クロモリとは?
一般的にクロモリという素材、またはそれで作ったフレームを指します。そして、そのフレームを採用したものがクロモリロードバイクです。そこで少々曖昧な、クロモリという語についてはっきりさせておきたいと思います。
クロムモリブデン鋼
クロモリとは略称で、クロムモリブデン鋼が本来の名称です。大本は鉄ですが、それにクロムとモリブデンを少々加え、出来上がった合金になります。材質はほぼ鉄でありながら、比強度・粘り強さに優れ、僅かの錆びにくさも持ち合わせています。
クロモリにも種類がある
含有率という意味での種類と、パイプメーカーによって作られたパイプの種類とがあります。前者は「米国SAE」によると12種類あり、そのうちフレームに使用されているのがSAE4130という種類です。後者はパイプメーカーが趣向を凝らした分だけ、異なる材質のクロモリのパイプがあります。
クロモリロードバイクとしての意義
フレームの主要素材の中で一番の古株がクロモリです。クロムモリブデン鋼を使用することの意義、現在も淘汰されずに残るクロモリロードバイクの需要を紐解きます。
フレームの役割とクロモリの利点
自転車フレーム本来の役割は、衝撃の吸収と乗り手と自転車本体を支えることです。クロモリはその点で比較的秀でている材質であるため、フレーム本来の役割に沿っている、という点で的確な素材と言えます。
クロモリロードバイクの需要
正直なところ、他素材と比較するとクロモリロードバイクの取り扱いは少なく、軽量化や速さを求めると材質的にどうしても後れを取ってしまいます。それでも、いまなお根強い人気があり主要素材にあり続ける理由には、速さを度外視した時のメリットが大きいからです。また、比較的乗り手との相棒感が強いフレームでもあります。
クロモリフレームと他素材の比較
自転車フレームにはクロモリ以外にも、アルミやカーボンが使用されます。言うなればライバルなこれらの素材とクロモリの違いとはなんでしょうか。
アルミフレーム
カーボンより安価で割れにくく、材質的にもクロモリより軽量で比較的走行性能が上な、お手ごろ感のあるフレームです。クロモリの次にはやったフレームで、カーボンにトップの座を奪われた今でも変わらず需要があります。自転車に速さ、軽快さを期待するロードバイク初心者が最初に手にするほとんどが、アルミフレームと言っても過言ではありません。
カーボンフレーム
軽量かつ剛性が高くレース向きなうえに、耐久性、振動・衝撃吸収性が非常に優れており、寿命も乗り心地も一級品のフレームです。一度ひび割れが生じると使えなくなる上に高価なので、決戦用としての位置にあります。現在トップに躍り出ており、メーカーが続々と高性能なカーボンロードバイクを世に送り出しています。
クロモリフレームの魅力①:形状
まず手始めに、もっとも記憶に残る「フレーム形状」の魅力を解説します。むしろこの見た目に魅了されるユーザーが多いのですが、そこまで惹きつけられる理由とはなんでしょうか?
昔ながらのホリゾンタル
クロモリフレームは現在主流の形状であるスローピングスタイルとは違い、トップチューブが地面と平行のホリゾンタルスタイルです。なおかつ高い強度を持つ材質ですから、パイプは細身で事足り、前三角の面積が広くなります。この古きよき自転車の形やレア感は自転車乗りを魅了してやみません。
旅や持ち運びに適した形
ボトルの取り付けやバイクパッキングの際、スローピングスタイルのフレームと比較して、前三角の面積が広いのでとても楽になっており、持ち運びもしやすいです。ホリゾンタルフレームはまたがりにくいですし、人によっては冒険心のないデザインに思えますが、このような利便性に長けていることは魅力と言えるでしょう。
クロモリフレームの魅力②:剛性
自転車のパーツ性能を吟味するうえで欠かせないのが剛性です。エンジンである乗り手の力をどれだけ伝達できるかは剛性にかかっています。とはいえ、それは素材によって違います。ではクロモリはどうでしょうか?
