イカを締めるとは
まずは「イカを締める」という行為の理由と意味について説明いたします。
魚の「神経締め」はご存じでしょうか。魚の脊髄に細いワイヤーを通して魚の運動機能を止める技ですね。これによって魚は動かなくなり、生きたまま出荷されたり、または血抜きをして持ち帰ります。
イカも「運動能力を奪う」という意味では同じことなのですが、イカは「無血動物」ですので、血抜きはありません。運動を司る神経を切断することがイカを締めるということになります。
イカを締める理由①
イカの鮮度を保つ
イカに限らず釣れた魚などを（鮮度を保ちながら）持ち帰り、または保存しやすくするためには、何らかの方法で動かなくしなければなりません。それを「締める」と言います。
例えば氷水に漬けたり、ナイフで神経を切断したり、頭部を木製ハンマーで叩いたりと締め方には魚の種類によっていろいろな方法があります。生きたまま（心臓は動いている状態）運動能力を奪うことができれば鮮度は保てますね。
イカの鮮度についての一考察
イカ（特にアオリイカ）は締めると鮮度が保てると一般的に言われています。これに関してアニサキス対策として「48時間以上冷凍してから食べましょう」と推奨している声があることはご存じでしょう。
冷凍してから食べるのであれば「鮮度」は関係なくなりますね。では冷凍することを前提で締めて味は変わるのでしょうか。ここからは経験則なのですが、あまり変わらないというのが結論です。
それよりも「冷凍の仕方」の方が大事です。丸のままではなく、皮むきを終えてから冷凍すると臭みが無くなります。
イカ特有の臭みを無くす
結論として、締めることの意味はイカが「美味くなる」わけではなく「不味くしない」ためのものではないでしょうか。保存袋などに仕舞った時に中でスミを吐き、生臭さが全体に回ったりしないように用心のための意味合いが強いように思います。
実際に締めるとイカは白色に変色しますが、これは「筋肉が弛緩」したために起こる現象で、「コリコリした新鮮な食感」とは真逆のものです。釣れたてを食べると、締めてあっても無くてもコリコリしますよ。
イカを締める理由②
漁師さんも頭を悩ます
もう一つの理由が、「イカが悪いことをしないようにする」というものです。この悪いことというのは、暴れて他のもの（仲間も含む）を傷付けるという行為です。
漁師さんなどがイカを一本釣りする場合イケスに入れて帰港することが多いのですが、コウイカ系のものはおとなしいのですが、ヤリイカ・ケンサキイカなどマルイカ系のイカはすぐに「共食い」を始めます。
噛み跡の付いたイカは市場でも安くなりますから、イケスで活かしたまま使う料理屋さんなどに卸す以外は締めたほうが高値で売れます。
イカがいたずらできないようにする
この場合は「イカを美味しく食べる」とは意味が違ってきます。傷の無いイカを出荷するための「締め」ですから通常の締め方はできません。それ自体が傷を作る行為になってしまいますからね。
海水に砕氷を混ぜたものにいきなり落とし込み締める方法もありますが、これだと色も悪くイカの味も落ちてしまいます。
ベテラン漁師さんは割りばしを「鳶口」から突っ込んで一瞬で締めてしまいます。これなら傷が外から見えませんが、釣り師が覚える必要はありません。
イカの締め方①
イカピック
まずは一般的な「ピック締め」からです。釣具屋さんや通販で「イカピック」といえばすぐに検索できます。一本物のものやフォールディングタイプのものが出ていますが、少し大きめのものをおすすめします。
価格はプラスチック製の500円くらいのものから金属製の3000円くらいのものと幅はありますが、刃がなまったら研げるように金属製のものをおすすめします。
締め方のコツ（動画）
イカの神経は「目の周りの4か所」と言われています。動画ではイカの目の上の真ん中（胴体の富士額の下）にピックを入れて中でこじっていますが、この大きさのイカならばこれで良いですが、もう少し大きいものであれば「目の上から肝に向かって」ピックを入れる方が確実です。
道具の大きさにもよりますが、締め方はイカの大きさに合わせましょう。
イカの締め方②
イカチョップ
「イカチョップ」という言葉を聞いたことがありますか?言葉のまま「イカにチョップをする行為」なのですが、小さめのアオリイカなら道具を使わずにイカにチョップするだけで締ります。
神経を切断していないので締った事にはならないとする方もおられますが、茶色から白色に体色が変化すればイカの筋肉が弛緩した証拠ですから、イカの場合はそれで「締った」として良いと思います。
締め方のコツ（動画）
イカチョップできれいに締めるコツは1、小さめのアオリイカを狙う。2、目と目の間を真っ直ぐ狙う。3、小指の付け根の固い所で。4、無慈悲にチョップを打ち込む。これだけです。
サッと色が白くなれば成功です。ピックなどの道具を何も持っていない時の持ち帰り用の技ですね。ですが失敗も多いのであまりおすすめはしません。
イカの締め方③
ハサミ締め
皆さんナイフやピックなどの専用の道具は持っていかなくとも、釣りにハサミは持って行くでしょう。イカを締めるのにハサミはとても使いやすい道具です。
「締めて」「裂いて」「外す」をすべて一丁で完結できます。魚が釣れた時もエラを切ってヒレを落として内臓を抜いてと、持ち帰りしやすくするのに最適です。
タックルボックスに必ず一丁は入れておきましょう。
