スミチオン乳剤とは
スミチオン乳剤とは、発売から40年経つ農薬で、世界中で使用されている殺虫剤です。スミチオン乳剤は、散布後に揮発するため、人や環境への悪影響が少ない殺虫剤であることから、農家以外の、家庭菜園やガーデニングを趣味としている人たちからも、絶大な支持を得ています。
スミチオン乳剤は、あらゆる害虫を殺虫できる上、先述の通り、人や環境への悪影響が少ない成分でできているので、常備薬のように愛用している人も多いです。まだ、スミチオン乳剤を使用したことがない人も、知っていて損はない農薬なので、この機会にぜひ、手に取ってみてくださいね。
スミチオン乳剤の主成分と毒性
主成分はフェニトロチオン(MEP)
スミチオン乳剤は、黄褐色の乳液のような薬剤で、フェニトロチオン(MEP)と呼ばれる、有機リン、有機硫黄系殺虫剤が主な成分です。フェニトロチオンは、スミチオン乳剤の他、動物用医薬品などにも使用されている、安全性の高い薬品です。
フェニトロチオン(MEP)の毒性
フェニトロチオンは安全性の高い薬品ではありますが、殺虫剤なだけあって、毒性があります。ただ、フェニトロチオンは、体重1㎏当たり0.005㎎までは、摂取しても健康被害が出ることはありません。しかし、それ以上の量を摂取してしまうと、倦怠感や頭痛、吐き気、視力減衰などの病気や中毒症状を引き起こしたりします。
フェニトロチオン(MEP)の毒性による死亡事故も
日本では、フェニトロチオンによる死亡事故も発生しています。千葉県では、フェニトロチオンが含まれた薬剤を散布した水田に入った男性が死亡し、茨城県では、ダニ駆除のためにフェニトロチオンを使用した家屋に住んでいる家族全員が中毒症状を訴え、女児が死亡しました。
スミチオン乳剤は、安全性が高い薬品ではありますが、使用に際しては、十分な注意が必要です。
スミチオン乳剤の補助成分と毒性
補助成分1.キシレン
スミチオン乳剤には、補助成分として、キシレンが含まれています。キシレンは、飲み込むと皮膚や目に刺激が走ったり、妊娠中の場合は、胎児への悪影響なども心配されている化学物質です。含有量はスミチオン乳剤の21%以下と少なめですが、妊娠中は使用しない方が無難です。
補助成分2.エチルベンゼン
スミチオン乳剤には、補助成分としてエチルベンゼンも含まれています。エチルベンゼンは、キシレンと同様に、飲み込むと皮膚や目に刺激が走ったり、胎児への悪影響が心配されている化学物質です。その他、発がん性も疑われているため、取り扱いには十分注意しましょう。
スミチオン乳剤が効果を発揮する主な害虫
アブラムシ類
スミチオン乳剤は、樹木やバラ、トマトなど、あらゆる植物に大量発生する、アブラムシ類の駆除に効果があります。1,000~2,000倍に希釈して使用しますが、すぐに効果が表れますよ。
ケムシ類
スミチオン乳剤は、ケムシ類の駆除にも効果的です。ただ、樹木についたケムシの駆除には不向きなので、樹木についたケムシには、専用の殺虫剤を使用するようにしましょう。
バッタ類
スミチオン乳剤は、花や観葉植物についたバッタを駆除することができます。ただ、柑橘類の樹木などには、スミチオン乳剤よりも、ベニカ水溶剤の方が効果が高いとされています。
カメムシ類
家庭菜園で豆類を育てているとよく集まってくるのがカメムシですよね。そんなカメムシにも、スミチオン乳剤は効果を発揮します。柑橘系の樹木の場合は、複数散布することで効果を発揮するので、パッケージに書かれている頻度を守って、複数回散布しましょう。
ヨトウムシ類
芝生や菊などに発生するヨトウムシの駆除にも、スミチオン乳剤は効果的です。ヨトウムシには、1,000倍に希釈したスミチオン乳剤を使用しますが、芝生の中などには大量に卵が産みつけられていることもあるので、1度散布しても、油断しないようにしましょう。
コガネムシ類
スミチオン乳剤は、芝生の中に発生したコガネムシの駆除にも使えます。ただ、芝生の表面にスミチオン乳剤を散布しても、効果は期待できません。そのため、芝生の下の土壌まで、しっかりとスミチオン乳剤が浸透するよう、ジョウロなどでたっぷりと散布してくださいね。
カイガラムシ類
果樹によく発生するカイガラムシの駆除にも、スミチオン乳剤を使用することができます。カイガラムシは、大量発生することも多いので、1つの樹木で見つけたら、周りの樹木にも発生していないか、しっかりと確認し、確実に駆除しましょう。
