冬の車中泊は危険と隣り合わせ
冬の寒さは命にかかわる
いくら暖冬とは言っても、寒いものは寒いのです。
冬山登山から日常の普段着まで。多くの人は防寒着を着こんで、暖かい格好をして対策するもの。冬の時期に半袖で居られるのは、暖房が充実しているからです。
逆に言えばそのような暖房グッズなどを身に着けないと、まともに屋外で活動など出来ないわけです。
風をしのげる車内でも・・・
「冬山登山をするというのなら、防寒対策をしっかりしなくちゃいけない」と言うことはわかると思います。では、風を凌げて暖房までついてる車の中なら安心でしょうか?
言うまでもありませんが、風を凌げる車の中でも寒いものは寒いです。平成30年豪雪でも死者が出ており、車の中でも寒さの厳しい冬空の下で過ごすと言うのは厳しいのです。
冬の車中泊にはしっかりとした準備を
これから冬の車中泊をするぞ!という人はもちろんですが、降雪による立ち往生などのリスクに備え、防災という面で車中泊を考えておいても損はありません。
「車の中で行う車中泊」という状況を理解し上手く利用するのが、冬の車中泊のコツと言えるのではないでしょうか。
防寒術の基礎は「空気」
いかに空気の層を重ねるか
冬の寒さ対策として重要なのは断熱です。冷たい空気を遠ざけ、暖かい空気を閉じ込める。こうすることで少ない熱でも効率的に暖まる事ができます。
その断熱のヒントとなるのが「空気」です。実は空気と言うのは熱伝導率が悪く、多くの断熱材はこの性質を利用しています。この空気の断熱は、空気の層を何層にも重ねる事で効果が高くなります。
冬の車中泊の防寒術:防寒着
まずは防寒着を着込むことから
車を暖める前に、まず防寒着を着用しましょう。防寒着に勝るグッズはありません。
防寒着というのは厚手で、空気を含むことで断熱層を作り出してくれます。あとは自分の体温で自然と保温されると言うわけです。
他の防寒グッズと併用する
しかし防寒着を着込みすぎると身動きがとりにくくなります。車中泊をするのに寝苦しくなってしまっては本末転倒。その様な場合は防寒着を減らすしかありません。
防寒着が重ねられなくても、他の防寒グッズと重ねて使う事は可能。防寒着以外の方法で出来る寒さ対策を考えれば良いのです。
冬の車中泊の防寒術:シュラフ
車内で寝るための寝具
車の中に布団などの寝具を用意すると言うのは大変。シュラフなら普段はコンパクト。車中泊の寒さ対策としても、防災グッズとしても使える便利なものです。
3シーズンシュラフも重ねて使える
3シーズンシュラフだと冬は快適温度から外れてしまいます。しかし、3シーズンシュラフにも使い道はあります。1つでダメなら、2つにしてしまえば良いんです。
3シーズンシュラフを2つ重ねると言う方法や、専用のインナーシュラフやシュラフカバー、毛布を重ねても保温性はあがります。
冬の車中泊の防寒術:ガラス
「車があるから安心」というわけではない
車の中であれば雨風は凌げます。これはテントでも同じことです。ですが、車と言うのは熱伝導性の良い素材で出来ています。これは外の冷気が伝わりやすいと言うことです。
例えばガラス。言うまでも無く車の周囲にはガラスがあるわけですが、このガラスを触ってみるととても冷たい。それだけガラスを伝わって熱を奪われたということです。
そして床。車中泊ではここに横になるわけで、触れている面積がとても大きい。ここから体温も体温を奪われていくのです。
冷気は銀マットで遮断する
外からの冷気が伝わってきては寒いのは当たり前。ガラスから伝わってくる冷気を遮断する方法です。
車でも使える断熱グッズとして銀マットがあります。空気を含んだ発砲素材で出来ており、保温目的でよく使われるものです。100円ショップなども扱われており、比較的加工が楽な素材。
これをガラスの形状にカットし、貼り付けることで外からの冷気を遮断します。もちろん厚みがあるほうが断熱性が高く、寒さを防いでくれます。
最近ではアクセサリーパーツとして販売されていることも
車中泊の認知度が高まったこともあり、同じような効果を持つグッズがアクセサリーパーツとして存在する車種も増えてきました。
当然その車専用設計のグッズなので相性はバツグン。また冬だけでなく夏でも使えるように、メッシュによる網戸として機能するものもあります。
冬の車中泊の防寒術:底冷え
キャンプでも用いられる銀マット
窓でも使用した銀マットですが、床からの底冷えも防いでくれます。
こちらに関しては、就寝用に設計された専用の物が厚手でおすすめです。
エアーマットレスで更に寝心地良く
厚手の銀マットというのは嵩張りますので、車内に持ち込みにくいこともあるでしょう。しかし、薄手のものでは寒さ対策としては不安が残ります。
その様な場合は空気で膨らませるエアーマットレスを使うといいでしょう。コンパクトな空気注入形や、中のウレタン等で自動で膨張するインフレータータイプなどがあります。
インフレータータイプなら銀マット不要の場合も
中にウレタンを挟みこんでいるインフレータータイプのマットは、それ自体が空気の層を重ねている物です。つまりこれ自体が断熱材として機能するのです。
膨らんだときにより厚手である方が断熱性が高く、寝心地も良くなります。
暖かい食事を取る方法とは?
