自然あふれる百名山「燧ヶ岳」
燧ヶ岳は日光火山群に属し東北地方では最高峰です。双耳峰と呼ぶ三角点のある「爼ぐら(まないたぐら)」、最高峰の「柴安ぐら(しばやすぐら)」と「みのぶち岳」、「赤なぐれ岳」、「御池岳」の5峰で構成されています。
燧ヶ岳がそびえる尾瀬は国指定の「特別天然記念物」、「ラムサール条約湿地」など環境保護によることから、希少な植物や生き物の生態系がそのまま守られた環境であって、豊かな手付かずの自然に溢れています。
燧ヶ岳の魅力
燧ヶ岳は日光国立公園に属し、百名山の至仏山とともに本州最大の高層湿原で高山植物の宝庫である尾瀬のシンボル的存在となっています。深田久弥氏の日本百名山にも選ばれていて、多くの登山者が訪れる人気の山です。
燧ヶ岳の西側には水芭蕉(みずばしょう)の群生で知られる広大な湿地帯の尾瀬ヶ原があって、対面にある百名山の至仏山(しぶつやま)まで続き、南方面には尾瀬沼と大江湿原が広がり、四季を通じて美しい風景を見せてくれます。
燧ヶ岳の逸話
燧ヶ岳の「燧」の読み方は“ひうち”ですが、これは“火打ち石”を意味します。燧ヶ岳が火山であることからの由来でしょうか。また、会津駒ヶ岳方面から眺めると、山に積もった雪の形が“火打ちばさみ”の様に見えるからという説もあります。
燧ヶ岳はもともと山岳信仰の対象でしたが、平野長蔵氏が尾瀬沼のほとりに燧ヶ岳登山の拠点とする小屋を建て、燧ヶ岳を開山して祭神の“燧大権現”と称する「カツラギヒトコヌシ」を祭神として祀った祠を俎ぐらの山頂に建てました。
「嵓」の読み方と意味
燧ヶ岳の双耳峰である“俎嵓”、“柴安嵓”の「嵓」については、ひらがな表記にしましたが、読み方は「がん」、「くら」、訓読みで「けわしい」の意味であり、山稜の岩壁のことを言い表し、岩の古典的表記です。
燧ヶ岳登山/難易度低レベルコース
1,御池コース
尾瀬への登山口では唯一車が入り駐車場があります。登山コースでは最短で燧ヶ岳山頂に登っての往復日帰りができ、木道からの湿原に点在する池塘の景色を眺めながら歩けます。登山道も良く整備されている燧ケ岳登山では低難度のコースです。
御池から広沢田代、熊沢田代と湿原地帯を歩き、俎ぐら(標高2,346m)と東北最高峰となる柴安ぐら(標高2,356m)の燧ヶ岳2つのピークに登り御池に戻る日帰りコースです。6月末頃まで雪渓が残りますので、初心者は7月末頃からが無難でしょう。
登山ルート概要
御池をスタート。尾瀬ヶ原との分岐から燧ヶ岳に向かいます。木道を進み岩だらけの急斜面を登ると展望が開け、広沢田代から熊沢田代と高山植物を眺めながら木道を歩きます。合目を記した標識を目安にしてください。
7合目からのガレ場を登り木の階段を進んで燧ヶ岳俎ぐらに着きます。周辺の山々は絶景です。俎ぐらから一度鞍部に降り柴安ぐらに登り返しての登頂します。360度の山々や尾瀬ヶ原周辺の景観は絶景です。往路を辿り御池にゴールします。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | 【御池】 会津鉄道会津高原尾瀬口駅よりバス利用約90分 車:東北道西那須野塩原ICより約105km (駐車場有り) |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆☆★★ 体力度:☆☆☆★★ |
登山情報 | 距離:約8.9km 累積標高差:上り・下り1,047m 地図上標準コース時間:約4時間5分 |
コース時間 | 御池スタート⇒(55分)広沢田代⇒(45分)熊 沢田代⇒(90分)燧ヶ岳俎ぐら⇒(20分)柴安ぐら⇒(20分)俎ぐら⇒(60分)熊沢田代⇒(30分) 広沢田代⇒(40分)御池ゴール |
