青函トンネルとは
青森県と北海道を結ぶ大動脈
その昔は船か飛行機で渡るのみだった津軽海峡に、昭和の時代から地上を結ぶ動線として完成したのが青函トンネルです。
このトンネルは今では北海道新幹線の車両などが通行することで知られ、青森の津軽半島と北海道の松前半島の間をがっちりと結びつけています。
国土交通省が所有しJR北海道が管理
建設を進めたのは国でしたが、そのあとのは国鉄時代を経て、そして現在はJR北海道が管理している施設です。青函トンネルの管理者が鉄道会社ということは、車が通れるトンネルではない?との疑問が湧いてくるところです。
果たして実際のところはどうなのか、読み進めていくと明らかになります。
青函トンネルの所在地
【本州・青森県がわ】青森県東津軽郡今別町浜名
【北海道がわ】北海道(渡島総合振興局)上磯郡知内町湯の里
青函トンネルの歴史
第二次大戦前からの建設計画
フル稼働が21世紀も続く青函トンネルですが、実は鉄道車両用トンネルの建設構想が浮かんできたのは、第二次大戦よりもずっと前のことでした。
一番古い構想では大正12年に鉄道トンネル計画が登場、のちに実現するための調査がスタートしたのは戦後すぐの1946年になってからです。
1961年から建設開始
そして実際に建設が始まったのが、ソ連のガガーリンさんが人類はじめての有人宇宙飛行を成し遂げた1961年です。
ガリガリと青函トンネルの海底地盤の掘削をはじめ、本州の陸地からもぐって北海道の陸地まで本坑が貫通するのに、丸24年という途方もない工期を要しています。
青函トンネルの殉職者
今とは比較にならぬほどに過酷な、命がけの工事が長期間にわたり継続たことで、青函トンネルは多くの犠牲者を出すことにもなりました。幾度となく落盤や水没事故を繰り返したことで、24年間で述べ34人もの犠牲者を出しているのです。
現地にはいまも慰霊碑の姿を見ることができます。
1987年に完成
ついに完成にたどり着いたのが、高度成長で勢いづいていた1987年のことです。この青函トンネルを最初に通過した列車が、DD51形のディーゼル機関車でした。
そのあと海上に通っていた青函連絡船がついに役目を終えたことで、トンネルの役割は一気に拡大していきました。
青函トンネルの名称
青森と函館を合わせて青函トンネル
当初からこのトンネル、当時営業していたフェリーの青函連絡船に代替えする列車輸送路という役割が担わされていました。そのために建設前から、本州の青森と北海道の函館の頭文字1字づつを取ってつけた、シンプルな青函トンネルの名称は確定していたようです。
青函トンネルの別名
まだ敗戦色の濃かった戦後すぐの頃、青函トンネルの構想段階では、津軽海峡連絡ずい道という古風な呼び名がありました。そして実は列車が行き交う今でも、青函トンネルは青函隧道と別名で呼ばれることが稀にあります。
隧の字が常用外の漢字なことで、表記は青函ずい道とされたこともありました。
青函トンネルの構造
4種のトンネルの複合体
青函トンネル新幹線が通る前に行こうよって開通1年前くらいに新青森から特急に乗って函館まで行った時の特急の席めっちゃ親切に青函トンネル断面図あったのこれ今見ても興奮する pic.twitter.com/E12ZxlY4f9
— ひよ (@bunchousu) February 7, 2018
ご近所に良くある種類のトンネルは1本だけ掘られたものが多いですが、実は青函トンネルの場合は4種類の違ったトンネルが組み合わさった構造をしています。
最も大きく鉄道車両が駆け抜ける本坑、管理のための作業抗、建設に使われた先進導抗、そして本坑と作業抗を結びつける連絡誘導路です。
青函トンネルの長さ
掘削され、トンネルと化しているか所の全長は53.85kmにものぼります。これは鉄道や車などの交通機関に使われているトンネルとしては、世界で2番目という大変な長さです。
また、青函トンネルは海底部の長さだけでも23.3kmと、英仏海峡トンネルに次ぐ長さを誇っています。