食事で積極的に暖をとる
ここまでは寒さを防ぐという方法が主でしたが、積極的に身体を暖める方法として食事。いわゆる車中飯についても考えてみたいと思います。
冬の寒い中で温かい食べ物を食べる。当然美味しいと感じるわけで、身も心も満たされます。温かい物を口に入れるというのも身体を暖める手段の一つなのです。
車内で調理する事のハードル
車の中なので、キャンプと違って盛大に火起こしはできません。燃焼によって火災や一酸化炭素による中毒のリスクもあるからです。また燃料によっては臭いも気になります。なので、火を使う場合は換気を行いつつ短時間。燃料も臭いが出ないものが好ましいです。
電気を使うと言う方法もありますが、シガーソケットから取り出せる電力は120-180W程度。ポータブル電源を持っていくという方法もありますが、いずれにせよ消費電力は少ない物を選ばなくてはなりません。
目標は「お湯が沸かせる」こと
そんな制約のある車内での調理。その中で食べるのは手作り料理か、インスタントやレトルト食品か。どのような食事にするのかは人それぞれですが、冬の車中泊の中で食べる料理ですから、温かい料理が望ましいわけです。
食事で身体が暖かいと感じる事が必要とされているのですから、お湯を沸かす程度の事が必要となります。
車内での調理器具の選び方:①電気
電源はポータブル電源がおすすめ
車内にはシガーソケットが付いていますが、ここからの電源供給に頼るのはおすすめしません。バッテリー上がりの原因となりますし、それを避けるための長時間のアイドリングなどはマナー違反となります。
車中泊でおすすめなのがポータブル電源。ポータブル電源であればAC100Vコンセントの製品を使用することも可能。車のバッテリーとは独立したシステムであり、キャンピングカーなどに見られるサブバッテリーシステムよりも楽に導入できます。
シガーソケットでお湯を沸かす
シガーソケットは12Vで10-15Aのヒューズが付いています。これを電力にすると120-180W程度。ヒューズ切れを考えるなら、使える電力は100Wを下回るかと思います。
そんな少ない電力でお湯を沸かせる製品の一つが「直流湯沸器 ワクヨさん」です。一度に400ml程度、沸騰までに30分程度かかりますが、それでもお湯を沸かすという目的はしっかり達成しています。またワクヨさんは温度設定機能があるので、飲み頃の程よいお湯を作ると言う事もできます。
シガーソケット使える炊飯器
シガーソケットで使える炊飯器もあります。「直流炊飯器 タケルくん」もそのひとつ。ワクヨさんと同じメーカーが製造しています。
炊飯器ということは、煮込み系の料理なんかも可能。また別売りの「多機能蒸器 ムスヨ婆さん」を使う事で、タケルくんでの調理の幅が広がります。
海外旅行用の電気調理器具
IH調理器になると消費電力が1000Wクラスというのも珍しくありません。そんな大電力を車内で使うのは難しい。そこで注目されるのが、海外旅行用のヒーター式の電気調理器具。元々は電力事情の不安定な場所でも使える事を目的とした物。「ヤザワ トラベルクッカー」「カシムラ ワールドクッカー3」などが主に流通しています。
トラベルクッカーのほうはポータブル電源での消費電力が300Wほど。火力はある分消費電力が高いので、使えるポータブル電源を選ぶ必要があります。ワールドクッカー3の方は200を少し超える程度で、長時間の使用などにも向いています。
車内での調理器具の選び方:②ヒートパック
発熱剤を使って食品を温める
身近なところでは温め機能の付いたお弁当などにも用いられているヒートパック。それをアウトドアや災害時でも活用できるように製品化した物のひとつが「モーリアンヒートパック」です。ヒートパック自体は単品でも購入可能で、これを利用した他の防災用品も存在し、自衛隊などへの納入実績もあります。
使い方は発熱剤と水を袋の中に入れるだけ。発熱剤が水と反応する事で熱を出し、その熱で温める仕組みです。
お湯を沸かすならアルミ容器などを使う
