クモマグサの特徴
園芸店で販売されているクモマグサ(雲間草)は、山野草に分類される多年草。ヨーロッパの高地で自生する原産種を交配したもので、日本で自生する栽培の難しいクモマグサとは別の種類となっています。
高山植物らしく耐寒性に強く、耐暑性にはやや弱い性質です。鉢植えの他にグランドカバーやロックガーデンにすると、ぐっと野性的な雰囲気に。育て方は難しくないので、ガーデニングで高山植物の雰囲気を味わいましょう。
クモマグサの学名
学名(ラテン語)のSaxifragaには、石を意味する「サクスム」と「割る」という意味があります。クモマグサは漢字で「雲間草」と書くように、流れる雲の間から花をのぞかせるほどの高い山に自生することから名づけられたそうです。
まさにクモマグサは、高山の礫地などの岩や石の割れ目から生えている特徴を示しています。高山という過酷な環境で育つことから、寒さに強くて暑さや蒸れには弱いため、寒冷地のほうが、より育てやすい環境といえるでしょう。
クモマグサの外見的特徴
外見的な特徴は高山植物らしく、草丈は10~20センチメートルほど。4月から5月の開花時期には白や赤、ピンクなどの花色をした、5弁のウメのような花を楽しめます。小さいながらも太陽を目指し、ぴんと背筋を伸ばしたような姿が愛らしく感じられる植物です。写真のように咲き始めの頃もまた素敵。
芽は多数集まり、ふかふかしたクッションのような様子も愛おしく思えます。寒さを避けるように密集しながら咲く様子は、寒冷地で咲く高山植物の特徴を示していますよね。
クモマグサの育て方
高山植物の原種はもとより、高山植物の原種を交配させた植物の育て方は難しいとされています。しかしクモマグサは長年かけて育種や選抜が行われてきたため、高山植物の品種の中でも丈夫な花なのです。
北海道のような高山に近い環境の寒冷地では、育て方はさらに簡単です。セイヨウクモマグサは本州のような温暖な地域での育て方も、それほど難しくないとされている種類とされています。ぜひ育て方を参考にして愛らしいクモマグサを栽培してみましょう。
クモマグサの栽培環境
クモマグサは原種が高山植物のため、耐寒性に強くて耐暑性はやや弱い性質があります。栽培環境は日当たりのよい場所でもよいですが、どちらかといえば風通しのよい半日陰が向いています。
鉢植えのクモマグサは、暑くなる7月から9月上旬は40パーセントほど遮光をし、日焼けや高温障害にならないように注意が必要です。冬は北風に当たらないような場所に置いてください。クモマグサを庭植えするときは、岩石を多用したロックガーデンを築いて植え付けましょう。
クモマグサの用土(鉢植え)
クモマグサの鉢植えに用いる土は、軽石と硬質鹿沼土か日向土、桐生砂の各小粒を同量か、2:4:4の割合で混ぜて使ってください。もしくは市販されている山野草培養土は、手間もかからずにおすすめです。
どちらの場合も使用前に水でよく洗い、完全に"みじん"を抜いてから使ってください。注意点として、根・茎の境・芽の間は、粗い花崗岩質の砂利で覆っておきましょう。
クモマグサの水やり
クモマグサの水やりは、上手に育てる上で最も大切なポイントです。クモマグサのような礫地で生える高山植物は、水はけのよい環境のため、水やりが多過ぎるのは厳禁です。
クモマグサを鉢植えする場合は、表土が乾いてから与えてください。乾いていないのに水やりをすると根腐れを起こしてしまいます。夏の間は二重鉢にするか、砂床に埋めておくのがおすすめです。クモマグサを庭植えする場合は、晴天続きで乾燥していない限りは、水やりの必要はありません。
- 水やりは表土が乾いてから。根腐れしないように二重鉢がおすすめ
砂床とは?
砂床とは、クモマグサの乾燥防止と鉢内の温度上昇を防ぐために効果的な方法です。方法は、発泡スチロールの箱の側面下部2~3センチメートルの部分に数か所、水抜き用の穴を開けて置きます。その中にクモマグサに使う、洗った軽石や鹿沼土の小粒を満たしておくのです。
これらの用土の水分を吸うことで、必要以上の水やりを防げます。なるべくクモマグサの原種の自生環境に近づけることで、開花時期には生き生きとした花色の花を咲かせてくれることでしょう。
クモマグサの肥料
クモマグサの肥料を与える時期は3月から9月にかけてで、2,000倍に薄めた液体肥料を、月に1~2回与えてください。真夏には、3,000倍ほどに薄めたほうがよいでしょう。クモマグサを庭植えするときも同じ要領です。
植え替えのときにも肥料は必要となります。多めのリン酸とカリウムが入った元肥となる緩効性化成肥料を、3号鉢相当の株に二つまみほど施肥してください。
植え替えや増やし方は?