剛性のバランスがよい
カーボンほどではありませんが剛性は高い方で、強度もあることから硬いです。しかし通常、あまりに剛性を高いと力の伝達がよすぎて脚が売り切れてしまいがちですが、クロモリの剛性はバランスが取れているためそのようなことがありません。しかも、その剛性にはアルミにもカーボンにもない、クロモリならではの味があります。
弾性があり、しなやか
乗り心地や操作性にも影響を与える独特の材質、その一つが靱性という粘り強さです。それゆえ加速も個性的で、軽量さで勝るアルミより楽しく加速できるとさえ言われています。といってもアルミほどの速度は出ませんが、負担なく楽しむことを前提にするなら、この絶妙な剛性は魅力的です。
クロモリフレームの魅力③:乗り心地
自転車は移動手段でもありますが、楽しむものでもあります。乗り心地が悪いと楽しむものも楽しめません。旅や長距離走行ならなおさらです。クロモリにそれが期待できるでしょうか。
アルミ以上カーボンと互角
クロモリの持つ衝撃吸収性や剛性、粘り強さやしなやかさ、といった特性は乗り心地に大きく貢献します。さらにフレーム形状までもが助けとなり、金属でないカーボンに匹敵する心地よさを生むのです。しかも、カーボンが最も剛性が高いので、脚の売り切れにくさで言えばクロモリの方が勝っています。
ロングライド向き
長距離の走行においては乗り心地のよさが肝とも言えます。ただ、クロモリは重いですからより軽量な素材と比較すると速さは出ません。そこでロングライド後半という条件で素材を比較してみると、クロモリは独特の乗り心地ゆえに疲れにくく、ペースもカーボンほど落ちない、という結果がでます。そのため、ゴールまでのタイムにあまり差がつかない場合も多いです。
クロモリフレームの魅力④:操作性
路上の状態は常に違い、その上を自由自在に走るには操作性の高さが不可欠です。思い通りに走れなければストレスも溜まります。では、クロモリは乗り手の意思にどう応えているのでしょうか。
操作が自由自在
速さを求めて作られているアルミやカーボンのフレームは、やはり乗り心地も操作性もそれに伴うため多少難しいです。しかし、クロモリが持つしなやかさは、乗り手を置き去りにしない安定した操作性を生み出しています。
クロモリフレームの魅力⑤:耐久性と強度
ロードバイクは高価ですから、できるだけ長く使いたいと思うはずです。しかも素材ごとにその耐久性や強度も違い、扱い方も異なります。その点でクロモリにはどれだけの期待ができるでしょうか。
欠け・折れがない
衝撃に強く、落車などどこかにぶつけたとしてもへこむ程度で、折れたり欠けたりしないほど強度があります。金属疲労という点ではアルミよりも耐久性がありますが、錆びやすさという点では材質的な問題ゆえに劣ります。
メンテナンスに気を付ければ一生モノ
その耐久性と強度は、メンテナンスさえ気を付けていれば十数年、もしくはもっと長く使える質の高さがあります。ただし、一番気を付けなければいけないことが錆びです。基本的に室内保管、濡れれば徹底的に拭いたり乾かすことが必要になります。
クロモリフレームの魅力⑥:修理
耐久性や強度の高いクロモリフレームにも、いつかはへこんだり曲がったりして修理の必要が生じます。では、耐久性や強度の次に気になる修理についてはどうでしょうか。
他素材よりも修理が容易
フレーム最初の成形における自由度ではアルミやカーボンが勝りますが、成形後の修理はクロモリの方が融通の効く材質です。クロモリはフレームに問題が生じても、溶接が可能なので差し替えたりつなげたりする修理ができます。こういう気楽さも、クロモリが好まれる理由の一つです。
クロモリフレームの魅力⑦:フルオーダーできる
自分の体に合った自分専用の自転車、という言葉は所有欲を刺激させられます。ではそんなクロモリフレームをフルオーダーできるという魅力をご紹介します。
自分に合ったクロモリロードバイクが作れる
クロモリは溶接が容易であることからも、フルオーダー可能な素材です。それはつまり、メーカーが決めたサイズに囚われず、現在の自分にピッタリなフレームが得られるということになります。もっと自転車との一体感が欲しときに、フルオーダーという選択肢があることはとても魅力的です。
クロモリフレームの魅力⑧:活用シーン
では、ここまで紹介したクロモリロードバイクの魅力からわかった、向いていること・適していることを8つ目として、活用シーンなどをご紹介します。
初心者、サイクリング向け
剛性、乗り心地、耐久性、強度、操作性、どれも脚や体幹、フォームもまだ発展途上の初心者にうってつけのステータスです。乗り手のレベルに合わせた走りができる順応性もあり、その柔軟さや乗り心地は楽しむことを目的とするサイクリングで活かせます。
ロングライド、旅向け
