サボテンの多くは多肉植物に含まれる
主な多肉植物は、サボテン科・アロエ科・ハマミズナ科・ベンケイソウ科などがあり、いずれも人気のある種類です。もちろんサボテンも茎や葉、根などに水分を保持することから、数多くの種類がある多肉植物の一種となります。
ですがサボテン科が園芸業界で他の多肉植物と区別されている理由は、2,000種類以上と種類が豊富なことにあります。サボテン科には他の多肉植物にはない独特の特徴もあるため、その魅力についてぜひ調べてみませんか。
そもそも多肉植物の特徴とは?
多肉植物一般の概要
多肉植物の葉や茎を触ると、ぷにぷにとやわらかく感じられます。その理由は各器官に、水を含んでいる"柔組織"というものがあるからです。さらに、表面が水分の蒸発を防ぐクチクラ層で覆われていること、CAM型光合成という気孔を開閉することで水の消費を少なくする働きを持っていることがあげられます。
砂漠などの過酷な乾燥地帯で生育する多肉植物は、独自の戦略的な仕組みによって分布域を広げて多様な種類を生み出してきました。
多肉植物で人気がある種類
多肉植物人気の火付け役は、バラの花のような形のベンケイソウ科の"エケベリア属"といわれています。メキシコ原産のエケベリアは原種だけでも約180種類あり、数多くの交配種もつくられているのです。葉色の豊富さや紅葉することなどから、多肉植物の中でも圧倒的な人気があります。
同じベンケイソウ科のセダム属の他に、ツルボラン科ハオルチア属やハマミズナ科コノフィツム属なども人気があり、寄せ植えが流行しています。
触れないけどサボテンもぷにぷにしている
多くのサボテンにはトゲがあるため、他の多肉植物のようにぷにぷにした触感は楽しめませんが、水を蓄えているため本来はやわらかいのです。後述しますが、サボテンにトゲがある理由はさまざまな戦略的な理由があげられます。
サボテンと他の多肉植物と共通点と相違点
①「トゲ」の有無は関係ない
サボテン科の植物と他の多肉植物との見分け方は、"トゲ"の有無と思う人が多いのではないでしょうか。
しかしアロエ科やトウダイグサ科のユーフォルビア属にもトゲがあり、反対にサボテン科のウチワサボテンにはトゲがありません。このようにトゲはサボテン科と他の多肉植物の決定的な見分け方にはならないのです。
②見分け方は「刺座」と「アレオーレ」の有無
サボテン科と他の多肉植物の最大の見分け方は、トゲの付けにある"刺座"と、それを覆う綿毛の"アレオーレ"の有無です。
刺座とはサボテン独特の短い枝のことをいい、脇芽とほぼ同化しているのが特徴です。さらに刺座を覆うアレオーレという毛に付く葉がトゲになって密生しています。これがサボテンの特徴であり、他の多肉植物との最大の見分け方なのです。文章では少し複雑なため、ぜひ実物で見分け方をマスターしましょう。
③「葉」の有無も重要な見分け方
サボテン以外の多肉植物はさまざまな形の葉を持っており、その中には多くの水分が含まれています。しかしコノハサボテンなどをのぞいて多くのサボテンは葉を持っていません。サボテンは葉をなくすことで、表面積からの水の蒸発を防いでいるのです。
その代わりに水をたっぷり蓄えた分厚くて肥大な茎を持っています。さらにサボテンは、水分を引き寄せる多糖類から成るねばねばの粘液を含んでおり、保水効果を発揮しているそうです。
トゲは葉が変化したもの
サボテンだけに限らずアロエなどの多肉植物にあるトゲは、葉が変化したものといわれています。トゲには以下の4つの役割があります。
茎や葉、果実など水分を多く含んでいるサボテンを捕食する動物から身を守るため、温度変化や強烈な紫外線から身を守れるためなどがあげられます。さらに種類によりますが、移動する動物に刺さることで繁殖範囲を広げる点、トゲの根本で朝露などの水分を吸収する点なども特徴的です。
④「花」の有無は関係ない
サボテンも他の多肉植物も、花を咲かせる種類と花を咲かせない種類があります。そのため花は、サボテンと他の多肉植物の見分け方にはあまり関係がありません。
サボテンと他の多肉植物には、花を観賞することが目的の種類と葉の鑑賞が目的の種類があり、多様な独特の形状を観賞するのもそれぞれの魅力です。
⑤光合成の仕方は同じ
サボテンも含めた多肉植物に共通の仕組みとして、CAM型光合成があげられます。多くの植物は日中に光合成を行いますが、多肉植物は保持した水分を失ってしまうのです。
