苗から育てる桜の木
家庭で育てる桜の木
桜の木は公園や学校、街路樹で見かけるものの、庭木で育てる人は少ないようです。桜の木は根が広がるうえに毛虫がつくので家庭での栽培は難しいということでしょう。しかし桜の育て方を知っていると、一般家庭でも桜の木を育てることができるのです。
さらに、狭い庭やマンションでも桜を育ててみたい、そんな方におすすめするのが、鉢植えや盆栽での栽培です。そこで場所を取らない、鉢植えの桜や盆栽の育て方をご紹介します。
桜の木を育てる
桜を庭木として育てる時は、木の成長を考えた場所を選ぶことが大切です。桜は日当たりと風通し、水はけのよい場所を好みます。まず日当たりのよい場所を探し、苗木を植える場所に30㎝の穴を掘りましょう。
ここで注意するのが、根がどんどん伸びることです。根が伸びることを考慮すると、桜の苗木を植える場所は直径2m以上の幅が必要です。狭い庭でも2m以上のスペースがあれば庭で育てられます。
狭いスペースの栽培
2mあれば大丈夫と言われても、都市部では日当たりのよい直径2mを超えるスペースが確保できる家は、なかなかありません。そこで今回おすすめするのは、庭が狭くても栽培できる鉢植え桜の育て方です。
鉢植えや盆栽なら、庭が狭い家はもちろん、マンションでも育てることができます。そこで小さいスペースで桜を育てる鉢植えや盆栽の紹介です。身近なスペースを利用して桜を育てましょう。
鉢植え栽培の準備
鉢植えのメリット
桜木を鉢植えにすると、いろいろなメリットがあります。まず、広い場所がなくても桜を育てることができることです。マンションのベランダや家の軒先など、身近な場所で桜をいつでも見ることができるなんて素敵だと思いませんか。
さらに育て方に合わせた場所を選びながら、鉢を移動させることができることです。小さな盆栽なら、自分が見たい場所に置くことも可能、屋外の木では絶対にできないことではないでしょうか。
桜の好きな場所
鉢植えで栽培する一番のメリットは、桜の好きな場所に移動ができることです。日当たりが一番重要、半日蔭でも育つ植物はありますが、桜は半日陰で育てると枝ばかり伸びて花芽が育たなくなります。
また風通しのいい場所を選んだり、湿気の多い場所を避けることも大切です。日当たりも風通しも、鉢植えなら季節や時間に合わせて最適な場所へ移動することもできます。
桜の植え付け
桜の苗は冬に植え付けや植え替え、剪定など開花の準備をします。早ければ12月、遅くとも2月までには終わらせましょう。育てる樹種や場所、地域や年によって3月に開花してしまうこともあります。
温かい場所や地域なら、鉢植えの桜でも1月前後には植え付けを終わらせてください。朝夕の寒暖差がつく3月に入ると、桜の開花を楽しむことができます。
苗を選ぶ
桜には山桜や枝垂れ桜、ソメイヨシノなどたくさんの種類があります。しかし鉢植えや盆栽で栽培する桜は、根を広げるスペースが限られるためどれでもいいわけではありません。
樹高が低めでコンパクト、高さ50㎝くらいの木なら狭い部屋の中でも栽培ができます。また盆栽向きの桜もあるようです。まずは鉢植えや盆栽にするため、屋内栽培に最適、おすすめの桜苗の樹種をご紹介します。
鉢植えにおすすめの桜
桜を鉢植えや盆栽にするときは、背が高くならない樹種を選ぶことが重要です。さらに株が小さくても花びらが大きく華やかで見栄えがいいものもおすすめします。
部屋の中や狭いスペースでは日当たりが悪い場所もあるため、手間がかからない樹種を選ぶことも大切です。また、寒さや暑さに強い品種や弱い品種があります。家や室内環境を考え、最適な桜を選んであげましょう。
