九重山はどんな山?
九州大分県の名峰「九重山」
名峰「九重山」は、九重連山とも言われ、九州の大分県玖珠郡九重町(ここのえまち)から大分県竹田市久住町(くじゅうまち)北部に至る山塊の総称です。多くの登山者が利用する登山口の牧ノ戸峠や長者原は大分県玖珠郡九重町ですが、多くの登山者の目標地点となる久住山や中岳は大分県竹田市になりますので、はじめて訪れる場合、地図を用意する場合は、九重町の地図、竹田市の地図双方を用意しておきましょう。
阿蘇くじゅう国立公園の一部
九州を代表する、もう一つの山岳であり百名山の「阿蘇山」が近くにあり、一帯は「阿蘇くじゅう国立公園」として指定されています。阿蘇から九重山まで広大草原が続いており、やまなみハイウェイでドライブすることができるため、全国でも有数の観光地となっています。全国から来訪する登山者は、阿蘇と九重山をセットで登山する方が多いようです。
九重山は初心者でも楽しめる山
九重山は、九州本島の最高峰中岳を有する山塊ですが、最高地点の中岳でも1791メートルで、各登山口からのアプローチも、2時間から4時間程度とそれほど難易度も高くなく初心者でも楽しめる山です。初心者でも上りやすいとは言え、年に数回は、道迷い遭難は起こっています。必ず登山地図を用意して登山するようにしましょう
標高は高くないが雄大な眺め
前述のとおり、標高は高くはありませんが、火山帯独特の岩盤による複雑な地形と、火山ガスにより高木が少ないことにより、どこも眺めがよく、特に尾根道では3000メートル級の岩稜帯と錯覚するような雄大な眺めの中、トレッキングが楽しめます。
高木により遮られないので、ピークに立つと登山地図通りの地形が確認できます。
日本百名山の名峰のひとつ
九重山は、全国各地の名峰を著述した、深田久弥の著書「日本百名山」でも百名山の名峰のひとつとして紹介され、全国から登山者が訪れます。そのため、多くの登山地図が発売されていますので、地図の入手は簡単です。また、WEB上の登山地図サービスでも詳細に紹介されていますので、地図に困ることはありません。
九重山は1年中楽しめる山
春から初夏:九重山をピンクに染めるミヤマキリシマ
3月頃からスミレやショウジョウバカマなどの山野草が咲き始め、6月、ツツジの仲間であるミヤマキリシマが九重山の名峰をピンクに染め上げます。山肌を覆うほどのミヤマキリシマは見事で、近年は海外からも登山者が訪れています。
夏:坊がつるで満天の星の下、夏山キャンプ
気温が高い九州大分ですが、標高が高い九重山では、さわやかな風が吹きます。九重山の中腹にある「坊がつる」は広い草原と湿地帯になっており、キャンプ場でもあります。夏は、登山者がここまでテントを担ぎキャンプし、夜は満天の星を楽しんでいます。
秋:名峰を彩る紅葉
九重山の紅葉は、九州各地の中でも一番早く、10月中旬から下旬には見ごろを迎えます。九重山の名峰が燃えるような赤や黄に彩られ、麓ではススキが風に揺られ見事な大自然を満喫することができます。
冬:真冬でも気軽に冬山を満喫
九州大分で標高1700メートル程ということで、真冬でもそれほど積雪はありませんでしたが、近年の温暖化でますます積雪が少ない傾向ですので、真冬でも、軽アイゼン程度の装備で登山することが可能です。登山口付近の道路もよく除雪されていますので、スタッドレスタイヤやチェーンがあれば問題なくアクセスできます。
九重山登山のおすすめ「法華院温泉山荘」
各登山口から2時間程度で、大分県竹田市久住町にある温泉「法華院温泉山荘」にたどり着くことができます。ここは、ラムサール条約に登録された「坊がつる」と言われる湿地帯の向こうに大船山や平治山などの九重の名峰を眺めながら温泉につかることができます。宿泊や食事もできますので、ここを拠点に連泊して九重山を満喫する登山者も多いようです。
なお、車でアクセスすることはできませんので、静かな山の中で、温泉で癒されたい人にはおすすめです。
九重山?久住山?正式な名前は?
