麦草峠の概要を知る
八ヶ岳の麦草峠は、季節ごとに他にはない色んな不思議な魅力を見せてくれる場所です。麦草峠がどうして人々を引きつけるのか、その秘密は行けば分かるでしょう。
標高2,127メートル北八ヶ岳の山上に位置する
八ヶ岳は南北に長い山体で、中央アルプス、南アルプス、関東山地など標高2,000~3,000メートル級の山々に囲まれています。八ヶ岳は幾つもの山岳を有していますが、麦草峠は南側に標高2,496メートルの中山、北側に標高2,384メートルの茶臼山を配して、その間を東西に通過します。
麦草峠をメルヘン街道が通り抜ける
麦草峠を通る国道は、佐久盆地と諏訪盆地をつなぐ299号線です。最高地点は2,127メートルで、これは1992年までは日本の国道では日本一でしたが、現在では志賀草津道路に次いで2番目の高さです。通称メルヘン街道と呼ばれています。この名は八ヶ岳西方の蓼科高原と、八ヶ岳東方の八千穂高原をつなぐ景色が、ドイツのメルヘン街道のように美しいことから名付けられています。
冬にはノルディックスキーのコースになる
春から秋にかけてはデートコースになる麦草峠ですが、冬から春にかけては姿を一変させます。積雪量の多い八ヶ岳のメルヘン街道は閉鎖され、スノーモービルやノルディックスキーヤーが駆け抜けるスポットに早変わりするのです。冬山をじっくり長くスキーで滑りたい人は、麦草峠に行ってみませんか。
麦草峠までのアクセスと駐車場
八ヶ岳の麦草峠は関東の西、長野県にあります。とりあえず身近なバス路線、高速道路からのアクセスを見てみましょう。
麦草峠へバスや車でアクセスする方法
バスは冬季を除いて、JR茅野駅前から麦草峠へ向かう路線と、JR佐久駅から向かう路線でアクセスします。車の場合、西の茅野市側からは中央自動車道諏訪インターを降り、国道152号線を東進します。東側の場合、中部横断自動車道佐久南インターで降り、国道141号を南進、佐久穂町から国道299号を西へ向かいます。東京都心からは3~4時間でのアクセスです。
麦草峠で利用できる駐車場
麦草ヒュッテの利用なら、アクセスすべきは麦草峠駐車場です。ここは30台の駐車スペースがあってトイレも完備しています。無料ですが、観光シーズンは満車になりがちです。麦草峠で最大の駐車場といえば、麦草ヒュッテ東方の白駒池駐車場。こちらは有料で、大型車12台、普通車150台のスペースがあります。トイレのほか、おみやげ屋も備えています。
麦草ヒュッテの特徴
麦草峠に到着したら、登山者もハイカーも、誰もが目指すべき目的地な麦草ヒュッテ。国道が閉鎖されても1年を通じ営業している麦草ヒュッテに行ったら、こんな楽しみ方があります。
麦草ヒュッテは宿泊することができる
宿泊の場合には予約を入れて現地に赴きます。麦草ヒュッテの収容人員は88人、山小屋スタイルでは150人まで可能です。個室は全12部屋があり、相部屋の場合は1部屋100畳。広々とした空間で、素泊まりには最適です。大広間、食堂、浴場なども使うことができます。
麦草ヒュッテのおすすめメニューが待っている
宿泊客はもちろん、外来客でも立ち寄れるのが麦草ヒュッテの食堂ホールです。おすすめとされているメニューを見れば、クランベリーと木の実を使っている手作りの「こけももケーキセット」があります。そばやうどん、カレーや丼ぶりメニューも食べられます。団体客には和食の定食が用意されています。
1年中なにかのイベントが待っている
冬はクリスマスイベントから始まります。ウィンタースポーツの拠点となり、メルヘン街道が閉鎖されているので、スノーシュートレッキングや、ノルディックスキーも安全です。春から秋にかけては、近隣の苔の森の散策案内があります。それにサイクリストのサポートがあるので、完全に自転車乗りの季節です。6月の八ヶ岳開山祭、9月の麦草祭など、催しは事欠きません。
麦草峠の白駒池ってどんなとこ?
