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雌松とも呼ばれる、赤松盆栽の育て方を解説!年間の管理スケジュールもご紹介!

雌松とも呼ばれている赤松の盆栽は黒松とは違う魅力を備えており、しなやかな葉や樹形と荒々しい幹のアンバランスさにあります。環境に適応しやすい赤松の育て方は難しくなく、盆栽初心者でも栽培しやすいのが特徴です。いろいろチェックして挑戦してみてはいかがでしょうか。
2021年10月6日
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盆栽を始めるなら赤松もおすすめ!

Photo bymanseok_Kim

赤松は盆栽初心者でも比較的栽培しやすい種類といわれています。風通しに気を付けるなど、基本的な管理をきちんとすることで丈夫で美しい盆栽に育てられるのです。

赤みのある樹皮が特徴の赤松ですが、残念ながら盆栽にすると赤みを帯びません。しかし細長くてやわらかい葉が樹形をコントロールしやすいといわれています。対比される黒松盆栽とは趣が異なるため、盆栽愛好者はセットで育てることが多いようです。(この記事は2021年10月5日時点の情報です)

奥深い盆栽の歴史や魅力

盆栽の歴史は中国から

Photo byilyessuti

盆栽は、お盆の上に土や砂、草や苔に石などを自然のように配置して作り上げる"盆景"にルーツがあるといわれています。唐の時代に行われていた趣味とされ、平安時代に日本に入ってきたそうです。

江戸時代に盛んになり明治時代から1980年代までは手間と経費が掛かるため熟年層の趣味として定着していました。ところが1990年代に海外で"BONSAI"として注目されたことで、改めて国内でも盆栽ブームが訪れたのです。

盆栽の種類は4つ

Photo byilyessuti

盆栽は樹木の種類によって、大まかに4つに分類されています。主な盆栽は樹木を中心にしたもので、次の5つです。

松・真柏・杉などの「松柏類」、ウメ・カキ・ヒメリンゴなどの実を観賞する「実物」、ウメ・サクラ・ボケなどの花を観賞する「花物」、カエデやケヤキなどの葉姿を観賞する「葉物」、松柏類以外の総称である「雑木」となります。

草や異種植物の組み合わせもある

盆栽を楽しめる植物は樹木だけではありません。シダ植物やミセバヤ、フクジュソウなどの山野草を中心にした"草もの盆栽"も人気があります。他にも異なる植物の組み合わせ(寄せ植え・彩花盆栽)があり、盆栽の世界は奥が深いといえそうです。

盆栽の樹形は16通り

Photo bykat7214

盆栽の魅力は自然の姿を小さな鉢で再現することにあります。自然における樹木の姿は、風雪などのさまざまな影響を受けて一つとして同じ形がありません。そのような姿を盆栽でも特定の形に添って表現できるのです。

主に16ほどの樹形があり、赤松の盆栽でも再現できます。しかし赤松の場合はあまり幹をひねらないほうがよいとされているので、無理のない樹形を選んだほうがよいでしょう。主な5種類の樹形をご紹介します。

初心者向けの「直幹」

Photo byjggrz

直幹は幹が上方に垂直に伸びる樹形のこととなり、針金掛けもしないため初心者でも作り方は難しくないといわれています。

幹が上方へ行くに従い細くなり(「こけ順がよい」と表現)、前後左右に伸びた枝も美しく、さらに枝は上に行くにつれて枝同志の間隔が狭くなっていき(枝順がよい)、ストレスのかからない大平原にあるかのような実に堂々とした樹形です。

幹が左右に曲がる「模様木」

Photo byilyessuti

模様木は、幹が左右に曲がるなどの変化を楽しむ樹形です。幹が次第に細くなり、前後左右に模様が均等に曲がっているのが最大の特徴とされています。

枝の出し方が難しいとされ、片方の枝は曲がった幹の外側に出し、内側の枝を剪定するといった工夫が必要です。幹を曲げながらも樹芯を根元からの垂直線状に伸ばすような作り方となります。