富士桜
富士桜には菊桜やおしどりといった品種があります。豆桜、箱根桜とも呼ばれ箱根や富士山周辺に咲く桜です。他の桜と比べて樹高が低く花も小ぶり、鉢植えや盆栽にしましょう。
他の桜よりも植え替え時期は少し遅く、2~3月の春植えがおすすめです。花の色は淡い紅色で花びらが5枚の下向きの一枚咲き、小ぶりで鉢植え向きになります。
富士桜
河津桜
河津桜は一重咲きで花は4~5㎝の大輪の花が咲きます。河津川沿いの雑草の中から、樹高1mほどの原木が発見されたことから河津桜の名がつきました。河津桜はヒガンザクラとオオシマザクラの自然交配によってつくられた樹種です。
庭木でも栽培しますが、40㎝くらいのものは鉢植えでも栽培することができます。早咲きで2月の下旬には満開になりますが、開花時期が3月下旬まで続く長く楽しめる樹種です。
河津桜
旭山
旭山は盆栽の代表的な樹種になります。旭山はサトザクラの一種で、小さな樹にたくさんの薄紅色の花をつける八重桜です。樹高が30㎝くらいから華やかな花をつけるので盆栽に最適な桜になります。
最長でも2mくらいまでなので、鉢植えや狭いスペースで育てたい人にもおすすめです。お日様が大好きで、葉が焼ける日当たりのよいところでも元気に育てることができます。蕾で冬越し春は花を楽しんでください。
旭山 桜
陽光桜
陽光桜はヒガンザクラとアマギヨシノの交配で生まれた品種です。美しい一重咲きの濃いピンクの花びらで、大輪の花が下向きに咲き、成長すると華やかで見ごたえのある姿を見ることができます。
樹高50㎝くらいで花が咲くので、鉢植えや盆栽にもおすすめ、暑さ寒さにも強く管理しやすいのもいいです。盆栽の他に寄せ植えも楽しむことができる、贈り物にもピッタリの樹種になります。
陽光桜
南殿桜
京都御所紫宸殿の南階下の庭に咲いていたことから、名づけられたのが南殿桜です。小さくても幹が太くしっかりとしているところに、可愛らしい薄紅色の花をつけます。
樹高が低めの30㎝くらいですが、重厚な幹が風格を感じさせる盆栽に人気の桜です。4月に開花を迎えますが、人気が高く手に入れにくいこともあります。南殿桜の鉢植えは高級なものになるため、贈りものでも喜ばれるでしょう。
南殿桜
桜の木を育てる用土
栽培するする桜の樹種が決まったら、用土と肥料、鉢を用意します桜には水はけもよく栄養豊富な土が最適です。土を配合するときは、「赤玉土、鹿沼土、川砂、腐葉土」を「4対2対1対3」の割合で混ぜたものになります。
混ぜることが難しい時は、専用土を用意してください。市販の用土では果樹や花木用がおすすめです。さらに中粒の赤玉土を用意し、鉢底に敷いておくと水はけがよくなります。
桜の木を育てる肥料
桜の木は肥料が少なくても成長が悪くなりますが、多すぎても生理障害や病害虫の原因となります。満腹でもよくないということですね。肥料の種類は市販されている、花木用、庭木用の肥料を用意しましょう。
油粕と骨粉を固めた固形肥料や、窒素とリン、カリウムが8対8対8、または10対10対10の同じ比率で配合されている、化学肥料がおすすめです。桜の肥料は成長や時期に合わせて、肥料の種類を替えるのが基本になります。
鉢植え桜の育て方
鉢植えの植え付け
桜の苗を選び、用土や肥料、鉢の準備ができたら植え付けをします。植え付けは12月~2月が基本ですが、桜の樹種によって植え付け時期が若干異なりますので、事前に調べておくとよいでしょう。
用土を作る時は、あらかじめ腐葉土をよく混ぜた元肥と用土を作っておきます。鉢は苗木よりも二回りくらい大き目なものを用意してください。根元を軽くほぐし、鉢底に中粒の赤玉土を敷きます。用土を入れた鉢に苗を植え付けましょう。