クロモリは、他素材のような速さ重視の材質にうっかり流されることなく、自分のペースを比較的乱されずに走れます。ペース配分・マネジメントが重要なロングライド(ヒルクライムですが)さらに、長距離走行かつ荷物を積むスペースが要る自転車旅行にも向いています。
街乗り、おしゃれ
クロモリのホリゾンタルスタイルは私服で走っても違和感がありません。本格的なジャージでなくても、気軽に自転車に乗れます。さらに、小さな段差の多い市街地でも、丈夫なうえにカーボン並みの振動吸収性がありますからなおのことです。
自分専用の自転車が欲しい人
体にピッタリ合った自転車は、自分の力を十分に発揮できる意味でも唯一無二の存在です。塗装も自由でオリジナリティと希少性がある、他の人とは違うクロモリロードバイクを所有できるので、テンションも上がってモチベーション維持にもなります。また、自分に合うサイズが既製品にない場合にも、フルオーダーは有効です。
クロモリロードバイクの変化
販売されて始めてから現在まで、メーカーによりさまざまな材質や形態の自転車が生まれ、発展してきました。では、クロモリフレームの現代の在り方はどうなっているのでしょうか。
昔ながらを貫く
アルミやカーボンのフレームが頻繁に形状を変えてきたことと比較すると、クロモリフレームの形状はほぼ変化していません。ほとんどのメーカーも昔ながらのホリゾンタルスタイルを貫き通しています。それは確かにいまなお、クロモリフレームが愛され続けてきた証拠と言えるでしょう。
レース向きに軽量化
実はレース向きに軽量化されたクロモリロードバイクが出始めています。特に有名なメーカーがMIYATAで、クロモリフレームを採用した世界最軽量の量産バイクを販売しています。クロモリの性能は活かしつつ軽量化したとあっては、アルミやカーボンの座が危ぶまれる日は近いでしょう。
取扱いメーカー・ブランド
クロモリフレームは全体的なロードバイクのラインナップの中でも、他の素材と比較して種類が少ないです。そこで、海外や日本の有名どころのメーカーをピックアップしてみました。
海外メーカー
イタリア御三家とも言われる、COLNAGO(コルナゴ)、DE ROSA(デローザ)、cinelli(チネリ)に加え、BIANCHI(ビアンキ)、GIOS(ジオス)、masi(マジィ)、RALEIGH(ラレー)などが有名どころです。海外メーカーはクロモリフレームという個性を重視・保守しつつ、技術的にも研鑽に励んだ印象があります。
DE ROSA フレームセット
日本メーカー
パナソニック、ブリヂストンのANCHOR(アンカー)、アラヤ、MIYATAが有名です。ブリヂストンアンカーはネオコットと呼ばれるフレームを開発し、MIYATAはクロモリフレームの世界最軽量を誇る量産バイクを作り上げたことで注目を浴びました。日本メーカーはどちらかというと性能面を重視した傾向にあります。
ブリヂストン アンカー ロードバイク
クロモリロードバイクの向き不向き
最後に、向き不向きについて軽くおさらいします。不向きなことも含めてクロモリフレームの味です。それも含めて、よりクロモリフレームを好きになっていただけたらと思います。
向いていること
乗り心地がよいのでロングライドや旅に、デザインが良いのでおしゃれや街乗りができました。最近では軽量化がすすめられてレースでも活躍できるものがでてきています。さらに、剛性や乗り心地をはじめ、耐久性や強度、操作性の点で他素材と比較しても初心者に優しく、負担をかけずにサイクリングを楽しむにはもってこいのフレームでした。
不向きなこと
一般的には重い材質なので、比較的軽量なアルミや圧倒的に軽いカーボンよりも、ヒルクライムや速さを出そうとするには不向きです。また、ホリゾンタルスタイルのフレームは自転車にまたがるには少し苦労する点もあります。クラシカルではなく、現代の流行に沿ったデザインを好む人には向かないでしょう。
まとめ
登りや速さを求めなければ、メリットが多い魅力の数々でした。オンリーワン、という点では既製品でもフレームセットから組み立てる方法もあるので、こだわりたい方にはおすすめです。皆さまにクロモリフレームをより好きになっていただけたなら、そしてフレーム選びの参考にしていただけたら嬉しく思います。
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この記事でも他のフレームについて軽く触れましたが、選び方については当サイト「暮らし~の」にて掲載中の下記リンク記事もあります。よければご覧いただき、目的に合ったフレーム選びに役立てていただけたらと思います。
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