青函トンネルの深さ
何より目立った特徴としては、青函トンネルの類まれなほどの深さがあります。最深部は海水面から240mも下まで掘削され、海の下を通るようになっています。この深さは2019年の段階で、全世界の鉄道トンネルと比べてみても一番の深さです。
世界の主要トンネルとの比較(2019年)
【全長】
1・ゴッタルドベーストンネル(スイス)57.104km
2・青函トンネル(日本)53.85km
3・英仏海峡トンネル(英・仏)50.45km
【海底部】
1・英仏海峡トンネル(英・仏)37.9km
2・青函トンネル(日本)23.3km
青函トンネルの海底駅
2つあった海底駅
そんな暗闇の海底になんで駅が?と誰もが驚くのが、トンネルの海底駅の存在でした。北海道がわに吉岡海底駅、本州がわに竜飛海底駅と、2つの鉄道車両の駅があったのです。
何故過去形かといえば、青函トンネルの海底駅は観光用としてのお役目を2014年に終え、定点と名前を変えているためです。
定点(元海底駅)の役割とは
元は保守と工事、そして観光ツアーの開催のために、2つの駅が存在していました。そして駅が閉鎖されて吉岡定点・竜飛定点となった今、青函トンネルの定点の役割は複合的に残されています。
例えば工事の拠点、輸送した資材の置場、車両からの緊急避難場所などの役割です。
青函トンネル記念館
青函トンネル記念館とは
お膝元となる福島町へ車やバスで訪れてみれば、青函トンネル記念館という博物館が開設されています。ここではメインの展示室にてトンネル建設の歴史を振り返ることができます。
そして地下へと続くケーブルカーに乗ってみれば、実際の坑道を訪れて地底のド迫力な見学までも実現します。
地下140mの世界
オレンジ色をしたケーブルカーで地底深くへ進んでみれば、そこは地下140mの別世界。何十年も前に完成した地下の歴史的な坑道空間が、ずっと先まで伸びています。
青函トンネルを新幹線の車両で通過するだけでなく、実際に見て歩いてみるのが観光におすすめです。
基本情報
【所在地】北海道松前郡福島町三岳32-1
【電話】0139-47-3020
【営業時間】9:00~17:00
青函トンネルの地震対策
地震に耐える構造
地の底に作られていることで、気になるのは地震に対する強度です。実際に青函トンネルのある津軽海峡のあたりでも、近年に震度5を超える地震が発生しています。
しかしそんな強い地震が本州北端あたりで置きても車両に被害を与えない、内部の耐震構造と対策が取られているようです。
地震が発生した時の対処
常に多数のセンサーやカメラを駆使し、監視体制を敷いています。だから大きな地震が発生すれば、通行している鉄道車両は時間をかけずに停止措置が下されます。
仮に海底部の定点(元海底駅)で大地震に遭遇すれば、被害状況によっては乗客たちは徒歩で地上に抜けることになります。
過去の大地震での被害
完成を見て以来、青森や北海道の南部では時折街中の車も停車するほどの大きな地震が発生していました。1983年発生の日本海中部地震や、1993年に起きて津波被害が甚大だった北海道南西沖地震など数知れず。
しかし青函トンネルはそうした地震の災害でも、崩壊することなく今に至っています。
青函トンネルを通る鉄道車両
北海道新幹線
当初は在来線の専用だった青函トンネルですが、2016年より新青森駅から新函館北斗駅の間に北海道新幹線が開通しました。いま通行している鉄道車両の中でも、名実ともに主役を張っています。H5系とE5系の車両により、旅客の輸送力は格段に向上をしました。
TRAIN SUITE 四季島
なにか寝台特急といえばミステリーを思い浮かべますが、いま青函トンネルを走っている同種の臨時列車といえば四季島の名が挙がります。
JR東日本をはじめ、青い森鉄道やえちごトキめき鉄道など、本州・北海道の複数の鉄道会社と路線をまたにかけて駆け抜けるクルーズトレインです。
通行している鉄道車両の一覧
【北海道新幹線(H5系・E5系)】2016年開通の旅客用列車
