ヨリトフグとは?
ヨリトフグの特徴と生息域
ヨリトフグはフグ目フグ科に属する魚です。外見的には、濃緑色を下地に灰褐色が混じった控えめな体色。他のフグと比較して、棘が目立たないためつるんとした印象を受けます。国内では津軽海峡より南の日本海や太平洋沿岸地域を基本に、伊豆、琉球、小笠原といった諸島部に生息しています。
ヨリトフグの漁獲環境
主にヨリトフグが捕獲されるのは少し深い岩礁域や砂底の海です。海底付近に生息しているため、底引き網漁での捕獲が主となります。また、沖釣りでは中深場の魚を狙う際に外道として釣れてきます。
味の特徴と旬
ヨリトフグの味は美味との評価を受けることが殆ど。量は多くありませんが、水揚げ港付近では流通しています。皮河豚との別名もあり、皮にコラーゲン質が多くアンコウなどに近い特徴の味わいです。水河豚とも呼ばれ、身に水分が多いため一夜干しや干物として加工されることもあります。旬は冬季で、寒さが身にしみる頃に鍋物にすると非常に美味です。
ヨリトフグの料理例:水炊き
ヨリトフグの水炊きの材料
ヨリトフグの切り身は500g用意しましょう。しめじやネギ、春菊、水菜を一緒に煮ると出汁を吸って美味です。しめじは100g、ネギは3本、春菊と水菜は1束。お好みで量を増やしてもOKです。出汁には1Lの水に昆布出汁を煮出しておきましょう。タレはポン酢に柑橘類を搾っておくと風味豊かです。
ヨリトフグの水炊き調理手順
昆布出汁を煮出した水にヨリトフグとキノコを入れ、灰汁を取っておきましょう。次に葉物野菜を入れて、火が通るまで煮れば完成です。昆布出汁は1Lの水に、一本の半分の昆布を入れて沸騰寸前に取り出しましょう。塩小さじ2とみりん小さじ2を出し汁に加えておくと、さらに味わいが深まります。
ヨリトフグの料理例:ヨリトフグの干物
ヨリトフグの干物の材料
材料は塩水(塩分12~20%)と酒、ヨリトフグの3つあればOK。天日干しにするため、天気の確認と風通しの良い場所を確保しておきましょう。ヨリトフグは2~3尾の分量を想定しています。
ヨリトフグの干物作りの手順1
ヨリトフグは捌いた物を塩水に浸します。時間は20~40分で、夏場は塩分を強めで長く漬けておきましょう。いったん水気を拭き取って、ヨリトフグを被るくらいの酒に5分漬けておきます。再度水気を取って吊るし干しにしておきましょう。
ヨリトフグの干物作りの手順2
天日干しにする時間は、晴天だと3時間位を見ておきましょう。日が陰るようなら半日ほど吊るしておけばOKです。また冷蔵庫で1週間、冷凍庫で1ヶ月の保存が効きます。しかし、できるだけ早く消費した方が良いでしょう。焼くだけでも美味ですが、唐揚げなどにしても味が楽しめます。
ヨリトフグの釣り方解説:胴突き仕掛け
胴突き仕掛けのタックル紹介
ヨリトフグ釣りの仕掛けは専用品ではなく、中深場の根魚釣り用を流用したものが基本になります。竿は2m台の物で、オモリを背負える重量が60~100号台が最適です。中小型の両軸リールにPEラインを300m巻き込みましょう。
仕掛け部の解説
仕掛けに最上部には頑丈なクレーンサルカンを結び、各針を繋ぐサルカンには三又の親子サルカンを用います。また、親子サルカン同士は1mの間隔を空けましょう。釣り針にはムツ針の18~20号ハリスは6号以上を50cmが適しています。
ヨリトフグの釣り方解説:片テンビン
片テンビン仕掛けのタックル紹介
こちらも胴突き仕掛けと同じく、根魚釣り仕掛けを流用した物です。竿やリール、ラインは基本的に同じ物でOKです。ただし、仕掛けに使用するオモリが竿の許容重量内に収まっているかは注意したほうが良いでしょう。
仕掛け部の解説
オモリの部分は片テンビンと接続し、その下に釣り針を配置します。親子サルカンまでの間隔は80cm。親子サルカンから伸ばす上針は30cmと短くしておき、下針と干渉しにくくします。下針のハリスは80cmとっておきましょう。
フグ狙いなら装飾品!
