キャンプでの鉈は銃刀法違反に該当せず
キャンプ場での鉈やナイフの所持は、調理目的や暖を取るのに鉈を使うなどの正当な理由がある場合において銃刀法違反にはなりません。ぜひ鉈やナイフを活用してアウトドアの醍醐味を堪能してみませんか。
しかし場合によって銃刀法違反に該当することもあるため、鉈やナイフなどの刃物を携帯するときは誤解を招かないよう、事前に銃刀法違反の内容をチェックしておきましょう。（この記事は2021年8月9日時点の情報です）
都道府県公安委員会に届けなくてもOK
銃刀法で鉈の使用は、個人的にキャンプなどのアウトドアでは銃刀を管轄する都道府県公安委員会に届ける必要はありません。しかし刃渡り5.5センチメートル以上の刀剣類を個人的な活動であるアウトドア以外の目的で使用するときは、都道府県公安委員会の許可が必要となります。
銃刀法においてアウトドアでの個人的利用の許可は不要ですが、銃刀法では原則的に団体での利用は許可が必要といえるでしょう。
鉈と斧の違いは？
鉈の本来の使用目的は、枝打ちや雑草の刈り払い、樹木の削り取り、ときには野生動物の解体などです。主に林業や狩猟などに従事する人が山林に携帯する業務用の刃物となっています。鉈の形状は刃が厚くて幅広で、刃渡り15～60センチ以上です。片手で持つのに便利な道具で、主に腰のベルト式ホルダーに収納して携行します。
一方斧は柄が長いさらに本格的な山作業用の刃物道具となり、樹木の伐採や丸太を割るのに用います。
キャンプ場で鉈やナイフを使うシーンは？
キャンプで鉈（なた）を使うシーンといえば、銃刀法で認められている焚き火用の薪を割るときではないでしょうか。鉈を携帯しておけば買ってきた薪をキャンプ場で細く割ることも可能ですし、薄く削り取ることで着火剤になる「フェザースティック」なども作れます。
キャンプ場ではガスコンロを使うのもよいですが、キャンプでは薪割りから楽しむのもアウトドアの素晴らしい醍醐味といえるでしょう。
鉈は料理にも利用できる
一般的に鉈は、薪を割ったり枝を払ったりするのに便利ですが、菜切包丁のような形をしていることから持ちやすいというのも最大のメリットです。
包丁代わりに野菜や果物の収穫だけではなく、野菜や果物を細かくカットしたり魚を捌いたりするのに使う器用な人もいます。銃刀法を守ったうえで鉈を使用すれば、キャンプを始めとするアウトドアで一つあると大変に便利な道具なのです。
そもそも銃刀法とはどんな法律？
銃刀法では5.5㎝以上の刃物の携帯は原則禁止
銃刀法で刃物は「刀剣類」として次のように定義されています。刃渡り15センチメートル以上の刀・槍（やり）・薙刀（なぎなた）、刃渡り（刃の部分だけの長さ）5.5センチメートル以上の剣、あいくち、45度以上に自動的に開く飛び出しナイフです。
鉈は刃渡りが15センチメートル以上あるため、当然ながら銃刀法に該当し、基本的に携帯が禁止されている刃物となります。
銃刀法では銃と刃物の扱いが異なる
銃刀法とは、1958年制定の「銃砲刀剣類所持等取締法」の略称になります。一口で言うと、日本では銃砲や刃物の所持は認めらていませんが、例外的に所持が認められる正当な該当項目を定めた法律です。所持の範囲は、携帯に限らず自宅の保管も該当します。
銃刀法では刃物の携帯は正当な理由があればOK
銃刀法では、ピストルなどの銃砲は職域として警察官が特別な職務で使用するとき以外の所持は例外なく認められていません。しかし刃物に関しては、正当な目的があれば職業に関係なく銃刀法で携帯が認められているのです。
銃刀法に違反すると刑罰が科せられる
銃刀法では、刃渡りが5.5メートル以上の鉈などの刀剣類の携帯は正当な理由がないと銃刀法違反となります。銃刀法違反の刑罰は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」となるため、くれぐれも刀剣類の携帯には気を付けてください。
5.5㎝以下の刀剣類も軽犯罪に該当する
銃刀法では、携帯が銃刀法違反となる刀剣類は刃渡りが5.5センチメートル以上となっていますが、それ以下の長さの刀剣類も「軽犯罪法違反」に該当します。銃刀法違反よりも軽い扱いですが、やはり人の身体に危害を加える恐れがある器具のため、たとえ護身用であっても単体での携帯は銃刀法で禁止されているのです。