麦草峠の人気スポットの一つが白駒池(白駒の池)。ここは標高2,100メートル地点にありながら、休日には多くのハイカーが賑わう拠点です。一体何があるのでしょうか。
白駒池は季節ごとに様々に移ろいゆく
春は白駒池周辺の高山植物が花を咲かせ、夏にかけては池の周囲の苔の森のが綺麗です。日中には鏡のように森林や空の景色を映し、夜間に晴れていれば、夜空が湖面に映し出されます。冬になれば白駒池は凍りつき、雪の積もった池の上を散策できます。白駒池は、1年じゅう違う顔を見せてくれます。
白駒池の周囲を取り囲む貴重な苔の森
白駒池周辺の森林は、年齢を重ねた樹木や地面が不思議な苔で覆われていて、心を奪われる風景が続きます。ここは日本の貴重なコケの森として保護されている地域。人が原生林の中に入れないよう、ハイキングの時は板張りの遊歩道の上を歩きます。池の南に向かえば、地面に水を湛えた白駒湿原が現れます。
白駒池の白駒荘と青苔荘
白駒池にやって来たなら、湖畔で洒落た外観を見せる白駒荘や青苔荘に立ち寄るのが定番です。白駒荘は大正11年創業の老舗のお宿で、青苔荘は1960年台から営業しています。観光客が訪れて名物グルメを味わうこともできます。ここで貸しボートに乗れるのは白駒荘です。
麦草峠の高見石の景色
麦草峠から南方のハイキングコースをたどると、この付近の名所の1つ、高見石にたどり着きます。麦草峠を代表する眺望が良い場所であり、訪れたい小屋もあります。
ゴロゴロとした高見石に登ってみたい
麦草ヒュッテ前から高見石までの登山路は比較的緩やかです。50分ほどかけて歩けば、高見石小屋の隣接地で巨大な岩がゴロゴロと積み重なっている光景に出くわします。周囲の樹林帯の中で高見石だけが異質に、崩れた遺跡のような姿を見せています。日中は森のなかの白駒池が良く見える場所です。しかし岩の上は滑るので注意してください。
高見石小屋
標高2,300メートル地点の高見石小屋は、建物前に丸太と薪が積み重なって、いかにも山小屋といった雰囲気があります。食事付きの個室での宿泊、大部屋での素泊まりもできる施設です。八ヶ岳登山の拠点になり、秋にはどぶろく祭りがあるなどイベントが開催されたり、冬にはスノーシューやスキーのレンタルで遊ぶこともできます。
麦草峠のハイキングコース①
白駒池~高見石コース
出発地は麦草ヒュッテの駐車場か、白駒池駐車場になります。最初に東へ歩き、白駒の奥庭と呼ばれる岩と苔むした森林の遊歩道を通ります。やがて白駒池にたどり着けば、白駒荘や青苔荘での休憩時間です。池から南西に向かえば高見石の大岩と展望の名所で、高見岩小屋で一服できます。標高2,330メートルの丸山を超えて、北へ歩くとゴールです。
ハイキングコースの難易度と地図
白駒池から若干の上りになり、アップダウンのある場所、高見石の岩場などもありますが、1周およそ4.5キロと短めです。最短で2時間以内、途中でたっぷり休憩しても3~4時間で一周できます。難易度はもっとも低くて初心者に好都合です。
麦草峠のハイキングコース②
茶臼山周回コース
この前行ってきた北八ヶ岳ロープウェイから縞枯山と茶臼山に行ったときの写真。樹氷ってええなー。 pic.twitter.com/oEwpia4oJT
— かわうそだんご (@kawausodango) January 16, 2018
麦草ヒュッテ駐車場から、北側茶臼山を経て戻ってくる周回コースです。国道に沿ってハイキング道を西へ下ります。日向木場展望台の近くで国道を渡り、北に進路を取ります。五辻茶屋で休憩、ここから東の茶臼山へ登山ルートです。茶臼山では縞枯れ現象が見られ、山頂の茶臼山展望台からは壮大な八ヶ岳の全貌がはっきりと確認できます。帰りは麦草峠まで南へ下ります。
ハイキングコースの難易度と地図
前半は緩やかな斜面が続いています。茶臼山は標高2,384メートルで、500メートルほどの高低差はあり、茶臼山山頂部には急斜面も見られます。しかし全体のコースの距離が6キロと短いため、初心者からでも登山しやすいでしょう。