根元から斜めに立ち上がる「斜幹」

Photo by Alexandre H. Sato

斜幹は、自然界では一方向からの風にさらされたり岩などの障害物にあたったりなどのために、幹が根元から斜めに立ち上がって一方向に傾いた樹形を指しています。山中で風雪に耐えながら必死に枝を伸ばす様が思い浮かべられることでしょう。


樹高よりも枝が長い「吹き流し」

Photo byscartmyart

吹き流しは、斜幹よりもさらに厳しい自然環境で生きる樹木の姿を表現しています。幹も枝も同じ方向になびき、枝の伸び具合が必死に生きようと手を伸ばす人のようにも見えてくるかもしれません。

この樹形は、海岸や渓谷の断崖絶壁で枝先を下に垂れながら生える「懸崖」と似ています。

赤松の外見的および生育上の特徴

赤い樹肌が特徴の赤松

出典:ライター撮影

名称 赤松(アカマツ)
別名 雌松(メマツ・オンナマツ)
学名 Pinus densiflora
科名・属名 マツ科マツ属
英名 Japanese red pine
原産地 日本(本州)・朝鮮半島・中国東北部
開花時期 4月~5月
耐寒性 強い
耐暑性 強い
栽培難易度 初心者も育てやすい

赤松の最大の特徴は、樹皮が赤いことと細長くて柔らかい葉という点があげられます。それ以外では次の点があげられます。自然の中で育つ赤松の赤味を帯びた樹皮は、細かいウロコ片があるのが特徴です。葉は2束で1セットとなり、10センチメートルほどあるため、さわるとやわらかく感じられます。

花期は4月頃で雌雄同株となり、緑黄褐色の雄花は若い枝にたくさんつき、雌花は紅紫色で若枝の先端に付きます。

球果の特徴

Photo byWalterBieck

翌年の10月頃に付く松ぼっくり(球果)は長さ4~5センチメートルの卵型となり、晴れた日にくさび型のウロコのようなカサを開いて種子を散らします。適度な大きさと扱いやすい形から、クリスマスリースなどのクラフトに利用されることが多い種類です。

温暖な地域に分布する赤松

Photo bybrannewk

赤松は、日本では本州や四国、九州などの広い範囲に分布しています。分布地は温暖地が多いですが黒松に比べると冷涼な気候にも耐えられるため、北海道のような寒冷地でも栽培されている点も特徴の一つです。

多くのマツ科植物に共通する特徴ですが、明るい場所を好む一方で栄養の少ない場所や乾燥地で丈夫に育つ点も特徴的です。赤松は、やはり貧栄養で乾燥地を好むマツタケの生産林としても知られており、共生関係を維持しています。

赤松盆栽の育て方の年間スケジュール

①赤松盆栽は剪定も含めて年間で管理する

Photo bywebandi

盆栽の育て方で通常の植物と異なるのは、一般的な栽培に加えて「剪定」に関連した作業があることです。育て方で大切なポイントとなる苗の植え付けや植え替えは春の3月~4月頃にし、肥料は梅雨と真夏を除いた成長期に与えてください。

剪定関連のスケジュールは、芽摘みは4月~5月、芽切りは6月~7月、葉すかしは10月中旬~11月中旬、仕上げの剪定は2月~3月です。年間で管理すると期待に応えてくれる樹形に仕上がります。

②赤松盆栽の苗の入手方法

赤松に限らず盆栽の作り方は、盆栽専門店で購入した苗を育てて仕上げる方法と、すでに仕上がったものを育てる方法があります。

苗から仕上げる方法は、実生(種子から発芽させた植物)や挿し木を用いるのが一般的ですが、自分で山取り(野山に生えている苗を利用する)する方法もあります。うまく根付けばそれほど難しくなく、育て方の基本を守ることで思い思いの樹形に赤松を仕上げられるといえるでしょう。

