エビネとは
エビネとは|ラン科の多年草
エビネ(海老根、蝦根)とはラン科エビネ(Calanthe)属の多年草で、日本に20種類以上が自生します。エビネのバルブ(偽球茎)は以前のものが残ったままつながり、その様子がエビに似ているというのが名前の由来です。バルブ(偽球茎)とはラン科の栽培方法でよく使われる言葉で、栄養を蓄えて丸くなった茎や葉のことを指します。下草の少ない杉林や雑木林などによく群生します。
エビネとは|品種が豊富
エビネは自然交配しやすく、変種が現れやすいのが特徴です。また、園芸品種も多く生みだされ、さまざまな花色が楽しめるので人気があります。しかし、自生しているエビネは乱獲により個体数が減り、準絶滅危惧種に指定されているのが現状です。都道府県単位では絶滅危惧種になっているところも多数あります。
エビネの開花時期
エビネの開花時期|春咲きのエビネ
エビネの春咲き種とは、開花の時期が4月~5月頃の種類です。通常「エビネ」と言った場合には、春咲きの「ジエビネ」のことを指しています。ジエビネのほかには、サルメンエビネ、キエビネ、キリシマエビネ、ニオイエビネなどが春咲きの種類です。違うエビネ同士が近くで同時期に開花すると自然交配します。おもな花色は白・緑・黄色・茶色・紫などです。
エビネの開花時期|夏咲きのエビネ
エビネの夏咲き種とは、開花時期が7月~9月頃の種類になります。夏咲きのエビネは、おもに「熱帯性常緑Calanthe」という種類です。この種類のエビネは日本が最北分布の地域になります。夏咲きのエビネは、ツルラン、オナガエビネ、ユウヅルエビネ、リュウキュウエビネなどです。おもな花色は白・ピンク・赤・紫などがあります。
エビネの育て方
エビネの育て方|半日陰がおすすめ
エビネは日陰でも育ちますが、木漏れ日が当たる程度の半日陰で管理するとよいでしょう。鉢植えでも地植えでも、水はけがよく強風を避けられる場所ならば特に問題はありません。エビネは水を好む山野草なので、たっぷりあげてくださいね。
エビネの育て方|春咲きのエビネ
春咲きのエビネは、一部の種類を除けば耐暑性も耐寒性も普通です。特に優れているというわけではないので、夏の直射日光、強風、霜などには当てないように注意しましょう。水は土が乾ききる前にたっぷりあげます。
エビネの育て方|夏咲きのエビネ
夏咲きのエビネは、耐暑性は普通ですが耐寒性は弱いため、寒冷地での栽培は鉢植えをおすすめします。夏の時期に咲くエビネは、涼しい高山に咲く夏エビネと、夏咲きエビネなどの種類です。それぞれ特徴に違いがあります。夏エビネは自生地が涼しい環境のため、夏の時期も温度を低く管理しなければならず、育て方が難しい種類です。夏咲きエビネは気温を10℃以上に保つよう、冬の時期の管理に注意しましょう。
エビネの栽培方法
エビネの栽培方法|土と植え付け
エビネの植え付け時期は、春咲きなら3月~5月と9月です。夏咲きの場合は3月か5月~6月になります。エビネは比較的どんな用土を使っても栽培が可能です。地植え、鉢植えの栽培方法で使用されている土は、赤玉土、鹿沼土、腐葉土、日向土、ヤシ殻チップ、バーク、桐生砂、軽石などで、2~3種類を混ぜ合わせて作ります。微塵はふるって利用して下さいね。エビネ用や蘭用の培養土などを使うのも便利です。
エビネの地植え
エビネの地植え|場所
エビネの地植えでの栽培方法は、直射日光と強風の当たらない半日陰を選んで浅く植えることです。水はけがよく肥沃な土に地植えすると、見事な花を咲かせてくれます。地植えする際に腐葉土やバークなどを混ぜ込むとよいでしょう。本来の自生地は、木漏れ日の差す下草が少ないスギ林などですから、似た環境に地植えしてあげるのもおすすめです。植え付け後は葉にかからないように、根元にたっぷりと水をあげます。
エビネの鉢植え
エビネの鉢植え|鉢
土を入れる鉢にはいろいろな素材があります。プラスチック鉢、素焼き鉢、駄温鉢、山野草鉢など、それぞれの目的や環境に合わせて選びましょう。エビネの鉢植えにおすすめなのは、エビネ専用鉢、プラスチックの深鉢、山野草鉢などです。鉢は少し小さめのものを選びます。ただし、エビネの株が大きい場合は別です。エビネは水を好みますが、根や株に対して大きすぎる鉢は水はけがうまくいかず根腐れの元になります。
エビネの鉢植え|土
エビネの鉢植えに使う土は前述した通りになります。鉢植えでの栽培方法は、使用する鉢との相性を考えた土を使うことです。プラスチックの深鉢は通気性の面で山野草鉢などには劣るので、水はけがよくなるよう土をブレンドします。軽石+赤玉土+鹿沼土、軽石+鹿沼土+桐生砂、軽石+赤玉土+日向土、など水はけと保水性のバランスを鉢植えの置き場所にあわせて考えるとよいでしょう。
エビネの手入れ
エビネの手入れ|水やり
エビネの新芽が出て開花時期が終わるまでは、葉や芽にかからないように水をあげます。花の時期が終わってからは、上から水をあげても大丈夫ですが、勢いが強すぎないように注意してください。エビネはよく水を吸いあげるので、秋頃までは土が乾燥してきたらたくさんの水をあげましょう。気温が高い時期の水やりは涼しい時間帯に行います。冬に凍結が心配な地域では暖かい日中に水あげましょう。
