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珍しい動植物が豊富なアポイ岳のおすすめ登山コースを解説!アクセス方法&注意点も!

襟裳岬手前の様似町にあるアポイ岳は、往復5時間ほどで登れる初級者向けの山。特徴的なかんらん岩でできていることなどから、固有の高山植物が咲く山として人気があります。アポイ岳の登山コースやアクセス方法、注意点、高山植物の開花時期などについてご紹介します。
更新: 2021年3月25日
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目次

アポイ岳の概要

出典:ライター撮影

アポイ岳(標高810メートル)は、日高山脈の中軸から南に20キロメートルほど飛び出している「幌満かんらん岩体」と呼ばれる特徴的な岩でできています。「幌満かんらん岩体」とは、アポイ岳の峰続きにある吉田岳とピンネシリ(958.2メートル)を合わせたた、ひと塊としての総称です。

おすすめコースの前に、かんらん岩と高山植物の少し不思議な関係についてご紹介します。ぜひ登山前にいろいろチェックしてくださいね。(この記事は2021年3月21日現在の情報です)

アポイ岳の三大特徴

特徴1.かんらん岩でできている

出典:ライター撮影

日高山脈から少しそれているアポイ岳の成り立ちは、東側の北米プレートと太平洋プレートが西側のユーラシアプレートに衝突してできた日高山脈と大きな関係があります。

東側のプレートが付き上げるようにぶつかったときに、その力は地球の深部にある地殻を越えて、何とマントルの上部まで及んだのです。その際に突き上げられたのが「幌満かんらん岩体」(=アポイ岳)でした。

かんらん岩の性質は?

出典:ライター撮影

アポイ岳をつくっているかんらん岩は、マンガンやニッケルなどを含んでいる超塩基性岩です。一般的に超塩基性の土壌では植物は育ちにくく、反対にいうとアポイ岳の植物は過酷な環境に適応できているのです。

超塩基性植物のため、赤味が強かったり光沢があったりなどの特徴が観られます。かんらん岩は、水の影響を受ける蛇紋岩とは違い、マントルに近い場所からそのまま上がってくるため、新鮮で硬いといわれているのです。

宝石「ペリドット」の原石

かんらん岩は、黄緑色から少し暗い緑色をしており、8月の誕生石「ペリドット」の原石としても知られています。ペリドットという名称は、かんらん岩の学名「ペリドタイト(peridotite)」から来ているのです。

登山道で注意して観ると、緑色がかった岩がところどころで探せるので、お花と合わせてじっくり観察してみましょう。

特徴2.花が独特で種類豊富

出典:ライター撮影

アポイ岳の標高は1,000メートルもないのに高山植物が豊富です。理由は、かんらん岩という特徴のある土壌条件に加えて、海霧や強風の影響を受けやすい気候条件だからです。

一般的な高山植物の開花は6月中旬以降ですが、アポイ岳のある日高山脈付近は積雪が少ないため、アポイ岳では5月初旬からサマニユキワリなどが開花します。初雪も遅く、開花時期は10月のコハマギクまでと半年近くも楽しめるのも特徴です。

特徴3.山頂は景色がよくない

アポイ岳の山頂にはダケカンバが繁茂しており、景色はよくありません。景色を楽しめるのは、五合目から山頂手前までとなります。アポイ岳山頂から吉田岳へ行く途中でも美しい海岸線景色などが望めます。

通常の山頂は、ハイマツ帯を過ぎた後は森林限界ですが、アポイ岳の山頂にダケカンバが繁茂しているのが謎とされています。強風の影響が弱まっていることなどが一原因に挙げられますが、具体的な解明はされていません。


アポイ岳の地名の由来

出典:ライター撮影

アポイ岳の名称は、北海道の先住民族とされるアイヌ民族の言葉から来ています。アポイとは、アイヌ語の「アぺ(火)・オイ(多いところ)・ヌプリ(山)」の省略とされ、意訳は「大火を焚いた山」。

昔、当地に住んでいたアイヌ民族が、鹿の豊猟をカムイ(神)に祈って火を焚いた場所との伝説から名づけられたそうです。

アポイ岳の登山コースとレベル

初級者向け:冬島旧道コース

出典:ライター撮影

アポイ岳の登山は冬島旧道コースを使うのが一般的。往復所要コースタイムは約5時間で、レベルは初級向け。登山道はアポイ岳の斜面を横切るようについており、沢のたびに休憩所があります。

