イシガキダイの分類
スズキ目、スズキ亜目、イシダイ科、イシダイ属
イシガキダイはイシダイ属に属し、7種が世界の熱帯、亜熱帯域に生息し、日本ではイシダイとイシガキダイの2種です。
イシガキダイの外国名
Spotted knifejaw
英名「Spotted knife jaw」と呼びます。イシガキダイの幼魚は特に顕著な斑紋模様(Spotted)を指した英語名です。knifejawはナイフのような顎ですのでイシガキダイの鋭い口と歯を指しています。近縁種のイシダイは「Barred knifejaw」で縞のあるナイフのような顎の魚です。
イシガキダイの学名
Scientific Name
学名は「Oplegnathus punctatus 」です。ギリシャ語の命名で、Oplegnathusは蹄のようなという意味で、丈夫で巨大な口と歯を指しています。punctatusは斑点があるという意味です。 命名者はTemminck(オランダの動物学者) Schlegel(ドイツの動物学者)にて1884年に命名されています。
イシガキダイの名前の由来
石垣鯛
イシガキダイは模様が石垣に似ている所から命名されています。石垣島でも良く釣れて人気の釣魚で混同されますが、由来は模様です。ちなみに沖縄地方のイシガキダイの呼び名はガラサーミーバイです。ミーバイ=ハタ科では無いですが…
イシガキダイの分布
温帯から熱帯域
イシガキダイは国内では東北地方から(日本海側では北陸より南)南の海です。暖かい海域を好み生息し、南伊豆沿岸、伊豆諸島や高知以南や南西諸島で大物の釣果が有名です。
暖流がぶつかる長崎県の五島列島も有名な釣り場で多く生息します。また、日本の最南端の日本では唯一の熱帯域の、沖ノ鳥島での確認もあります。
イシガキダイの生息域
イシガキダイの生息場所
3ḿ~135ḿの海域で確認されています。藻場があるような磯の沿岸から南洋のサンゴの海域で生息しています。成体になると底生生活になり、岩穴に好んで棲む傾向があります。捕食活動で広域に活動し、深海から磯のサラシ場(波が岩にぶつかる場所)まで顔を出します。
イシガキダイの形態
イシガキダイの大きさ特徴
イシガキダイの大きさは今まではイシダイに劣るとされていましたが、長崎県の男女群島で88.6㎝の9.2㎏の超大物が釣れ、イシガキダイの方が若干大きいと認識されました。
その後も79㎝×10.8㎏が揚がり日本記録となっています。ちなみにイシダイの日本記録は84.5㎝×9.2㎏です。 体形は側偏の丸い形ですが、マダイより角ばって寸胴にした体形で、マダイより尾びれ尻びれが顕著に発達しています。
歯がイシダイと共に特徴的で、顎の上に重なるように集まり、年を追う毎に発達し、老齢魚はオウムや馬の蹄のように顕著な丈夫な歯になります。
模様はヒョウ柄のような細かい斑点で、年を追う毎にこちらは薄くなり、老齢魚は頭部周辺が白化して口白(クチジロ)と呼ばれます。
イシガキダイの生態
イシガキダイの食性
食性は肉食性で、甲殻類、貝類、ウニなどのベントス(底生生物)を捕食します。釣りの餌ではウニ、イセエビ、トコブシ、サザエ、ヤドカリ、カニ、オキアミで釣果がある事から、肉食の美食家という事も知られています。
イシガキダイの産卵
産卵は春でイシガキダイは群れで南下し、暖かい海域で行う事で知られています。紀伊半島のダイバーに、普段は単独で行動するイシガキダイを、50匹ほどの集団で産卵行動をするイシガキダイを目撃されています。
また、長崎県の5島列島では産卵行動が確認出来るポイントもあり、ツアーもあるといいます。
この様に暖かい海に南下し、集団で産卵し、分離浮遊卵を時間を分け、何度も産卵します。 自然化では稀にイシダイとイシガキダイの交雑種が確認されます。この個体は繁殖能力はありません。
イシガキダイの生息環境
イシガキダイの生息域
幼体は浅い波静かな海域を好み生息し、波静かなサーフや港湾、河口でも稀に釣りあげられます。成魚は磯やサンゴ域の外洋の沿岸に生息し、岩穴などを好んで棲家にしています。カニや甲殻類を求めて浅い海域も索餌行動をします。