ここまでの文章の中で、山名として「九重山」「九重連山」「久住山」、町名として「九重町」「久住町」などが出てきたので、混乱している方も多いのでは?このややこしい呼び方をご説明します。
九重山という山は無いが久住山は有る
九重山(くじゅうさん)は、山塊の名称で九重山というピークはありません。ですので、わかりやすように「九重連山(くじゅうれんざん)」と呼ぶことがあります。つまり、九重山=九重連山となります。「くじゅう」という名前の山は「久住山(くじゅうさん)」で、1782メートルの九重連山では中岳に次ぐ標高の山です。
九重町(ここのえまち)と久住町(くじゅうまち)
九重連山は、大分県玖珠郡九重町(ここのえまち)から大分県竹田市久住町(くじゅうまち)にまたがる山塊というのはご説明しました。九重山は「くじゅう」と読みますが、大分県玖珠郡九重町は「ここのえ」と呼ぶことに注意してください。また、久住山は「くじゅう」ですが、大分県竹田市久住町は同じく「くじゅう」です。ややこしいですね。
最近は「くじゅう」表記が多くなった
まとめると、
1.九重山は山塊名で九重連山と同意。
2.久住山は山名。九重山という山は無い。
3.九重町は「ここのえまち」。久住町は「くじゅうまち」。
ということになります。
間違える人が多いので、最近では、登山地図などを中心に、ひらがな表記の「くじゅう連山」との表記が多くなってきています。
九重山へのアクセスは?
九重山には、多くの登山口がありますが、ほとんどの方が利用する「長者原登山口」と「牧ノ戸峠登山口」のアクセスをご紹介します。公共交通機関は本数が少なく、不便ですので車でアクセスする方がほとんどです。
公共交通機関の場合
長者原登山口
JR由布院駅より、熊本行き九州横断バスで、くじゅう登山口バス停を下車すると、そこが登山口です。所要時間およそ50分です。
JR熊本駅からは、バスセンターより、別府行きの九州横断バスがありますが4時間程度かかるのでおすすめしません。
牧ノ戸峠登山口
長者原登山口への行き方と同じです。くじゅう登山口バス停の次が牧ノ戸峠バス停で10分程度です。
車の場合
長者原登山口
車でのアクセスが一番しやすい登山口です。大分自動車道の九重(ここのえ)ICより、約30分で長者原登山口駐車場へ到着します。500台ほど駐車可能で、満車になることは、ほとんどありません。
牧ノ戸峠登山口
大分自動車道の九重(ここのえ)ICより、約40分で牧ノ戸峠登山口駐車場へ到着します。それほど広くもないため、休日の朝には満車になることが多く注意が必要です。
九重山の登山口情報
九重山の代表的な登山口をご紹介します。
長者原登山口
九重山登山と言えば、この登山口です。広大な駐車場があり、レストハウスやビジターセンターなどがあり、ラムサール条約に登録された「タデ原湿原」があるため、観光客も多い場所です。
ここを起点にすれば、久住山や中岳、三俣山、大船山など多くの名峰に登山することができます。
牧ノ戸峠登山口
多くの登山者が目指す久住山や中岳への最短ルートであり、標高差が少ないので人気の登山口です。ここからであれば、それほど登らずとも、気持ちのいい尾根歩きが楽しめるため、初心者を中心に人気があります。
九重山の登山ルート(コース)は?
九重山は、多くの登山ルート(コース)が、登山口から2時間から4時間程度であることや、それほど標高差がなく危険な箇所が少ない事により、多くのルート(コース)が初心者でも楽しめるようになっています。ここからは、筆者が実際に歩いたおすすめ登山ルート(コース)をご紹介します。
九重山登山ルート(コース)1:牧ノ戸峠~中岳
体力度:★★☆☆☆
所要時間:往復6時間
九重山で最も多くの登山者が歩く代表的なルートです。それほど標高差がなく、久住山も、最高峰中岳も楽しめるため、初心者からベテランまで楽しめるコースです。最初の沓掛山までが急ですが、その先はなだらかなアップダウンで、一か所はしごを使う箇所がありますが、それほど難しくはありません。初めての九重登山にはおすすめのルートです。時間があれば、星生山(ほっしょうさん)も経由してみましょう。
ガス(霧)に注意
遮るものがない尾根道なので、ガス(霧)に覆われると見通しがかなり悪くなりますので、天候が悪いときは避けるのが無難です。
九重山登山ルート(コース)2:長者原~中岳
体力度:★★★☆☆
所要時間:往復7.5時間
牧ノ戸峠からの登山が主流になる前は、このルートが主流でした。標高差が比較的あり、所要時間も長いですが、体力があり、じっくり九重登山を楽しみたい方におすすめです。距離は長いですが、標識や登山道はしっかりとしているため、初心者にもおすすめです。
北千里浜は速やかに通り抜けましょう
スガモリ越を超えて、久住わかれへ向かう途中は北千里浜と言われるくぼみを通ります。ここは、風向きによっては、火山ガスがたまりやすいので、できるだけ速やかに通過しましょう。
