ティラピアとは
「ティラピア」と「Tilapia」
和名の「ティラピア」は、実は特定の魚を指す名前ではありません。そのため、スズキ目カワスズメ科に分類される魚の一部を日本ではティラピアと呼んでいますが、厳密に言うと、分類学上の「Tilapia」と日本のティラピアは、一致しないものもあります。
ティラピアは世界中に生息
ティラピアは、元々アフリカ周辺や、トルコ、アフガニスタン周辺に生息している魚でした。しかし、食用にするために、世界各地の河川に持ち込まれ、現在では世界中のあらゆる河川に生息しています。
ティラピアは養殖も盛ん
ティラピアは、食用としての利用価値が高いため、世界各地で養殖も盛んに行われています。養殖されている量は、なんと世界で第2位!ただ、養殖されているのは、赤い色が特徴の、ナイルティラピアがほとんどです。他にも、ナイルティラピアとブルーティラピアをかけ合わせてたものなども養殖されていますが、基本的にベースは味が最も良いティラピアとされている、ナイルティラピアであることが多いようです。
ティラピアの生態
ティラピアの環境適応能力がすごい
ティラピアは、河川に生息する淡水魚ではありますが、実は、海の中でも暮らせるほど、環境適応能力が高い魚です。その上、海水の濃度が約2倍になっても、生きていけるくらい、たくましいそうです。
水温についても、10℃~40℃までティラピアは生息できるそうなので、お風呂の中でも元気に暮らせます。こうなると、世界中の水がある場所で、ティラピアが暮らせないのは、水温が10℃以下になる場所のみと言っても、過言ではなさそうですね。
ティラピアは雑食性
ティラピアが、環境適応能力が高いことにも関連しますが、ティラピアは、とにかく何でも食べる、雑食性の魚として有名です。自分より小さな生物や、泥の中に埋もれた藻や魚の死骸など、とにかくすべて口に入れてしまいます。時には、到底食べられないであろうゴミなども、口に入ったら食べてしまうほどです。
そのため、ティラピアの内臓は耐えがたい臭いを放っています。ティラピアを料理に利用する際は、内臓を取り出す必要がありますが、内臓を少しでも傷つけると、たちまちティラピアの身やまな板、それこそキッチン中がひどい臭いに侵されてしまいます。
ティラピアの繁殖方法
ティラピアのオスは、河川の底の砂地に産卵床と呼ばれる、産卵をするための穴を掘って、メスのティラピアが来るのを待ちます。その際、オスのティラピアは、しきりに放尿するのですが、その尿の中に、フェロモンが含まれていて、その匂いによって、メスは強いオスを選ぶんだそうです。
そのため、ティラピアの強いオスは、大きな膀胱を持っており、たくさんのフェロモン入りの尿をためています。一方、弱いオスは、小さな膀胱しか持たないため、繁殖に関しては、圧倒的に不利になります。
ティラピアは縄張り意識が強い
ティラピアは、産卵床を掘ってメスを待つとご紹介しましたが、産卵床を掘ったオスたちは、縄張り意識が強くなり、産卵床に近づいてくるティラピアに対して、しつこいくらいの攻撃を仕掛けることでも知られています。そのため、ティラピアは、気性が荒い魚とも言われます。
ティラピアが生息する国内の河川や湖
金鱗湖(大分県)
ティラピアは、大分県の湯布院の観光名所、金鱗湖で繁殖していることが知られています。ただ、金鱗湖は釣りが禁止になっているので、残念ながら、ティラピア釣りはできません。
江津湖(熊本県)
熊本県の江津湖でも、ティラピアが大繁殖していることがわかっています。30cm以上の大きなティラピアもたくさん確認されているので、ティラピア釣りをしてみたい人は、ぜひ足を運んでみてくださいね。
湊川(鹿児島県)
鹿児島県の温泉が流入している河川では、ティラピアの自然繁殖が確認されています。その中でも、湊川はティラピアの養殖場がすぐそばにあるため、かなりの量のティラピアを見ることができます。そのため、ティラピア釣りをしたい人には、おすすめのポイントと言えます。