2,長英新道コース
沼山峠バス停から尾瀬沼を経て燧ヶ岳への長英新道は燧新道とも呼ばれ、長蔵小屋を開いた平野長蔵氏と息子の長英氏が親子2代にわたって切り開いた登山道で、他コースよりも比較的標高差がなく難易度低レベルのコースです。
ミズバショウやリュウキンカなど、湿原に咲く多くの花々が見られる景観の良い“大江湿原”、“浅湖湿原”を歩き、ミノブチ岳から燧ヶ岳の俎ぐら、柴安ぐらに登り、広沢田代からの岩場に注意して降り御池に下山します。
登山ルート概要
沼山峠「山の駅」横にある登山口をスタート。燧ヶ岳が望める沼山峠展望台を過ぎて清々しい木道を歩き、季節が合えば大江湿原のキスゲ、ヤナギラン、リュウキンカ、ワタスゲなどの高山植物が見られます。
尾瀬沼ビジターセンターで休憩後少し歩きにくい長英新道を歩きますが、合目が記されている標識があるので距離感が分かります。御池岳分岐から燧ヶ岳の2ピークに登り、熊沢田代、広沢田代を経て御池に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | 【沼山峠・御池】 会津鉄道会津高原尾瀬口駅よりバス利用約120分 車:東北道西那須野塩原ICより105km、御池でシャトルバス乗換、沼山峠へ約20分 |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆☆★★ 体力度:☆☆☆★★ |
登山情報 | 距離:約12.7km 累積標高差:上り954m・下り 1,151m 地図上標準コース時間:約6時間50分 |
コース時間 | 沼山峠スタート⇒(45分)大江湿原⇒(25分)尾瀬沼ビジターセンター⇒(20分)浅湖湿原⇒(150分) 燧ヶ岳俎ぐら⇒(20分)柴安ぐら⇒(20分)俎ぐら⇒(60分)熊沢田代⇒(30分)広沢田代⇒(40分) 御池ゴール |
燧ヶ岳登山/難易度中レベルコース
1,ナデッ窪コース
大清水を出発して三平峠を越え、三平下の尾瀬沼山荘に宿泊し、翌日、尾瀬沼南岸道を進んで沼尻平分岐から燧ヶ岳へと続く”ナデッ窪”と呼ぶ急斜面を登り、御池岳分岐から燧ヶ岳の俎ぐら、柴安ぐら山頂に登ります。
帰路は御池岳分岐から長英新道に進み、尾瀬沼東岸を三平下分岐に戻り、三平峠から大清水に下山します。ナデッ窪は“雪崩の窪”から転訛した名で、急峻で岩石の多い登山道ですので難易度中レベルの健脚者向けのコースです。
登山ルート概要①/大清水から沼尻平
大清水をスタート、しばらく林道を進んで三平橋の一ノ瀬休憩所で休憩後、石が敷き詰められている登山道を歩き三平峠に着きます。木道を降りて三平下に着いて尾瀬沼山荘に宿泊し、翌日、三平下分岐から尾瀬沼周遊南岸道に進みます。
皿伏山分岐からはアップダウンのある少々歩きづらい山道に注意して歩き、北岸道との分岐沼尻平に着き休憩所で一休みの後、燧ヶ岳に向かってナデッ窪の登山道に進み、木道が切れるあたりから徐々に斜面がきつくなってきます。
登山ルート概要②/燧ヶ岳から長英新道
標識などはないので注意が必要です。斜面が岩だらけの急登となり、斜度がゆるくなって、やっと長英新道との分岐御池岳に着いて俎ぐら、柴安ぐらと燧ヶ岳の2つのピークに登頂します。
山頂周辺の山々の景観を堪能したら、帰路は長英新道に進みます。ぬかるみなどが有るので滑らない様にしましょう。浅湖湿原、長蔵小屋の建つ尾瀬沼東岸から三平下に向かい、往路を辿った登山道を戻って大清水バス停に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | 【大清水】 JR沼田駅よりバス利用約90分 (※戸倉から大清水間は4月下旬~10月末まで運行) 車:関越道沼田ICより約60分(駐車場有り) |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆☆★★★ |
