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魚に痛覚はある?ない?魚類が痛みを感じる研究の最新情報をご紹介!

魚類に痛覚はあるのか。それは以前からさまざまな場所で議論が交わされており、今もなお研究が続けられています。そこで、魚の痛覚に関する最新の研究結果や、魚が痛みを感じない前提で生まれた日本文化などの今後についてまとめました。
更新: 2024年2月8日
吉岡てんぱ
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痛覚とは

痛覚は、哺乳類をはじめとする生き物が生き延びるために身につけたとも言われているもので、痛みを感じる感覚のことを指します。けがや病気で、激しい痛みを感じると、痛覚なんてなければいいのに…と思うこともありますが、逆に痛みを感じなかったときのことを想像してみましょう。

もし痛覚がなく、けがや病気によって細胞が傷つけられたり破壊されていることに気づけずにいれば、症状は悪化し、命を脅かす事態にもなりかねません。つまり、痛みを感じる痛覚は、人間をはじめとした生き物が安全に健康に生きていくためには欠かせない感覚なのです。

痛みの伝わり方と反応

痛みを感じるまでの流れ

痛覚がある動物の場合、次のような流れで痛みを感じます。
1.けがや病気により細胞が傷つけられたり破壊されます。
2.セロトニンなどの発痛物質が生成されます。
3.発痛物質が痛覚の神経(自律神経終末)に届き、電気信号に変換されます。
4.電気信号が脳に届き脳が痛みの詳細を理解し、「痛い」という感覚が芽生えます。

痛みを感じた際の反応

上記のことからもわかるように、けがや病気で細胞が傷つけられたり破壊された時点では、痛いと感じていません。ただ、瞬時に刺激が神経を通って脳に伝わるので、細胞が傷つけられたとほぼ同時に痛いと感じます。そうすると、危険なものから手を離すなどの反射的な反応が起こるなど、それ以上状況が悪化しないように脳が導いてくれます。

魚に痛覚はある?ない?の議論

魚釣りでさえ痛そうという人が

普段、魚釣りをしない人の中には、魚を針で釣り上げる行為自体が痛そうだと言う人もいます。そして、魚類や甲殻類には痛みを感じる神経はないのだろうか?と不思議に思い、SNS等にアップする人がいます。そうすると、たちまち魚に痛覚があるのかどうかの議論が勃発し、様々な意見が飛び交います。

痛点の定義による曖昧さから結論はまだ出ていない

魚の痛覚にまつわる議論は以前から熱く交わされていますが、痛点には明確な定義がないため、魚類や甲殻類、軟体類などの海の生き物に痛みを感じる痛覚があるのかどうかという議論にはっきりとした結論は出ていません。

魚が、「痛い」「痛くない」と言ってくれればいいのですが、それは無理ですよね。そのため、魚が何をどう感じているかを人間が知りうるのは非常に難しいのです。

魚に痛覚があるなら踊り喰いや活け造りは…

日本に根付いた踊り喰いや活け造りの文化

魚を生で食べる文化が進んでいる日本では、魚の踊り喰いや活け造りという食べ方が文化として根付いています。ただ、日本人でさえ、踊り喰いや活け造りは「かわいそう」「食べられない」という人がいるくらいですから、外国人からすると、なかなか衝撃的な食べ方のようです。


踊り喰い動画でパニックに陥る外国人も

外国人が、イカの踊り喰いの動画を見た際のリアクションは、インターネット上でも話題になりました。「残酷」「拷問」「理解できない」「正しい食べ方ではない」などの批判的な声が多く、魚類や甲殻類、軟体類に痛覚がある前提での意見も見られました。

魚の痛覚については研究の途中

魚は痛みを感じないという説が定説だった

元々、魚には痛覚がなく、痛みを感じないと言われていました。というのも、魚は吊り上げられても活け造りにされても、痛そうな顔をしないからです。また、生きた状態で魚をさばいても失神などせず動くのも、痛みを感じる神経がないからだと言われていました。

その上、魚は、魚釣りの釣り針が刺さったら、自分の肉が裂けても逃げようとしますよね。もし魚が痛みを感じるなら、そんなことはできないだろうという考えからも、魚は痛みを感じないという説が定説となっていました。

魚が痛みをどう感じているかは未知

魚類には、痛みを感じる痛点はあるものの、大脳新皮質(言語機能や分析的な思考を支える大脳の部位で、下等生物ほど小さい傾向にあります。)が小さいため「痛い」と感じる能力が低いのではないかという説も以前から言われていました。

このように、魚の痛覚についてはさまざまな説が飛び交っていますが、実際、魚類が痛みを感じているかどうかの結論を導くことは、かなり困難とも言われています。そのため、魚類や甲殻類が実際どの程度痛みを感じているのか…その謎を解明すべく、今もさまざまな研究が続けられています。

魚の痛覚についての研究方法

魚の痛覚に関する研究の中でも、エディンバラ大学のロスリン研究所で行われた、ニジマスを使った研究は有名です。その研究方法は、ニジマスの頭部にマーカーをつけ、熱的刺激や科学的刺激を送り、その際の神経活動を観察、記録するというものです。その研究では、意外かつある程度明確な結果が出て、世間の注目を集めました。

魚の痛覚についての最新研究結果

魚類にも痛点や侵害受容器があった

ニジマスのよる研究の結果、痛みを感じる痛点が、ニジマスの頭部周辺に最低でも58ヶ所はあることが確認されました。そのうちの22ヶ所は、侵害受容器(末梢神経の先端にある刺激を感知する部位)であることも判明し、これにより人と同じような痛みの感じ方をするのではないかとの仮説の信ぴょう性が一気に増しました。


