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デニムやタトゥーの染料として使われる!藍の歴史や特徴、美しい発色を紹介!

藍色といえばジーンズでお馴染みの色ですが、日本では奈良時代の昔から、世界的にはもっと古く染色材料として使われてきました。現在も、その青く発色する深みのある色は多くの人を魅了して止みません。藍の歴史や特徴の他に、藍の色の種類や製造工程などについてもご紹介します。
2021年10月5日
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目次

藍の葉を使って染まる"藍色"

出典:photo-ac.com

白い布を"藍"色に染める材料は藍の葉となり、藍の花は使われません。染料としての藍は、藍の花が咲く前に全ての草を刈り取り、葉を生で使うか藍玉にして発酵させて使用するものです。

藍染めの用語である"藍の華"とは、藍づくりの際に発生する泡のことを指し、この泡ができることを「建つ」といいます。"藍の華"が建つことで美しい藍色に染められるのです。(この記事は2021年9月29日時点の情報です)

「藍」とは染料の名前

藍とは、植物を原料とした青色系統の染色に利用される染料のことをいい、この色素の主成分は、藍青(らんせい)というインディゴ(indigo)のことをいいます。色素のインディゴが含まれている植物は温熱帯地方に多く、世界各地に50種類以上あるそうです。

最も古くて広範囲に分布していたのがインドアイとなります。この他に知られているのが、ヨーロッパで多用されてきたタイセイや日本のタデアイやリュウキュウアイなどです。

インディゴの語源

インディゴの語源は古代文明時代から流通した、インド生まれのインドアイ(マメ科コマツナギ属)です。ギリシア語のindikonが、ラテン語とポルトガル語を経て英語のindigoになったのです。

合成インディゴが1900年代に発明され、そしてジーンズの開発に伴い、天然インディゴは染色技術と共に壊滅してしまいました。このことから日本における藍染めの伝統を守ることの大切さがより強く実感できます。

藍は本来は染料ではなく「顔料」

染料は水やお湯に溶け、染料の微粒子が繊維に入ることで染まるものをいいますが、水溶性ではない藍染めは顔料となります。

顔料は、アルカリ分の石灰や灰汁などを加えて還元させることで発色されるのです。本物の藍染は発色のよさだけではなく、香りもあります。ぜひ布を手にして香りも感じてみてください。

藍の魅力は深み・発色のよさ・色ムラ

出典:photo-ac.com

藍の最大の魅力はすっきりと冴えながらも、海の底を思わせるような深みのある色といえます。絣などの白抜きをしたデザインを観ると、よりその魅力が確認できることでしょう。また微妙な色ムラがあるのも、染め物ならではの素晴らしさです。

藍染めは染めてから数年間は赤みを帯びており、5年ほど経つと落ち着いて冴えのある色味が際立ちます。さらに発色がよくなるため、大切に使い続けることで価値が出るのです。

藍の色の種類

藍の色は空気に触れることで黄土色から緑色、そして藍色へと変化します。染めの工程を繰り返すことで藍色の濃淡が表現されるのが特徴です。

染めの段階ごとの色は、「甕(かめ)のぞき」「浅葱色」「納戸色」「濃藍」「紺色」「褐色・勝色」となります。このように段階ごとの色を楽しむのもまた藍染めの魅力とされています。

原料になるイヌタデ科の藍の特徴

染料になる"藍"のタデアイ

科名・属名 タデ科イヌタデ属
園芸分類 草本植物
原産地 東南アジア~中国
形態 一年草
草丈 10~30㎝
開花時期 8月中旬~10月中旬
花の色 ピンク
耐寒性 普通
耐暑性 普通
栽培難易度 普通

現在の日本で白い生地を染める際に利用される藍の種類はタデ科イヌタデ属となり、「タデアイ(蓼藍)」ともいいます。耐寒性の強い一年草で、4月中旬~5月中旬に種まきをして開花前の暖かい季節、7月頃に収穫します。

原産地が東南アジアから中国のタデアイは奈良時代に日本に伝来し、染料以外に煎じ薬や食料にも利用されてきました。現在タデアイの日本での生産地は、有数の徳島県の他に北海道や青森県の一部などです。

イヌタデと食用のヤナギタデの関係


イヌタデの語源は、食用にならない蓼(たで)ということで"否ぬ蓼"から来ています。タデには、イヌタデに非常によく似た「ヤナギタデ(柳蓼)」または「本蓼・真蓼」という種類があり、独特な香りと辛みのある葉をアユ料理の薬味などに利用されてきました。

一方のイヌタデの葉には辛みがないため食用にはならず、タデではないもの(否定)から否ぬ蓼となり、のちに犬も見向きもしないという意味も加わり犬蓼になったそうです。

身の回りにあるイヌタデの種類

他にもタデ科植物は身近に多く繁殖しており、中でも"藍"を作って藍染の染料とするタデアイと食用のヤナギタデの他に、食用にならないイヌタデがあります。藍染めのタデアイと同じ種類ですが、微妙な違いがあります。

