楓(カエデ)の花言葉はよい意味のみ!
楓の花言葉は「美しい変化」「大切な思い出」「調和」「遠慮」と、すべて肯定的な意味合いのものばかりです。カエデは夏の緑色から気温が低くなるにつれて橙色から真っ赤に変わりますが、まさに美しい変化といえます。
楓には怖い花言葉があると一部の間で誤解されたのは、どうやら失恋を表現したスピッツの名曲『楓』のせつない歌詞にあるようです。しかし実際には楓に怖い意味の花言葉はないので安心して贈り物にしてください。(この記事は2021年9月24日時点の情報です)
楓の葉色が変化する理由
花言葉の「美しい変化」は葉色のことですが、夏に葉が緑色なのは、色素である葉緑素のクロロフィルが理由です。クロロフィルは光合成によって栄養分のデンプンを合成します。寒い時期には栄養分を無駄にしないよう、葉に栄養分を通すための管が詰まるのです。
日光が弱くなると葉緑素が薄まり、反対に葉に残されたデンプンがブドウ糖に変化し、赤の色素をつくるアントシアニジンが強くなります。結果、紅葉するという仕組みなのです。
カエデとモミジの違い
花言葉に関係した話ではありませんが、カエデとモミジは別の種類なのです。カエデ科はあってもモミジ科の植物はありません。イロハモミジやヤマモミジなどのモミジといわれている植物はすべて、カエデ科またはカエデ属に分類されています。
モミジの語源は古語の「もみぢ」が由来となり、"紅葉する"という意味の「もみづる」の名詞となります。「ぢ」が「じ」に変化したのは、1964年制定の現代仮名遣いで統一されてからです。
園芸の世界では区別している
カエデとモミジは植物学上の分類では同じものを指していますが、園芸の世界では区別しているそうです。葉の切れ込みが深くで数が多い種類をモミジと呼び、反対に葉の切れ込みが浅くて少ないものをカエデとしています。盆栽展などを観る機会があれば、ぜひチェックしてみてください。
しかしどちらも花言葉は同じく、「美しい変化」「大切な思い出」「調和」「遠慮」となっています。
楓(カエデ)の花言葉とその由来
楓の花言葉①:「美しい変化」
楓の代表的な花言葉は、楓の葉色が季節によって変わる様子を示した「美しい変化」となっています。夏の時期の鮮やかな緑色から、寒い時期に赤く変化するカエデ科植物の魅力を示しているようです。
しかし青と赤は補色関係の色相となり、花言葉が示す単なる美しさだけではなく、ある意味で激しさのある美を表現しているともいえます。「美しい変化」という花言葉がふさわしい植物は、楓以外にはないといえるのではないでしょうか。
楓の花言葉②:「大切な思い出」
楓の花言葉「大切な思い出」は、やはり楓の美しい紅葉が由来と考えられそうです。多くの人は美しい紅葉を眺めるために、楽しい気分でいろいろな場所へ紅葉狩りに出かけます。日差しも浴びて輝く紅葉を観ていると、どんな人も穏やかな心になるのではないでしょうか。
そのような気持ちを抱くこと自体が大切な時間ですし、大切な人と一緒だとなお大切な時間に思えます。「大切な思い出」という花言葉にふさわしい由来といえそうです。
楓の花言葉③:「調和」
楓の「調和」という花言葉の由来も、やはり美しく変化する葉の色にあると考えられそうです。花言葉の「調和」は、すべてが規則正しく整然としている様子を示します。
楓は、夏の時期は太陽の光をたくさん浴びて美しい緑色をしていますが、寒い時期になると赤い色素が目立ってきて紅葉し、冬には落葉して春に芽を付けます。すべて自然の法則に従っており、まさに花言葉どおりの調和が取れている状態なのではないでしょうか。
楓の花言葉④:「遠慮」
楓には「遠慮」という花言葉もありますが、この花言葉の由来は紅葉ではなく、楓の花にあるようです。楓の花は可愛いのですが花言葉のように遠慮がちに咲くため、あまり目立ちません。
しかしよく観ると、枝先の総状花序には小豆色や黄色い愕(ガク)をつけた花があります。これが緑色の葉によく映えて美しいのですが、ガクの中からは薄い黄色の花が遠慮がちに顔をのぞかせています。花言葉はこのような様子が由来といえそうです。
楓(カエデ)の名前の由来と特徴
楓の名前の由来
花言葉とは関係ありませんが、「カエデ」という日本語の訓読みの語源は葉の形が「カエルの手」に似ていることを示した、「かえるで」が変化したものといわれています。
漢字の「楓」は穏やかな風にさらさら揺れる様子が想像され、はかなさに美を見出す日本的な情緒を感じさせるのではないでしょうか。ちなみに漢字を発明した中国では 「槭」という漢字を充てていたそうですが、現在は「楓」に統一したようです。