締め方のコツ（動画）
この動画の方は持ち帰りのことまで考えてとても手際良くハサミ締めをしています。ハサミを少し広げ、「切る」というより「2か所を同時に刺す」感じです。
目の上からハサミを刺し、それで締らない（白色にならない）場合刃を動かします。身が締ったら目の間に刃を入れてゲソも締めます。ひっくり返して身を縦に裂き墨袋と内臓を処理すればあとは背骨を抜いてできあがりです。
このまま保存袋に入れて冷凍庫に保存すればいつでも鮮度抜群のお刺身が楽しめますね。
イカの締め方④
指締め
さて、エギングはとても手軽な釣り方です。極論を言えばロッドとエギだけあれば成立する釣りです。そのため住居近くに釣り場がある場合は軽装備で出かけることも多いかと思います。
手ぶらで出かけてイカチョップの効かない大きさのイカが釣れた場合、持ち帰り易いように「指締め」を行います。幾つか方法はありますが、簡単な方法を紹介しておこうと思います。
締め方のコツ（動画）
イカの神経節が4つあることは先に書きましたが、その場所は目の周りになります。目の上が胴体、目の間がゲソ（足）になります。
目の上のへこみ（分かりにくいですけど）を肝に向かってグイッとつまむと胴体が締まり、目の間に親指の爪を押し当て、真下に力を入れるとゲソが締ります。親指の爪を使うのがコツになります。
イカピックを自作してみよう
似た形のものを削る
購入すればある程度の金額のする「イカピック」。小さい道具ですから紛失することも結構あります。ならば安く自作できないでしょうか。
先に紹介いたしましたが漁師さんは「割り箸」で締めるくらいですから、少し器用な方ならきちんとしたものが簡単にできるのではないでしょうか。例えば100均のカニスプーンなどは元々の形が良く似ていますから、先をちょっと加工すればイカピックがすぐにできてしまいます。
100均利用で実質1本50円
もう少しレベルを上げて100均のピンセットを加工してみましょう。ピンセット1本から2本のイカピックが誕生します。つまり1本50円の道具です。
グラインダーやドリルなどの工作機械が必要になりますから慣れた方へのおすすめになりますが、手作りの道具は愛着も湧きますしおすすめですよ。
イカ締め動画が炎上
締める事は残酷なのでしょうか?
イカを締める動画が炎上したことがあります。曰く「残酷」「虐待」などです。今回使用させていただいた動画の中にも見方によっては残酷に見える動画もあると思います。
しかし長く苦しませるより一瞬で神経を締めてあげる方がイカにとっては良いことのように思えますし、また命をいただくのですからなるべく美味しく食べてあげたいのが人情です。
ぜひコツを掴んでイカを苦しませずに美味しいまま持ち帰りできるようにしましょう。
どうしてもすぐに食べたい方に
アニサキスに気を付けて!
釣ったイカを食べる場合、本当に気を付けて頂きたいのが「アニサキス」の害です。アニサキスはイカの内臓ばかりでなく身にも入ります。
熱を加えるか、冷凍保存で48時間以上すると生存率がほとんどゼロになりますので、本来ならお刺身にするのであれば冷凍保存をおすすめします。この寄生虫が体内に入ると胃壁を破り、猛烈な腹痛に襲われます。
冷凍保存しないのなら
とはいえ、どうしてもイカの釣りたてを食べたい、とおっしゃるのならば「目視」という技があります。イカの「飾り切り」は見たことがあるでしょう。イカの皮を剥いて、平らに延ばしたイカの胴体に「格子状」に包丁を入れていきます。
それを持ち上げて光に透かすと、アニサキスがいるならばそこだけ白濁しますから、それを取り除きます。道具は庖丁と爪楊枝だけで充分です。飾り切りをする理由は味だけでなく、安全にも意味のあるものなんです。
釣ったイカは美味しく食べましょう!
今回釣ったイカを鮮度良く持ち帰り、美味しくいただくための締め方や冷凍保存の大切さなどを記事にしてきましたが、これから梅雨時までアオリイカは産卵に向けてどんどん大きくなります。締める時に手を噛まれたりなどのトラブルも起きます。
せっかく釣ったイカです。気を付けてスピーディーに締め、美味しくいただきましょう。
イカ釣りが気になる方はこちらもチェック!
今回イカ（アオリイカメイン）の締め方やその理由などを紹介して参りましたが、その前に自分でイカを釣ることが前提になりますよね。「暮らし～の」の記事の中にはさまざまなイカ釣りのノウハウを紹介した記事があります。
釣り方から選ぶタックルの紹介まで詳しい記事をいくつか載せておきますので、ぜひご覧ください。美味しい食べ方や保存方法などもわかりますよ。
【2019】春はエギングシーズン！新作入門タックルでアオリイカをゲットしよう！
エギングタックルまとめ！初心者の方におすすめのロッド、リールをまとめてご紹介します。2018年の小イカシーズンに多くのモデルがモデルチェンジ...
ケンサキイカの釣り方！釣れる時期から仕掛けなどの釣り方のコツを徹底解説！
初夏から産卵のために浅場に上がってくるケンサキイカ。アオリイカにも負けない味の良いイカであるにも関わらずあまりメジャーであるとは言えません。...
イカ釣り入門！基本的な3つ釣り方の仕掛けを解説！コツはどこにある？
簡単だと有名なイカ釣りですが、それでも釣り自体が初めてという方には敷居が高いもの。この記事ではイカ釣りに必要な道具や入門におすすめなイカ釣り...