そこでCAM型光合成という仕組みによって、夜だけ気孔を開いて二酸化炭素を体内に取り込みます。日中は気孔を閉じて取り込んである二酸化炭素によって光合成を行う仕組みです。サボテンなどの多肉植物ならではの、過酷な環境で生き抜くための戦略といえます。
⑥「原産地」の違いも重要な見分け方
多くの多肉植物の原産地はアフリカ大陸を中心に、日本も含めて世界中に分布しています。ほとんどの多肉植物に共通しているのは乾燥にも耐えられるように保水能力があることです。しかし地域ごとの特徴によって違いもあります。耐寒性に強い種類や日陰が好きな種類など、独自の気候との密接な関係性です。
一方のサボテン科はメキシコ周辺に分布が集中しており、より乾燥気候との関係がはっきりしているのではないでしょうか。
南北アメリカの気候
ほとんどのサボテンはメキシコを中心に南北アメリカ大陸に分布していますが、南北アメリカ大陸も平地と高地では気候が異なります。赤道に近いのは南アメリカ大陸の北部ですが、多肉植物が苦手とする高温多湿な気候が特徴です。
赤道近くでも高地のアンデス山脈は高い標高のため低温です。このように同地域でも熱帯、乾燥帯、温帯などに分かれています。
⑦育て方の微妙な違い
多肉植物に限らず、すべての植物は育てるときに原産地に似た栽培環境にする必要があります。ほとんどの多肉植物はほぼ同じ条件ですが、生育地ごとに微妙な違いがあるのも多肉植物ならではの特徴です。
しかしサボテンはメキシコなどの南北アメリカに集中しており、ほとんどの種類は気温の高い夏に育てます。水やりの回数は増えますが育てる時期を変える必要がないためため、わかりやすい育て方といえるでしょう。
サボテンと夏型の多肉植物の育て方
生育時期は種類で異なる
サボテンも含めた多肉植物は種類によって生育時期が異なるという点も、育てるうえで抑えておくべきポイントです。生育時期は「春秋型」「夏型」「冬型」の3つに分けられ、水やりのタイミングや置く場所などが変わってきます。
大切なポイントが水やりの回数とタイミングですが、生育時期に合わせた適量を与えなければいけません。そして生育時期ではない休眠期には、水やりを控えめにするのが大切です。
サボテンは典型的な夏型
サボテンは多肉植物の中では「夏型」の種類になります。夏型の多肉植物は一年で最も気温が高くなる時期に生育する種類のため、水やりの回数がほかのきせつよりも増えるのが特徴です。反対にすべてのサボテンは冬が休眠期となるため、水やりはしなくてもよくなります。
多肉植物はいろいろな種類があるため季節の生育期を覚えるのがなかなか大変ですが、「サボテンは夏に生育して冬は休む」と覚えておきましょう。
苗を植える時期
サボテンと夏型の他の多肉植物は、苗を植えるのは3月上旬~4月上旬頃がベストです。購入した簡易鉢から植え替えるときは、根を抜きやすくするために水やりを控えておきます。苗を植え替えた後は2週間ほど日陰で保管し、さらに1週間ほど経ってから水を与えてください。
水のやりすぎには注意する
サボテンと多くの他の多肉植物を育てる際の同じ点は、水のやりすぎには注意する点もあげられます。多肉植物は、降雨量が少なくても自ら葉や茎などに貯水することで水分不足を補っているのです。
そのため必要以上の水のやりすぎには注意しなければいけません。もともと水を保持しているため、水をやりすぎると根腐れの原因になってしまいます。
生育期の水やり
サボテンの水やりは時期によって細かく変えてください。生育期の春と夏の終わりは、表土が乾いていたら全体が湿るくらいに与えます。サボテンの生育が落ち着く真夏の水やりは、少し回数を減らして乾燥気味がベストです。表土が乾燥したら、2~3日置いてからのほうがよいでしょう。
真夏の水やりの注意点として、高温のために蒸発しやすい日中ではなく、朝や夕方に与えるようにしてください。
休眠期の水やり
休眠期に近づいた10月~12月の水やりは、2週間に1度くらいに間隔をあけていきます。12月~4月の休眠期は、3~4週間に1度くらいにしてください。
このようにサボテンを含む多肉植物は、生育期と休眠期でメリハリのある水やりをする必要があるのです。
向いている用土
サボテンも他の多肉植物も用土は同じものでよく、排水性と通気性のよい用土を用意してください。慣れる前は園芸品店で販売されている多肉植物専用またはサボテン専用の培養土で問題ありません。
こだわる場合は多肉植物もサボテンも、赤玉土の小粒6:腐葉土2:川砂2を混ぜたものか、川砂8:腐葉土2にくん墨を1割混ぜたものもよいでしょう。