③赤松は日当たりと風通しのよさを好む

出典:ライター撮影

赤松が好む場所は何よりも日当たりのよい場所ですが、環境適応力の高い赤松は半日陰や日陰でも丈夫に育ってくれます。日当たりが多少悪くても、多くの植物同様に風通しのよい場所で盆栽を管理するのは必須条件です。

風通しのよい場所を選ぶ点にさえ気を付ければ、寒冷地の固い溶岩台地でも育つたくましさが赤松にはあります。ただし黒松とは異なり、赤松は潮風には弱いのでご注意ください。


④赤松の植え付け・植え替えは春に行う

Photo bywalkersalmanac

赤松盆栽の苗の植え付けは、他の多くの植物と同じように成長期に入る3月~4月頃になります。実生や挿し木から育てたものや山取りしてきたものを盆栽の鉢に植え付けるときは、必ずこれからぐんぐん成長する春に行ってください。

関東地方であれば春の彼岸頃、北海道のような寒冷地であれば一か月遅れのゴールデンウィーク周辺がよいでしょう。

老木・完成木・養成木の植え替え

赤松は黒松に比べると植え替えの耐性がやや弱いため、老木になるほどに取り扱いに注意してください。特に根の剪定の際に負担が大きく、土の崩し方や根の切り込み方を加減する必要があります。

完成木は、鉢底の土と周りの土をやわらかくしてから古い土を1/3ほどまで処分し、伸びた根も切り落としてください。樹勢の強い養成木は、鉢底の土と周りの土をやわらかくしてから古い土を全体の1/2ほどまで処分します。

⑤赤松の水やりは表土が乾いてから

Photo byjackmac34

赤松盆栽の水やりは、与えすぎると枝葉が徒長する原因になるため、少な目に与えるようにしてください。水やりの目安は、春と秋は1日に1~2回・夏は1日に2~3回・冬は1日に1回とし、鉢の表土が乾燥してからにします。

赤松の葉は黒松に比べると保水性がよいため、毎日葉水する必要はありません。かえって赤松の幹や枝の皮が荒れてくることから、気付いたときに日中に葉水する程度で十分です。

葉のホコリなどを取って樹形維持

葉水は控えめでよいですが、赤松はきれいな空気を好むため、葉水をしたときは葉のホコリやチリを落として樹形を保ってください。ホコリ取りの道具などで、そよ風が吹くようにやさしく取り除いてあげましょう。こまめに管理することで美しい樹形の赤松盆栽になるはずです。

⑥赤松には有機系肥料を与える

出典:ライター撮影

赤松の上手な育て方のポイントとして、梅雨と真夏以外の成長期に肥料を与えることがあげられます。有機肥料または油かす8:骨粉(りん酸)2のブレンドを月1回与えてください。

しかし肥料過多は枝葉が徒長して樹形が崩れてしまうので控えめにしてください。また、完成木に肥料を与えすぎると元気になり過ぎて幹や枝が若返ってしまいます。盆栽の魅力が失われるため、盆栽の樹齢に合わせて肥料の与え方に注意してください。

⑦赤松盆栽の病害虫は殺虫剤で対策

赤松の病害虫ではアブラムシやハダニなどの心配があります。さらに風通しが悪い環境で育てると、幹や枝に発生するカイガラムシも心配です。

これらの害虫が原因となってすす病にかかることもあります。害虫を見つけたらすぐに殺虫剤や殺菌剤を散布するとよいでしょう。

⑧赤松盆栽の「剪定」スケジュール

出典:ライター撮影

赤松の盆栽の作り方で重要なポイントは、樹形を整える剪定にあります。剪定の作業は「芽摘み」「芽かき」「古葉取り・葉すかし」があげられます。

それぞれの剪定作業は時期によって異なるため、次のように年間スケジュールを組んで管理するとよいでしょう。こまめな剪定作業となりますが、盆栽の作り方において大きな楽しみの一つでもあります。

