はじめに
日本には沢山の毒虫がいます、その中でも最もメジャーなのがスズメバチでしょう。スズメバチは獰猛で毒が強い物が多く、また毒の量も多いので処置が遅れると命に関わる場合があります。そんなスズメバチの生態を含め、出会った時の対処法や出会わないための対策、そして応急処置などご紹介します。
スズメバチとは
ハナバチの仲間であるミツバチと異なり、スズメバチは他の虫に卵を産んで寄生したり、ベッコウバチの様に単独で狩りを行う狩りバチの仲間から進化したと考えられており、肉食性の強いハチです。例えば大型のスズメバチが小型のスズメバチを好んで捕殺したり、特定の獲物しか狙わない種がいるのもこの進化の過程が有ったからでしょう。
スズメバチの種類
スズメバチというと、海外でも日本にはオオスズメバチと呼ばれる獰猛なスズメバチが生息していることが知られています。その他にも毒性の強い物や、気の荒い種類など様々なスズメバチがいるので見ていきましょう。種類を知ることによってスズメバチ害の予防にも繋がると思います。対処法はほとんどの種で共通しますが性質が少し異なるので予防方法は少し異なります。
オオスズメバチ
日本でも年間10~30人ほどの死者を出すことがある凶暴なスズメバチで、場所により様々な対策が取られていますが、最近では都市部でも巣を作ることが問題になっていますね。体が大きく、ときには数千匹にもなるミツバチの群れを壊滅させる事でも知られています。大きく毒の強さや量が多いので最も危険なスズメバチだと認識されています。予防できれば予防したいスズメバチですね。
キイロスズメバチ
キイロスズメバチはスズメバチの中でも気が荒い種類として知られています。巣に近づくと4~5匹で追いかけてくる事が多く、都市部でも巣を作ります。特に問題なのは旺盛な繁殖力で、1年で一つの巣から千匹以上の女王バチを産出することもあるようです。2~2.5センチほどのサイズで色がオレンジがかったキイロであることが特徴ですね。服装が黒でなくとも襲われる事が多いので出来るだけ出会わないようにした方が良いでしょう。
コガタスズメバチ
コガタスズメバチは西日本や沖縄などに多く見られる南方系のスズメバチで、駆除件数などもキイロスズメバチを上回る場合があるようです。コガタとつきますがキイロスズメバチよりやや大きく、色が茶色がかったオレンジで、スズメの様な色合いをしています。国外ではジャワやシンガポールにいるそうなのですが、日本にも多いので対策が必要ですね。予防法や性質などもキイロスズメバチと同様です。
ヒメスズメバチ
ヒメスズメバチは少し特殊なスズメバチで、見た目はいかにも恐ろしい正にスズメバチと言った感じですが、気が荒い種類ではなく毒性もそれほど強くありません。どういった部分が特殊かというとアシナガバチを食べるハチであるという所です。スズメバチは普通雑食ですが、ヒメスズメバチはアシナガバチの幼虫を捕食します。予防には触れないようにする事と巣に手を出す事が無いようにする事ですね。
モンスズメバチ
モンスズメバチはコガタスズメバチと同サイズのスズメバチで、獰猛な所もコガタスズメバチに似ています。その他の生態もよく似ているのですが、閉鎖空間に巣を作るのであまり見かける事がありません。人間の汗の匂いやフルーツの匂いにも強く反応するので危険なスズメバチですね。腹部の模様が波打つのが特徴です。山歩きの時の予防にはフルーツ系の甘い飲み物を避けるのが良いでしょう。
クロスズメバチ
ミツバチほどの小さいスズメバチで、ほとんど人を刺す事がありません。とはいえ触れると刺される事はあるので注意は必要です。対策としては軍手を利用したり、猟の時には素早く目印を付けることですね。地中に巣を作ることが特徴で長野県などでは高級食材でもあります。樹液や花の蜜から、コオロギなどの虫まで様々な物を食べる雑食です。
チャイロスズメバチ
