コナカイガラムシとは
コナカイガラムシとは、半翅目(はんしもく)コナカイガラムシ科に属する、白い小さな昆虫のことを言います。その名の通り、体はまるで綿毛のような白い粉状の分泌物で覆われていて、体は1.5~3mm程度のものがほとんどですが、存在感は抜群です。日本では、約60種が存在しているとも言われており、比較的メジャーな昆虫です。
コナカイガラムシは通常、足や触角があり、ダンゴムシのような見た目で、普通に歩き回ることができますが、一部のコナカイガラムシは、足が退化してしまうこともあると言われています。コナカイガラムシの見た目は白いですが、攻撃されると、白ではなく、オレンジ色~赤色の液体を分泌し、威嚇します。
コナカイガラムシとカイガラムシ
コナカイガラムシには、「カイガラムシ」という名称が含まれていることからわかるように、カイガラムシの種類の1つです。
しかし、カイガラムシは、成虫になると、カイガラ=硬い殻に覆われ、動かなくなりますが、コナカイガラムシは白い綿毛のような分泌物で覆われるだけで、分泌物はふわふわと柔らかいままなため、いつまでも動き回ることができ、カイガラムシの仲間の中でも、少し変わった性質を持っています。
コナカイガラムシが発生すると
コナカイガラムシの発生による被害
コナカイガラムシは、体長が1.5~3mmのものがほとんどなので、一見、ほこりやごみのようにも見えます。そのため、コナカイガラムシの存在を知らない人は、植物にコナカイガラムシがいても、気づかず放置してしまうかもしれません。しかし、コナカイガラムシは、植物へ悪影響を与える、立派な「害虫」なのです。
コナカイガラムシが、1匹でも植物についてしまうと、あっという間に繁殖し、その植物だけでなく、周りの植物にまで、どんどん広がっていってしまいます。そして、コナカイガラムシは、植物の汁を吸い、植物を急激に弱らせていきます。そのため、コナカイガラムシが大量に繁殖すると、最終的に植物を枯らしてしまうこともあるのです。
コナカイガラムシの排せつ物による被害
コナカイガラムシは、排せつ物によっても、植物にダメージを与えます。コナカイガラムシの排せつ物はべたべたと粘り気があるため、すす病の原因菌である「すす病菌」が排せつ物に付着し増殖すると、植物光合成を妨げ、葉や茎、果実をまるですすのように黒く変色させてしまいます。
コナカイガラムシが発生する原因
コナカイガラムシは、風によって運ばれてくることが多いと言われています。また、コナカイガラムシが一度屋内に入ると、人の移動などによる、わずかな風でも簡単に飛ばされ、周りの植物にどんどん移動し、繁殖してしまいます。
そのため、1つの植物でコナカイガラムシを見つけたら、周りの植物のチェックも行い、徹底的に駆除し、予防する必要があります。
コナカイガラムシの駆除方法1.薬剤を使用
薬剤による駆除方法1.殺虫剤
コナカイガラムシは、体がとても小さいため、見えにくい場所にも潜んでいることがよくあります。そのため、確実に駆除するためには、殺虫剤を使用するのがおすすめです。
ただし、コナカイガラムシの成虫は、白い粉状の分泌物におおわれているため、効果が出にくいとも言われているので、幼虫の間に発見し、殺虫剤を使用するのが一番効果的です。
また、コナカイガラムシは、越冬することもできるため、1度薬剤を散布して、見た目上死滅していても、しぶとく生き延びている可能性が非常に高いです。そのため、1度薬剤を散布した後も、1~2ヶ月の間は、2週間に1回程度は薬剤を散布するのがおすすめです。
コナカイガラムシの駆除には、「オルトラン」「スミオチン」「アクテリック」などの薬剤が有効だと言われています。コナカイガラムシが発生した植物や、発生状況により、適切な薬剤が異なってくるので、不安な場合は、ホームセンターのスタッフや、JAなどに相談してみるのもおすすめですよ。
薬剤による駆除方法2.マシン油乳剤
コナカイガラムシの成虫が大量に発生してしまった場合は、通常の農薬では、期待するほどの効果が出ず、完全に退治ができないこともあります。そういった場合は、「マシン油乳剤」がおすすめです。その名の通り、機械油を農薬にしたものなので、コナカイガラムシの幼虫や成虫に散布すると、窒息し、大量に退治することができます。
コナカイガラムシの駆除方法2.薬剤以外
無農薬の駆除方法1.捕殺
コナカイガラムシが数匹確認できる程度なら、1匹1匹捕殺することも有効です。普通の害虫の場合は、割りばしなどでも取れますが、コナカイガラムシは体が小さいので、先の細いピンセットの方が退治しやすいです。
コナカイガラムシは、死骸を放置していると、死骸から幼虫が生まれてきて、再び繁殖する原因になってしまうこともあるので、死骸は必ず袋などに入れて封をし、ごみに出すようにしましょう。
無農薬の駆除方法2.濡れティッシュや歯ブラシ
植物のつくりが単純で、ふき取りやすい形状の場合は、濡れティッシュや濡らした歯ブラシで、こすり取ることもできます。ただ、この際も、死骸を確実に取り除き、破棄するようにしましょう。
また、白い部分が完全になくなるまで、丁寧にこすり取らないと、再発生の原因になってしまうので、退治した後も、新しいコナカイガラムシが発生していないか、しっかり観察してくださいね。
無農薬の駆除方法3.天敵
コナカイガラムシには、天敵と言われている蜂がいます。「クワコナカイガラヤドリバチ」や「クワコナカイガラクロバチ」、「ルリコナガイガラトビコバチ」などの、小さい蜂が天敵とされており、コナカイガラムシ対策用に「クワコナバチ」が生物農薬として販売もされいます。