赤松の盆栽の「芽摘み」

赤松の盆栽の「芽摘み」は、"将来葉"になるトゲが開く前の4月中旬~5月上旬に行います。芽摘みをする赤松の新芽は"ミドリ"といい、つくしのような産毛状のウロコ片で覆われたものが伸びたもののことです。

基本的には1/2ほどの長さで芽摘みをしますが、あまり強く芽摘みをしてしまうと弱ってしまうため先端を摘む程度にしておきます。

赤松盆栽の作り方「芽かき」

「芽かき」は成長期が終わって休眠期に入る9月頃に伸びてきた2番芽を切り取る剪定作業です。芽かきは、2芽残して元から切り取ってください。こまめな作業なので忘れそうですが、芽かきをすることで赤松盆栽の全体に栄養が回り、整った樹形になります。

赤松の「古葉取り・葉すかし」

古葉取り・葉すかしは、10月下旬~11月に行います。前年の古い葉をすかすことで赤松盆栽の日当たりと風通しをよくする作業です。方法は、枝の付け根部分から葉を切り取るかピンセットで抜いてください。葉すかしを行うことですっきりした印象の盆栽に仕立てられます。


⑨赤松盆栽の作り方「針金掛け」

出典:ライター撮影

赤松盆栽の作り方で大切な樹形を作る作業は、養成木が休眠期に入る10月~11月、または芽出し前の3月~4月上旬に行います。針金掛は赤松に負担をかけるため、厳寒期は避けてください。

赤松盆栽の作り方のコツとして幹を強く曲げるのではなく、しなやかでやわらかみのある樹形を目指すとよいそうです。盆栽に16種類あるとされる樹形を目標に、いろいろ挑戦してみましょう。

みんなの赤松盆栽もチェックしよう!

ミニ盆栽も充分に堂々とした風格

こちらは、赤松8号の樹高5センチメートルのかわいいミニ盆栽です。ボウボウに伸びた葉を短く切った直後とのことで、2ヶ月後に葉すかしをして来年に備えると紹介されてあります。小さいながらも幹が太い樹形になっており、すでに堂々としたニュアンスが素晴らしい盆栽です。

赤松らしく美しいしなやかさの盆栽

こちらの盆栽は2本の幹がくっつき、斜めに立ち上がる幹は風に吹かれているようです。斜幹と吹き流しの樹形を合わせた感じでしょうか。

心許ないニュアンスが漂っていますが、しなやかな赤松らしい佇まいに惚れたそうです。太い幹のしっかりとした盆栽もよいですが、こちらの優し気な樹形も女性的で素敵ですね。

盆栽中の盆栽

こちらは典型的な盆栽ですが、葉の長い赤松らしく、堂々とした中にも優しいニュアンスがただよっています。幹はとぐろを巻いたように曲がっていますが、対照的になよやかな葉が赤松盆栽の特長です。黒松とはまた違う美しさを堪能できそうです。

赤松盆栽で小さな自然を愛でよう!

Photo by20706085

赤松の盆栽は、長くてしなやかな葉と荒々しい幹の対比が特徴といえます。全体的に雄々しい黒松と比べるとやわらかい印象があるため、アンバランスな魅力を味わえることでしょう。育て方は基本を忠実に守れば初心者でも難しくありません。

美しい樹形に仕立てる作り方としては、スケジュールを組んで時期ごとの剪定作業を怠らないようにすることです。好みの樹形に仕立てるまでの長い時間も含めて、赤松の盆栽をお楽しみください。

黒松の盆栽が気になる人はこちらをチェック!

赤松の盆栽と共に、ぜひ黒松の盆栽の育て方と作り方もチェックしてみてはいかがでしょうか。赤松とは趣の異なる黒松も併せて楽しめると素敵ですね。黒松の盆栽も初心者でも育てやすいといわれているので、ぜひ挑戦してみてください。