五合目の休憩小屋までは樹林帯で、以降は岩場のお花畑や襟裳岬から西方面の太平洋の海岸線景色が見渡せます。正面にアポイ岳を観ながらの急斜面を、日高山脈が見える馬の背まで登り、急な登りを景色を楽しみながら少し頑張れば山頂です。

標準コースタイム

登山口(1時間30分)→五合目・休憩小屋(30分)→馬の背(30分)→アポイ岳。

標高差は740メートルで、登りの標準タイムは2時間30分、下りの標準タイムは1時間40分。往復で5時間強となります。途中で休憩をはさみながら登るともっと時間はかかりますが、高山植物や晴天時の日高山脈などの眺望を楽しみながらの登山がおすすめです。

足を延ばして吉田岳

出典:ライター撮影

ダケカンバが繁茂しているアポイ岳の景色はあまりよいとは言えません。アポイ岳の山頂から50分ほど足を延ばして吉田岳まで進むと、かなりよい景色を楽しめます。かんらん岩の観察を始め、花の種類も多くなるためおすすめです。

アポイ岳の山頂から吉田岳を目指す人はそれほど多くないので、静かな山歩きを満喫できることでしょう。

登山口が同じ冬島新道コース

一般的に、登山道に新道と旧道があるときは新道を利用することが多いはずですが、アポイ岳の場合は様子が違います。アポイ岳の冬島新道コースは登山者には不評のため、現在は廃道状態です。

「冬島地区多目的保安林」事業の一環として建設されましたが、自然を大きく破壊したため魅力に乏しく、残念ながらアポイ岳の魅力を感じることができないのです。

初級者向け:幌満お花畑コース

出典:ライター撮影

幌満お花畑コースは、冬島新道コースの途中(馬の背)で分岐してアポイ岳の山頂を目指す登山コースで、往復利用はせずに下山で利用されることが多いようです。

分岐は馬の背から右手に入り、景色のないアカエゾマツの樹林帯の斜面をトラバースして景色のあるお花畑へ。お花畑からハイマツ斜面の急登、左手にダケカンバ帯に沿った登山道を右手の幌満岳を観ながら山頂です。

標準コースタイム

登山口(1時間30分)→五合目・休憩小屋(30分)→冬島コース分岐:馬の背(40分)→幌満お花畑(40分)→アポイ岳


お花畑は過去のこと

コースの名称は「お花畑」ですが、ヒダカソウなどが群生していた頃の華やかさは失われてしまいました。お花畑が消えた理由は、オーバーユースによる踏み付けと1990年代後半の盗掘です。ヒダカソウは、探すことができれば幸運というほどのレベルになってしまいました。

お花畑は廃道になった幌満コースの合流点ですが、南側の幌満岳の景色、かんらん岩を採掘する工場や道路が見えます。

中級者向け:ピンネシリ縦走コース

出典:ライター撮影

ピンネシリはアポイ岳の北側にある、アポイ岳より少し標高が高い山(957.8メートル)です。駐車場しか設備がないため、アポイ岳からピンネシリへの縦走コースではなく、ピンネシリからアポイ岳への縦走コースが多いようです。

全体的に利用者は多くなく、手入れがあまりされていません。ササ原のトドマツ造林地やダケカンバ林などの登山道からピンネシリ山頂へ。ササ原から景色のよいお花畑と吉田岳を経てアポイ岳山頂です。

標準コースタイム

登山口(1時間10分)→835標高点(1時間10分)→ピンネシリ(約1時間50分)→吉田岳(約1時間)→アポイ岳(20分)→馬の背(20分)→休憩小屋(1時間)→アポイ岳登山口

稜線の南側や東側ではヒグマの掘り返し跡が割と多く、クマ鈴は必須です。冬島新道コースに比べると、野趣あふれる日高山系の醍醐味にふれられることでしょう。レベルは、ピンネシリ単体は初級向けですが、縦走コースは中級者向けです。