【TRAIN SUITE 四季島】東京~北海道間を走る臨時寝台特急
【EH800型】貨物コンテナを連ねる輸送用の電気機関車
【キヤ193系】線路の検測を目的とするディーゼル機関車
青函トンネルの所要時間と料金
新青森駅~新函館北斗駅の所要時間
計測をしてみれば、両区間はおよそ148.8kmの距離があります。時間が遅延せずに通過できた場合、本州の新青森から北海道の新函館北斗まで、所要時間は1時間6分です。
このうち青函トンネルの区間は53.85kmで、おおむね20分という短時間で車両が駆け抜ける計算です。
新青森駅~新函館北斗駅の料金
現時点で青函トンネルだけを掻い摘んで通行できる旅行プランなどは、どこにも存在していません。したがってこのトンネルの通行料金=北海道新幹線の新青森~新函館北斗区間の料金ということになります。
2019年3月の段階での、通常期の普通車料金は7,260円となっています。
青函トンネルを通る新幹線の料金
【東京駅~新函館北斗駅】通常期・普通車指定席:22,690円
【仙台駅~新函館北斗駅】通常期・普通車指定席:17,310円
【新青森駅~新函館北斗駅】通常期・普通車指定席:7,260円
(いずれも青函トンネルを通過、2019年3月3日現在の料金)
青函トンネルは車で通れない
車もバイクも通れない理由
ここまで読んだらもうお分かりかもしれませんが、青函トンネルは残念なことに車やバイクでスイーッと走り抜けることができないトンネルなのでした。
戦後に計画が上がった段階から鉄道用として建設が進められ、一般向けの車やバイクの道路としては設計されていないことが理由です。
ただし特殊な車は走行できる
青函トンネルの巡回車、渡島大野駅の仮待合室に掲示されてた広報に載ってた。 pic.twitter.com/6Mfcp7j7Yw
— T-24(08nl) (@3710dc205) July 28, 2015
完全に車は入れないと思いきや、唯一本坑のなかに入り込める特殊な車は存在します。それが青函トンネルの保守点検作業こなす巡回車です。黄色い装甲車のような外観で、ディーゼルエンジン搭載の4人乗りです。
巡回車に乗れば本州から北海道に抜けられそうですが、一般には開放されていません。
折りたたみバイクの輸送なら可能
もう完全に車やバイクを諦めてしまいそうですが、必ずしもそんなことはありません。例えば極めて小型の折りたたみバイクや自転車であれば、手荷物として鉄道車内に持ち込むことができます。
その場合は青函トンネルを抜けられる、北海道新幹線の車内に持ち込んでの輸送が必須です。
将来は青函トンネルを車が通れる?
カートレイン(車載列車)の構想
もう車での走行については諦めたい青函トンネルとはいえ、実は将来的に既存トンネル内を車で通行出来る可能性があります。それはカートレイン(車載列車)の構想です。
スイスやフランスなど欧州ではたまに見られる車輸送の形式で、これが導入されたなら車に乗ったままの通行や輸送が楽しめそうです。
車道付きの第2青函トンネル構想
さらにもう一つのある構想が、未来に車やバイクでトンネルを通れる可能性を浮上させています。それは第2青函トンネルの建設という、本州側の青森で熱望される構想。
鉄道と自動車道とガスパイプラインも通すといい、既存トンネルの老朽化や輸送力の限界から、割と現実的に捉えられているところです。
車の場合はフェリーを使おう
2つのフェリー会社
現時点で津軽海峡を拠点に活動するフェリー会社は、合わせて2つあります。ひとつは津軽海峡フェリー。もう一つが青函フェリーです。どちらも青函トンネルの東側の海域を通って、車のままで本州と北海道を行き来できる貴重な輸送手段です。
津軽海峡フェリー
当初は貨物の輸送をメインに行うフェリー会社として、1972年に創設されました。函館と青森を結ぶ津軽海峡の航路と、まぐろで有名な大間と函館を結ぶノスタルジック航路もあります。
全てのフェリーはワンちゃんも一緒に乗船可能なメリットもあり、青函トンネルの新幹線とはまるで違う旅路です。