九重山登山ルート(コース)3:吉部~大船山
体力度:★★★★☆
所要時間:往復8時間
登山者が少ない吉部から大船山(たいせんざん)を目指すルートです。途中、暮雨の滝(くれさめのたき)や、坊がつるなど、自然豊かな登山を楽しめます。法華院温泉山荘の近くを通るので、1泊すれば余裕を持って歩くことができます。吉部登山口へのアクセスは車のみで、駐車場は有料です。
特に秋の大船山山頂直下の御池の紅葉は見事です。
大船山は滑りやすいで注意
九重山は火山灰による粘土質なので、どこでも滑りやすいですが、大船山の斜面は急で特に滑りやすくなっています。ストックなどを使いバランスを確保して歩くようにしましょう。
九重山登山ルート(コース)4:男池~平治山
体力度:★★★☆☆
所要時間:往復6時間
湧水池の観光地「男池」が登山口になり、九重登山には珍しく、ほとんどが森の中を歩くルートです。日差しを避けられるため、夏場におすすめのルートです。登山口である男池は入場料が大人100円(2018/11現在)かかります。湧水の池がきれいなので、時間があれば男池観光もして帰りましょう。
道迷いに注意
森林の中を歩くため、道がわかりやすいことがあるため初心者の方は経験者と同行することをおすすめします。
九重山登山ルート(コース)5:岳麓寺~大船山
体力度:★★★★★
所要時間:往復8.5時間
九重連山南側に位置する登山口の岳麓寺は、アクセスが悪く、しかも長時間登山をすることになるため、登山者が非常に少ないルートです。1時間の牧道を歩きから始まり、標高差1000メートルを4時間かけて登りますが、登山者が多い九重山を静かに歩きたい方にはおすすめのルートです。標識などは少なく、登山者も少ないので、初心者の方は、必ず経験者と同行するようにしましょう。
体力の消耗に気を付けましょう。
距離が長くしかも、標高差がありますので、かなり体力を消耗します。体力の消耗を感じたら、頂上まで目指さず早めに下山することをおすすめします。途中まででも十分登山を楽しめるルートです。
九重山登山ルート(コース)6:沢水~立中山
体力度:★★☆☆☆
所要時間:往復5時間
沢水登山口も九重連山南側の登山口ですが、岳麓寺に比べるとアクセスしやすいですが、牧ノ戸峠などに比べると登山者が少ないルートです。標高差は500メートルほどで、登りやすいため気軽に登山をしたい方におすすめです。立中山からは、坊がつるや大船山などの名峰を眺めることができる360度ビューです。
初心者は経験者と同行を
半分以上は森の中で、牧ノ戸峠ルートに比べると標識が少なくわかりにくいルートですので、初心者単独はおすすめできません。
九重山登山ルート(コース)7:大曲~三俣山
体力度:★☆☆☆☆
所要時間:往復4.5時間
長者原と牧ノ戸峠の途中にある大曲登山口から登ります。九重連山の名峰の一つ三俣山へは最短ルートであり、九重連山の中でも一番簡単にピークを極められるルートでもあります。アクセスも良く、登山できる時間が短い方にはおすすめですが、駐車場が狭いためすぐに満車になり、路上駐車になってしまいまうことが多くなります。三俣山への登りはきついですが、距離は長くないので初心者にもおすすめで、三俣山山頂は広く眺めがいいので、人気のルートです。
硫黄作業道では落石に注意
途中の硫黄作業道付近は、落石が多いので休憩せず早めの通過を心掛けましょう。
九重山から下りてきたら温泉
九重山は火山ですので、麓は温泉が多く出ており、登山口近くにも温泉が多くあります。その一つ、花山酔は、長者原登山口すぐ近くの温泉ホテルで、11:00~19:00の間、日帰り温泉を利用できますので、下山後の温泉にピッタリです。ここは、前述の法華院温泉山荘の別館でもあるので、登山者の利用も多い温泉で、法華院温泉とセットで利用する登山者も多いようです。
九重山登山おすすめの登山装備
九重山は、真冬でも本格的な冬山装備は必要ありませんが、森林などが少なく、ひとたび天候が崩れるとガス(霧)で見通しが悪くなる山で、ガス(霧)で道に迷いで多くの遭難者が出ています。吸湿速乾の登山ウェアやレインウェアは当然ですが、地図やコンパス、暗くなった時のためのヘッドランプなどは必ず持参しましょう。
まとめ
九州の名峰「九重山」の登山情報や、おすすめルート、登山口情報などをご紹介しました。九重山は、九州の山好きであれば必ず登る山で、一年に何度も登る登山者も多い人気の山です。登山口へのアクセスがしやすく、登山ルートのバリエイションが多いことが主な要因ですが、そのため近年は登山者が増える一方です。それに比例して、登山道が荒れたり、マナー違反の登山者も目立つようになってきました。
みんなの九重山です、マナーを守って、九重山を楽しみましょう。
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