黒星病とは?
バラ科の天敵!気をつけたい黒星病
地植えのバラのほとんどに発生しやすいといっても過言ではない「黒星病」。 バラにとってはうどんこ病と並んでかかりやすい代表的な病気のひとつです。バラを育てているとほとんどの方が黒星病にかかってしまったという経験を持っているのではないでしょうか。さらにこの病気が厄介なのは、発生しやすい上に防除が難しい病気であるこということです。
黒星病=黒点病
特にバラの栽培においては、その黒い斑点が現れる症状から「黒点病」「ブラック・スポット」などという名前で呼ばれることが多い病気です。正式名称は「黒星病」ですが、バラを育てている方には黒点病の通称のほうが耳馴染みのある方が多いかもしれません。
黒星病の症状は?
葉や果実に黒い斑点が現れる
初期症状は葉や果実に小さな褐色の斑点が現れます。この斑点がどんどん濃くなって広がり、果実の場合はすす状のカビも発生します。若い枝にも褐色のしみが現れます。株元近くに発症することが多いため、気付いたらこの斑点ができていたなんてことがよくあります。
落葉して生育が悪くなる
症状が進行すると、葉が黄色くなりやがて落葉します。どんどん葉が落ちてしまい、丸坊主になってしまうことも。葉は植物の成長に大変重要な役割を持っていますので、落葉してしまった植物は生育が悪くなり、ひどい場合は枯れてしまうこともあります。
黒星病になりやすい植物は?
主にバラ
黒星病はほとんどのバラに発生しやすい病気です。中にはモッコウバラやミニバラのグリーンアイスなど黒星病が発生しにくいバラもありますが、バラの栽培にとって黒星病は切っても切れない縁といっても良いでしょう。
バラ科の果実も要注意
バラだけでなくバラ科の植物にかかりやすい黒点病ですが、ウメやモモ・リンゴやナシなどバラ科の果樹にも発生しやすく、生産者を悩ませる病気のひとつです。果肉には影響がなく発生部分を取り除けば食べられますが、葉が落ちて生育が悪くなる上に、見た目が悪くなってしまいます。
黒星病の原因とメカニズム
糸状菌(カビ)が原因
黒星病はカビの仲間の糸状菌が引き起こす病気です。 土壌中に潜む胞子が雨水の跳ね返りや昆虫などに付着してやってきて、葉から侵入し、葉からエネルギーを吸い取り始めます。その結果、黒い斑点が現れ、養分を取られた葉は黄変して落葉してしまいます。 また、糸状菌は温度の変化などでは死滅しないため、目に見えずに繁殖しやすい適温期になるまで隠れているのです。
古い葉の保護膜が破れて侵入
若い葉には薄い保護膜が張られていますが、成長した葉は降雨などの原因によりこの保護膜が薄くなったり剥がれたりしてしまいます。そこから胞子が侵入してしまうのです。またバラはトゲがあるため葉が傷つきやすく、傷口から胞子が侵入してしまうこともあります。
葉裏の気孔から侵入
また、保護膜や傷の対処に気をつけていても、葉裏の気孔からも菌が侵入しやすいのが黒星病の厄介なところです。跳ね返った雨水によって地中にいた菌が葉裏に付着し、胞子を侵入させてしまいます。このことが黒星病が容易に発症しやすい要因のひとつでもあります。
黒星病にかかりやすい時期はいつ?
4〜11月に発生しやすい
黒星病の原因となる糸状菌の胞子は、22〜26℃で発芽しやすくなります。そのため、暖かくなってくる春と涼しくなる秋に発症しやすく、さらに蔓延しやすくなるのです。逆に真夏の高温期や寒くなる時期には発生しても感染が広がることは少なくなりますが、菌が死んでしまうわけではないため、気温が下がる頃に発症してしまう恐れがあります。
特に雨の多い時期に注意
また、胞子が発芽するには表面が濡れた状態が7時間以上続くことも条件のひとつです。 梅雨や秋の長雨の時期に黒星病が発生しやすくなるのは、気温が適している上に濡れた状態が長く続くからだったのですね。また、水やりの際に葉に水をかけると発生しやすくなります。
黒星病対策①!かかってしまったときの対処法
病気の葉を取り除く
かかってしまったときの対処法はまず、早い時期に発見することが大切です。 黒い斑点がよく見えるころには病状がかなり進んでしまっていますので、早めに見つけて感染した葉を取り除きましょう。病気になって落葉した葉を株元に落としたままにしていると感染が広がる原因になります。
少しずつ取り除いて様子を見る
病気になっている葉を取り除いてしまうと丸坊主になってしまうときは、まだ症状が軽い葉を残し、株の余力を残し葉の入れ替えをしながら様子を見るのもひとつの対策です。また、もし葉が全部なくなってしまった場合も焦らず、根腐れを起こさないように水を控えながらゆっくり回復を待ってみましょう。
黒星病対策②!予防の方法は?
