牡丹桜とはどんな花?
牡丹桜の特徴とは
牡丹桜または八重桜の最大の特徴は、花びらが6枚以上あることです。そのような咲き方を「八重咲き」と言い、「八」とありますが花びらが8枚という意味ではなく、何重にも重なっている様子を指しています。
種類によって、花びらが6枚~20枚というのもあれば100枚以上になるなど、花びらの数に違いがあります。花のひとつひとつが大きくふんわり丸い形になるものが多く、季節を感じる華やかでゴージャスな桜です。
牡丹桜とソメイヨシノはここが違う!
ソメイヨシノとの違いは花びらの数です。牡丹桜(八重桜)は花びらの多い八重咲きですが、ソメイヨシノは5枚で咲く一重咲きなのです。また葉が芽吹く時期にも違いがあり、牡丹桜は開花と同時に葉が出るものが多いのに対してソメイヨシノは花が先で、後から葉が出るという特徴があります。
花の色はどちらもピンクですが、白に近いピンク色であるソメイヨシノに対して牡丹桜は濃いピンク色のものが多く、趣の違う色味が楽しめます。
牡丹桜という名前の桜はない?!
八重咲きの桜を牡丹桜(八重桜)と呼びますが、実はそれは品種の名前ではありません。「牡丹桜」や「八重桜」とは、花びらが何枚もたくさんあり、重なり合うように八重咲きをする全ての桜に対して使う総称なのです。「牡丹桜」「八重桜」という名前の桜はないのです。
幾重にも重なった花びらの様子が牡丹の花に似ていることが由来で「牡丹桜」や、八重咲きの意味から「八重桜」と呼ばれるようになったのです。
牡丹桜には別名がたくさんある
牡丹桜は、他にもたくさんの別名があります。例えば「八重桜」は、八重咲きをすることが由来ですが、他にも「菊桜」という呼び名もあります。花びらが100枚、ものによっては300枚以上にもなるものを菊咲きと言い、菊咲きをする桜の呼び名です。菊のようなたくさんの花びらをつけることが由来です。
その他に、牡丹桜は人の手による交配や改良などで生まれた種類が多いので、野に咲く原生の桜である山桜との違いを表す「里桜」とも言われます。
牡丹桜の種類とそれぞれの特徴をご紹介!
牡丹桜は何百種類もある!
桜が好きな日本人、牡丹桜も昔から日本人に好まれ栽培されてきました。一重咲きのオオシマザクラやエドヒガンといった桜とかけ合わせた品種改良などにより、たくさんの種類が生まれました。
突然変異で八重咲きになることもあるオオシマザクラから生まれた里桜である牡丹桜の数々は、頑丈な性質と花や木の美しさから鑑賞に向いており、庭園や街中の並木、河川敷などに植樹され多くの人々に愛されてきました。
牡丹桜の種類①街でよく見る関山
関山(読み方はカンザン)は、日本で最も植えられている牡丹桜の1つで、公園や街路樹などでよく見られます。花びらは20~50枚で濃くて鮮やかなピンク色をしていて、葉っぱも少し赤みがかっているのが特徴です。
大ぶりな花で、咲いてから散るまでが短い牡丹桜の中では、比較的長く咲き、寒い地域でも生育しやすく害虫にも強いので、そう言った特徴が日本人に好まれて人気の品種となりました。
牡丹桜の種類②流れる枝が美し八重紅枝垂
八重紅枝垂(読み方はヤエベニシダレ)は、関山と並んで日本でよく目にする牡丹桜です。枝垂れの枝に小ぶりな花をつけ、色は明るいピンク色です。花びらは15~20枚で、葉より先に花だけつけるのが特徴です。
江戸時代から栽培されていて、明治時代には当時の仙台市長の遠藤氏が市内で増殖させて各地に贈って普及させたので、別名「エンドウザクラ」「センダイヤエシダレ」「センダイコザクラ」などとも呼ばれます。
牡丹桜の種類③色の変化を楽しむ一葉
一葉(読み方はイチヨウ)は、花びらは20~35枚で大ぶりな花を咲かせます。花びらの外側と内側で少しずつ色が違い、咲き始めは濃いピンク色、開花するにつれてだんだんと白っぽい色になっていきます。
一葉という名は、雄しべが細い葉っぱのような形をしていて、それが1つだけ花の中から突き出るように見えることが由来でつけられました。開花と同時か少し遅れた時期に葉っぱが出始めます。東京の新宿御苑が名所です。
