デトロイトの治安は悪いか
他の国の治安を語る際に、噂だけを信じて「治安が悪い」といってしまうのは、私は良くないことだと思っています。ですので、今回は客観的な視点から語っていきます。結論から言いますと、かなり悪いです。アメリカという国は日本よりも犯罪発生率は多いですが、その中でもかなり治安が悪いといえます。
治安と人々の賑わい
治安というのは、そこに住む人が多いと悪くなる傾向にあります。住んでいる人が少ないと互いを監視できるため、犯罪を犯す際に発見されるリスクが高まるからです。
ですが、逆に人口密度が高くなると一人一人が監視し合うという環境ではなくなるため、犯罪を犯す際に発見されるリスクが低くなります。ですので「○○だから治安が悪い」という考え方ではなく「人が多く居るということは治安が悪いかもしれない」と考えることが大切です。
デトロイトの犯罪率
デトロイトの犯罪率を調べてみると、その圧倒的な治安の悪さに驚かされることになりました。たとえば殺人事件の発生率は全米平均の9倍です。アメリカという国自体犯罪が多い国であるにもかかわらず、その平均の9倍をいくわけですから、かなり治安が悪いといえます。
そして強姦は約3~4倍ですので、女性には観光にオススメできないといわざるを得ません。また特徴的なのが、車両盗難が約8倍という点です。これは次に紹介する主要産業と密接にかかわっているといえます。
何故ここまで治安が悪いのか
デトロイトの治安が悪い理由は、推察するに廃墟が多いという点です。いわゆるゴーストタウン化した廃墟が増えてしまったため、そこが悪人たちの巣窟になってしまっているのです。
これはたとえば犯罪都市として名高いベイルートやモガディシュでも同じことが言えます。人の管理が行き届いていない場所というのは、犯罪の温床になりやすく治安の悪化を招いてしまうのです。
デトロイトの主要産業
デトロイトの主要産業は、車です。かつては自動車工場の街として栄え、多くの労働者たちが働く活気ある街でした。今でもアメ車が好きだという人はいますが、その燃費の悪さから多くの人が離れて行き、衰退してしまったというわけです。
デトロイトの衰退とファッション
デトロイトの衰退は、実は日本の一部のファッションにおいてはある意味で重要な転換期でした。それはヴィンテージの市場です。デトロイトが衰退すると多くの労働者たちが職を失うことになります。その結果、彼らがかつて何十年も身にまとっていたワークウェアが、ヴィンテージアイテムとして日本に流入してくることにつながったのです。
廃墟の正体
先述のように、デトロイトは廃墟が多いです。この廃墟が犯罪の温床になっているわけですが、この廃墟の正体がかつての自動車産業を支えた自動車の部品を作るような工場なのです。
工場勤務というと日本では危険と見まれてあまり好まれない職種ですが、かつてのアメリカでは人気職のひとつで、多くのフリーランスエンジニアが各工場と契約し働いて大金を稼いでいたのです。まさに、アメリカンドリームですね。
デトロイトと日本の関係性
デトロイトは、実は日本とも深い関係性があります。自動車産業は、日本の経済を支える大きな産業のひとつです。これだけを見ても関係性があるように思えますが、実は日本の豊田市とデトロイトは姉妹都市の関係にあります。
豊田市といえば、日本最大の自動車企業であるトヨタのある市です。同じ自動車産業都市という関係性もあるため、デトロイトは日本とも深い関係があるのです。
豊田市も治安が悪くなる可能性を孕んでいる?
一部の識者の中には、デトロイトを例に「豊田市も治安が悪くなる可能性がある」と言う人も居ます。豊田市の経済は、トヨタ関連が深く関わっているからです。では実際のところどうなのかというと、治安が悪くなるということは無いでしょう。
デトロイトの自動車産業が衰退していったのは、ハッキリ言ってしまえばアメ車という固定観念に縛られすぎて「燃費を良くする」というようなユーザーの視点に立ったものづくりをしなかったからです。
さらに言うと、日本は内需で成り立っている経済状況であり、多くの人は「メイドインジャパン」に信頼感を持っているので、トヨタが破産して豊田市が廃墟だらけのゴーストタウンになるということはないといえます。
デトロイトはいつから治安が悪い?