肥料を与える時期
桜の苗の植え付けをした後すぐに肥料を与えるのではなく、根が落ち着く数日後に固形の肥料を与えます。植え付けの時に必要な肥料はこれで充分です。2回目は、花が咲き終わった4月の下旬に与えて下さい。
花をつけることで、力を使い果たした桜の鉢植えに、早く効果が出る粒状の化学肥料を与えます。人間でいう栄養ドリンクですね。さらに夏バテ防止のために、8月の暑い時期に液体肥料をあげます。そして冬超し前の9月頃、最後の肥料をあげてください。
鉢植えの環境
鉢植えや盆栽の桜は簡単に移動することができます。昼間は日当たりのよい場所を探して、移動させてあげましょう。ただし日当たりでも西日は苦手になるため、夕方は日が当たらない風通しのよい場所に移動させます。
桜の鉢植えは湿気も苦手なため、雨が続く時は外に出さず屋内に置いてあげてください。暑さや寒さに弱い種類もありますので、樹種に合わせて夏や冬は屋内で育てるがもいいかもしれません。
鉢植えの水やり
庭木の桜は日照りが続かない限り自然に任せますが、鉢植えの桜は適宜水やりをすることが基本です。植え付けから半月ほどは、根付くまで土が乾燥しないようこまめに水やりをします。
鉢底から水が出るくらいが基本の量です。日照りが続く夏は土の乾燥に合わせて、朝夕二回水やりをしてもいいでしょう。秋から冬はあまり水やりをする必要はありません。やり過ぎても過湿状態になりますので、土の乾きを見て水やりをしてください。
鉢植えの植え替え
鉢植えの桜は根が広がる3年以内に、植え替えをして鉢を取り替えてください。鉢が小さくなると根詰まりを起こしてしまいます。根が鉢から飛び出るようなときが、植え替えのタイミングです。
植え替えは12月~2月、植え付けとほぼ同じ冬の時期に行います。植え替えの時期を逸しても、4年以内には植え替えましょう。植え替えたら根が付くまで、植え付けと同じように水やりをまめに行い、根付いたころに肥料をあげてください。
鉢植えの剪定
桜の木は植え替えや植え付けと同じ、12~2月に剪定も行います。桜は剪定に弱いので、剪定というより不要になった細い枝を抜く程度する弱剪定が基本です。とくに太い枝を切ると、切り口から雑菌が入り枯れたり病気になることもあります。
どうしても太い枝を剪定する時は、切り口に花木用の保護剤を塗布してあげましょう。太い枝を切ることがないよう、枝が細い小さいうちから形を整えることがおすすめです。
鉢植えの冬越し
鉢植えの桜は9月頃、固形肥料をあげ次の年に花をつけるための栄養にします。肥料は幹の周りの土を数センチ掘り、その中に肥料を植えてあげましょう。12月~2月の間には、植え替えや細くじゃまな枝を抜く作業をしてください。
桜は樹種によって暑さや寒さに強いものもあります。寒さに強くない樹種の桜は、天気のよい日は風通しのよい場所に、寒さが厳しい日は屋内の日当たりのよいところに置いて冬越しをしましょう。
桜の木の管理と時期別の育て方
時期別の育て方
桜木を長く管理するためには、適切な時期に必要な手入れをしてあげることが大切です。冬の植え付けから始まり、花を楽しんで、葉桜になり、そして枝だけになって冬越しをします。
その間の植え付けや植え替え、水やり、肥料、剪定など正しい育て方で、長く美しい花を楽しむことができる植物です。時期に応じて肥料の種類や水やり、日当たりなど最適な方法を選んであげましょう。
冬の育て方
新しい桜の苗を鉢植えで育てる時、12月~2月の冬の間に苗と必要なものを用意し植え付けをします。桜を冬越しの場合は、剪定や植え替えの作業をします。河津桜のような早咲きの樹種は12月中に行いましょう。