八瀬川(東京都)
東京都の離島、父島の八瀬川は、たくさんのティラピアが生息していることで知られています。かなり大きな群れで生息しているので、いい釣りのポイントを見つけると、すぐさま入れ食い状態になります。
相模川中下流域(神奈川県)
ティラピアは、神奈川県の中下流域でも、しばしば目撃情報がありました。しかい、最近は工場からの温かい排水が流されなくなったこともあり、目撃情報が減っているので、既にティラピアがいなくなっている可能性も大いにあります。
平等川(山梨県)
山梨県の石和温泉付近を流れる平等側に、ティラピアがいたというニュースが流れたことがあり、実際に釣りあげたことがあるという人もいます。ただ、相模川同様、最近は目撃情報はほとんど耳にしなくなりました。
ティラピアの釣り方
ティラピアは、口の中に入るものなら、何でも食べてしまうので、釣り針に何かしらつけて投げ込むだけでも、ティラピアが釣れてしまいます。もちろん、餌釣りでもいいのですが、こうなると、ルアーの方が面白いかもしれませんね。
ただ、ティラピアは何でも食べるので、満腹になっていることも多いです。その時は、餌をつけて針を落としても、全く見向きもしてくれません。もし、ティラピアがそのような状態だとわかったら、他のポイントを探すか、ティラピアを釣ることはあきらめた方がいいかもしれませんね。
ティラピアの旬
ティラピアの旬は、特にありません。逆に言えば、1年中、旬のようなものです。ただ、ティラピアを「台湾鯛」と呼んで親しんでいる台湾では、1月ごろがティラピアの旬とされいて、1月上旬に、ティラピアの特売会イベントが行われたりします。
旬を迎えた台湾のティラピアは、旬以外の時期に獲れるティラピアに比べて、脂がのっており、美味しいそうですよ。日本に生息しているティラピアの旬が1月かどうかははっきりとわかりませんが、1月ごろにティラピアが釣れたら、ぜひ他の時期のティラピアと、味の違いがあるか意識して、味わってみてくださいね。
ティラピアの味は鯛の味に似ている?
台湾では、ティラピアを「台湾鯛」と呼ぶように、日本でも、ティラピアを「泉鯛(イズミダイ)」や「○○(地名)鯛」と呼ぶ地域もあります。ティラピアと鯛。見た目や生態は似ていないのに、なぜこんな名前で呼ばれているのかというと、味が似ているからなのです。
ティラピアの身は、とれもきれいな白身で、刺身などにして見比べると、本当に鯛にそっくりで驚きますよ。その上、内臓を上手に取り除けば、川魚にありがちな臭みもなく、クセもないため、とても食べやすい魚なのです。まさに、日本で大人気の魚、鯛そっくりなのです。
ティラピアの美味しい食べ方
ティラピアは、鯛に味がよく似ているため、刺身や塩焼きなどのシンプルな食べ方をしても、十分美味しいです。ただ、ティラピアは元はアフリカ周辺の魚。原産地のような、フライやムニエルなど、洋風の食べ方をするのもおすすめです。ある意味、食べ方に対しても、適応能力が高い魚ですよね。
ティラピアの調理法
ティラピアの下ごしらえ
ティラピアの調理をする際は、まず下ごしらえをしましょう。ティラピアの下ごしらえは、一般的な魚の下処理と同じ流れです。大きなものは血抜きをし、うろこを落として、内臓を洗い流し、3枚におろします。先述の通り、内臓に傷がつくと、ものすごい悪臭が部屋中に広がるので、内臓を洗い出す際は、慎重に調理するようにしましょう。
臭み取りが調理のポイント
ティラピアは、淡水魚にしては臭みが少ない方ですが、まれに下ごしらえをしても臭いティラピアもいます。その場合、そのまま調理しても、あまり美味しくないので、ティラピアの下ごしらえ後に、臭み取りをしましょう。
