ミヤマオダマキは日本の自生種
オダマキは日本からアジア、ヨーロッパなどで約70種類ほどが自生しています。ミヤマオダマキは、朝鮮半島・中国北部の高山などの寒冷地で自生し、日本では中部以北から北海道にかけて分布する山野草です。
山野草であるミヤマオダマキの花色は、青紫の他に白とピンクもあります。花弁の先端が白いのも特徴的で、山野ではひと際目立ち、蜂などの昆虫を上手に誘引している植物といえるでしょう。園芸品種として古くから人気のミヤマオダマキの育て方について紹介いたします。(この記事は2021年6月11日時点の情報です)
オダマキは「距」が肝!
ミヤマオダマキを始めとするオダマキ属の花を特徴づけているのは、花弁の後ろにある「距(きょ)」といえます。これはガクが変化したもので、オダマキの種類によって真っすぐだったり先端が丸まっていたりします。
ミヤマオダマキの距は、先端が他の多くのオダマキと同じようにくるっと丸まっています。しかし種類によっては真っすぐなオダマキもあります。距の左右にある花弁のようなものは"ガク"となります。このように特徴があるので、じっくりいろいろ観察してみましょう。
ミヤマオダマキの詳しい情報
植物名 | ミヤマオダマキ |
学名 | Aquilegia flabellata Var pumila ・Syn. Aquilegia japonica |
和名 | ミヤマオダマキ(深山苧環) |
科名 | キンポウゲ科 |
属名 | オダマキ属 |
原産地 | 日本/本州中部以北~北海道・朝鮮半島・中国東北部 |
耐暑性 | 弱い |
耐寒性 | 強い |
園芸品種の種まき時期 | 2月~3月 |
園芸品種の開花時期 | 4月~5月 |
日本や朝鮮半島、中国北部の高山などで自生するミヤマオダマキは、草丈が20~40センチメートルほどになります。少し複雑な形の葉は3つに分かれ、根元に密生してつくのも特徴的。葉は、同じキンポウゲ科のニリンソウと似た特徴を持っているといえそうです。
花茎は5月から7月にかけて長くなり、茎の先端に1~3個の大きめの青紫色の花を下向きに付けます。5枚ある花弁は、ミヤマオダマキの特徴である長い距につながっているので、じっくり観察してみましょう。
ミヤマオダマキは有毒植物
ミヤマオダマキは、根を含む全草が「苧環(おだまき)」として生薬に利用されていましたが、トリカブトなどの他の多くのキンポウゲ科の植物(写真はチシマノキンバイソウ)と同じように有毒植物となります。青酸系の成分を含む有毒植物でもあるため注意が必要です。
民間療法では根や葉に消炎作用があるとされていますが、取り扱いがとても難しいため観賞用として楽しむだけにしておきましょう。
ミヤマオダマキの育て方
①ミヤマオダマキが好きな場所
ミヤマオダマキの育て方として先にチェックしておきたいのがミヤマオダマキの好きな場所、生育環境の確認です。ミヤマオダマキの自生地は中部北部以北から北海道ということが示しているように、寒さには強いという特徴があります。
自生地は高山ですが林床地帯ではなく、日当たりと風通しのよい場所で咲いています。庭での育て方もこの点に注意し、日当たりと風通しのよい場所を探して栽培しましょう。ただし夏場の直射日光は避けて半日陰になる場所を選んでください。
②ミヤマオダマキが好きな用土
ミヤマオダマキの用土は、ミヤマオダマキの自生地である高山の岩場・ザレ場、草丈が低い草原などが示しているように、水はけのよい性質となります。市販の山野草の用土で問題ありませんが、丈夫に育てるならば赤玉土単用、または赤玉土と鹿沼土をブレンドした用土を使うのがおすすめです。
軽石と腐葉土を大めに土にブレンドするのもよいでしょう。とにかく水はけのよさが最大のポイントとなります。
③「種まき」は育苗してから地植え
ミヤマオダマキは種から芽を出して成長する「実生(みしょう)」なので、園芸初心者でも簡単に育てられます。種子は園芸店やネット通販で簡単に入手できますし、苗から育てたミヤマオダマキから種を採取することも可能です。
種まきする場合は、種を採ったら種まきに適した時期まで冷蔵庫で保管しておきます。種まきの適切な時期は、2月から3月となります。
苗に成長したら地植えする
ミヤマオダマキはいきなり種をまいても育ちやすいですが、確実な育て方は、育苗してから地植えする方法です。地植えする前の準備は、発芽の2~4週間ほど前に、育苗ポットに小粒の赤玉土を入れてからミヤマオダマキの種を重ならないようにまきます。土はかぶせず、乾燥しないように水やりをしてください。
ミヤマオダマキの苗が上部に成長してきたら、ミヤマオダマキが好む日当たり・風通し・水はけのよい場所へ植えてください。もしくは用土を整えて鉢植えにしましょう。
④「水やり」は土の表面が乾いてから
夏にミヤマオダマキを地植えしている場合の水やりは、余ほどの日照不足でなければ必要ありません。鉢植えしている場合の水やりは、土の表面が乾いたらたっぷり与えてください。
冬の水やりも夏と同じ条件となり、土の表面が乾いていたらたっぷり与えます。基本的にミヤマオダマキの水やりは、夏も冬も表土が乾燥していたら与えるということを覚えておきましょう。
⑤「肥料」は春から秋にかけて