植え付けも植え替えも、土や肥料は基本の物を用意します。成長して鉢が小さくなっていたら、大きめな鉢を用意してください。乾燥する時期なので、根付くまでは水をこまめにあげ、落ち着いたら固形肥料をあげます。
春の育て方
桜は1月から2月に蕾をつけ、3月から4月になると一斉に花を咲かせます。鉢植えでも花が咲いている時期は肥料ををあげる必要はありません。水のやりすぎは過湿になるため、土の表面の様子を見て乾いているようなら水やりをします。
水は鉢底から流れるくらいあげてください。河津桜は2月頃から咲き始めますが、3月頃まで咲くので長期に楽しむことができます。春の時期は花を楽しみましょう。
開花後の育て方
早咲きの桜は4月に、ほかの桜は4月の下旬に花の時期が終わります。開花が終わったら、木にお礼の肥料をあげましょう。開花後の肥料は、疲労回復が目的なので効き目の早い粒状の化成肥料がおすすめです。
桜の木は春から夏にかけて、マイマイガなど毛虫がつくことがあります。5月過ぎはせんこう褐斑病という病気にも注意が必要です。春から夏にかけ害虫や病気の基本的な予防もしましょう。
夏の育て方
盆栽の桜は5月くらいに芽摘みと花柄摘みをし病気を防ぎます。この時期は鉢植えも盆栽も、梅雨と真夏をのぞき肥料をあげてください。夏は日照りが続く年と雨が続く年があり、その年によって管理方法が違います。
水やりは土の乾燥状態によって、朝夕二回水やりをしてもいいですが、雨天が続くときは水やりをひかえてください。桜は西日に弱いので、夕方は風通しのよい日陰に移動するのもおすすめです。
秋から冬の育て方
夏の終わりから秋のはじめは根が活発に成長するため、油かすと骨粉を混ぜた固形肥料を与えてあげましょう。鉢植えの桜は幹の周りの土を少し掘って、肥料を土の中に埋めてあげます。
春は薄紅色の花をつける桜ですが、秋は紅葉を楽しむことも可能です。鉢植えはもちろん盆栽も、春と秋の年2回美しい姿が楽しめるのでとてもお得です。
冬の育て方
冬の時期の管理で、上手に冬越しをすることができます。同じ鉢植えでも盆栽は秋のうちに植え替えをし、11月下旬には剪定を、鉢植えは12月~2月の間に植え替えや剪定をします。
植え替えは1年~3年の間に行いますが、根が広がり鉢が狭くなったら植え替えてください。乾燥しやすい冬は水やりをこまめにし、風通しがよく日当たりのよい場所を選んで鉢を移動します。2月には蕾がつき開花の準備が完了です。
病害虫に負けない桜の管理
桜の木にはアブラムシや毛虫類の害虫がつきやすいのが難点です。鉢植えや盆栽でも害虫がつくことがあるため、害虫に合わせた薬を散布してください。
せんこう褐斑病やてんぐ巣病という病気にかかることもあります。てんぐ巣病は伝染性の病気なので枝を切り、切った枝は燃えるゴミに出してください。枝を剪定すると切り口から腐朽菌が入りやすいため、病原菌の侵入を予防する殺菌剤を塗布します。
桜の木の鉢植えに挑戦
桜の木を身近な場所で育てたいという方におすすめするのが鉢植えや盆栽です。鉢植えは日当たりと水やり、風通し、剪定を気を付けるだけで簡単に育てることが可能です。
場所をとらない鉢植えや盆栽に挑戦して、春には身近な場所で桜の花を楽しみましょう。
桜の種類を知りたい方はこちらもチェック
桜の木の育て方には、鉢植えも庭木も共通する点があります。そこで桜の種類や品種、特徴なども知りたい方はこちらもチェックしてみてください。

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