名前のとおり色が茶色いスズメバチで、攻撃性がかなり高い種類です。ただ数が少なく、特殊な生態を持ちます。チャイロズズメバチの女王は他のスズメバチの巣を女王を殺し、巣を乗っ取ります。そして働き蜂に自分の子供を育てさせ、結局その巣はチャイロズズメバチの巣になります。他の寄生バチと共存しながら他の種の巣を乗っ取ることがあるのも面白い所です。
ツマグロスズメバチ
南方系のスズメバチで、腹上部がレモン色になっていることが特徴です。頭と胸が赤茶色で、下腹部はツマグロの名前のとおり黒色です。他のスズメバチが少ない地域にいるからか他の蜂と争う事はあまりありません。ハイビスカスやパイナップル畑などでみられるスズメバチです。特徴のある見た目で派手なので予防や対策がしやすいハチですね。
ツマアカスズメバチ
外来種で対馬などに侵入してきているスズメバチです。雑食でオオスズメバチの様にミツバチの巣を襲う事が問題になっています。繁殖力が高いので根絶が難しく今後も対策が必要ですね。ただ、それほど量を食べる種類ではないのですぐに甚大な被害が起こるわけでは無いでしょう。
スズメバチの特徴
スズメバチは社会性が最も発達したハチの一つで大きな巣を作る傾向が高い事が特徴です。雑食性のものが多いですが、ミツバチを補食するだけでは無く同じスズメバチ科のアシナガバチなどを補食したり、大型種が小型種を捕食することが多いのも特徴ですね。ミツバチと違い毒針を一度使って死んでしまうことはなく、さらに口から毒液を噴射する場合もあり危険ですね。薄手の服装だと服を貫通する事が多いです。冬は女王バチのみ越冬します。
スズメバチの毒の成分
スズメバチの毒成分は炎症作用が特徴のヒスタミンや神経毒であるセロトニン、アセチルコリンなどの他にホーネットキニン、マンダラトキシン、ベスパキニン、マストパランなどのペプチド、それからホスホリパーゼやプロテアーゼなどのタンパク質を多く含みます。このうち数種がアナフィラキシーショックの原因になるためとても危険です。
スズメバチの生態
スズメバチの幼虫の生態は、肉食性が強く、成虫が昆虫や動物の死体などから肉を持ち帰り肉団子にして幼虫に与えるという生態を持ちます。成虫の生態は幼虫が分泌する汁を主食にするという話しが通説です。種類による生態の違いとしては巣だけではなく餌場を守る種類もおり、大型昆虫と餌場を争う事もあります。
スズメバチの成長期間
スズメバチは卵で4~7日過ごして孵化します。初令から4回の脱皮で5令幼虫となり、5令幼虫は成長するとエサを欲しがらなくなり、巣穴にフタをしてサナギになります。サナギは2週間ちょっとで羽化し、成虫になります。卵から成虫になるまでの期間は1ヶ月~1ヶ月半ほどになります。対策をするのであれば成虫の少ない春が良いでしょう。
スズメバチの発生時期
スズメバチの発生時期は3月~12月までの間で、キイロスズメバチの発生時期が一番長く5月から10月に発生するチャイロズズメバチが一番時期が短くなります。最も危険とされるオオスズメバチの発生時期は4~10月で、春は女王バチが1匹で冬眠から目覚めて巣作りをはじめます。
一番危険な時期
スズメバチの最も危険な時期は、女王バチが巣作りをする時期と成虫が増えて大きな群れになる秋の時期だとも言われていますが、実際には春はおとなしく働き蜂たちがエサを活発に集める7~10月が最も危険です。夏休みなどで人間とスズメバチが出会いやすい時期にも重なるので注意が必要です。
スズメバチ対策:巣に近づかない
スズメバチに限らずハチの仲間は生態的に巣に執着する種類が多く、巣に近づくことによって攻撃を受ける可能性が高まります。予防としてスズメバチの巣に近づかない事が一番であり、出会わなければ刺されることはありません。
スズメバチの巣の場所
スズメバチの巣は、中型種の場合は自然が多い所の街路樹などにも作る場合がありますが、多くは木のうろなどの閉鎖空間に巣が作られます。種によっては土の中などに作りますが、最近では窓やベランダの近くなどひとけの多い所に巣が作られている場合があります。出来れば早いうちに駆除することが一番の対処法です。