ミヤマオダマキを地植えしている場合は過分な肥料は必要ありませんが、鉢植えは春から初秋ころまでに置き肥か液体肥料を与えるのがおすすすめです。
地植えするときと鉢植えの用土には、緩効性化成肥料を混ぜてください。肥料の成分は、リン酸とカリウムが多く含まれているものがおすすめです。追肥は開花時期の5月~9月に、1種間から10日に一度液体肥料を希釈して与えます。
⑥「剪定」して株を強くする
ミヤマオダマキは繁殖力が強く、一株にいくつもの鞘をつけます。しかしたくさんの鞘ができて種が出来すぎると、ミヤマオダマキの株が衰弱して枯れる心配があります。
そのためミヤマオダマキの一株に対し、鞘は2つほどになるように調整しましょう。ミヤマオダマキの余分な茎は剪定し、切り花にして花瓶に飾るのがおすすめです。
⑦鉢植えの「植え替え」は2~3年に一度
ミヤマオダマキを地植えしている場合は、そのまま植えておいても問題ありません。ミヤマオダマキを鉢植えしている場合は、毎年ひと回り大きめの鉢に植え替えるのがおすすめです。
植え替えの回数は最低でも約2年に一度とし、時期は涼しい3月か、9月から10月にしてください。鉢から出すときに株を傷つけないように丁寧に植え替えましょう。根が細長く出ているものがあれば、ハサミで切り落とします。
⑧「夏越し」と「冬越し」も難しくない
ミヤマオダマキの夏越しと冬越しは特に大変なことはありませんが、念のために以下の点に気を付けてください。夏越しの場合は直射日光を避けて半日陰の風通しのよい場所で育てると、枯れる心配が減ります。
地植えで冬越しする場合はそのままでも問題ありませんが、霜が心配なときはマルチングをするとよいでしょう。雪が降る地域は雪がマルチング代わりになります。鉢植えの場合は、玄関などの気温が低めの場所で保管してください。
⑨「増やし方」は株分けと実生の2つ
ミヤマオダマキの増やし方は「株分け」と実生による「種まき」の2つがあります。株分けの増やし方の時期は芽が出る前の2~3月ころで、植え替えと同時に行うようにしましょう。ミヤマオダマキの株を掘り出し、手で優しくほぐします。
根が絡んでいたりつながっていたりするときは、殺菌消毒したハサミで切ります。さらに切り口にも殺菌剤などの薬を塗り、菌が入らないように保護します。しかしミヤマオダマキの根はデリケートなため、種で増やすほうがおすすめです。
⑩「病気」「害虫」対策
ミヤマオダマキの病気で心配なのは、梅雨の時期や梅雨前線が通る時期に発生しやすい「うどんこ病」です。葉っぱの表面にカビが繁殖して白っぽくなってしまいます。
白くなると光合成ができないので栄養が行き届かず、ミヤマオダマキが枯れる原因になるのです。白くなってしまった葉は回復しないので、他の葉への伝染を防ぐためにも処分してください。
害虫はアブラムシやヨトウムシなど
心配な害虫は、葉から汁を吸うことでミヤマオダマキが枯れる原因を作るアブラムシ・ハダニです。数が少なければセロハンテープなどで剥がせますが、大量に付着している場合は殺虫剤を散布するのがベストです。
蛾の幼虫であるヨトウムシが付着する場合もあり、葉やつぼみを食べつくしてしまいます。成虫になると産卵してしまうので早めに駆除しなければいけません。食害のあった葉は丸々刈り取り、殺虫剤を散布しておくと安心です。
ミヤマオダマキの種類
日本の自生種は2つ
ミヤマオダマキは在来種ですが、日本にはもう一種の自生種、距がまっすぐに伸びる「ヤマダオダマキ」があります。ヤマダオダマキの花色は紫や白などですが、花色が黄色のものもあり、キバナノヤマオダマキと呼ばれています。
ダイセンオダマキというのは、オダマキとヤマオダマキの交雑種となり、大山で発見された小型のヤマダオダマキをダイセンオダマキという人がいますが、これは誤りとのことです。
西洋オダマキ
ミヤマオダマキは日本の在来種ですが、西洋にもさまざまなオダマキがあります。交雑しやすい多年草なので園芸品種として人気があり、多彩な種類を楽しめる植物なのです。
日本で西洋オダマキと呼ばれている園芸品種は、北米産の大輪の花をつける数種類の交配種。個々の品種名を付けずに花色や混合種子で流通しているのです。花色も、青紫・白・桃色・黄色・赤・黒紫などがあり、最近は八重咲で、距がないクレマチスのような園芸品種も人気です。
ミヤマオダマキは初心者でも育てやすい!
ミヤマオダマキの園芸品種も多年草で実生で発芽するため、地植えでも鉢植えでも育て方は簡単といえます。2月から3月ころに種をまくと、開花時期の4月から5月ころには花色が青紫や白、ピンクなどの花をつけます。
水やりは表土が乾いてからたっぷり与え、肥料は液体肥料を開花時期に与えます。本当の花弁は内側のやや筒状になっているものです。外側に付いている疑似花弁とがくが変化した距など、少し複雑な形をしているのも人気のミヤマオダマキを育ててみましょう。
キンポウゲ科の植物が気になる人はチェック!
ミヤマオダマキを始めとするキンポウゲ科の植物は、本種のキンポウゲの他に、キンバイやトリカブト、ニリンソウ、イチゲなどと実に多くの種類があります。いろいろ違いをチェックしておきましょう。
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出典:ライター撮影