既にご紹介した胴突き仕掛けにも、テンビン仕掛けにも発光体やタコベイトといった装飾パーツを付ければ集魚効果があります。本来狙う魚がいる場合には効果的なものの、エサ取りなどを寄せ付けてしまう場合も。今回はそれを逆手に取り、フグへ強くアピールする目的で装着します。
ヨリトフグの毒性に注意!
肝臓に毒性?
ヨリトフグの毒性に関し、筋肉、皮、精巣といった部位は無毒。しかし、肝臓には毒性があるとされています。含まれている毒は有名なテトロドトキシンで、強い毒性が特徴です。ヨリトフグの毒性に関する研究では、肝臓から有毒成分が検出されています。しかし、現在でもヨリトフグの肝臓を食べることで死亡した報告は統計上存在しません。
毒性は地域によりけり
フグの肝臓は有毒部位であり、種類を問わず、天然や養殖に関わらずその販売や提供は食品衛生法により禁止されています。
ヨリトフグに限らずフグの肝臓は食品衛生法によって流通が禁止されています。これはフグ毒であるテトロドトキシンが生育環境や捕食対象、フグの種類、個体差などによって大きく変化するためです。愛知県の一部地域では、ヨリトフグの肝臓が無毒であるとの認識で、肝も食べることが続いてきました。死亡者や食中毒患者は無かったようですが、偶然その一帯のフグが無毒であったと考えたほうが良いでしょう。
フグ毒の特徴と知識
強い毒性が特徴!
先ほど触れたとおり、テトロドトキシンは強い毒性が特徴の毒物です。自然界では最強レベルの強毒で、致死量は1~2mg。同じく毒物の青酸カリの500~1000倍強いとされています。加熱や塩蔵などでは無毒化しないのも注意すべき特徴です。
餌由来の毒
かつて、テトロドトキシンはフグが作り出す毒と考えられてきました。しかし実験によって無毒のフグを育成した結果、フグの毒性は餌由来のものであることが判明。フグの食性は小魚や甲殻類、頭足類などを食べる動物食です。餌となる動物が摂取した微量の毒性物質を体内で合成し、強い毒性のテトロドトキシンを作り上げています。
フグが毒性を持つ場合の特徴
1.ふぐは種類によって毒力が異なる。 2.臓器の種類によって毒力が異なる。 3.毒力は個体差が大きい。 4.有毒とされている臓器は通年で有毒である。 5.漁獲海域によって毒力が異なる場合がある。
フグは種類によって各部位や臓器に含まれる毒性が異なります(1と2)。あるフグは全身に毒が含まれるものの、あるフグ(ヨリトフグ)はどの部位も無毒といったことがあります(3)。また同じ種のフグを食べることで食中毒になったとしても、症状の進行に時間差があることも。これは、毒性の強さに個体差があることを示します(3)。最後は、日本沿岸地域では無毒であったフグが輸入物では毒性が確認されたケースです(5)。愛知県の件はこちらに該当し、漁獲した地域では無毒であったケースとなります。
フグ毒の症状と進行
フグの食中毒症状の特徴
フグ毒による食中毒症状の進行は食べる時間にも拠りますが、4~6時間までに発症して死亡まで達します。これは毒物の中でも早い進行で、最短では1時間30分で死亡する事例も。繰り返しますが、肝臓も含め毒のある部位は加熱しても毒性は失われません。
フグ食中毒の進行
食中毒の第一段階では20分~3時間までに口唇や舌先、指先に痺れを感じるようになります。さらに、激しい嘔吐と千鳥足で歩行が困難になります。第二段階では知覚麻痺や言語障害、血圧低下が起こり、呼吸困難に陥るのが特徴です。第三段階では全身が完全に麻痺します。また、第四段階では意識が消失した後に心停止。呼吸も停止し、最終的に死亡となります。
