中国の崋山「長空桟道」の位置
中国の華山の位置ですが、中国陝西省華陰市にあります。もっと解りやすく言えば、その昔「花の長安」と言われた国際都市だった中国の西安から東方向に210キロの位置にある山岳地帯にあります。この華山の場所から西北の位置には黄河が流れています。
中国華山も含まれる5名山(五岳)について
崋山は5名山(五岳)のひとつで、これは中国の道教の聖地とされる5つの山の総称を表しています。陰陽五行説に基づき、木行=東、火行=南、土行=中、金行=西、水行=北 の各方位に位置する、5つの山が聖山とされ、それぞれ次の山がそれに該当します。東岳泰山・南岳衡山・中岳嵩山・西岳崋山・北岳恒山。つまり崋山は西側の山となります。
西岳崋山について
西岳崋山の構成
西岳崋山は天下一の険しい山とされ、花崗岩(かこうがん)の岩山で、華山主峰の落雁(らくがん)峰(南峰2,154m)、蓮花(れんか)峰(西峰2、080m)、朝陽(ちょうよう)峰(東峰2,100m)、北峰(1,614m)、中峰(2,037m)からなります。北は黄河を俯瞰(ふかん)していて、南は秦嶺(しんれい)山脈に連なっています。
西岳崋山は山麓から山頂まで見どころ多し
中国北魏時代(6世紀)の地理書『水経注(すいけいちゅう)』によると、『遠くからこれを望めば花の形に見える』との記載が残されています。岩山で構成されている西岳崋山には名勝旧跡が多くあります。仙人の山と言われ、山麓から山頂までの至る所で、廟宇(びょうう)と呼ばれる先祖や偉人の霊をまつる修道院の遺構や素晴らしい景色を眺望することができます。
一本道に雲を突いて架けられた長空桟道
崋山は昔より「一本道」と言われます。この岩山には南北に通じる道は約10km一本道が続いてます。その中に、今最も話題となっている、長空桟道(ちょうくうさんどう)をはじめ、絶壁に穿った全身巌(ぜんしんがん)、他に蒼龍嶺(そうりゅうれい)、南門、金鎖関(きんさかん)、天梯、劈山(びーしあん)救母石などの名所、修道院があります。
中国崋山は宗教聖地の場
険しい岩山で行くことができなかった中国歴代皇帝
華山は岩山でその険しさのあまりに、500年前まで登山道の開発がされない仙人だけが訪れた未開の山です。本来中国では、皇帝が即位すると、道教の名高い山に登って式典「封禅(ほうぜん)」を行うのですが、この西岳崋山だけは皇帝が昇ったことがなく、儀式を行いませんでした。清朝に入ってから、山麓に道教の廟を建立し、その廟で、封禅の儀式を行った記録が残っています。
道教の華山派と仙人
「西岳華山」は、その険しい岩山から道教の聖地とされていて多くの修道院があります。華山を本拠とする華山派という道教の宗派が唐宋時代に登場して活動していました。そこには「仙人」と呼ばれた陳摶が代表的な人物です。 また、現実とは違う「武侠小説」で名門の一派としてこの華山派が登場します。
中国崋山は修行の場
金庸(きんよう)の武俠小説『射鵰英雄伝(しゃちょうえいゆうでん)』、『神鵰剣俠(しんちょうけんきょう)』で語られる五大武術家のことを「天下五絶」と言い、武術による選考会「華山論剣」で、雪の積もった華山山頂で最強の侠客を目指して闘い決定します。あくまで小説の話ですが、それだけ西岳崋山が岩山の険しい仙人の山だから武術の修行の場としての顔があればの事でしょう。
中国・西岳崋山の行き方
中国西安から鉄道で1時間ほどで行ける華山
修行の山であり、宗教の聖地である岩山「西岳崋山」一見、険しい山なので行くのが困難なようにも感じますが、驚くほど簡単に、それも日帰りで景色を楽しむことができます。観光地としても大人気なのです。起点は西安で、最も簡単に行く方法は西安北駅から高速鉄道に乗って40分位で華山観光の入口(華山北駅)に到着します。
中国西安から高速鉄道とバスを乗り継ぎ華山に到着
華山北駅からシャトルバスが出ています。ちなみに気軽に行けるとはいえ、岩山で構成されている華山を歩くためには、軍手が必須で、もし忘れた場合はこの崋山北駅で購入します。シャトルバスは約30分で華山遊客中心に到着します。バスを降りてから広場を突っ切り、ツアーセンターに向かいます、崋山の入場券(夏季180元、冬季100元、2日間有効)を購入します。
中国華山のロープウェイは二か所ある。
華山には素晴らしい景色が見られるロープウェイが繋がっていて、非常に便利に山を登ることができます。このロープウェイも北峰、西峰と2か所あり、華山遊客中心から北峰もしくは西峰のロープウェイ山麓駅までシャトルバスに乗って向かいます。ロープウェイ乗り場までの所要時間は、北峰の方が30分西峰が40分くらいかかります。
中国華山登山①:北峰と天の階段と金鎖閣
ロープウェイで北峰へ