イヌタデは、多くの人が子供の頃にままごとで使ったであろう"赤まんま"といえばわかるかもしれません。染料としての"藍"にするタデアイを観る機会があれば、ぜひ違いを探してみてください。

タデアイとイヌタデとの見分け方

両者を見分ける方法は、葉の形と花の付き方にあります。藍染めにするタデアイの葉は倒卵形の縮れ気味、イヌタデの葉は細めの披針形です。葉の色は、タデアイのほうが明るくてツヤもあります。

花はどちらもピンク色の穂状花序ですが、藍染めにするタデアイは茎にやや固まって付き、雑草化しているイヌタデは細長く茎に付いています。ピンク色に見える米粒のようなものは花ではなく、"ガク"とのことです。

見分け方が難しいときは葉をすり潰す

しかし実際にタデアイとイヌタデの見分け方は、同じ条件で観なければ難しいようです。そこで簡単に見分ける方法は、葉をちぎって指の腹ですり潰し、やがて青くなるものがタデアイとなります。もう一つの見分け方は茎の太さで、タデアイの茎はイヌタデの茎よりも細いそうです。

イヌタデはタデアイと交雑しやすく、さらに見分け方が難しくなります。そのため、やはり葉をすり潰して青くなるか実験するのが一番かもしれません。

染料としての藍染めの歴史

世界における藍の歴史

Photo bySrikrishnadeva

藍染めの歴史は非常に古く、紀元前3000年頃のインダス文明の遺跡から染織槽の跡が発見されています。紀元前2500年~1200年頃にはエジプトの古墳で世界最古の藍染めの布が、紀元前1330年前後にはツタンカーメンのミイラにも藍染めの布が使われていたそうです。

その後シルクロードの文明交流により、藍染めの布製品が広がりました。中国に伝わったのは漢時代とされ、藍染めの布や藍染めの糸による刺繍が出土されています。

日本初期における藍の歴史

Photo by Kentaro Ohno

インド洋、中国、朝鮮半島を経て日本に藍が伝わったのは奈良時代初期といわれています。法隆寺や正倉院に布類が多く保存されており、特に正倉院の淡い藍色を基本に10色の藍を配色した「縹地大唐花紋錦(はなだじ おおからはなもんにしき)」は大注目です。

位を示す"位色"の藍染めによる青色は、天皇の官位12階6色のうち第2位でした。上流貴族が藍染めの絹衣を着ていたことからわかるように、非常に貴重なものだったのです。

室町時代には貴重な民間薬として使用

日本には染料として入ってきた藍ですが、薬効のある薬草としても世界各地で重宝されていました。日本では室町時代に民間薬として利用され、煎じて飲んだり肌に塗ったり、または食用をしていたそうです。

現在辛味が好まれるヤナギタデが食用されていることからも、タデ科植物の守備範囲の広さがうかがえます。

徳島での栽培開始は鎌倉時代

Photo by cotaro70s

現在藍の産地といえば徳島県が有名ですが、徳島県での栽培は鎌倉時代の見性寺を開いた翠桂和尚が始めとされています。安土桃山時代には殖産事業として奨励され、庶民の暮らしにも藍染めが浸透していったのです。

江戸時代には木綿糸が量産され、全国的に高級衣装から作業着、生活雑貨へと藍染め製品が広がりました。明治後期の安価な合成染料やインド藍が入ってくるまでは、国鉄や郵便局の制服に利用されるなど大量生産されたのです。

江戸時代には火縄銃の種火に利用

江戸時代には藍染めの糸が火縄銃に利用されていました。縄を藍染めの糸で編み、その先に火を付けて種火として持ち歩いたそうですが、細く長く燃え続ける藍染めの性質が役に立ったようです。

このように藍染めや原料のタデアイは衣服や薬、種火などと日本人に欠かせない存在として利用されていました。


江戸時代にはタトゥーにも利用

タトゥーの日本での歴史は長く、縄文時代後期や弥生時代にまでさかのぼることになります。もともとタトゥー(入れ墨)の染料は植物から採取される色素の墨や朱ですが、日本では江戸時代後期に藍も利用されていたそうです。

現在日本におけるタトゥーの認識は、健康被害も含めてタブー視されており、公共施設の利用が禁止されているのが現状です。

ジャパン・ブルーと表現された藍色

出典:photo-ac.com

藍染めによる青い色はしばしば"ジャパン・ブルー"と表現されることがあります。この呼び方は、明治時代前期に来日したイギリス人科学者のアトキンソンが藍染めを町の至るところで見かけたことがきっかけとか。