ポリモーダル受容器も発見される

また、ニジマスを使った研究により、魚にもポリモーダル受容器があることもわかりました。ポリモーダル受容器とは侵害受容器の中の1つで、物理的刺激や化学的刺激を電気信号に変換する器官のことを指します。

ポリモーダル受容器は、人間をはじめ、鳥類や爬虫類も持っている器官で、細胞が傷つけられたり破壊された際の刺激を神経を通して脳に伝えるために必要な器官です。

研究の結論

ニジマスを使った研究での結論では、魚は痛みを感じるということになります。今まで魚は痛みを感じる、感じないで二分されていた意見は、この研究結果によって魚類は痛みを感じるという意見に大きく傾きました。

魚の痛覚の最新研究には疑問の声も

魚には痛覚があるという説が有力になったものの、まだまだ疑問や異論の声は挙がっています。痛みを感じるなら、なぜ釣り針が刺さってしまったとき、体が裂けても逃げようとするのか?など、研究結果だけでは解明できない謎も依然残っています。確かに、魚が傷みを感じないということにした方が、この謎はつじつまが合いますよね。

魚の痛覚次第で日本の踊り喰い文化が消える?

踊り喰いや活け造りなど、魚を生きた状態で食べる日本の文化は、魚類に痛覚がないという前提で生まれたと言われています。

そのため、魚類に痛覚があると解明されれば、日本の踊り喰いや活け造りの文化が消えてしまう可能性も大いにあります。踊り喰いを観光資源としている地域もあるため、魚の痛覚のありなしについてはっきり解明するまで、その動向に注目したいものです。

魚の痛覚次第ではスポーツフィッシングも禁止に?

魚の痛覚が間違いなくあるとされれば、スポーツフィッシングはまさに「虐待」とも言われかねない行為として、禁止される可能性もあると言われています。スポーツフィッシングは、魚に痛覚がない前提で行われている今でさえ、愛護団体など一部の人たちは、魚を確実に弱らせているとして批判的な意見を発信しています。

そんな状況なので、魚に痛覚があるという結論が世界的に認められれば、間違いなくスポーツフィッシングは残酷な行為だという意見が支持されるでしょう。そうなると、仮にスポーツフィッシングが禁止されなかったとしても、冷ややかな目で見られる可能性が非常に高いです。

甲殻類には痛覚がある可能性が高い

甲殻類の痛覚についても議論が交わされていた

魚類と同じく、生きたまま食べたり調理されることが多い甲殻類についても、魚類と同様な議論が交わされてきました。甲殻類は固い殻に覆われているうえ、生きたまま茹でても暴れまわることはありません。

そのため、甲殻類は痛みを感じないと言われてきました。しかし、最新の研究により、甲殻類は痛みを感じないという説が覆されようとしています。

甲殻類には痛点・痛覚があるという説が有力

魚類と同じく海に棲むエビやカニなどの甲殻類には、痛点や痛覚があるのかという疑問も、昔から議論が交わされていました。

特に甲殻類は生きたまま茹でることもあり、痛点や痛覚があるならその調理法は残酷すぎるのではないかとも言われており、その結論に注目が集まっています。そして、最新の研究結果では、甲殻類は痛みを感じているという説が濃厚だとされています。


甲殻類の痛覚に関する研究結果

甲殻類の痛点、痛覚に関する研究は、ヤドカリによって行われました。ヤドカリの殻に電気信号を送り続けるという研究でしたが、なんと、ヤドカリは殻から抜け出し、逃げていったのです。そのため、エビやカニなどの甲殻類には痛覚があるという結論が出ました。

痛覚が確認されたロブスターの扱い

ロブスターの調理方法が決まっているオーストラリア

ある研究で、ロブスターには痛点があり、痛覚があることが判明しました。その研究結果に敏感に反応したオーストラリアでは、ロブスターの調理方法についての法律が制定されました。

それまではオーストラリアでも生きたままロブスターを調理をしていたのですが、現在は冷水に入れて感覚を麻痺させ、仮死状態にしてから調理を行うよう決められています。その上、包丁を入れる際は一気に手際よく行い、即死させなければなりません。

日本でも魚の調理法が法律で定められる日も近い?

日本では、まだロブスターの調理法等が法律で決められてはいませんが、オーストラリアでのロブスターを守る法律は、世界的に話題になりました。そのため、今後魚類や甲殻類の痛覚に関する研究が進むと、日本でも魚類や甲殻類の調理法が法律で決められる可能性も大いにあります。

そうなると、釣りの際の魚の締め方などへの影響も考えられます。魚類や甲殻類の痛覚の研究は、あまり身近なものではありませんが、注意深く見守っていく必要がありそうですね。

魚の痛覚と文化

魚に痛覚に関する研究がすすみ、より明確に魚の痛覚があるとわかれば、日本文化は大きな影響を受けることになるでしょう。日本以外にも、生きた魚類をそのまま調理する文化が根付いている国はあります。

魚に痛覚があることがわかった際に、魚の気持ちを尊重するのか、長年続いてきた文化を存続させるのか…。非常に難しい問題ではありますが、遠くない未来で必ず立ちはだかる問題です。普段から魚の命や気持ちについて考え行動し、自分の考えを固めていかなければならない時が来ているのかもしれませんね。

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