北峰ロープウェイは一気に標高1,600mの北峰山頂付近まで10分程で駆け上がります。ロープウェイを使わず徒歩で登れば最低でも3~4時間かかります。ロープウェイを降りると、素晴らしい景色が広がり、北峰の山頂まではそれほど遠くありません。ただ標高1600m地点だけに空気が薄く感じられます。
天の階段を登る
北峰から「天の階段」を登って蒼龍嶺をめざします。斜め45度の急傾斜が延々と続き、左右両側は断崖絶壁になっていて素晴らしい景色が見えます。ナイフの刃先を歩くように、400mを一気に登ります。階段が整備されてるので、本格的な登山用具など不要です。蒼龍嶺は上り専用ですので、東峰方面から下りの人は別ルートなので注意してください。
天の階段の上に金鎖関。各峰々の分岐点
約1時間半くらいかけて蒼龍嶺を登りきると金鎖関という門が現れます。ここは西岳崋山を構成する各峰々に向かう分岐点になっています。右方向が西峰・南峰方面、直進が中峰・東峰方面となり、自由に登山ルートを決めることができます。
中国華山登山②:雲梯から東峰へ
鎖で這い上がる雲梯
金鎖閣の分岐点から直進しすると標高2000mを越える中峰に到着します。さらにここから東峰方面に進むことができます。ここには「雲梯(うんてい)」と呼ばれる東峰名物が現れます。これはほぼ垂直の崖を、鎖を頼りに這い上がる必要があります。ただ危険なので、雲梯の左側に階段があります。
東峰とさらに険しい登山道
雲梯を上がって暫く進むと、東峰が見えてきます。東峰は朝陽峰(朝阳峰)とも呼ばれ、景色が素晴らしく東から登るご来光を見るスポットとして有名です。この東峰からはさらなる断崖絶壁コースあります。垂直の切り落としをはしごを伝って降りていく下棋亭という場所です。但しこのあたりは天候によって立ち入り禁止になることがあるので、注意が必要です。
中国華山登山③:南峰と西峰
東峰から南峰に向かう途中に長空桟道の登山道がある
東峰から南峰には挟まれた窪地まで降りる必要があります。南峰に向かう途中で、世界一危険な「長空桟道」に向かう登山道があります。また華山の登山コースにははルート上の所々に売店や飲食店、宿泊施設があるので、食べ物を調達できたり宿泊できるので非常に便利が良いです。
華山最高峰「南峰」とロープウェイの駅がある「西峰」
南峰は西岳崋山の山々の中でも最も標高が高い山で2154.9mあります。東峰側からの登山はかなり厳しい道になっています。ここからロープウェイの駅がある西峰方面に向かうには、尾根伝いに歩いていき、最後にちょっとした岩を越えれば景色の素晴らしい頂上です。西峰の標高は2082.8m。ここから50mほど下るとロープウェイの駅になります。
中国華山登山④:「長空桟道」への道
長空桟道の入場料30元
世界一危険な登山道「長空桟道」ここは大人気なので、トライする人たちの行列ができています。標高2,000mの断崖の行列これ自体も「世界一危険な行列」ですね。それから、長空桟道は入場料が必要です。1人30元をスタッフに支払います。バッグなどの荷物はもちろん持ち込み禁止なのですが預かってくれます。
長空桟道を歩くための命綱「ハーネス」
世界一危険な「長空桟道」に行列ができる程人気な理由として、ハーネス(命綱)の存在は欠かせません。入口で入場料を払うと上半身につけてもらいます。これにはカラビナ(開閉できる部品がついた金属リング)が2個ついており、これを崖に這わされたワイヤーに繋いで、安全を確保します。
ハーネスの取り扱い注意
ハーネスによって安全が確保され、万が一足が滑っても滑落することはありません。しかし、細心の注意が必要で、カラビナをワイヤーから取り外し、別のワイヤーに移すときには、必ず一つずつ取り外します。つまりどちらか一方のカラビナが常にワイヤーにつながれている状態にします。(一瞬でも両方が外れていたら非常に危険)
中国華山の世界一危険な登山道「長空桟道」
一方通行ではない
ハーネス(命綱)がついているとはいえ、この長空桟道が世界一危険と言われていることの一つに、「一方通行」ではないのです。実はそのまま長空桟道を先に進むと修道院があって行き止まりです。だから来た道を引き返すのですが、行列ができるほど人気でただでさえ混んでいるのに反対方向の人を途中でやり過ごさないといけません。そこには味わいたくないスリルがあります。
長空桟道本体に到達前も世界一危険な道
ハーネスを取り付けた場所から歩いてすぐに難所のようなところにぶつかります。幅50cm程度の垂直に割れた岩の隙間を真下に向って降りる必要があります。足場は設けられているので進みやすくなっていますが、垂直に降りていきます。その隙間を過ぎるとと、次は崖に足場が直接彫られていて、それを使って今度は水平方向に10m近く歩く必要があります。長空桟道はこの後に登場します。
世界一危険な長空桟道にいる商売人