登山情報 | 距離:約24.6km 累積標高差:上り・下り1,728m 地図上標準コース時間:約11時間55分 |
コース時間 (1日目) |
【約2時間20分】 大清水スタート⇒(60分)三平橋(一ノ瀬休 憩所)⇒(60分)三平峠⇒(20分)三平下(尾瀬沼 山荘泊) |
コース時間 (2日目) |
【約9時間35分】 三平下分岐⇒(20分)皿伏山分岐⇒(40分)沼尻平⇒(150分)御池岳⇒(30分)燧ヶ岳俎ぐら⇒ (20分)柴安ぐら⇒(20分)俎ぐら⇒(25分)御池 岳⇒長英新道(110分)浅湖湿原⇒(15分)長蔵小 屋⇒(20分)三平下⇒(20分)三平峠⇒(50分)三 平橋⇒(60分)大清水ゴール |
2,三条ノ滝コース
御池登山口から燧ヶ岳の俎ぐら、柴安ぐらの2つのピークに登り、見晴新道ルートに進んで燧ヶ岳分岐から尾瀬ヶ原を望む見晴(下田代十字路)に着き、数件建つ山小屋の1軒に宿泊します。
翌日、東電小屋分岐を経て温泉小屋から三条ノ滝に向かい、展望台からの豊富な水量で落差も大きい勇壮な滝を眺めたら、兎田代分岐から燧裏林道を歩いて御池に下山する、難易度中レベルの1泊2日コースです。
登山ルート概要①/燧ヶ岳から見晴
御池登山口をスタート、燧裏林道との分岐を燧ヶ岳への道に進み、広沢田代、熊沢田代の湿原地帯を歩いて燧ヶ岳双耳峰のひとつ俎ぐら山頂から、燧ヶ岳もうひとつのピーク柴安ぐらに登り周辺の山々の絶景を楽しみます。
燧ヶ岳柴安ぐらから見晴新道に向かい、赤ナグレ岳山腹まではガレ場と樹林帯を降ります。登山道はぬかるみなど滑りやすいので注意が必要です。燧ヶ岳分岐から見晴まで歩き、尾瀬ヶ原の畔に建つ山小屋に宿泊します。
登山ルート概要②/温泉小屋から三条ノ滝
見晴から下田代の湿原に設けられた木道を進み、東電小屋分岐を赤田代に向かい温泉小屋に着いて休憩後、温泉小屋から只見川沿いに降り、平滑ノ滝から三条ノ滝分岐から木の階段を降りて滝の展望台に着きます。
三条ノ滝分岐から兎田代分岐を燧裏林道に進みます。小湿原を抜け樹林の中を歩いて吊り橋の裏燧橋を渡って更に進み、天神田代分岐から横田代、上田代、姫田代、御池田代と木道を歩いて御池に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | ※御池コースを参照 |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆☆★★ 体力度:☆☆★★★ |
登山情報 | 距離:約22.59km 累積標高差:上り1,375m・ 下り1,374m 地図上標準コース時間:約10時間20分 |
コース時間 (1日目) |
【約6時間】 御池スタート⇒(55分)広沢田代⇒(45分)熊沢田 代⇒(90分)燧ヶ岳俎ぐら⇒(20分)柴安ぐら⇒(140分)燧ヶ岳分岐⇒(10分)見晴(山小屋泊) |
コース時間 |
【約4時間20分】 見晴⇒(15分)東電小屋分岐⇒(15分)温泉小屋⇒(50分)三条ノ滝分岐⇒(5分)展望台⇒(10分) 三条ノ滝分岐⇒(30分)兎田代⇒(40分)天神田代 ⇒(70分)上田代⇒(25分)御池ゴール |
3,見晴新道コース
鳩待峠から日本有数の高層湿原地帯“尾瀬ヶ原”の長く続く木道を歩き、見晴と呼ぶ下田代十字路に着き山小屋に宿泊し、燧ヶ岳分岐を見晴新道ルートへと進んで、柴安ぐら、俎ぐらと燧ヶ岳の2つのピークに登頂します。