明治23年に来日したフラフカディオ・ハーン(小泉八雲)も、街中にあふれる藍染めされた暖簾やのぼり、職人の法被の美しさをたたえています。

太平洋戦争中は栽培が禁止されていた

日本人の生活に必要不可欠な藍染めでしたが、太平洋戦争中は藍の栽培禁止令が出されていました。理由は食糧の増産を図るためで、政府からタデアイの畑をつぶして田畑にするよう命令されたのです。しかし一年草の藍は毎年種を採り続けないと絶滅してしまいます。

そのため栽培禁止令が出たにもかかわらず、人目を忍んでタデアイを栽培し続けた人がいました。その人たちのお陰で現在も徳島ではタデアイの生産が続けられているのです。

栽培禁止令時に守った「白花小上粉」

栽培禁止令が出ても命がけでタデアイを守ったのは、徳島の藍師である佐藤平助さんと姪の岩田ツヤ子さんでした。戦争中は目立たない林の中の畑でタデアイを栽培し、種を収穫し続けたのです。このときに大切に守ったのは、「白花小上粉(しろばなこじょうこ)」という種類のタデアイです。

"藍"づくりの工程

藍ができるまで①:タデアイの栽培方法

"藍"づくりは、暖かくなる季節の3月に大安吉日の日に行われる種まきから開始されます。藍の種を苗床に敷いて種が隠れる程度に土を覆い、一か月すると発芽するので間引いて丈夫な苗を育てるのです。

さらに一か月後の5月には20センチメートルほどに成長して本葉が5~6枚に揃います。より丈夫な苗をたくさん育てるための移植作業のあとに除草作業を行い、収穫できる50~60センチメートルまで生育させていくのです。

藍ができるまで②:タデアイの収穫

タデアイの収穫は、タデアイが開花する前の暑い季節、6月頃に2回に分けて行われます。「一番刈り」の後は、施肥や除草、害虫防除などの作業をし、約1ヶ月後にタデアイの葉が再生する「二番刈り」の7月下旬~8月上旬を迎えるのです。

収穫後の作業

収穫後はその日のうちに茎葉を2センチメートルほどに切ります。乾燥させてから大型の扇風機で吹き飛ばして葉を茎と選別するのです。俵に詰めて葉を保管する「藍粉成し(あいこなし)」を行い、あとはゴールの"藍の華"を目指すこととなります。

藍ができるまで③:すくも作り

暑さも少し和らぎ始める季節の9月には、保存しておいた葉は"寝床"に入れられます。発酵を促す作業を行いますが、水だけを掛ける作業がしばらく繰り返されるのです。

さらに5日~7日ごとに水を打って混ぜる作業の「切り返し」が幾度も行われることで、ようやく冷え込みが厳しくなる季節に「すくも」と呼ばれる藍染めの染料が完成するのです。

藍ができるまで④:藍建て


出典:photo-ac.com

土の中に埋め込んだ大きなカメに、すくもや小麦ふすま、灰汁を入れて約一週間発酵させます。発酵が進むことでインディゴが還元されて水に溶けるのです。

やがて赤みを帯びた泡"藍の華"が液の表面に浮かび、これが藍建てとなって藍染めの作業に取りかかかることができます。

ジャパン・ブルーとして高評価の藍

①包帯もおすすめ

Photo byShutterbug75

藍は防虫効果や殺菌効果の他に、肌荒れや冷え性の改善促進、さらに鎮静剤の効果も期待されています。そのため白い包帯を"藍"で染めて利用する方法も提唱されているのです。

産地である徳島県などに伝わる昔ながらの知恵として、ぜひ採り入れてみてはいかがでしょうか。包帯は白いのが定番ですが、藍色の包帯は斬新なアイデアですね。

②藍の青汁やサプリメントも

食用されてきた藍は栄養効果が高いとされており、特にポリフェノールの含有量はブルーベリーの4倍ともいわれています。

食物繊維とミネラルが豊富な点からも健康食品として注目を浴び、藍の葉を粉末にして調理した藍の青汁や藍のサプリメントも商品化されているそうです。

③革製品にも使用

Photo by Dick Thomas Johnson

藍は、白い生地以外に革も染められるという特徴があります。藍染めの魅力は冴えた色や深い色み、微妙なムラ感などですが、革製品にも再現できるのです。

布製品と同じように、使うほどに深みと味わいが出る藍染めの革製品を、お財布などで使ってみてはいかがでしょうか。

染料の藍で白い生地を染めてみよう!

出典:photo-ac.com

藍染めの原料となるタデ科イヌタデ属のタデアイは、奈良時代にインド洋を出発して大陸経由で入ってきました。それ以降藍染めは日本人には欠かせない染料となり、現在も多くの人から愛されています。藍染めの魅力は何といっても深みのある色合いや微妙な色ムラ、そして時間が経つほどに増す発色のよさです。

商品を買うのもよし、少し大変ですが自分で染めてみるのもよしの藍染めを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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