麦草峠のハイキングコース③
縞枯山・雨池コース
麦草峠から北の茶臼山を登れば、山頂で八ヶ岳の迫力に酔いしれ、縞枯山に入れば縞枯れ現象の不思議に出くわします。雨池は縞枯山東山麓にある、直径460メートル、周囲1.1キロほどの綺麗な湖です。そこから南へ下って麦草峠へと戻る、1周7キロの周回コースになります。
縞枯山は縞枯れ現象のメッカ
縞枯れ現象とは、何らかの理由で樹林の一帯が、しましま模様を残して枯れてしまう現象を言います。縞枯山の名はこの現象を現しています。樹林が一斉に世代の更新をしているなどとも言われます。全国的にも珍しい光景が、北八ヶ岳にはあります。
ハイキングコースの難易度と地図
茶臼山と縞枯山のあたりは急坂がありますが、それ意外は緩やかな傾斜が続きます。1周7キロなので早ければ3~4時間もあれば、麦草峠に戻ることができて、初心者向きです。
麦草峠のハイキングコース④
にゅう・天狗岳登山コース
北八ヶ岳最高峰の天狗岳(標高2,646メートル)を目指す片道5キロ、全長10キロのコースです。麦草峠を出発し、白駒池を経て、にゅうっと何かが出そうな苔の森のにゅう(標高2,352メートル)を通ります。天狗の奥庭と呼ばれる奇岩と池の風景や、天狗岳山頂からの景色が魅力です。帰りは中山(標高2,496メートル)を通過し、高見石小屋に立ち寄ることもできます。
黒百合ヒュッテ
天狗岳の手前にある黒百合ヒュッテは、登山者の宿泊と休憩に欠かせないオアシス。1956年からこの地で通年営業しています。黒百合平で6月になると黒百合が咲き誇ることから、ヒュッテの名前になりました。まるで平野部のファミリーレストランのように料理のメニューは充実しています。各種の音楽コンサートを開く山小屋としても有名です。
ハイキングコースの難易度と地図
にゅうに差し掛かる頃には、勾配の急な坂道が多くなり始めます。天狗岳の山頂は急勾配の岩山になっているので、てっぺんまで登るにはヒヤヒヤします。中級者以上におすすめなコースです。
麦草峠の周辺で訪れたい温泉
ハイキングや登山の後には、麦草峠周辺の温泉で疲れを癒やしてみてはどうですか。近くのおすすめ温泉をご紹介します。
石遊の湯(いしやすのゆ)
メルヘン街道を西へ下った先の、茅野市の蓼科高原カントリークラブのそばにある温泉です。松林に囲まれた中で、男湯、女湯、休憩室の3つの山小屋風の建物があり、温泉は内湯と露天風呂があります。鉄鉱山から湧き出たというお湯は、アルカリ性でお肌スベスベになるとの評価です。
星空の湯りえっくす
星空の湯 りえっくす。
— よちこ (@honmangen) September 11, 2016
山の中の巨大なリゾート施設にある温泉です。
シャレオツな雰囲気だし露天風呂は絶景だし湯の花の舞う源泉浴槽もあるし湯上りにアイスキャンデーがサービスだし。最高。 pic.twitter.com/q7VWtp0qXF
メルヘン街道を東に向かうと、標高1,450メートル地点に、小海町の小海リエックスがあります。ここはスキー、ゴルフ、ホテルなどの利用ができる一大リゾートです。その中の温泉施設「星空の湯りえっくす」は日帰り入浴が可能です。源泉かけ流しの内風呂、浅間山や佐久平を一望できる露天風呂は、炭酸水素塩温泉で体の病気や疲れも吹き飛びそうです。
麦草峠にハイキングに行ってみよう
メルヘン街道で訪れる北八ヶ岳の麦草峠は、知れば知るほど訪れたくなる場所でした。大自然の景色の中をハイキングするなら、どのコースを辿ってみたくなりましたか。麦草ヒュッテを始めとする小屋を訪れて、宿泊することを目的にしてもいいでしょう。麦草峠だったら、休日の楽しみ方は人それぞれに広がります。
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