しかし、一般家庭用でわざわざ天敵の蜂を飛ばすことはできないので、天敵による退治方法は、果樹園などで利用されることがほとんどです。
無農薬の駆除方法4.シャワー
コナカイガラムシをある程度捕殺した後に、40℃くらいのシャワーをかけるのもおすすめです。庭の樹木などには不向きですが、鉢植えの観葉植物などはお風呂場に移動させれば、シャワーをかけることができますよ。
シャワーをかけると、葉っぱについたコナカイガラムシのべたべたした分泌物やほこりも一緒に洗い流せるので、コナカイガラムシがつく前よりも、植物が元気になるかもしれません。また、40℃程度のお湯をかけることで、卵も死滅させることができるので、温度設定には注意してくださいね。
コナカイガラムシの予防方法1.薬剤を使用
コナカイガラムシは確実に駆除しておかないと、年を越して何度も発生する可能性があります。そのため、冬の間に薬剤を散布し、再発生の原因を排除しておきましょう。
使用する薬剤でおすすめなのが、越冬中の成虫にも効果がある、「マシン油乳剤」です。冬の間、2週間に1度程度繰り返し散布することで、コナカイガラムシの再発生を予防することができますよ。
また、「オルトラン」などの粒状の殺虫剤を土に蒔いておくと、土の中に隠れているコナカイガラムシも含め、しっかりと退治してくれるので、再発生の予防に効果が期待できます。ただ、粒状殺虫剤を使用して、コナカイガラムシを予防する際は、小さいお子様やペットが触れないよう、十分注意してくださいね。
コナカイガラムシの予防方法2.薬剤以外
無農薬の予防方法1.木酢液
コナカイガラムシの予防方法として有名なのが、木酢液を使用した方法です。木酢液には、コナカイガラムシなどの害虫を退治する効果はありませんが、害虫が嫌う性質のため、木酢液を散布した植物には、コナカイガラムシが近寄らなくなります。ただ、木酢液を使用する際は、必ず適切な濃度まで薄めてから使用するようにしましょう。
また、木酢液は、繰り返し使用すると、耐性をもったコナカイガラムシが発生し、大量発生の原因になる場合もあります。何度も何度も繰り返しコナカイガラムシが発生する場合は、木酢液による予防のみに頼らず、いろいろな方法を組み合わせた方が、無難かもしれませんね。
無農薬の予防方法2.天敵
果樹園や庭など、広範囲にコナカイガラムシが発生した後は、先にご紹介した、「クワコナカイガラヤドリバチ」などの天敵を放つことで、予防効果が期待できます。
無農薬の予防方法3.植物の移動
コナカイガラムシは、風通しが悪く、乾燥している場所を好みます。そのため、駆除をした後に、植物を、風通しがよい場所に移動させてあげることも効果的です。
また、乾燥対策としては、葉水をこまめにしてあげるのもおすすめですよ。ただし、植物によっては、乾燥した環境を好むものもあるので、葉水の頻度は、植物ごとに調整してあげてくださいね。
コナカイガラムシが発生しやすい植物と見つけ方
コナカイガラムシは、カイガラムシ同様、野菜や果樹、草花にも発生しますが、観葉植物や多肉植物、サボテンなどにもよく発生します。ただ、コナカイガラムシは、白い小さい害虫なので、1匹ついていても気づけないことがほとんどで、ごみや埃として処理してしまうことも多いです。
そうすると、適切な駆除ができずに、大量発生の原因にもなりかねないので、もし白い小さなものの付着を見つけたら、葉っぱがべたべたしていないか確認してみてください。もしべたべたしていたら、それはごみや埃ではなく、コナカイガラムシです。
コナカイガラムシの生態
コナカイガラムシは、卵から生まれ、「1齢幼虫」「2齢幼虫」と形を変え、オスのみ蛹になり、成虫となります。
コナカイガラムシの生態は、まだはっきりとわかっていない部分もありますが、メスだけで繁殖が可能とされる「単為生殖」を行うことがわかっており、1匹でも植物に定着すれば、その周辺で大量発生することも可能だと言われています。
コナカイガラムシの主な種類
オオワタコナカイガラムシ
オオワタコナカイガラムシは、カキやリンゴ、ケヤキ、サクラ、カエデなどの樹木に多く発生するコナカイガラムシです。4月ごろに発生し、5月ごろには500~1200個の卵が入った卵のうを、樹木に産み付けます。
同じ薬剤を繰り返し使うと、効かなくなってしまうことも多いので、数種類の薬剤を用意し、順番に使うと、効果が高くなると言われています。
マツコナカイガラムシ
マツコナカイガラムシは、その名の通り、クロマツやアカマツなど、あらゆるマツに6月ごろ発生するコナカイガラムシです。見た目は他のコナカイガラムシ同様白い粉状の物質でおおわれていますが、体自体はオレンジ色です。
ツツジコナカイガラムシ
ツツジコナカイガラムシは、ツツジにのみ発生するコナカイガラムシです。ツツジの花が咲き終えた5月~6月ごろ発生し、ツツジの枝の付け根などで越冬します。葉っぱの裏に、白い細長い特徴的な卵のうを作るので、見つけ次第駆除すれば、大量発生を防ぐことができます。
コナカイガラムシを見逃さないようにしよう
コナカイガラムシは、小さくて見つけづらく、その上急激に繁殖することもあるため、普段から植物の観察をこまめにしておくことが大切です。
また、小さい虫ではありますが、放置すると、最終的に植物か枯死してしまうこともあるので、油断せずに、見つけ次第対策を講じるようにしてくださいね。いつまでも美しい状態の植物を楽しむためにも、コナカイガラムシの存在を見逃さないよう、しっかり目を光らせておきましょう。
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