しかし例外的に銃刀法違反にならない場合があり、自宅で保管している分には問題はありません。
鉈をキャンプに所持できる理由
キャンプでの使用目的が明確だから
銃刀法で鉈などがキャンプで携帯が認められている正当な理由とは、単純に「キャンプで使うから」です。当然のことですが、キャンプでの鉈の使用は人に危害を加えることを前提としていません。焚き火での薪割りや樹木の表面を削ることなどを鉈の目的に想定しているからです。
ホームセンターで鉈などの刀剣類を購入して開封せずに携帯しているときも、銃刀法では「自宅に持ち帰る」とのことで正当な理由として認められます。
単体での鉈などの携帯は禁止されている
鉈などの刃物類の携帯は、キャンプ道具と共に運ぶときやホームセンターで自宅に持ち帰るときは銃刀法違反にはなりません。しかし、鉈などの刃物類の単体での携帯は銃刀法で禁止されています。
単体での携帯は、警察官から職務質問されたときに「キャンプで鉈を使う」と述べても、他のキャンプ道具がないため信用されません。誤解されないように鉈などの刃物類の単体の携帯や車内に置いたままにするのは止めておいたほうが無難です。
鉈などを携帯してもよい他の正当な理由
基本的に鉈などの刀剣類の携帯は銃刀法で禁止されていますが、アウトドア以外での正当な理由があるときは都道府県公安委員会に届けることで刀剣類の携帯が銃刀法で認められています。
原則的に「業務使用の場合」となり、人に危害を加えないことが担保されているのであれば、鉈などの刀剣類と銃刀の所持が銃刀法で認められているのです。正当な理由として認められる内容について、銃刀法第二章第四条から抜粋してご紹介します。
①狩猟・有害鳥獣駆除
鉈は、本来は山での業務に従事する人が使用するため、狩猟や有害鳥獣駆除に役立つご道具として欠かせません。銃刀法の第四条第一項では、鉈を含めた刀剣類の利用が認められています。
銃刀法では山林などで使用する許可を都道府県公安委員会から得た上で、農作物や森林を荒らすとされたシカやノウサギ、イノシシなどの野生動物の駆除などに使用できるのです。
②建設業の用途
銃刀法第四条第六項では、鉈などの刀剣類は建設を業務とする場合にも都道府県公安委員会からの許可を得た上での利用が認められています。
鉈などの刃物類は、銃刀法では山林内において建造物を設置する際に樹林の枝打ちや下草などの狩り払いなどが認められています。これらの作業を行うときもやはり鉈は、必要不可欠な道具といえるでしょう。
③祭礼などの年中行事に利用
銃刀法の第四条第七項において鉈などの刀剣類は、地域活動の一環である祭礼などの年中行事でも、都道府県公安委員会から許可を得られると使用が認められます。
この場合において銃刀法では鉈の利用はあまり想定されていませんが、銃刀法では他の刃物類と共に届ければ鉈も使用可能です。
④演劇などの芸術公演での利用
銃刀法の第四条八項では、演劇などの公演で日本刀などの刃物類を演技上の道具として利用することが認められています。その場合は鉈も含めて都道府県公安委員会に届ければ使用することが可能です。
ただし、銃刀法の条文には「やむを得ないと認められる」と表記されており、必ずしも積極的な許可ではないため、当然のことですが使用者側は取り扱いには厳重に注意しなければなりません。
⑤博覧会・博物館などでの展示物としての利用
銃刀法の第四条第九項と第十項では、博覧会や博物館などでの展示物としての利用が認められています。古い日本刀を始め鉈などの刀剣類は、日本の遺産として文化財に保護されているものが多くあるのです。
この場合において銃刀法では、都道府県公安委員会の許可を得ることで博覧会や博物館での展示が可能になっています。
あると便利な主な鉈の種類
キャンプにおすすめの鉈の種類
一般的な鉈は、先端が矩形（全角が直角四辺形）になっている角鉈です。柄は刃側に向けて少し傾けて取り付けられ、重量と刃の重みを利用することで薪などの固いものも割れるのです。角鉈の他に、刃先と切っ先が付いている「剣鉈（つるぎなた）」もあります。