楓の植物学的な特徴
学名 | Acer |
和名 | カエデ(モミジ・カヘルデ) |
科・属名 | カエデ科カエデ属 |
園芸分類 | 庭木・花木 |
形態 | 高木 |
原産地 | 日本や中国、北アメリカ・ヨーロッパなどの北半球の温帯 |
樹高 | 5~25メートル |
開花時期 | 4月中旬~5月中旬 |
花色 | 赤(ガク) |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 弱い |
栽培難易度・用途 | 初心者でも育てやすい・盆栽向き |
カエデの分布地は、日本を始め中国・北アメリカ・ヨーロッパ・北アフリカなどとなっています。このことから分かるように、楓は耐寒性はありますが耐暑性は弱いという性質を持っているのです。
そのため同じ日本でも、亜熱帯地方の沖縄で楓を見かけることはほとんどないのではないでしょうか。上手に育てられたとしても昼夜の寒暖差が5℃前後しかないため、「美しい変化」という花言葉のように紅葉することはないようです。
カエデ(楓)の種類
カエデ属の仲間は北半球の温帯に150種類が分布しており、中でも東アジア圏を中心にすると日本では約20種類、中国では約30種類となります。さらに北アメリカやヨーロッパにまで分布は広がり、それぞれの地域で美しく紅葉する楓が鑑賞されているのです。
さらに現在では品種改良された園芸種が多くなり、日本産のイロハモミジ(イロハカエデ)やハウチワカエデなども含めて改良された品種は200~400もあるといわれています。
ハウチワカエデ(羽団扇楓)
ハウチワカエデは別名をメイゲツカエデとも呼ばれており、本来は北海道や本州の山地に生える原種です。葉は7~11に裂けて葉の先はとがり、縁は二重の鋸歯となっています。
花は、小豆色のガクの中から薄い黄色の花弁と突き出した雄しべが特徴的です。花言葉のように遠慮がちな可愛らしさが感じられます。庭園や公園に植えられることが多い人気な楓のため、自宅の庭にも植えて花言葉どおりの「美しい変化」を楽しんでみませんか。
イタヤカエデ(板屋楓)
イタヤカエデは日本やサハリン、朝鮮、中国などの東アジア圏の平地から山地に分布する原種です。葉は黄色く紅葉し、5~7つに裂け、花はガクも花弁も黄緑色をしているので目立ちません。やはり花言葉の「遠慮」がふさわしい様子です。
用途は幅広く、公園や街路樹の他に、楽器材やスキー板などにされています。
ミネカエデ(嶺楓)
ミネカエデは、北海道や本州の中部以北などの亜高山に分布する原産種です。葉は5裂し、裂けた部分は菱状卵形となり、葉の縁は二重の鋸歯という特徴になります。花色は、花言葉どおり控えめな淡緑色です。
間違われやすいのですが葉色は赤の紅葉ではなく、黄色に紅葉する種類となります。赤く紅葉する種類は厳密にいうと、コミネカエデやナンゴクミネカエデです。ミネカエデも庭園などに植栽されることが多い種類となります。
イロハモミジ
イロハモミジは、本州・四国・九州の他に朝鮮や中国などの東アジア圏に分布する原種となり、公園や庭に植えられています。葉は5~7つに深く裂け、裂けた部分は鋭くとがり、縁も二重の鋸歯のため、カエデ科の仲間ではより繊細なイメージがあるのではないでしょうか。
北海道や本州の山地で観られるヤマモミジ(山紅葉)は、このイロハモミジの変種といわれています。イロハモミジとの違いは、葉が少し大きめという点があげられます。
オオモミジ(大紅葉)
オオモミジは、イロハモミジの変種とされる日本や朝鮮の山地に生える原種で、やはり庭園や街路樹に植えられることが多いカエデです。葉は7つですが9つに裂けることもあり、葉先はとがって、縁は細い鋸歯となります。
花は小豆色をしており、やはり「遠慮」という花言葉のように控えめな印象です。
ノムラカエデ(野村楓)
ノムラカエデは、イロハモミジの変種であるオオモミジから出たといわれている園芸品種です。葉は他の楓のような緑色ではなく、春から秋までの季節は紫紅色という最大の特徴があります。
花色は、花言葉どおり控えめな暗い紅色をしており、全体的に他の楓の仲間とは異なり、落ち着いたシックな印象です。
シダレ系の楓
楓には、イロハモミジの変種であるヤマモミジから出たといわれているベニシダレがあります。ベニシダレとは、葉の色が春から秋までの季節は紫紅色をしており、枝がヤナギのように垂れる品種の手向山や稲妻枝垂れなどをまとめた総称です。
ベニシダレとは反対に、やはりヤマモミジから出た緑色をした葉のアオシダレもあり、こちらは秋には黄色く変色する種類です。全体的に花言葉のように控えめで優し気な雰囲気が感じられます。