食品だけでなく飲料水なども温める事が可能。中身が入った容器をそのまま袋の中に入れて温めるだけです。
容器としてはキャップ付きのアルミ缶が使えますが、湯沸し用の専用のアルミパックも別売りで販売されています。コンパクトに収納したい場合はアルミパックの方が良いと言えます。
車内での調理器具の選び方:③アルコール固形燃料
室内向けの燃料を選ぶ
電気やヒートパックのようなものを使わないのであれば、やはり何かしらの燃料を燃やすという方法になっていきます。燃料にはいくつか種類はありますが、臭いなどの発生は避けたいところです。
その室内で使える燃料の一つがアルコール固形燃料。旅館などで一人用の鍋料理などを提供する際にも使われているもので、臭いなども少なくて室内向けの燃料として使われています。またアウトドア向けの非常に大きな五徳も付いた固形燃料の缶というのもあります。
五徳はエスビットのポケットストーブがおすすめ
持ち運びに便利な五徳として、「エスビット ポケットストーブ」があります。
ポケットストーブに付属してくるタブレット固形燃料は有害なシアン化水素などを発生し、臭いもある屋外向けの燃料となります。ですが、そのコンパクトなストーブはアルコール固形燃料を扱う上でもちょうど良い大きさです。
車内での調理器具の選び方:④アルコール
燃料用アルコールを使う
キャンプなどでも用いられる燃料として燃料用アルコールがあります。こちらは固形ではなく液体の物です。
アルコール固形燃料と同様に臭いが少ないのが特徴で、その点では室内向けと言えます。
オールインワン設計なら「アルポット」
アウトドアで燃料用アルコールを使ったストーブというのは他にもあります。もちろんそれらを揃えても良いと思いますが、アルコールストーブは単体では使えません。クッカーや五徳や風防なんかも揃えて初めて機能するのです。
アルポットは湯沸しがメインのグッズで、ほぼそれだけに特化。焼き料理などには不向きでサイズも大きいですが、安定感が高くて消火も楽で扱い易いというメリットがあります。
車内での調理器具の選び方:⑤ガス
野外での湯沸しの定番
室内でも使える燃料として便利なのがガス。中でもボンベに充填されたガスを使用するシングルバーナーなどは屋外の使用も想定されており、火の加減も調整できる点でも便利で扱い易いです。
湯沸し特化なら「ジェットボイル」
様々な製品が出ていますが、難しく考える必要はないといえます。アウトドア用品としてのシングルバーナーは持ち運びに便利ですが、扱いやすさを考慮して卓上コンロでもいい訳です。
強いて言えば、湯沸しに特化した製品としては「ジェットボイル」があげられます。特クッカーが熱を効率よく吸収し、短時間でお湯を沸かす構造となっています。
冬の車中泊での暖房事情
冬の車中泊での暖房は局所暖房
テント泊であれば薪ストーブを導入すると言う方法もありますが、車中泊では煙突などの設置が困難。車内で延々と何かを燃やし続けると言うのは、一酸化炭素中毒のリスクが高まります。
車内全体を暖かい状態にするというのは、非常に効率が悪いと言えます。基本的には防寒対策を重視します。その上で身体の一部分を温めるような暖房グッズを使う事になります。
冬の車中泊で使える暖房:①使い捨てカイロ
どこでも買える入手しやすさ
寒い季節になると使われるのが使い捨てカイロ。防寒着と同様に、冬の寒さ対策としてお世話になっている人も多いはず。
大きさや形状も様々で使いやすいです。また最近では高発熱の製品も販売されるようになりました。
身体を暖めるツボに貼ると効果的
使い捨てカイロの便利なところは大きさや形状の幅が広いところ。薄いので背中に貼っても違和感が少ないのです。
そんな使い捨てカイロは太い血管が通っている場所やツボの部分に貼ると効果的です。良く知られているのが首筋、そこから少し下がったところである肩甲骨の間や腰などにツボがあります。
冬の車中泊で使える暖房:②オイル式カイロ
極寒の地でも暖かい 信頼性の高い防寒グッズ
