのですが、それよりも強力な引きをみせるものも中にはいます。
例えばウツボ。鋭い歯と根に潜る能力はトップクラスの邪魔者です。クエやアラなどにも注意が必要になります。うかつにも磯竿などで掛けてしまったら潜られて一巻の終わりです。タックルごと持って行かれてしまうこともあります。できればピトンでタックルを固定しての釣りにしましょう。
シブダイは超高級魚
なかなか店頭には並びません
網や一本釣りなど職業漁師さんが特化して釣れる魚ではないためあまり市場などに並ばないシブダイ。並んだとしても目の玉が飛び出るほどの値段が付きます。
地道にぶっこみやフカセで釣りあげるほうが手っ取り早く食べられることは間違いありません。どんな料理でもどんな食べ方でも美味しく食べられるのは分かっているのに手に入らないシブダイ。この夏のターゲットに選んでみてはいかがでしょう。
お魚屋さんで見かけたら
関東以北のお魚屋さんで見かけたら、お財布に余裕があればぜひゲットしていただきたいと思います。料理の仕方や食べ方は同じでも、夏のシブダイは他のどんな魚とも違った味わいがありますから。
シブダイの食べ方①「生食」
サシの入った刺身
夏のシブダイを料理するならば、ぜひお刺身で食べていただきたいと思います。とにかく脂のノリがすごく、多少のワサビではまったく辛みを感じない程です。であれば薄く料理してしまいがちですが、シブダイのお刺身はぜひ厚く料理しましょう。
ポイントは「熟成」。柵に取り、じっくりと寝かせてから料理します。キッチンペーパーに包み、ラップをして二日は熟成させたいものです。釣れたての美味さと熟成の美味さ。両方味わって下さい。
凝った食べ方「皮霜造り」
生食の食べ方をもう一つ。シブダイの皮には独特の旨味があります。これも料理の仕方で美味しくいただけます。柵に取る時に皮を曳かずに皮霜造りにしてみましょう。ウロコを外してぬめりをよく取ったら、格子状に飾り包丁を入れておきます。氷水を用意し、柵をバーナーで炙ります。皮と身の間の脂がピチピチ言い始めたら食べごろです。
そのまま切っても良いですが、氷水に漬けて余分な脂を落としてから料理すると皮の旨味が際立つ食べ方ができますよ。
シブダイの食べ方②「煮付け」
煮る料理は2度美味しい
シブダイの小さいものなら丸ごと煮付けにしてもいいのですが、はっきり申し上げてお刺身を切った残りを流用するのが火を入れての料理のベストだと思います。大きめのものなら充分な量が取れますし、カマやカマチ(頭)は煮汁にとんでもないダシが出ます。砂糖大さじ2、醤油大さじ2、ミリン大さじ2に酒150ccで甘辛く料理しましょう。
特別な食べ方を一つ。食べ終わった骨と煮汁にお湯を注いで下さい。絶品お吸い物ができますよ。
シブダイ釣行時の携行品
夜釣りであること
シブダイ釣りは夏の釣りです。一般的に5月から11月頃がシーズンであると言われていますが、実際のハイシーズンは案外短く7・8・9月の三か月だと思って良いでしょう。
さて、その時期であれば当然真夏です。そうなるとどうしても軽装でポイントに入りたくなるのが人情なのですが、「磯」で「夜釣り」、しかも「天候の急変」なども気を付けなければならない季節です。ライフジャケットは必携です。夜釣りに限りませんが、自分の身は自分で守りましょう。
夜磯は足元から
ライフジャケットの必要性にも通じることなのですが、特に光を嫌うシブダイ釣りの場合は夜の暗闇の中での作業が多くなります。
磯場をポイントにする場合は足元の安全確保が絶対条件です。多少の悪路や滑りやすい岩場でもがっちりと噛むブーツを用意しましょう。夏場の釣りでも夜の磯場は、「長袖・ライフジャケット・スパイクブーツ」は基本ですよ。
シブダイ釣りの有名ポイント
鹿児島県坊津
釣りをされる方にこのポイントを紹介すると一様に苦笑されるのが「坊津」です。鹿児島の西のはずれ(鹿児島弁ですんくじらと言います)、東シナ海に面した坊津は「ボウズ」ではなく「ボウノツ」ですのでご安心ください。
南さつま市の丸木半島から坊岬周辺までのリアス式海岸は「瀬」と呼ばれるぶっこみ釣りポイントが幾つも点在しています。釣行される場合は、瀬渡し船での釣りが有利ですので、釣果情報などを瀬渡し船の船長から得てからの釣行にしましょう。
鹿児島県佐多岬
鹿児島県本土最南端として有名な佐多岬は、シブダイ釣りの好漁場でもあります。佐多岬での釣り方の基本は(なぜか)沖縄発祥の「するるー釣り」が多いようです。
「するるー」とは沖縄地方の言葉でおおむねキビナゴを指します。使うタックルは通常のウキフカセタックルでOKです。キビナゴをオープンベールで流しながら、手掴みで5~6匹のキビナゴを投げ、潮に合わせてエサと同調させます。一回の釣行で4~5キロのキビナゴを使う釣り方です。
渡船案内
南さつま市坊津周辺:瀬渡し船「さと丸」、電話080-1700-8222
出船場所:南さつま市泊港
肝属郡佐多岬周辺:「このみ丸」、電話080-5245-3607
出船場所:田尻漁港
幻のシブダイを釣りに行こう!
シブダイ釣りは、数・大きさ・脂のりそのすべてで鹿児島県の釣り場が一歩リードしていることは否めません。しかしシブダイは関東以南であれば生息はしています。例えば伊豆大島周辺や和歌山、四国などシーズンになれば好ポイントを持つ釣り場は点在しています。
シブダイの味や釣りの手応えを直に感じたいと思われましたら、ぜひお近くの釣り具店などで情報を求めて一度挑戦してみて下さい。色々な釣り方、色々な食べ方のできるシブダイ釣り。きっとハマりますよ!
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今回シブダイの釣り方やポイントなどを紹介して参りましたが、鹿児島以南での釣りは特別な物があります。「暮らし~の」のサイト中にはたくさんの興味深い釣り情報が掲載されています。いくつかピックアップしておきますので、興味がありましたら下記の記事にもアクセスお願いいたします。
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