サトウカエデ(砂糖楓・SugerMaple)
サトウカエデは英語の名前がSugerMapleというように、甘い樹液が採れることでも知られ、いわゆるメープルシロップとして流通しています。北アメリカやカナダ原産となり、葉のデザインがカナダ国旗で用いられているのは有名です。
カナダ特産のMapleSyrup(メープルシロップ)はカナダの先住民が古来採取していたもので、カナダへの入植者に伝えたといわれています。花色は花言葉どおり目立たない緑黄色です。
ギンヨウカエデ(SilverMaple)
ギンヨウカエデは北アメリカ周辺が原産となり、名前の通り葉裏が銀白色をしているのが特徴です。葉と葉の間は深く裂け、遠目には3枚葉のように観えるかもしれません。
花は黄緑色をしており、やはり花言葉どおりに遠慮がちに咲きます。寒い季節には黒みがかった紅色になるのも特徴的です。
ヨーロッパカエデ(NorwayMaple)
ヨーロッパカエデはヨーロッパ原産となり、葉色が紫系をしているのが最大の特徴です。北海道のような寒冷地の一部では、さらに紫の色味が強いクリムソンキングが街路樹に植えられています。
花は黄緑色をしており、「遠慮」という花言葉どおりの目立たない印象です。
楓(カエデ)の育て方は初心者も簡単
楓の育て方:ポイント
楓は日当たりのよい環境を好みますが、乾燥は苦手な性質をしています。特に山の中で分布する楓の種類は日当たりを好むことを覚えておきましょう。さらに通気性と排水性がよく、ほどよい湿度のある肥沃な土壌を好みます。
庭植えの場合は水やりは不要ですが、鉢植えの場合は、夏場は朝と夕方に充分な水を与えてください。水が不足すると葉がしおれ、幹も曲がってしまいます。
肥料と用土
楓科の植物には、落葉後に有機物と緩効性の化成肥料をブレンドしたものを与えてください。休眠期でも早い時期に水を吸うため、肥料を忘れないようにしましょう。
楓科の植物の用土は、小粒の赤玉土を基本にして腐葉土と黒土をブレンドしたものを植え付け時の用土にしてください。鉢植えは、2~3年に1度、1月~2月頃に一回り大きめの鉢に植え替えます。庭植えは12月~3月頃に腐葉土を混ぜてから植え付けてください。
増やし方と主な作業
楓科の植物は、野生種は種まきで増やして園芸品種は接ぎ木で増やします。一般的に挿し木は難しいといわれていますが、5月下旬~7月上旬の暖かい時期に、発根促進剤を用いるなどすることで活着率が高まるようです。
主な作業は、落葉後の寒い季節には徒長した枝や込み入った枝、からんだ枝などを剪定してください。
楓(カエデ)のいろいろな活用法
庭の名バイプレイヤー的存在
楓科の植物は、園芸界では主役ではなく名バイプレイヤー(脇役)的な存在と認識されています。多くの楓は寒い季節には美しく紅葉しますが、それ以外の季節は緑色をしているため花言葉のように遠慮がちな印象といえます。
そのため暖かい季節は他の植物が映えるように背景的に扱い、秋こそ美しく見える場所に植えるとよいそうです。このような点にも楓の花言葉の特徴が示されているのかもしれません。
俯瞰して形を楽しむ盆栽
楓は庭木としても人気がありますが、盆栽でも大人気の植物です。楓の盆栽の魅力は花言葉「美しい変化」というように、春の芽出し・初夏の新緑・秋の紅葉・落葉後の冬の寒樹木と、季節ごとの美しさを楽しめる点にあります。小枝の枝先がきれいに分かれた優し気な樹形もまた魅力的です。
楓はマツよりも安価で、自分好みの樹形に仕立てるのも簡単といわれています。盆栽にも挑戦して花言葉「美しい変化」を体験してはいかがでしょうか。
素敵な花言葉の楓(カエデ)を愛でよう!
楓の花言葉は「美しい変化」「大切な思い出」「調和」「遠慮」とよい花言葉ばかりです。怖い花言葉があると誤解されていましたが、スピッツの曲の歌詞から連想されたものといわれています。楓の花言葉に怖いものはないので、安心して大切な人に花言葉を添えて贈りましょう。
素敵な花言葉を持つ楓を、観光地や自宅などのさまざまなシーンで愛でてくださいね。
紅葉狩りの意味が気になる人はこちらをチェック!
楓(モミジ)の花言葉は肯定的な意味合いのものばかりということがわかりましたが、さらに紅葉狩りの意味や語源についてもチェックしてみませんか。こちらの記事では日本の紅葉が美しい理由などについても紹介されてあります。ぜひご参考にしてください。

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