イシガキダイの釣り情報
簡単にイシキガキダイの釣り方についてご紹介します。 釣り方情報の詳細を知りたい方は下記リンクを御参照下さい。
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イシガキダイの釣りポイント
イシガキダイの釣りのポイントは外洋の地磯、渡船で行く沖磯がポイントとなります。稀に外洋向けの防波堤でも釣果がある様ですが、基本的にはサラシが出来る外洋向けの磯がポイントです。
イシガキダイの釣りのシーズン
イシガキダイは季節に関係なく年中狙える魚です。ただし春先の産卵期は南下し大型の個体は減るので、釣果情報をこの時期はこまめにチェックし釣行する事をお勧めします。逆に産卵場付近では鯛ののっこみのように大型の個体の釣果が狙えます。
イシガキダイの釣り方
潮通しの良い外洋向けの磯で専用のタックルで、ぶっこみ釣等で狙います。餌はトコブシやウニやオキアミを使用します。イシガキダイの歯がとても丈夫で力強いため、ワイヤーを使用します。引きがとても強烈なのが周知の通りなので、釣り竿をワイヤーで岸と接続し、魚に持っていかれない様に措置します。
イシガキダイの釣りの動画情報
釣り人の夢・幻の魚クチジロを追う
鹿児島県の離島、縄文杉で有名な屋久島でのイシガキダイの動画です。亜熱帯の海域の水中撮影やイシガキダイの生態を解説するドキュメンタリーの動画です。
ウニからヤドカリに変えたら一発で舞い込んだシーン(イシガキダイ)
和歌山県白浜町日置、川口大島の地磯の釣行です。餌をウニからヤドカリに替えて置き竿にしたところヒットしています。綺麗なイシガキダイを釣りあげています。
小笠原クチジロの旅
日本のもう一つの最南端、秘境の小笠原島、母島のイシダイ、イシガキダイ狙いの釣りの動画です。恐ろしいパワーの怪獣のようなイシガキダイを釣りあげています。見事なクチジロの巨体は必見です。
イシガキダイの味・選び方
イシガキダイの味
イシガキダイの流通量は少ないですが、脂の乗りが良く白身の身のしっかりとした魚で、高知や九州などで高級魚として、昔から親しまれる魚です。
白身の上質な身は、釣りたてでは硬いので、降ろした後に熟成させて食べます。脂が身に浸透し、身自体も柔らかくなり甘みが強くて高級魚の味を楽を堪能できます。かつては料亭などで盛んに扱かわれた、マイナーな高級魚です。
イシガキダイの選び方
関東ではあまり見かけないイシガキダイですが、関西では少ないながらもスーパーなどでも見かけます。小型のサイズで一匹物が多く、美味しいサイズも30㎝前後なので、大きくても40㎝、2㎏位の物を選びます。
これ以上の物は身が固く、スジがあり、臭みもあります。何より、シガテラ毒(後述で詳細を記載)の危険があります。2㎏までで、活〆の新鮮で、艶があって肉付の良い物はお買い得です。
イシガキダイの毒
シガテラ毒
シガテラ毒とは熱帯や亜熱帯の海域のプランクトンの産生する毒素です。それを摂取する魚介類に蓄積する毒素で、魚の内臓から筋肉組織にも汚染します。この魚介類を食べる事によって大変な食中毒を起こします。
「シガテラ」とはキューバに移住したスペイン人が、この地で「シガ」と呼ばれる貝を食べて起こす、食中毒の事を呼称しました。
この毒素は熱でも冷凍でも分解されず、調理で防ぐことは不可能で、乳児がいる母親から乳児に移ったという事も報告されています。
シガテラの中毒症状
中毒症状は通常、1時間から8時間で発症します。(2日以上の報告もある)消化器系の症状は、「吐き気、下痢、腹痛」が数日から数週間にわたり報告されています。
神経系の症状は「不整脈、血圧低下、徐脈、めまい、頭痛や筋肉の痛み、麻痺、感覚異常、神経の異常障害」などの重い症状が報告されています。症状の回復は1週間から数年苦しまされている例もあり、只事では無い中毒症状です。
ドライアイスセンセーション/治療、回復は
神経の異常障害で顕著なものは「ドライアイスセンセーション」という、冷たい物を触った時に電気が走った様な痛みを感じる、温度感覚異常症害です。