青函フェリー
もう一方の青函フェリーは、共栄運輸と北日本海運が1973年より共同で経営するフェリー会社です。青函トンネルと同じ青函の名を冠しているとおり、青森港と函館港の間で、乗客と車両の輸送をしています。
車で乗り込むときは、ホテル宿泊とのセットプランでも旅行を楽しめます。
車で行くフェリー乗り場
青森市のフェリー乗り場
いずれのフェリー会社でも船に車ごと乗り込む場所は、青森港の西にあるフェリー埠頭の青森ターミナルです。北海道新幹線の新青森駅や、青森市街地のほうからも10分圏内と近いところにあります。
青函トンネルを抜けるより、のんびりした船旅の始まりの場所です。
函館市のフェリー乗り場
もう一方の北海道がわで、車で乗り込むフェリーターミナルが、函館湾を望む港にあります。2つのフェリー会社の乗り場は、青函トンネルへと向かう北海道新幹線の新函館北斗駅や、五稜郭駅にも近い場所です。
一映マリーナを挟んで北側に津軽海峡フェリー、南側に青函フェリーです。
フェリーの内部
フェリーの構造
一口にフェリーと言っても、そのサイズは津軽海峡フェリーで最大級のブルーマーメイドから、中型の大函丸まで、かなりの違いが見られます。フェリーによって車を乗せるフロアの形状や、客室の内部構造も違うのが通常です。
青函トンネルでは味わえない、フェリーの面白さに迫ってみてください。
ブルーマーメイドの内部
代表する最大のフェリーがブルーマーメイドです。総トン数は8,860トンで全長144mと、青函トンネルを通る新幹線を超える迫力があります。車両甲板は3層で、乗用車230台を収容するという広さです。
スタンダード客室の外、バス付きスイート、ドッグルームも揃えているので、動くホテル的な印象です。
就航中のフェリーの定員と車載可能台数
【ブルーマーメイド(津軽海峡フェリー)】8,860トン、定員583名、乗用車230台
【ブルードルフィン(津軽海峡フェリー)】8,800トン、定員583名、トラック71台、乗用車30台
【4代目はやぶさ(青函フェリー)】2,949トン、定員300名、トラック44台
【あさかぜ21(青函フェリー)】2,048トン、定員198名、トラック47台
他多数
フェリー所要時間と利用料金
フェリーの所要時間
いよいよ陸奥湾の青森港より出発、津軽海峡を過ぎて函館港に至るまで、総距離は109kmです。車を載せて航行を初めれば、所要時間は津軽海峡フェリーの大型船の場合はおよそ3時間40分、青函フェリーの場合にはおよそ3時間50分~4時間ほど。
青函トンネルを通過するのに比較し、かなりゆっくりです。
フェリーの料金
利用状況によって、フェリーの料金にはかなりの違いが出てきます。乗り込む世代の種類、部屋の種類、乗り込む期間、車両の種類、バイクを含む輸送荷物の種類などで細分化されているためです。
意外なことに、新幹線で青函トンネルを移動するのと、状況によっては料金的にそれほど大差がありません。
津軽海峡フェリーの料金例(2019年3月3日現在)
【プレミア】大人12,340円~17,730円
【スイート】大人4,940円~7,100円
【スタンダード】大人2,220円~3,190円
【車両(軽自動車)】13,160円~18,920円
【バイク(750cc未満)】2,660円~3,830円
【原動機付自転車(125cc以下バイク)】1,780円~2,550円
【自転車】1,230円~1,770円
青函トンネルを通ってみよう
新幹線や四季島に乗って
深さにしても長さにしても指折りの規模を誇る魅力のトンネルは、無念なことに車やバイクでの走破ができない道のりでした。しかし本州や北海道のがわから、新幹線や四季島といった鉄道を利用して青函トンネルに潜り込むことはできます。
時間を気にしない、フェリーの旅も合わせて考えてみませんか。
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