植え替えのコツ
クモマグサは多年草のため毎年楽しむことができます。クモマグサを植え替えするときは、開花時期が終わってから1か月以内に行い、それを毎年行ってください。弱って枯れてしまった枝や葉はきれいに取り除いてから株分けをします。
北海道のような高山植物に近い環境の寒冷地では、株分けをしなくてもそのまま育てられます。小さな苗は時期に関係なく、成長に合わせながらひと回り大きな鉢に植え替えてください。
クモマグサの増やし方
クモマグサを増やすとグランドカバーになり、高山で自生するような雰囲気を作れるので、ぜひ挑戦してみましょう。クモマグサの増やし方は、株分けと種まきの2種類あります。
株分け
クモマグサの株分けによる増やし方は、1株に対して5~10芽ほどになるように小分けしてください。ほとんどの根を切っても問題ないので、取れた芽はさし芽にします。
種まき
クモマグサの種まきによる増やし方は、種を6月から7月に採って冷蔵庫で保管し、翌年2月から3月初旬に蒔いてください。クモマグサな発芽率がよいので、種まきは密になり過ぎないように注意しましょう。小さい種のため、種が流れないように鉢底からの底面給水がおすすめです。
日々のお手入れのポイント
ポイント①花がら摘み
多年草のクモマグサを楽しむための主な手入れとしては、3つの大切なポイントがあります。1つめのポイントは「花がら摘み」です。種まきをして増やさない場合は、開花時期が終わったら花を摘んで捨ててください。
ポイント②種まき用の種の採取
2つめのポイントは種まき用の「種の採取」です。6月から7月に開花時期が終わり、熟して実が開いた先のほうから果実を取り、種を集めてください。
ポイント③古葉取り
3つめのポイントは「古葉取り」となります。季節は関係なくいつでも、茶色く枯れてしまった葉は付け根からピンセットで丁寧に取り除いてください。寒冷地では気にしなくても問題ありませんが、本州などのような温暖地域で枯れた葉をそのままにしておくと、腐ることが多いからです。
病気・害虫対策について
クモマグサの病気で多いのは「軟腐病」です。6月から8月に発生する軟腐病は、茎の根元が腐って抜ける病気です。腐った部分は切ってから捨て、清潔な用土に挿し木をして仕立て直してください。
栽培環境の風通しもよくし、用土を水はけのよいものに替えてあげましょう。茎の付け根から上を洗って砂利にするだけでも防ぐことができます。
クモマグサの害虫対策
クモマグサの最大の害虫は、ハダニやアブラムシ、カイガラムシです。ハダニは夏になると葉裏を中心に発生し、アブラムシは春に新芽やつぼみにつく害虫です。
春から夏にかけて発生するカイガラムシは、葉の付け根や成長点のあたりに潜り込み、クモマグサの汁を吸います。最悪なことには排せつ物に黒カビが生えてしまい、すす病を発生させてしまうことも。小まめに取り除いてあげましょう。
クモマグサに似ている高山植物
クモマグサと同じ"属"の仲間は、ユキノシタ以外に結構あります。ダイモンジソウやクロクモソウ、ヤマハナソウなど。クモマグサと同じ"科"の仲間は次のとおり。ウツギ、クサアジサイ、ウメバチソウ、エゾアジサイなどです。
セイヨウクモマグサとは異なる種類ですが共通点もあるので、山に出かけて見かけたら、いろいろチェックしてみましょう。
シコタンソウ
シコタンソウ(色丹草)は、北海道の高山から中部地方の高山の岩場で自生します。直径1センチメートルほどの星型の花には、細かい赤と黄色の斑点が無数にあり、少し独特です。ユウバリシコタンソウなどのように、産地によって変種が現れやすい点も大きな特徴です。
クモマグサ
少し複雑ですが、セイヨウクモマグサ(西洋雲間草)とは違う種類の日本のクモマグサも、ユキノシタ科ユキノシタ属です。しかし北アルプスの白馬岳と御嶽山にしか自生していないとされています。
草丈は2~10センチメートルほどで、花のサイズは直径1.3センチメートルほどで、セイヨウクモマグサと同じくらいです。礫地から真っすぐに伸びる姿もそっくりです。
チシマクモマグサ
チシマクモマグサは本州のクモマグサの北方系とされ、北海道の大雪山や知床半島、夕張山地などで観られます。本州のクモマグサと違う点は、葉の先が浅く、3つに裂けない点です。
雪田後にいくつかの株が密生し、やはり密生した葉の間から太陽に向けて真っすぐに花が伸びる様子は、セイヨウクモマグサとそっくりです。
クモマユキノシタ
クモマユキノシタは、大雪山や夕張山系、日高山系だけの湿った礫地で自生する種類です。柄のないくさび型の葉が根のあたりに集まり、こんもり盛り上がっているように見えます。まばらに星形の白い花がつき、黄色い斑点が2個ずつ花弁にあるのが特徴です。
特徴的な赤茶色の茎と葉の中から、白い花が真っすぐに伸びる様子は、線香花火のようにも見え、とても美しく見えます。
まとめ
ヨーロッパの高山植物が原種の多年草のクモマグサは、夏越しをさせるには水やりが最大のポイント。高山の礫地のような水はけのよい環境を好むので、鉢植えの場合は根腐れを起こさないように「二重鉢」にし、表土が乾いてからにしましょう。地植えは基本的に水やりはしなくても大丈夫です。
日当たりに関しては、直射日光を避けて風通しのよい場所か、半日陰で育ててください。開花時期を迎えた苗も販売されていますが、種を採取して種まきからスタートするのも楽しいですよ。
高山植物の栽培が気になる人はこちらをチェック!
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