はじめに
ヤマハ発動機が1989年に売り出した「WR250」
トレールライダーならだれもが一度は乗ってみたい傑作です。魅力はなんといってもあふれる馬力、そこから生み出される速度と、他社の国産同クラスモデルを一つ越えた高級感です。そのWR250が、後続タイプをだすことなく、生産終了することが決定しました。
ヤマハ「WR250」
WRはいかなる国産市販のトレールオートバイよりも高いパフォーマンスを楽しむことができることを第一に、ヤマハが長年主力トレールオートバイとして販売していきました。
その一方、同250クラスの製品と比べ数が10~20万円ほど高価な値段は、素人ライダーには手を出しにくい、玄人ライダーのトレールオートバイとして愛されてきました。オフロード界のR1といわれた本オートバイは、R1と同じく、ヤマハのやりたいことがつまった至高の一品と言えるでしょう。
WR250の歴史
WR250生産に至る経緯
ヤマハは1976年に海外向けに販売されたITシリーズが、エンドューロ(オートバイなどにより未知の道路を走行するラリー形式のレース)タイプのオートバイとして、1970後半から1980年代にかけ、活躍していました。
当時の同クラスライバルは、ホンダのXR185、カワサキのKDX200などです。
WR250誕生

2019年モトクロス競技用として更なる進化をするYZ250F。
WR250はIT、YZシリーズをを両親に持つ、素晴らしい系譜を持ったトレールオートバイです。
WRシリーズは1989年、ITシリーズの後続として、モトクロス用のYZ250をエンドューロタイプに改良したのが始まりです。
当初のモデルであるYZ250WRと名づけられた機体は、モトクロスとしてはwide retio(ワイドレシオ)でしたが、山道、公道を駆け巡る高パフォーマンスバイクとして愛されることとなります。

モトクロスからトレール、市街地まで、何でもできるWRシリーズ誕生
栄光と更なる進化
WRシリーズはその後もモデルチェンジを繰り返していきます。
2005年には同シリーズのレース用モデルWR450Fがダカールラリーでクラス優勝します。
2007年にはよりオールマイティなモデルの機体として、WR250Rを販売。
多くのライダーの注目を浴びました。
2017年もWR250Rが新モデルを発表しました。
WR250Rスペック① パワー
WR250の魅力を、人気モデルであるWR250Rからみていきましょう。
まずはなんといってもそのパワーです。
パワーのある走りを実現
WR250Rは、4サイクルエンジンでありながら、最高出力がエンジン回転数10000rpmのときに31PS、最大トルクがエンジン回転数8000rpmのときに24kgf・mです。
参考に同クラスのホンダCRF250Lは、最高出力がエンジン回転数8500rpmのときに2.4PS、最大トルクがエンジン回転数6750rpmのときに2.3kgf・mというスペックです。
最高出力=エンジン回転数×最大トルクも関係があり、その他の条件等でやや変わりますが、概ね最高出力は最高速度、最大トルクは最大加速度の指標であると言われています。この比較でWR250Rの速さの理由がわかると言えます。
国産トレールナンバー1のパワー
最高出力については、250の国産トレールオートバイ最高の数値をたたきだしており、非常にパワーあるオートバイとなっております。WR250Rはこのように数値からもその力強さがわかります。
こうしたスペックの差が、WR250の他とは一味違うと言われている、エンジンの回転とその速さを味わいながらのツーリングを楽しくすることを可能とするのです。
WR250Rスペック② 軽さ
他社の追従を許さない軽さ

メインフレーム等の貪欲な軽量化は、その他の同クラスオートバイとは一線をひく軽さを達成することを可能にしました。
WR250Rは、パワーがあるにもかかわらず、コンパクトかつ軽い車体も魅力の一つです。
車両重量は132kgと、カワサキ、ホンダの同クラスのオートバイと比べても、5~10kg軽いものとなっております。
コンパクトなエンジン