現在根本的治療は未確立で、さらに国内での死亡率はありませんが、海外では数件の死亡報告があります。また回復は5年以上かかる例も報告があり、深刻な症状です。
イシガキダイのシガテラ毒の例
1999年に千葉県の高級料亭で出されたイシガキダイの刺身(洗い)や兜焼きなどを食べた客8名がシガテラ毒で食中毒症状を起こし、店側を訴えました。この事件について東京地裁は、料亭側に1200万円の損害賠償を命じました。
千葉県の割烹料亭事件
前述の訴訟事件は、最近TVで取りあげられ、再現されています。それによると家族、知り合い夫婦の9名が千葉の割烹料亭でイシガキダイの刺身、兜焼きを食べ、2時間後に小学生の長女が胃に異変を訴え食べた物を全て戻しました。
その後、他の家族にも症状が現れ、吐き気やめまいに襲われ、近くの病院へ搬送されます。
食中毒と診断され、体調の不良で数日間入院し、退院後も症状は続きます。9名のうち唯一小学生の長女だけは直ぐに吐いたので、復調していますが、その他の8名の家族は数年に渡り、毒の後遺症に悩まされたのです。
これが訴訟につながる概要です。15年以上経った現在でも、未だに寒い日は関節の痛みに悩まされるという、大変な症状です。
イシガキダイの寄生虫
ウオノエ、アニサキス
ウオノエは魚の口の中に寄生する、ゴキブリのような寄生虫です。魚が食べ残したカスを食べる、魚にとっても、人間にとっても害はありませんが、せっかくの高級魚を食べるのに、ゴキブリ付では食べる気が無くなりますので、必ず除去しましょう。
アニサキスはサバに多く付く寄生虫です。
ミミズのような5㎜程度の白い寄生虫ですが、生食で刺身を食べると稀に飲み込んでしまい、人間の胃に取り付き、胃壁を食い破る程の恐ろしい寄生虫です。生食する場合は、最新の注意が必要です。
イシガキダイの料理
イシガキダイの刺身
良型のイシダイの三枚おろしの刺身の動画です。イシガキダイは2,7㎏以内だと、シガテラ毒の影響は無いと言われていますので、さばき方の動画をご紹介します。新鮮な物は身が固いので、動画のようにそぎ造り(薄めの刺身)が美味しく食べるポイントです。
イシガキダイの鍋
イシガキダイの鍋用のさばき方の動画です。イシガキダイは比較的小さい個体でも脂がのっていて、しっかりとした骨からは上質な出汁が出ますので鍋に良く合います。特に頭から出る出汁は逸品で、知る人ぞ知る美味しい鍋なのです。
イシガキダイの逸話・雑学
底物師とイシガキダイ
底物師とはイシダイ、イシガキダイ、クエ等のモンスタークラスの魚を専門に狙う、磯の猟師達の事です。一般の釣り師と違い、危険やコストを顧みずに大物だけを狙い撃つ、本気度が違います。伊豆半島南端の磯にはクエ釣り座等、底物師しか知り得ないポイントがいくつもあるといわれています。
イシガキダイの記録
底物師の間ではイシガキダイは2番煎じの小物と捉え、イシダイこそ磯の王者と崇め釣行していました。しかし、1964年4月に高知県の水島で怪物のようなイシダイがあがったとのニュースが駆け巡りました。
今までのイシダイの日本記録より若干大きく、これがイシダイでは無くイシガキダイにも見えなかった為に、当時は大論争となって専門家が調べた所、イシガキダイの老成魚として発表。
これまで脇役のイシガキダイが、王者になった瞬間でした。その後も、イシガキダイは10㎏を超える釣果があり、イシダイの記録を阻んでいます。
イシガキダイまとめ
シガテラ毒とイシガキダイ
イシガキダイは千葉の料亭の事件で一挙にシガテラ毒の危険な魚として、調理に向かない魚としてピックアップされてしまいました。しかし、シガテラ毒はカンパチやヒラマサなどの流通魚にもいるといわれ、困惑してしまいます。
一般的には6ポンド以下(2.7㎏)以下での発症率は無いと言われていますが、公式発表ではない為に参考程度として下さい。しかし、熱帯系の大きな魚は、食べない事に越したことは無いのは確かです。
皆さんもくれぐれもお気を付けの上、情報収集はこまめにして、楽しい釣行をお楽しみください!