刃の断面は片刃と両刃がありますが、片刃は利き手の方向性があるため、購入時は要検討です。両刃は耐衝撃力があり、薪などのように叩き割る用途に適しています。
腰にぶら下げられるものが便利
鉈を買うときは、安全性を考えて最低でも収納ケース付きのものがおすすめです。さらにいえば、腰にぶら下げられるベルト通しが付いた商品が理想的といえます。
キャンプで薪を割る程度でしたらベルト通しはなくても不便ではありませんが、ガーデニングで枝払いをするときや下草刈りをする作業時には非常に便利だからです。金額的には2,000円～3,000円ほどと手ごろなので、いろいろチェックしてください。
キャンプにおすすめの鉈のブランド
①UNIFLAME「TSURUBAMIちび鉈 片刃二寸三分」
「TSURUBAMIちび鉈片刃二寸三分」は、新潟県燕三条のアウトドアブランド「ユニフレーム」の鉈となります。刃渡り約7センチメートル、持ち手も入れた全長は約18.5センチメートルなため、携帯しやすいコンパクトサイズです。
専用ケース付きで安全に携帯できるため、ザックなどに入れてもかさばりません。一つ一つを職人が手作りしているという、ナチュラルな味わいも魅力です。ワイルドなキャンパーに人気の商品です。
②MONORAL（モノラル） 「小割銀鉈」
「小割銀鉈」は、マイクロキャンピングがテーマの2010年設立されたインディーズアウトドアブランドMONORAL（モノラル）の商品です。刃渡り9センチメートル、持ち手部分を入れた全長は23センチメートルの少し小ぶりな鉈となっています。
美しく光る銀色の刃は切れ味鋭く、軽く力を加えるだけで薪を小割にできます。カーブしたグリップは非常に持ちやすく、こちらもワイルドなキャンパーの心をくすぐることでしょう。
③豊国丹鍛工場「土佐鍛ダマスカス豆山遊鉈 腰鉈」
「土佐鍛ダマスカス豆山遊鉈 腰鉈」は、1964年から鉈や包丁を製造し続ける老舗のメーカーである豊国鍛工場の商品です。"豆"というネーミングどおり刃渡り8センチ・持ち手を入れた全長は20センチとなり、とてもコンパクトな鉈となっています。
薪割の他に、軽く魚を捌くといったワイルドなクッキングにも利用できるすぐれものです。ベルト通しが付いているので腰に下げてスムーズに利用できるのもうれしいポイントとなります。
④千吉 「レジャー鉈 角型」
千吉の「レジャー鉈角型」は、大工道具・園芸道具の刃物のブランドとして知られている千吉の商品です。刃渡りは15センチメートル、持ち手部分を入れた全長は30センチメートルとなっています。
切れ味抜群の両刃の剛付刃となり、薪割や枝打ちがストレスなくできるため野山での枝打ち作業や下草刈り作業も快適です。ベルト通しの収納ケース付きなため、携帯性も優れています。
⑤冒険倶楽部「なたとのこ」
冒険倶楽部の「なたとのこ」は、刃渡り16.5センチメートルで持ち手も入れた全長が35センチメートルの、腰鉈の他にのこもセットになった商品です。専用ケースに収納することで鉈ものこも持ち運び可能なため、山仕事などで最大に力を発揮してくれることでしょう。
銃刀法を守ってキャンプで鉈を活用しよう！
銃刀法では刃渡り5.5センチメートル以上の鉈などの刃物類の使用はキャンプでも認められており、安心して使えます。しかし単体での携帯は禁止されているため注意しましょう。団体での鉈などの刃物類の使用は、銃刀法では事前に都道府県公安委員会に届けなくてはいけません。
刃渡りの基準は、5.5センチメートル以下でも単体の携帯は禁止されており軽犯罪になります。くれぐれも銃刀法違反などに注意して安全にご利用ください。
鉈の研ぎ方が気になる人はこちらをチェック！
銃刀法でキャンプでの携帯が認められている鉈は、非常に重宝する道具です。しかし使った後はきちんとお手入れをしなくてはいけません。道具を揃えるなど少し面倒に感じますが、慣れれば鉈の研ぎ方は簡単です。大切なアウトドアグッズの鉈を長く使うためにもぜひチェックしてください。
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出典：photo-ac.com