パワーがありながらコンパクトなエンジンは、様々なドライビングを可能にします。
原料から、メインフレームに鋳造アルミパーツ、リアアームにアルミニウム、マグネシウムヘッドのエンジンと、大きな軽量を成功するためにこだわっております。
また、空冷式エンジンよりも複雑かつ重くなりやすい水冷式エンジンでありながら、原料とエンジンのコンパクト性も軽量に貢献しています。
WR250Rスペック③ 運動性能
まさに自由な走行
こうしたパワーと軽さは他のオートバイではできないドライビングを可能とさせます。
シートの高さは街乗りにはやや高めであると言われていますが、それによりサスペンスションの機能を併せ持つ長いフロントフォークを十分に使え、衝撃をクッションのように吸収し、林道の不整地をものともしません。
またコンパクトなエンジンにより足回りの自由度が大きく確保されている点でも、どんな道でも人車一体で突破することを可能にするのです。
いかなる路面も克服
リンク式リアサスペンションは、路面状況に応じて調整ができ、ライダーにあった走りを具現化します。走ることを楽しくまたは挑戦へと変えてくれるのです。
WR250Rは、高性能でありながらコンパクトなエンジン、軽量でありながら頑丈なフレームで、250オフロードの求めるものをオーバースペックと言えるほど満たした傑作なのです。
しかし....
WR250生産終了へ

環境のための規制は、オートバイの生産終了という目に見える変化をもたらしました。
WR250は2018年後続モデルなし、生産終了となりました。
理由は2017年10月から開始された排ガス規制です。ユーロ4に準じて国内のオートバイにも適用されたのです。
ユーロ4とは
ヨーロッパから始まった規制

日本にもヨーロッパから排ガス規制の波が押し寄せました。
自動二輪車に対しても大きな影響を与えていきます。
1970年代EU(欧州連合)指令がEU加盟国に対し自動車排出ガス規制を導入しました。
ユーロ4とは排出ガス規制の段階です。
ヨーロッパを起点として1992年のユーロ1から2、3と上昇、2016年にはヨーロッパがユーロ4となり、2017年に日本に波が押し寄せたのです。
ここで示している段階は二輪自動車の進行段階であり、全体的な規制は、EU諸国ではすでにユーロ6となっています。
ユーロ4排ガス規制の影響
ユーロ4では一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった排ガスの量を、いままでの半分以下にしなければなりません。
また、気化したガソリンを規制する燃料蒸発ガス規制、耐久走行試験の導入が含まれます。国産オートバイ企業はこうした規制や試験のパスするために、製造や開発に高い費用を投じなければならず、オートバイの価格上昇や、従来技術に比べて低出力化につながります。
排ガス規制により多くの名機が消滅

街角でよく見るCBR250R
この機体も2017年9月以降は生産されていないのです。
規制の波を受け、多くの国産名オートバイが2017年に消えていきました。
ホンダCB250F、VTR,スズキGSR、カワサキZRX1200を含む20数機です。WR250もその一つとなってしまいました。
よく見るホンダCBR250RやカワサキNinjya250も、2017年のタイプは排ガス規制により販売終了となったのです。ヤマハは同クラスのセロー250も2017年当時では規制をくぐることができず、ヤマハの250のトレールオートバイは全滅の危機を迎えました....
排ガス規制を乗り越えて ヤマハ「セロー250」
復活したヤマハ250トレールオートバイ

WR250と同じく、一時生産終了と思われていたセロー250が、規制を乗り越え2018年も活躍することを決めた。
排ガス規制によりヤマハの250トレールオートバイが全滅....と思われましたが、セロー250がその危機を救いました。
ヤマハは2018年7月セロー250の新作を発表しました。
排ガス規制を乗り越えたエンジン

セロー250のエンジンは従来通り空冷エンジンとなりました。
軽さをあまり変えずに、排ガス規制を乗り越えることに成功しました。
エンジンは空冷のままですが、キャニスター、フューエルインジェクション等の装着により、排ガス規制を乗り越えた環境にやさしいオートバイとなり2018年も活躍することになります。
空冷エンジンのため軽さもあまり変えずに、従来からもつセロー250のライダーをどこまでも連れて行きながらも、優しい走りは変わらないようです。
また、規制を乗り越えたことにより環境にも優しいオートバイとなりました。
WR250まとめ
1989年にヤマハより販売されたWR250は排ガス規制により2017年をもって販売が終了しました。
ヤマハの250トレールオートバイ全滅の危機でありましたが、セロー250がそのクラスを守っていくこととなります。
セローだけでは....と心配する人もいるかもしれませんが、そのセローも新たな進化を遂げ2018年8月下旬に戻ってくる予定です。
そして排ガス規制すら問題ない、更なる技術の向上により、もしかしたらWR250が、または呼ぶにふさわしいパワーと速度をもった、トレールオートバイが復活するかもしれません。
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2017年を最後に生産終了をしたヤマハトレールオートバイの傑作機WR250