スズメバチ対策:匂いに注意する
森を歩いていると酸っぱい様なトウモロコシや黒糖に近い匂いがすることがあります。それは樹液の匂いなので、樹液に集まり易いオオスズメバチには注意しましょう。生態的に餌場を守る習性があるのでとても危険です。夏になるとクワガタやカブトムシなどを捕りに行くことがあるかも知れませんが、スズメバチには要注意ですね。
樹液場で出会った時の対処法
虫取りなどでスズメバチに出会った時の対処法は、スズメバチがコチラに気付くと一瞬動きを止めるので、コチラも慌てずに動きを止めましょう。走って逃げると追いかけられるのでゆっくり立ち去ります。ただ、スズメバチが先に飛び立ってきた場合には逃げるか撃退するしかありません。ハチ撃退スプレーを常備しておくのも良い対処法ですね。
スズメバチ対策:音に注意する
スズメバチの仲間は羽音が大きい物が多く、ブーンと音が聞こえた時には注意すると良いでしょう。更に、生態的に威嚇時にもカチカチと顎を鳴らす習性があるので、その音が危険信号になります。オオスズメバチともなると羽音がカブトムシやカナブン並に響くのですぐに気付くと思います。
一番の対策は木になりきること
飛んでいる最中のスズメバチは刺激しなければ襲ってくることはありません、もし耳元で羽音がしたときには木になりきるつもりで動きを止めると良いでしょう。肩に止まることはありますが刺されたことはありません。威嚇音がした場合にだけは急いで逃げるのがベストの対処法かも知れません。
スズメバチ対策:服装に注意する
一般的に山歩きの時などは長袖長ズボンという服装が多いですが、半袖などの服装だと追いかけられた時に守れる物がないので危険ですね。それから汗の匂いにも反応するというのも露出が多い服装がNGな理由です。一応一般的にも網付きの帽子が販売されているので、そういったもので服装を整えるのも良いかも知れません。
ハチクマとスズメバチの関係
ハチクマというハチを補食する鳥がいますが、このハチクマはハチの毒針に対して硬く分厚く重なった羽で対処しているので、スズメバチでさえ恐れて逃げまどうとされています。厚着の服装をするだけでも良い対処法だとは思いますが、革製品などを服装に取り入れるのも良いかも知れません。厚い時期には服装よりもやはりスズメバチに出会わない様にするのが一番の対処法ですね。
スズメバチ対策:色に注意する
スズメバチは生態的に攻撃態勢に入るとまず黒色を標的にする性質があります。それは動物の弱点の目や鼻などが黒色のものが多いからだと言われますが、黒色を見ただけで怒るわけではないので安心して下さい。ただ、偶然危害を加えてしまい襲われることもあるので、予防という観点からも黒は避けた方が良いでしょう。
黄色のデメリットと対策
スズメバチの予防に黒以外の服装をする場合にはよく黄色の服装が良いとされていますが、理由は黄色はスズメバチを刺激せず、また尚且つ遭難しても特徴的な目立つ色なので見つけてもらい易いという利点があります。ただ、春~夏の場合にはアブラムシの大群に張り付かれやすいという欠点があります。アブラムシを気にする場合には黄色以外の白などの色にすると良いでしょう。
スズメバチ対策:香水を付けない
スズメバチ対策として、出会わない事の次に大事なのが香水を付けない事です。スズメバチは臭覚が鋭く、汗や香水の匂いに警戒心を抱きやすいとされています。特にシトラス系の匂いに敏感な様なのでボディフレグランスやシーブリーズなどの匂いも危険ですね。
どうしても香水を付けたい場合の対策
どうしても香水を付けたい場合にはシトラス系などのフルーツ系を避けるのがスズメバチ予防に繋がります。スズメバチの警報フェロモンに近い匂いはリンゴやバナナなどにも含まれていることが知られていますね。また、フルーツ系の匂いの他にも揮発性の高いアルコール類も良くないのでアルコールを含まない香水を利用すると良いでしょう。
スズメバチ対策:小さいうちに駆除する