今でこそカイロは使い捨てが主流。ではそもそも使い捨てじゃないカイロとはなんだ?と言われれば、オイル式カイロ。「ピーコック ハクキンカイロ」「ジッポー ハンディウォーマー」などが販売されています。燃料はベンジンやライターオイルなど。これを白金触媒による触媒反応で発熱させます。
寒い場所でも使える高い信頼性もあります。南極であってもオイル式カイロは発熱するほどなので、暖かいを通り越して熱いぐらい。また燃料となるベンジンなども薬局やホームセンターで取り扱われており、入手しやすいです。使用時間も10時間以上は持ちますので、一晩中暖かい状態で使う事ができます。
シュラフの中に入れて使う
オイル式カイロの便利なところは、その発熱量です。触媒部分は使い捨てカイロとは比べ物にならない程熱くなりますし、またその反応も簡単には止まりません。
またサイズ的にも大きくないので、冷えを感じやすい足元を暖める上での違和感が少ないです。
冬の車中泊で使える暖房:③湯たんぽ
お湯さえあれば良いと言う便利さ
お湯を沸かせるのであれば湯たんぽが便利。湯たんぽは様々な大きさや材質の物が販売されていますが、車中泊であれば小さい物を複数個用意したほうが使いやすいかと思います。
好みの温度で使える
湯たんぽの便利なところは、入れるお湯の量や温度で調節が可能な点。カイロと違って化学反応をさせていないので、タオルなどで包んでも発熱が止まる事はありません。
冬の車中泊で使える暖房:④電気毛布
ポータブル電源を活用
車中泊ではポータブル電源があると、とても便利。電気毛布もポータブル電源を使って使える便利なグッズと言えます。
電気毛布の消費電力は30-50Wh程度。300Whの容量を持つポータブル電源なら6-10時間持つことになります。また床に敷いて使うので、これ自体が底冷え対策として機能します。発熱量も細かく調整でき、低温火傷などのリスクも回避しやすくて扱い易いです。
HV車のバッテリーは使えないのか?
寒い場所は苦手 途中でアイドリングすることも
結論から言えば、ハイブリッド車などの大容量バッテリーを当てにするというのは難しいです。
車の暖房は主にエンジンの廃熱を利用した物。電気自動車の場合は、電気を暖房に用いているのですが、その場合の効率は良くありません。つまり「電気で車内を暖めるだけの温風を出す」と言うのは無理があります。
そしてバッテリーは低温を苦手とします。低温でバッテリーを使うと、そのバッテリーを暖めるためにエンジンが始動すると言うことも。結局エンジンの熱を利用するのであれば、それはエンジンを暖房に使うのと同じ事です。
キャンピングカーはなぜ冬でも暖かい?
車中泊に特化した装備
キャンピングカー自体が車中泊に特化した物と言えます。
まずサブバッテリーシステムによる電力確保。これによって車のエンジンやバッテリーに依存することなく、電化製品が仕えます。つまりエアコンも使おうと思えば使えると言う事です。
より寒い場所ならFF式ストーブ
ではエアコンでも寒い場合はどうするのか?その様な場合は燃料を燃やして暖を取ります。使用される暖房はFF式ストーブとなります。
FF式ストーブでは外から燃焼に必要な空気を取り込み、燃焼によって発生する排気ガスは外に排出しています。暖かい熱だけは車内に取り込みますが、有害な排気ガスなどは全て車外と区分けされています。
冬の寒さ対策をして、暖かい車中泊を
車中泊で重要なのは睡眠。車の中で眠るから車中泊なのです。冬の寒さと言うのはその眠りを妨げるもの。寒さに耐え切れず目が覚めてしまう…せっかく楽しい思いをするために車中泊をしているのに、これでは台無しです。冬の車中泊での寒さ対策は暖かく快適な眠りにつくためには必要不可欠です。
狭い車内で暖を取るという行為は、火傷などのリスクが高まります。狭い車内で行う事ですから、火の取り扱いには十分注意する必要があります。その事を十分に理解して、冬の車中泊を暖かい形で行ってください。
車中泊グッズが気になる方はこちらをチェック!
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