アポイ岳のおすすめ時期

出典:ライター撮影

アポイ岳の登山は、やはり花の時期がおすすめです。また日高山脈を始めとする山間の景色や太平洋岸の景色も見過ごせません。気候的におすすめなのは、真夏の8月を避けた季節です。

冷涼な北海道ですが、馬の背から山頂までは樹木に覆われた場所がないため、夏の日差しがことさら強く感じられます。この時期に登山する場合は、帽子や飲料水などの暑さ対策は必須です。

花の時期

出典:ライター撮影

アポイ岳周辺の固有植物は30種類とされ、世界でトップクラスといわれています。固有植物はアポイアザミ・エゾコウゾリナ・サマニオトギリ・アポイカンバの4種で、固有の亜種や変種、品種などが加えられます。

5月はヒダカソウを始め、アポイキンバイやアポイタチツボスミレ、6月頃はチングルマ・エゾコウゾリナなど。7月頃はアポイアザミ・サマニオトギリ、8月・9月頃はヒダカミセバヤ・コハマギクなどが楽しめます。

アポイ岳登山の注意点

装備の注意点

出典:ライター撮影

アポイ岳の登山は初級者以上向けのため、一般的な装備があればよいでしょう。晴天時でも山の天候は変わりやすいため、雨具や防寒具は用意してください。アポイ岳ではヒグマの目撃情報が多いため、クマ鈴はもちろんのことクマよけスプレーがあるとなお安心です。

ササ原の近くも通るためマダニ対策もしっかりしておきましょう。時間に余裕があれば登山前にビジターセンターで予備知識を入れておくとよいでしょう。

服装の注意点

Photo byMaBraS

真夏は日差しを遮る樹木がない場所もあるため、服装の重ね着や帽子は必須です。霧が発生しやすいため、防寒具も忘れずに準備しましょう。

マダニ対策は、肌の露出は避ける服装にし、足元に忌避剤を散布すること、シャツやズボンの袖口を中に入れることなどが挙げられます。軍手をはく、首にタオルをまくかハイネックのシャツを着るのもよいでしょう。下山後は、服に付いたダニをガムテープを使って取り除く方法も効果的です。

アポイ岳へのアクセス方法・宿泊

出典:ライター撮影

様似町にあるアポイ岳の登山口は、ビジターセンターや宿泊施設のアポイ山荘、キャンプ場などがある便利な場所です。アポイ岳の登山口へはJRバスまたは車で行けます。

バスでのアクセスは、JR様似駅からJRバス広尾または庄野または岬小学校行に乗車し「アポイ登山口」下車、徒歩約20分。宿泊施設の「アポイ山荘」経由の便もあります。車でのアクセスは、登山口近くのビジターセンター前とトイレ前に広い駐車場があります。

ピンネシリ登山口

ピンネシリの登山口は、アポイ岳ビジターセンター前の交差点を真っ直ぐ進んで町道を走りましょう。様似町市街地からの車道との合流点までは舗装がされてあり、広い駐車場が登山口にあります。

宿泊施設

アポイ岳までは札幌から車で3時間ほどかかるため、近くの素泊まりと日帰り入浴ができるできる「アポイ山荘」または、登山口手前のキャンプ場で前夜又は登山後に宿泊するのもおすすめです。キャンプ場にはバンガローもあるので、テント道具がなくても心配ありませんが自炊道具は必要。

アポイ岳の山小屋は、五合目の休憩小屋しかなく、宿泊できる避難小屋などの山小屋はありません。

アポイ岳で珍しい花を観よう!

出典:ライター撮影

北海道日高地方の様似町にあるアポイ岳の登山コースは、往復5時間ほどの冬島旧道コースとなります。下山時は、幌満お花畑コースを利用するのもよいでしょう。中級者以上はピンネシリからの縦走コースもおすすめ。アポイ山荘にお願いすると送迎サービスもあるようです。

アポイ岳のおすすめ登山時期は5月から10月頃と長いため、何度も通いたくなります。特徴的なアポイ岳の固有種の花を観に、アポイ岳に出かけましょう

北海道の山が気になる人はこちらをチェック!

北海道にはアポイ岳の他にも、気軽に登れる魅力的な山がたくさんあります。登山コースなどの詳細が紹介されてあるので、ぜひ北海道登山のご参考にしてください。