ティラピアの臭み取りの際は、まず、しっかりと水洗いをして、水気を拭き取りましょう。その後、塩を酒を適量振りかけて、10分程度放置します。こうすることで、調理をした際の臭みが、かなり減りますよ。
ティラピアのおすすめ料理レシピ1.ムニエル
ティラピアの淡泊な味わいはムニエルに最適
ティラピアは、身も柔らかく、味わいが淡泊なため、ムニエルにすると美味しいです。ムニエルは、調理時間も短く、簡単に作れる料理なので、ぜひお試しください。
ムニエルの材料(2人分)
ティラピア・・・2切れ
酒(下味用)・・・少々
塩(下味用)・・・少々
塩・コショウ・・・少々
バター・・・大さじ2
醤油・・・小さじ1~2
小麦粉・・・適量
ムニエルのレシピ
1.ティラピアは塩と酒で下味をつけ、冷蔵庫で30分程度寝かせます。
2.ティラピアから出た水気を拭き取り、塩コショウを振って、小麦粉をまぶします。
3.バターを熱したフライパンで、ティラピアを焼きます。
4.ティラピアの身が厚い場合は、蒸し焼きにし、両面こんがりと焼きましょう。
5.最後にフライパンの縁から醤油を流し込み、ティラピアに絡めたら完成です。
ティラピアのおすすめ料理レシピ2.刺身
ティラピアは回転ずしのネタにもなっている
ティラピアは、淡水魚ではありますが、海外では回転ずしのネタ「シロミザカナ」として使用されることもあります。つまり、刺身として食べても美味しいということです。ただ、ティラピアを刺身で食べる場合は、ティラピアが獲れた場所の環境を知る必要があります。
ティラピアが日本の養殖場のような、安全性に配慮されて育てられている場合は、刺身で食べても問題ありませんが、天然もののティラピアは、寄生虫に感染している確率がかなり高いです。そのため、ティラピアの刺身はおいしいですが、釣れたティラピアは、加熱する料理に利用しましょう。
刺身の材料(2人分)
ティラピア・・・あるだけ
刺身のレシピ
1.ティラピアを食べやすい大きさに切って完成です。
※もし臭みが気になる場合は、日本酒をしみさせた昆布で刺身を挟み、昆布締めにすると、食べやすくなりますよ。
ティラピアのおすすめ料理レシピ3.フライ
ティラピア料理の定番はフライ
東南アジアやアメリカなどでの、ティラピアの最もスタンダードな食べ方は、フライです。ティラピアは。丸ごとフライにする食べ方もありますが、ここでは、切り分けた身をフライにするレシピをご紹介します。タルタルソースやウスターソース、塩などをかけて食べても美味しいですよ。
材料(2人分)
ティラピア(切り身)・・・2枚
小麦粉・・・適量
卵・・・1個
パン粉・・・適量
塩コショウ・・・少々
揚げ油
フライのレシピ
1.ティラピアの水気をふき取り、塩コショウを振ります。
2.ティラピアの全面に小麦粉をまぶし、卵にくぐらせ、パン粉をつけます。
3.170℃に熱した油で、衣がきつね色になるまで揚げたら完成です。
ティラピアを美味しく食べよう!
ティラピアは、日本にも生息していますが、言わずと知れた、外来魚でもあります。ティラピアは、繁殖能力も高く、適応能力が高いので、日本の在来種に悪影響を与えているという声も挙がっています。そのため、美味しいティラピアをどんどん食べれば、微々たる力かもしれませんが、環境保全にもつながる可能性があります。バス釣りが趣味の方などで、たまたまティラピアが釣れてしまった場合は、リリースせずにぜひ持ち帰って、食べてあげてくださいね。
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ティラピアのような淡水に生息する生物には、おもしろい生態や特徴を持っているものが多いです。ぜひ、いろいろな淡水生物についての知識を深めてみてくださいね。
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