雨が当たらない場所では発生しにくい
黒星病の発生は水に濡れた状態が7時間以上続いたときによく起こります。したがって、雨が当たらない場所では発生しにくくなるのです。 鉢植えの場合、梅雨や雨の続く時期は軒下に避難させることが一番の予防対策です。庭植えの場合は、雨の後に葉についた水気を払い落としてあげるだけでも効き目があります。
丁寧に水やりをする
黒星病の菌は雨の跳ね返りによって感染することが多くあります。水やりの際は跳ね返りが起きないように丁寧に水やりすることも予防の1つです。また、水やりの際は葉に水がかからないようにしましょう。
マルチングをする
黒星病の菌は土壌中に潜んでおり、それらが水の跳ね返りによって株に付着するケースも多くあります。そのため、株元をワラやチップなどでマルチングしておくと大きな効果があります。また、定期的にマルチ材を入れ替えることも大切な対策です。
枯れた葉の掃除をこまめに
枯れた葉や病気にかかって落ちた葉はこまめに掃除しましょう。黒星病の菌はなかなか死滅しないため土に潜み、夏越えや冬越えをして適温になってから感染が広がってしまう原因になります。 古くなった葉をこまめに取り除いてあげておくことも予防になります。
日当たりが良く風通しの良い環境を
黒星病は日当たりが悪い場所を好みますので、日当たりの良い場所を選びましょう。また、葉が混み合っていると、水が乾きにくくなってしまい発症しやすくなってしまいます。混み合った枝は整理して風通しをよくしてあげると良いでしょう。
黒星病対策③!薬剤による防除法
治療薬はほぼない
黒星病には感染した葉を治療する薬剤はほぼありません。ラリー乳液やサルバトーレME液剤など感染初期に効果のある薬剤がありますが、斑点が肉眼で確認できる頃にはもう症状は進んでしまっているため、気付いたときに薬剤を撒いたり対処するのでは遅いということになります。
予防薬を使う
そのため、一番の防除方法は予防薬を使うことです。フルピカ、ダコニールなど主な予防薬として知られています。しかし治療薬も同様ですが、バラは同一の薬剤を連続散布すると耐性がついてしまいます。薬剤の年間使用回数を守り、複数の予防薬をローテーションで使用すると効果的です。
展着剤を使う
黒星病は葉を覆う保護膜が失われることによって感染することも原因のひとつです。アビオンEやスカッシュなど植物性ワックスと言われる展着剤をときおり予防薬に混ぜて散布すると、葉の保護膜が強化され菌の侵入を防ぎ高い防除効果が得られるとされています。
散布時期は芽出し前から
散布時期は冬の休眠が終わる2月下旬〜3月上旬、芽が出始める頃から1〜2週間に1回程度予防薬を散布すると高い効果があります。そのうちの4回に1回は治療薬を散布します。休眠期に入る12月〜2月の間は月に1回治療薬を散布すると翌春の症状を抑えることができます。
降雨の前後が効果的
黒星病は雨によって感染する可能性が高くなるため、雨の前後に薬剤を散布することが効果的です。雨の前には予防薬と時には展着剤を混ぜたものを、雨の後には初期症状に効く治療薬を予防薬に混ぜて散布すると発症を防除することができます。
黒星病対策④!土作りや栄養管理も大切!
黒星病に強い土とは?
黒星病は菌が風や昆虫によって運ばれ地中に潜み、それらがバラに感染することもあります。それにはまず、健康な土作りに挑戦してみるのもひとつの予防策です。 水はけをよくすることや土の弱酸性を保つことも黒星病の蔓延を防ぎます。
栄養管理で抵抗力を高める
株の栄養管理で病気への抵抗力を高めることも病気全般への予防策になります。カルシウムやミネラル分の不足は植物の抵抗力を弱めてしまう原因になります。また、バラが弱っているときに窒素分の多い肥料をやってしまうと黒星病菌が繁殖しやすくなってしまいます。弱ってきた株には肥料のあげすぎに気をつけましょう。
黒星病対策⑤!薬剤に頼らない防除法はある?
米ぬかが効く?
中にはあまり薬剤に頼らずに防除したい方もいるはず。そんな方は、米ぬかを試してみてください。米ぬかの持つ善玉菌が黒星病の菌に効くとされており、発症しやすくなる春と秋、2週間に1回程度の頻度で葉っぱの上から米ぬかを薄く振り撒きます。庭植えのバラには地面にも撒くと効果があると言います。
カニ殼が効く?
こちらも、放線菌という善玉菌を増やすことで黒星病を殺菌してくれるという効果があります。カニ殼は地中の放線菌の餌となり、放線菌の増加を促してくれます。市販のカニ殼肥料を土に撒くことで、バラを元気にしてくれる効果があるといいます。
かかってしまったら薬剤が効果的
しかし、どちらも予防効果は高くても、黒星病になった葉への対処には効果が薄いと言います。やはり定期的に治療薬の散布をしておくと、目に見えていない初期の段階で食い止めることができます。ただ予防薬などの薬剤の使用頻度を減らすには、こういった有機物を使ってみるのも良いですね。
黒星病になってしまったら焦らずに!
すぐに枯れることはない
黒星病はかかってしまってもすぐに枯れてしまうことはあまりありません。また、黒星病が原因で葉が全部落ちてしまっても、株自体が枯死してしまうに至るまでの脅威になることはあまり多くありません。そのため、葉がなくなっても枯れてしまった!と諦めてしまうにはもったいないのです。
様子を見ながら対処しよう
黒星病になってしまっても焦らずに、病気の葉の除去などの対処をして様子を見ましょう。かかってしまったからといって人為的に葉を全部落とさず、少しずつ落として新しい葉が出てくるのを待ちながら様子を見ます。葉が全部落ちてしまっても、暖かくなってくると新しい芽が出てきてくれますよ。
毎日の観察が一番の予防策
黒星病によってすぐに枯れてしまうことは少ないとはいえども、かなり蔓延してしまってはやはり手の施しようはなくなってしまいます。病気の防除には早期発見が大切です。毎日の水やりのときなど、普段からよく観察することがなによりの予防になります。
まとめ
黒星病はなかなか手強い病気ではありますが、こまめにお世話したり予防することで被害を最小に留めることができます。 黒星病は特にバラ科の植物にはつきものです。うまく付き合っていきながら栽培を楽しみましょう。
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