デトロイトの治安悪化が始まったのは、1967年のアフリカ系アメリカ人によるデトロイトでの暴動がきっかけという見方があります。この暴動により多くの死傷者、とりわけ白人の死者が多かったため白人がデトロイトを脱出する「ホワイト・フライト」が始まりました。
さらに、1970年になると安全性やコストパフォーマンスの面から非常に優れた日本車がアメリカに流入してきたため、アメリカの自動車産業は現在も続く不振状態に陥ります。
治安悪化にどう対処していったのか
当然、このような事態をアメリカは黙って見ていたわけではありません。1970年代に、この治安悪化を打開するために、ダウンタウン周辺の高層ビルを多く建設していきます。しかしこれもうまくいきませんでした。ゴーズトタウン化した地域との差別化が如実に表れる結果となったからです。
1990年に入ってからも、都市再生を図りあらゆる手段に出ますが、結局のところダウンタウンでのみ行われ周囲の廃墟などにはほとんど手付かずであったため、結局現在も治安が悪く、廃墟やゴーズトタウンが多いというわけなのです。
デトロイトはヒップホップの原点
実はデトロイトは、この21世紀のヒップホップの原点ともいえる場所です。アメリカのラッパーでもっとも有名な「エミネム」の原点が、ここデトロイトだからです。
彼の半生を描いた「8mile」にもあるように、彼はここデトロイトで子供のころから悲惨な生活を送りながらもヒップホップに出会い、そしていくつものヒップホップコンテストで優勝することになります。
治安と差別
危険で治安が悪い地域というのは、結果として差別されてきた側の人間が集まってくる傾向にあります。もっとも単純な差別に「人種差別」というものがあり、ここデトロイトに黒人が多く住んでいるのもそういった理由があります。
しかしそれ以外にも「貧困」も差別の対象になり、ここデトロイトでは貧困にあえぐ白人も多く居ます。先述のエミネムがまさにそれです。これは現在でも状況は変わっていません。
治安と文化
ヒップホップのように現状の打破や反体制意識の強い文化は、治安が悪いところで育まれていく傾向にあります。デトロイトに限らずアメリカという国は比較的治安が悪いです。だからこそ、こういった様々な文化や娯楽が発展していったといえます。
現在の治安の象徴
このヒップホップという文化は、現在のデトロイトの治安や危険性を象徴する上では欠かせない文化の一つだといえます。ただ危険だからという理由だけで忌むのではなく彼らが楽しんでいる事を知ることも大切なのです。
デトロイトを有名にした映画
デトロイトを有名にした映画といえば「ロボコップ」です。全身を機械化した人間、今で言うサイボーグが警官となりデトロイトの治安を守るというヒーローものですが、実はロボコップはデトロイトの現状を予見していたというファンが居ます。
確かに、作中では犯罪率が極めて高くなったデトロイトが描かれており、当時1987年に「2010年にデトロイトが破産手続きを申し入れた世界」を描いていたわけですから、製作陣の視点の鋭さには驚かされます。
廃墟と映画
日本にも、ゴーストタウンとは行かないまでも多くの廃墟があります。実はこの廃墟の一部が、映画やミュージックビデオの撮影などに貸し出されているのです。特にホラー映画などでは引く手数多といった感じで、大変重宝されています。デトロイトのゴーストタウンも、近い将来こういった形で使われる可能性があるかもしれません。
デトロイトの治安を良くするには
治安を良くする方法にもっとも長けているのが、実はアメリカです。かつて「旅行者は絶対に乗ってはいけない」とまで言われたニューヨークの地下鉄は、今では多くの観光客も利用しています。
なぜそこまで治安を良く出来たのかというと、アメリカは地下鉄に対して浄化作戦を行ったからです。徹底して落書きを消し、ゴミを回収しきれいにした結果、治安がよくなったというわけです。
デトロイトの場合、廃墟がゴーストタウンと化しているため範囲が広すぎるという面がありますが、同じように浄化作戦を行えば治安がよくなるでしょう。
ゴーストタウンと治安
廃墟が密集して出来るゴーストタウンですが、たとえば日本の場合は心霊スポットとして扱われる場合が極めて多いです。しかしデトロイトにあるゴーストタウンの場合、犯罪の温床となってしまっています。