春~初夏までの巣が小さいうちは働きバチがいないので駆除するにはうってつけです。例えば私自身も7月頃にスズメバチを駆除しましたが、その頃はまだ成虫が5匹程度で幼虫も30匹程だったので、7月頭までの時期であれば群れで襲われることも少ないでしょう。巣が大きくなると数百から数千匹にまでなるので危険ですね。
駆除の方法と対策
スズメバチは巣を破壊しなければ少数ずつ働きバチが出てくる事が特徴です。なので出来るだけ巣を破壊しないように駆除すると安全ですね。よくあるやり方は煙で燻して成虫を散らしてから駆除する方法がありますが、これは専門の道具などが販売されているので道具を購入して行うのがおすすめです。民家の場合には隣近所に匂いや煙が蔓延するのできちんと許可を取ってからやるといいですね。
刺された時の応急処置:病院へ行く
スズメバチの対処法で最も大事な事は一刻も早く病院に行くことです。毒が多いオオスズメバチなどに刺された場合は1回刺されるだけでも致命的になる場合があるので注意が必要です。また、アナフィラキシーショックの疑いも出てくるので絶対に我慢してはいけません。病院に行けば適切に処置してもらうことが出来ます。
アナフィラキシーショックとは
アナフィラキシーショックとは免疫が過剰反応して起きてしまうアレルギー反応で、短時間に激しい症状が現れます。呼吸困難などが起こるので命に関わりますね。刺されて15分ほどで症状が出るので症状が出る前に病院に辿り着けると良いでしょう。1度刺されたことがある人がなり易いという特徴がありますが、実際にはあまりかかる人はいません。ただ、ハチだけで無くサバやカシューナッツなど食べ物が原因で起こる場合もあります。
刺された時の応急処置:水で流す
応急処置としては水で流すというものが挙げられます。スズメバチの毒はタンパク質で出来ているので水に溶けやすく、水で流すという対処法も有効です。ミツバチと異なり針が残っている場合はほとんどないので、ポイズンリムーバーなどで毒を吸い出してから水で流すと良いでしょう。アンモニアは意味がないのでやめましょう。
口で吸い出すのは良くない
口で吸い出すという処置が思いつくかとは思いますが、スズメバチは毒は水に溶けやすい特徴があるので吸い出すと口に毒が回る場合があります。痺れだけなら良いですが、タンパク質を溶かし神経毒を染みこませるための配合になっているのがスズメバチ毒の特徴なのでとても危険です。対策として口で吸い出すよりは手で強く絞り出すの法が処置の仕方としては正しいですね。
刺された時の応急処置:薬を使う
スズメバチの毒で最も辛いのがかゆみです、痛いのにかゆいのは最悪ですよね。そのかゆみはヒスタミンから来る物が多いので、対策としてムヒなどの抗ヒスタミン剤を含む薬を用意しておくと良いでしょう。アナフィラキシーショックに対しては医師にエピペンが処方されている場合には早めに利用するようにすると良いでしょう。
温める事も大事
蚊の場合も同じですが、タンパク質が毒成分に含まれる場合には、新しい処置方法として42~45度ほどのお湯で温めるとタンパク質が変性して毒性が失われることが知られています。従来の処置法にあるように毒の回りを遅くするために冷やす事も大事ですが、流水やポイズンリムーバーで痛みが抜けない場合は最後の手段として温めて毒を分解する処置方法があることを覚えておくと良いでしょう。
まとめ
スズメバチにはオオスズメバチからツマアカスズメバチまで沢山の種類があります。ヒメスズメバチだけはそれほど危険がないようですが、わりと小型のキイロスズメバチやコガタスズメバチなどの危険度が高いようですね。クロスズメバチの様に食用に好まれる種類があるのも面白いですね。対処法としては出会わないこと、香水を付けないことが第一で、応急処置には流水やポイズンリムーバーの後に温めるのも有効です。アナフィラキシーショックの疑いがある場合には15分いないに病院に駆け込みましょう。
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