ヨリトフグ以外にも要注意のフグ
クサフグ
部位 | 毒性 |
筋肉 | 有毒(弱) |
精巣 | 有毒(弱) |
皮膚 | 有毒(強) |
内臓(卵巣・腸など) | 有毒(強) |
体長15~20cm程度の小型魚体形のフグです。アカメフグやカナトフグの別名を持ちます。背側が濃い緑色に、小さく白い斑点が散在しているのが外見的な特徴です。目が赤味がかったオレンジ色なのも特徴の一つ。食用可とされているものの、筋肉と精巣に弱毒性がある場合があります。皮と内臓には強い毒性があるので、捕獲・釣穫しても食べる行為は危険です。
ドクサバフグ
部位 | 毒性 |
筋肉 | 有毒 |
精巣 | 有毒 |
皮膚 | 有毒 |
内臓(精巣・卵巣・腸) | 有毒 |
体長40~50cmに達する中型魚体形のフグです。堤防などで釣れる無毒のサバフグ(シロサバフグ)に似ており、混じって釣れてくる事があります。時折、食中毒事件で報じられる魚がこのドクサバフグです。また、シロサバフグとは尾鰭の形状(尾に深い切れ込み)が異なります。ですが、野生の魚類は尾やヒレが傷つくこともあるので素人が無毒のフグであるかを判断することは危険です。
キタマクラ
部位 | 毒性 |
皮膚 | 有毒(強) |
筋肉 | 有毒 |
卵巣 | 有毒 |
内臓(肝臓・腸) | 有毒 |
体長20cm程度の小型魚体形のフグです。斑紋や体色が特徴的ですが、これは個体差があり一定していません。しかし、体型に特徴があるため判別は簡単です。皮膚に強い毒性を持ち、内臓と筋肉にも毒性があります。無毒の部位もあるとされるものの、やはり食べることは危険です。
ヒガンフグ
部位 | 毒性 |
皮 | 有毒 |
筋肉 | 無毒 |
精巣・卵巣 | 有毒 |
腸 | 有毒 |
体長40cmに達する中型魚体形のフグです。眼球に赤味を帯びるため、アカメフグとも呼ばれます。背部と腹部の境に黄色味がかった帯状の線があるのが特徴です。本種はショウサイフグと並んで釣り対象魚となります。無毒な部位は筋肉のみで、食べるためにはフグの調理免許を持った人間が処理しなければ危険です。
注意: 岩手県越喜来湾および釜石湾ならびに宮城県雄勝湾で漁獲されるヒガンフグについては食用不可。
ヨリトフグのまとめ
美味だけど食べるときは気をつけて!
「ヨリトフグって無毒なの?気になる毒性の有無や味などの特徴をご紹介!」は以上です。ヨリトフグの生態や特徴などをお届けしてきました。フグ食と毒は切っても切り離せない関係ではありますが、可食部位を把握した上で危険部位を取り除けば安全です。必ずフグ調理免許を持つ人に処理してもらうことを徹底し、釣ったり譲り受けたとしても自分で調理することを避けましょう。安全対策を怠らない事が、フグと上手に付き合うためは大切なことです。
海の有毒生物が気になる方はこちらもチェック!
今回ご紹介したヨリトフグや他の有毒フグの仲間達以外にも、毒性を持つ生物は沢山存在します。中には魚でなくてもフグ毒(テトロドトキシン)を持っているスベスベマンジュウガニとヒョウモンダコには要注意です。他にも有毒生物に関する情報が満載ですので、危険を避けるためにも一度チェックすることをおすすめします。
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