なぜ、同じゴーストタウンでもここまで差が出てしまうのかというと、やはり「失業率」の問題です。日本の場合、GDPが低いと揶揄されがちですが失業率は圧倒的に低いです。これは国民の一人一人が職にありつけられている現状があるがゆえに、国民総生産(GDP)が大勢の人間によって割り振られているからであるといえます。
アメリカの場合はその逆で、日本よりもGDPは高いですが失業率も高いです。これは逆に有能な人材が職にありつくことが出来ているがゆえにGDPが高くなり、しかし失業率も高くなってしまっているというわけです。
つまり何が言いたいのかというと、失業してしまった人たちがゴーズトタウンに住み着き、そして犯罪の温床となってしまっているというわけです。ですので単に「ゴーズトタウンを無くす」というだけでは危険性が取り除かれることは無く、治安も悪いままということになります。
デトロイトは観光に不向きなのか
現在でも治安が悪く、そして廃墟郡と化したゴーストタウンが多く点在するデトロイトですが、では観光には不向きなのでしょうか。私は決してそうは思えません。デトロイトには観光スポットがいくつもありますし、そういった場所の治安は比較的良いです。
中には「ゴーストタウンを巡って見たい」という廃墟マニアの方もいらっしゃるかもしれませんが、こういったゴーストタウンがスラムと化し犯罪の温床になるということは昔も現在も変わりません。ですので一般的な観光スポットを巡ったほうが良いでしょう。
観光スポットの治安
では、観光スポットだからといって大手を振れるほど危険性は無いのかというと、そうでもありません。観光客を狙ったスリや強盗などは他の観光スポットと比べると現在でも多く、危険性は高いといえます。ですので、観光スポットであっても現在でも危険性はあるという事を頭に入れた上で、気を引き締める必要はあるでしょう。
デトロイトのオススメ観光スポット1
デトロイトでもっとも有名な観光スポットが、デトロイト美術館です。展示物も多く、以前には日本文化展が開かれたこともあります。そのときは多くの人々が訪れ、大変な賑わいを見せてくれました。
デトロイトのオススメ観光スポット2
20世紀初頭に作られたガーディアンビルディングは非常に美しい建造物として有名です。現在のような高層ビルではなく、多くの装飾が施されていて圧巻の一言です。現在でも人気の高いインディアンのモチーフが使われていて、歴史の重みを感じさせてくれます。
デトロイトのオススメ観光スポット3
The Ford piquette avenue plant は、デトロイトの観光には欠かせないスポットです。かつてフォードが製造していた自動車を見ることが出来るのですが、クラシックカー好きにはたまらない名車が多く展示されています。まさにデトロイトの歴史そのものといえるでしょう。
デトロイトのオススメ観光スポット4
数々のアーティストたちの衣装などが展示されているモータウン歴史博物館は、洋楽好きにはたまらないのではないでしょうか。録音スタジオまでそのままの形で残されているため、大変楽しめます。
デトロイトのオススメ観光スポット5
デトロイトだけでなく、アメリカという国の歴史を知るには欠かせないスポットが、ここアフリカ系アメリカ人歴史博物館です。日本に居る私たちが余り知る機会の無い黒人差別の歴史を知る機会でもありますので、ぜひ足を運んでみてください。
まとめ
今現在も残念ながら治安の悪く危険なデトロイトですが、観光スポットも多く点在していて見所が多い街でもあります。そして多くのアーティストたちが自分たちの境遇に省みず、成功していくための原点となった街でもあるのです。
アメリカという国が好きな人であれば、訪れて損は無い街だと思います。単純に治安が悪いからというだけで観光から外すのはあまりにももったいないなと、私は感じました。ですが、治安が悪い事もまた事実です。油断していると命が危険にさらされることになります。
ですので、観光の際は絶対に廃墟などのゴーズトタウンには近づかずに、キチンと整備された観光スポットのみを巡ることを心がければ安全です。ぜひ一度、訪れてみてください。
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