エビネの手入れ|肥料は通常よりも薄める
エビネの手入れで大切なことのひとつが施肥です。山野草の肥料は通常よりも薄めて与えます。エビネも同じです。肥料をあげる時期は、液肥なら5月~6月と9月頃がよいでしょう。固形の緩効性肥料は、4月~6月と9月頃に与えます。濃度が高くなり過ぎないように、水やりもしっかりと行ってくださいね。
エビネの手入れ|肥料を与えない時期
肥料のあげすぎもエビネが枯れる要因です。また、エビネには肥料をあげないほうがよい時期があります。花芽が出てきてからと開花時期、夏場の暑い時期です。花芽が出てきてから開花の時期は、肥料よって花色が影響を受けるため与えません。夏場の暑い時期に肥料を与えないのは、土が乾燥しがちで肥料が濃くなり過ぎる可能性があるためです。
エビネの手入れ|枯れた葉や花
エビネの花などの手入れについてです。エビネがどんどん成長を始める前に、枯れた葉は摘んでおきます。一部が傷んだり枯れたりした葉は、該当の部分だけ切り取りましょう。花が終わったら、花径が固くなる前にひねるようにして抜き取ります。葉の根元にあるハカマも変色しているようなら切り取ってください。葉やハカマなどを切り取るときは、滅菌したハサミなどを使いましょう。新芽を傷つけないように注意してくださいね。
エビネの病害虫
エビネの病害虫|ウィルス病
ウィルス病とは、葉にモザイクのように斑点ができ奇形になる病気です。アブラムシや、株分けに使うハサミ、病株の株分けなどから発生します。対策は害虫駆除、道具の滅菌、病株の処分などです。
エビネの病害虫|軟腐病
軟腐病とは、葉や根の傷ついた部分から感染する病気です。感染した部分が柔らかくなり溶けるように腐ることもあります。菌は土の中に潜み、梅雨~秋の高温多湿の時期に活性化します。エビネに傷がつかないように注意し、病気の株は処分しましょう。水はけをよくする、同じ場所にエビネを植えないようにする、といった対策をとります。
エビネの病害虫|灰色カビ病
灰色カビ病とは、白や赤の斑点ができ葉や花を腐らせる病気です。斑点は褐色になり灰色のカビが生じます。春~梅雨の時期と秋から冬の初めにかけて発生しやすい病気です。風通しをよくして、湿度を下げましょう。エビネに傷がついていたり弱ったりしているとかかりやすくなります。薬剤を使うのも効果的です。
エビネの病害虫|害虫
エビネはアブラムシ、ハダニ、カイガラムシ、ナメクジ、ケムシなどの害虫に注意が必要です。害虫は新芽や花を食べてしまうだけではなく、病気も媒介します。普段から害虫対策をしておきましょう。
エビネの植え替え
エビネの植え替え|時期
エビネが病気にかかりやすい梅雨や、根や葉を傷めやすい高温期は避けます。鉢植えや地植えの植え付け・植え替えは、春咲き・夏咲きのエビネともに秋か3月頃がおすすめです。その際には肥料も施します。5月~6月も植え替えは可能です。ただ、近年は夏の暑さが早く訪れることも多くあります。植え付けや植え替えしたエビネに施肥できる期間が短くなるので、秋か3月頃の気温の低すぎない時期が適していると言われています。
エビネの植え替え|やり方
植え替えに使用する道具は鉢も含めて消毒しましょう。一回り大きめの鉢に、エビネの新芽の前のスペースを広くして植え替えます。枯れた葉などは取り除きましょう。根がしっかり張っているなら、ほぐさずそのまま植え替えます。鉢の隙間に土をしっかり入れてくださいね。最後に肥料を撒きますが、新芽の上には置かないようにしましょう。エビネは2~3年に1度のペースで植え替えます。
エビネの増やし方と株分け
エビネの増やし方と株分け|増やし方
エビネの増やし方には、おもに3つの方法があります。まずは、大きくなったエビネの株を分ける「株分け」という増やし方です。次は、「バックバルブ吹かし」で古いバルブを使う増やし方になります。2~3個連なったバックバルブを、頭半分が出るくらいに浅く水苔に植える方法です。最後の増やし方は種蒔きになります。採取した種を共生菌のある親株の根に触れるように撒く方法です。発芽は容易ではなく、半年~2年はかかります。
エビネの増やし方と株分け|株分けの方法
エビネの鉢をたたき、株を抜けやすくします。株が抜けたら軽く根をほぐすようにしながら土を落としましょう。土を落としたら新芽を傷つけないように注意しながら株分けします。その際、新芽の後ろにバルブを2~3個程度残しましょう。株分けできたら根を傷つけないように鉢に入れて植え付けます。植え替えのときと同じように、新芽の前に広くスペースをとりましょう。新芽のないバルブはバックバルブ吹かしで増やします。
エビネの美しい花を楽しみましょう
さまざまな色で目を楽しませてくれるエビネの花は、プランターなどへの寄せ植えもおすすめです。山野草というと難しそうに感じますが、エビネは一部の種を除けば比較的育て方が容易です。栽培方法や増やし方次第で、翌年も期待に応えてくれる点は魅力のひとつですね。エビネの可憐な花は、あなたのお庭を彩ってくれることでしょう。
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