テントウムシダマシ類
スミチオン乳剤は、夏の家庭菜園でもよく発生するテントウムシダマシの駆除にも効果があります。テントウムシダマシの被害は急速に広がるので、数匹発生しても油断せず、しっかりと観察し、確実に駆除することが大切です。
スミチオン乳剤の基本の使い方
スミチオン乳剤の使い方1.身支度を整える
スミチオン乳剤の散布は、しっかりと身支度を整えてから行いましょう。農薬用マスクやビニール手袋、長袖長ズボン、ゴーグルなどを着用し、皮膚が露出している部分が少しでも減るようにするのがポイントです。
スミチオン乳剤の使い方2.散布場所の整備
スミチオン乳剤の散布場所に、ペットや子どもが近づかないよう、ロープで囲むなど対策をしましょう。また、道路や公園などで使用する場合は、農薬を使用しているという注意書きを貼って、むやみに人が触れないよう、十分に注意を払いましょう。
スミチオン乳剤の使い方3.希釈して散布
スミチオン乳剤は、作物や害虫ごとに、希釈倍数や仕様時期、使用回数、散布液量が異なります。そのため、スミチオン乳剤を使用したい作物についてしっかりと注意書きを読み、適切な使用回数、散布液量を守りましょう。
スミチオン乳剤の使い方4.着替えとシャワー
スミチオン乳剤の散布が終わったら、速やかに服を脱ぎ、シャワーを浴びましょう。その際、石鹸を使って、特に手足と顔はよく洗い、洗眼やうがいもするのがポイントです。散布の際に着用していた服は、他の洗濯物とは分けて、しっかりと洗うようにしましょう。
スミチオン乳剤の使用上の注意
晴れの日が続くときに使用する
スミチオン乳剤は、散布後に揮発するため、人や環境への悪影響が少ないとされています。しかし、雨の日に使用すると揮発しにくく、いつまでも殺虫成分が散布した場所に残り続けることもあります。
そうすると、化学物質過敏症などの病気にかかったりする恐れがあります。そのため、晴れの日が少なくとも翌日まで続く日に、散布するのがおすすめです。
使用後に体調が悪化したら速やかに病院へ
スミチオン乳剤を使用後、体調が悪化した人がいたら、速やかに病院に行くようにしましょう。スミチオン乳剤による病気や中毒症状になった場合でも、速やかに硫酸アトロピン製剤やPAM製剤を投与することで、症状を最小限に抑えることができます。
たとえ軽い症状でも、念のため、病院に行くことが大切なので、周囲の人の様子も、しっかり気にかけておきましょう。
アブラナ科の植物には使用しない
スミチオン乳剤は、ダイコンや菜の花、小松菜などのアブラナ科の植物に使用すると、植物自身に薬害が生じ、枯れてしまうので、アブラナ科の植物には使用しないようにしましょう。
高温にならないよう注意する
スミチオン乳剤の主成分、フェニトロチオンは可燃性で、157℃に達すると、引火します。フェニトロチオンは燃えることで、窒素酸化物などを含む有毒ガスを発生するので、極端に高温になるような場所で使用したり、保管するのはやめましょう。
水辺や養蜂場の周辺では使用しない
スミチオン乳剤の主成分のフェニトロチオンは、水辺で暮らす甲殻類に対しては、強い毒性を示すので、水辺での使用は避けましょう。また、ミツバチにも殺虫効果が及ぶので、養蜂場の周辺での使用も避けましょう。
自動車やバイク、自転車の周辺では風向きに注意する
スミチオン乳剤の主成分であるフェニトロチオンは、自動車やバイク、自転車等の塗装面に付着すると、変色させたり、変質させることがあります。そのため、駐車場や駐輪場の周辺で使用する場合は、風向きに注意し、場合によっては、自動車やバイク、自転車にカバーをかけてから、散布するようにしましょう。
大理石や御影石にかからないようにする
スミチオン乳剤の散布が大理石や御影石にかかると、変色や変質が起こることがあります。そのため、墓地などで使用する際は、くれぐれも墓石にかからないよう注意しましょう。
まとめ
大事に育てている植物に、害虫がついてしまうと、本当にショックですよね。中には、病気を媒介する害虫もいるので、害虫を見つけたら、早めにスミチオン乳剤等で駆除することが大切です。
ただし、虫を殺すものですから、100%人間にとって無害ということはありえません。スミチオン乳剤を使用する際は、取り扱いに十分注意し、安全確保に努めることも、忘れないようにしましょう。
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