長空桟道には、崖沿いに桟道が設置されているのですが、幅は50cmあるかないかです。その上、木製なので、足を踏み入れると、軋むような音が鳴るので、非常に怖さを感じます。ところがこんな危険なところに商売をしている人がいます。カメラ撮影の商売のようです。これは世界で一番危険な商売人ですね。長空桟道を抜けると修道院と広場が見え、行き止まりなのでそこから同じ道を戻ります。帰りは同じ道なので行きよりは少しだけ景色を楽しめそうです。
長空桟道の動画
世界一危険と言われている長空桟道の動画があります。ハーネスがあるとはいえこれは見ているだけで怖いですね。
長空桟道を楽しむ為に大切な事
世界一危険な登山道「長空桟道」を楽しむために以下の点を注意してください。 1. 軍手は必須です。(手に汗がにじみ滑りやすく、鋭い岩や鎖を常に握ります) 2. 事前にトイレは済ませます。(長空桟道の手前にトイレがあります) 3. 服装に注意してください。(ハーネス装着後、服の脱ぎ着が出来ません) 4. 高所恐怖症の人や体力に自信のない人は辞退。(自信のない人は挑戦しないで下さい)
中国華山の修道院
中国華山には、多くの道教の修道院があります。その中でも世界一危険な長空桟道の先にある修道院が有名です。そこは、テニスコート半分ほどの小さな広場で、修道院と言っても道教の祠の様なものがあります。ここに向かうだけでも非常に危険なのになぜこんなところに?宗教施設は不思議なものですね。
中国崋山「長空桟道」の転落死のリスクは?
ハーネスをつけていれば安全と一応言われていますが、それでも1ヶ月平均10人ほどが転落死している記録が残っています。どういう理由で転落したかと言った詳細情報がないので、憶測になりますが、場合によってはふざけてハーネスをつなぎとめるカラビナを取り外した一瞬に起きたことかもしれません。世界一危険な長空桟道。慎重に歩きましょう。
中国崋山「長空桟道」を命綱無しで歩く無謀な男の動画
この動画は、見ているだけでも怖いと感じる程、無謀な事をしています。実際に転落事故は起きていて落ちたら即死ですから、間違っても真似はしないでください。
中国崋山には古来の仙人に思いをはせて
ロープウェイ未開通頃の仙人修行の登山
西岳崋山の現在は、ロープウェイが開通したので気軽にハイキング気分に山の上に上がることができます。しかし未開通の昔は花崗岩の岩山を削って作ったという階段で修道院目指して登る必要があります。その階段は6000段あるらしく、それも角度が90度に近いので階段というよりクライミングの感覚の登山。まさしく仙人修行の登山です。
ロープウェイから見渡せる素晴らしき景色
北峰に向かうロープウェイの眼下の谷底からかつての参道が見えます。かつては山を登るだけで数時間かかったものが、10分程度で一気に上がることがで、景色も素晴らしく気軽に仙人の後ろ姿を見ることができます。 料金は、夏季(3~11月)片道80元、往復150元、冬季(12~2月)片道45元、往復80元です。
2013年に登場した西峰ロープウェイ(太華索道)
2013年西峰にもう一本ロープウェイ「太華索道」が完成。開業当時は世界一の規模で、これにより華山の5つの峰と長空桟道へのアクセスが便利になりました。6人乗りで一気に標高2000mまで上昇し、所要時間は20分。90度位の角度の印象で上がります。景色の素晴らしさは北峰ロープウェイを越えます。 料金は夏季(3~11月)140元、冬季(12~2月)120元です。70歳以上は半額です。
華山に孫悟空が閉じ込められた?
華山の伝説の一つに、西遊記の孫悟空が登場します。三蔵法師と出会う前、天上界でいたずらで大暴れしたために釈迦によって岩に閉じ込められた山とされます。華山はそれだけ険しい仙人修行の岩山、修道院も数多くある聖地。ちなみに孫悟空のモデルと言われているゴールデンモンキー(キンシコウ)の生息地の一つです。
中国崋山の基本情報
華山(かざん、中国語: 華山/华山、拼音: Huà Shān ホワシャン) 中国五名山の一つ(西岳) 所在地 中国陝西省華陰市 位置 北緯34度29分00秒東経110度05分00秒 華山遊客中心(崋山ツアーセンター) 中華人民共和国 Shaanxi Sheng, Weinan Shi, Huayin Shi, 华山景区生态广场 +86 400 091 3777 夜間はライトアップされ、登山可能(ロープウェイの営業は夕方まで)
まとめ
険しい岩山で、かつては、宗教の聖地として多くの修道院が建てられ、仙人の修行の場だった西岳崋山。今は2か所にロープウェイが開通し、仙人や選ばれた登山者以外でも気軽に素晴らしい景色を見ることができるようになりました。そして世界一危険な登山道として脚光を浴びた長空桟道。体力に自信がある方はその恐るべきスリルを味わう価値は十分にあるでしょう。