長英新道に向かって浅湖湿原を経て長蔵小屋に泊り、翌日は浅湖湿原まで戻って、分岐を尾瀬沼北岸道を歩き沼尻平から燧ヶ岳分岐に進んで、再び尾瀬ヶ原の木道を辿って鳩待峠にゴールするという体力度を要する2泊3日コースです。
登山ルート概要①/鳩待峠から燧ヶ岳分岐
鳩待峠のバス停からスタート、川上川沿いに樹林帯の木道を歩き“山ノ鼻”に着いて休憩します。百名山”至仏山”がくっきりです。いよいよ尾瀬ヶ原の湿原を歩きますが、6月から8月上旬ころまでは数々の湿原に咲く植物が見られます。
長い木道ですが、行く手に燧ヶ岳も見え、途中休憩場所やトイレなども設営されています。牛首分岐、竜宮十字路を経てようやく数件の山小屋やキャンプ場が有る“見晴(下田代十字路)”に到着して宿泊します。
登山ルート概要②/見晴新道から燧ヶ岳
見晴から燧ヶ岳分岐へと進み、見晴新道へと向かいます。笹と樹林のなかをしばらく歩くと徐々に登り斜面となり、滑りやすい登山路をピンクのテープを目安に進み、沢筋の急斜面を登るとハイマツ帯となって展望が開けます。
ガレ場の斜面を登り、ハイマツ帯を抜けると燧ヶ岳柴安ぐらの山頂が見えてくるでしょう。柴安ぐらに登頂後俎ぐらに登頂します。柴安ぐらよりも展望が開ける山頂から眼下の尾瀬沼や周辺の山々など360度の展望です。
登山ルート概要③/長英新道から尾瀬沼東岸
俎ぐらからナデッ窪との分岐を長英新道に進みます。御池岳からミノブチ岳までは展望が開けていますが、笹やぶと樹林のなか、ぬかるんで滑りやすい登山路を注意して歩き、浅湖湿原の分岐から尾瀬沼東岸に進み長蔵小屋に宿泊します。
翌日、浅湖湿原まで戻り、尾瀬沼北岸道を辿って沼尻平から燧ヶ岳分岐まで進んで、帰路は往路の見晴(下田代十字路)から再び尾瀬ヶ原の長い木道を歩いて山ノ鼻から鳩待峠に戻りゴールします。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | 【鳩待峠】 JR沼田駅よりバス利用尾瀬尾瀬戸倉で乗換約110分 車:関越道沼田Cより尾瀬戸倉まで45分。バス乗換で鳩待峠まで約35分 |
山行 | 2泊3日。 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆☆★★★ |
登山情報 | 距離:約32.5km 累積標高差:上り・下り1, 415m 地図上標準コース時間:約14時間55分 |
コース時間 (1日目) |
【約2時間40分】 鳩待峠スタート⇒(50分)山ノ鼻⇒(40分)牛首分岐⇒(40分)竜宮十字路⇒(30分)見晴(下田代十字路)(山小屋泊) |
コース時間 (2日目) |
【約6時間40分】 見晴⇒(15分)燧ヶ岳分岐⇒(210分)燧ヶ岳柴安ぐ ら⇒(20分)俎ぐら⇒(25分)御池岳分岐⇒(110分)浅湖湿原⇒(15分)尾瀬沼東岸(長蔵小屋泊) |
コース時間 (3日目) |
【約5時間35分】 長蔵小屋⇒(15分)浅湖湿原⇒(45分)沼尻平⇒ (30分)白砂峠⇒(70分)燧ヶ岳分岐⇒(10分)見 晴⇒(30分)竜宮十字路⇒(40分)牛首分岐⇒(40分)山ノ鼻⇒(60分)鳩待峠ゴール |
まとめ
燧ヶ岳登山の適期は、湿原に山野草が咲く7月中旬から紅葉時の10月中旬頃まででしょう。8月末頃からは黄金色に輝く草紅葉が池塘に美しく映えます。6月まで残雪がありますので、この時期の燧ヶ岳への登山は注意が必要です。
燧ヶ岳への登山道は5つのコースがありますが、登山道入口までのアクセスに時間が掛かることと、燧ヶ岳山頂に至るには急登があります。尾瀬ヶ原には数箇所の山小屋が点在していますので、1泊して大自然を満喫しましょう。
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