おすすめの鉢
サボテンも他の多肉植物も、土は常に乾いている状態がベストです。湿っていると根腐れを起こしてしまうため、鉢選びも重要なポイントになります。鉢を選ぶときは、サイズと材質も大切な点です。
サイズは株よりも一回り大きいものを選び、材質はプラスチック製よりも通気性のよい素焼きがよいでしょう。手軽に楽しみたいときは、最近人気のブリキ缶の底に穴を開けたものを使うのもおすすめです。
サボテンと他の多肉植物を寄せ植えするとき
サボテンは他の多肉植物と寄せ植えにするのもかわいいので、多くの人が取り入れています。しかし注意したいのがサボテンと同じ生育期である、"夏型"の多肉植物を選ぶという点です。
寄せ植えにするときは同じ条件で生育したり休ませたりするため、必ずサボテンと同じ夏型の多肉植物を選んでください。
肥料は程よい量がおすすめ
サボテンを含むほとんどの多肉植物は、それほど肥料は必要としません。もともと栄養の少ない場所で自生しているため、肥料がなくても枯れないのです。
しかし葉や花の発色をよくするために緩効性肥料を用土に混ぜたり、液肥を追加で与えるとよいでしょう。注意点として肥料過多になって病害虫を発生させないようにしてください。
植え替えのタイミングは種類で異なる
サボテンは根の生育が早いため、1年~2年に1度は植え替えが必要となります。植え替えによい時期は3~4月となり、苗を植えるときと同じ方法で行ってください。土をほぐしたときに根が傷んでいるものがあれば、清潔なハサミで切り取ります。
他の多肉植物は種類によって成長のスピードが変わるため、それぞれの多肉植物に合わせた植え替え方法を採用してください。
剪定したものは挿し木にして増やせる
剪定のタイミングは、サボテンを3月~4月に植え替えたときになります。葉や茎が徒長して乱れているときは、ためらわずに剪定をしてください。
さらに"仔吹き(こふき)"と呼ばれている根元に小さな芽が出たときも、付け根から切り取る必要があります。剪定した葉や仔吹きは挿し木にして増やせるため、捨てずに挿し木として利用しましょう。
他の多肉植物の剪定
他の夏型の多肉植物の剪定もサボテンとほぼ同じです。伸び過ぎた葉や茎はハサミで切り取って姿形を整えてください。切り取る場所は、下葉を3~4枚残した部分です。
そうすると切り取った部分やその下から脇芽が伸びて、再び均整の取れた株になります。多肉植物も切り取った葉や茎は生育期であれば挿し木にして増やせるため、間違って捨てないようにしましょう。
多肉植物とサボテンの最適な置き場所
日当たりのよい置き場所
サボテンと他の多肉植物を育てるうえでの同じ点は、まず日当たりのよい場所という点があげられます。サボテンを含めたほとんどの多肉植物は乾燥地帯で自生しているため、カラッとした気候を好みます。
しかし日当たりがよいといっても、直射日光が当たるような高温の場所を好まない多肉植物がほとんどです。真夏の時期には軒下などの半日陰や屋内であれば遮光カーテン越しに置くようにしてください。
風通しのよい置き場所
サボテンや他のほとんどの多肉植物の置き場所は、風通しのよさも重要なポイントです。風通しがよい場所ということは乾燥状態に近いということなので、湿度が高くてじめっとした場所は厳禁です。もともと水分を多く含んでいるため、水気が多い場所では根腐れを起こしてしまいます。
多肉植物とサボテンを愛でよう!
サボテンは多肉植物の中に含まれる植物ですが、多肉植物の種類が多い点とサボテン自体も種類豊富なために園芸上では区別されています。多肉植物は「春秋型」「夏型」「冬型」に分かれ、それぞれ生育期と休眠期が異なるので育て方は注意が必要です。
夏型のサボテンや他の夏型の多肉植物は、水やりを生育期にしっかりしてください。冬は休眠期のため水やりは少な目になります。微妙な違いがある多肉植物の栽培をお楽しみください。
サボテンが気になる人はこちらをチェック!
サボテンについてもっと詳しく知りたい人はこちらの記事をご参考にしてください。サボテンの花は、他の多肉植物よりも華やかで独特な雰囲気があります。コツをつかんで育てるときれいなサボテンの花を楽しめるので、ぜひ挑戦してみませんか。
サボテンの花の咲かせ方は?育てる際の咲かせるコツや難しいポイントを解説!
サボテンの花が咲いているのを見たことがありますか?咲いた花は鮮やかな色をしていてとても華やか。サボテンの花の咲かせ方は難しいように感じますが...