牡丹桜の種類④由来がありがたい普賢象
普賢象(読み方はフゲンゾウ)は、一葉と同じく雄しべが葉っぱ化しているのが特徴で、折れ曲がっている雄しべの形が普賢菩薩の乗っている白象に似ていることが名前の由来です。大きく開いた白い花びらと雄しべが白象を連想させたようです。
花びらは20~50枚で大ぶりな花を咲かせます。一葉と同様、花びらの色が外と内とで違いがあるので、開花したばかりはピンク、次第に白と色の変化が楽しめます。白だけの白普賢もあります。
牡丹桜の種類⓹グラデーションが美しい紅豊
紅豊(読み方はベニユタカ)は、1961年に浅利政俊という北海道松前町の教員だった人が、マツマエハヤザキとリョウウンインベニヤエという桜を交配させて作りました。
花びらは10~15枚あり、縁に向けてピンク色が濃くなっていくので色のグラデーションが楽しめ、その色の豊かさから紅豊と名付けられました。浅利氏は桜の研究により、これまでに100以上も生み出した人で、その代表的な桜がこの紅豊です。
牡丹桜の種類⑥珍しい色の御衣黄
御衣黄(読み方はギョイコウ)は、花が黄緑色をしている珍しい桜です。江戸時代の中期頃にはすでに存在しており、名前の由来は貴族が着る服の萌黄色にちなんでいます。
花びらは10~15枚で、花の大きさは地域によって2~2.5cmから4~4.5cmと異なるという特徴があります。薄い緑色をしていますが、花びらの中心部に紅い線があり、開花とともにだんだん赤みが増えていき、花が散る頃にはピンクの花のように見えます。
牡丹桜の種類⑦歴史の長い乙桜
乙桜(読み方はキノトサクラ)は、花びらが10~15枚ほどで淡いピンク色をした大ぶりな花を咲かせる牡丹桜です。花柄(かへい)という、花と枝をつなぐ茎が長いのが特徴で、そのため花が枝からぶらさがっているように咲きます。
その様子から、大提灯(オオジョウチン)とも呼ばれている乙桜。その歴史は長く、江戸時代の園芸誌「花壇地錦抄」にすでにその名が残っているほどです。
牡丹桜の開花時期はいつ?
牡丹桜はソメイヨシノより遅い開花時期
牡丹桜はソメイヨシノよりも1~2週間遅い時期に開花します。ソメイヨシノが散り出すと牡丹桜が咲き始めるので、関東や関西のあたりではだいたい4月中旬から5月上旬が見頃となります。
ソメイヨシノは満開になると同時に散り始め見頃の期間はあっという間ですが、牡丹桜はソメイヨシノに比べると咲いている期間は長めです。ソメイヨシノと開花時期が重ならないので、合わせると長い期間桜が楽しめます。
国内の牡丹桜の名所①東北・北関東
東北・北関東の牡丹桜の名所としては、北海道の松前公園、秋田県の日本国花苑、茨城県の日本花の会結城農場などが有名です。松前公園では、牡丹桜でも早咲き・中咲き・遅咲きとたくさんの種類があり、3週間近く満開の桜を楽しむことができます。
日本国花苑では、牡丹桜だけで関山、御衣黄の他、花びらが300~350枚にもなる菊桜なども咲き誇ります。結城農場は研究機関でもあり、一重咲きも含めて約350種類もあります。
国内の牡丹桜の名所②関東・関西
関東・関西の牡丹桜の名所は、東京の新宿御苑、大阪の造幣局が有名です。新宿御苑は一葉の名所で代表品種としており、他に関山、八重紅枝垂や御衣黄なども見ることができます。
大阪造幣局は、日本さくら名所100選に選ばれている場所で、牡丹桜の見頃の季節になると桜が植樹されている大通りを一般開放し、通り抜けながら花見が楽しめるようになっています。牡丹桜を中心とした338本物桜の回廊は見応え十分です。
牡丹桜の花言葉と意味をご紹介!
牡丹桜の花言葉とは
牡丹桜の花言葉は「理知」「豊かな教養」「善良な教育」「しとやか」などです。どれも知的で美しい様子を表す言葉ですね。桜の花全般の花言葉が「精神美」「優美な女性」「純潔」ですので、どちらも高貴で知的な印象です。
この桜の花言葉は西洋でも「spritual beauty(精神美)」「a good education(優れた教育)」という意味があり、西洋でも同じ優美な印象を与えていることがわかります。
牡丹桜の花言葉の由来と意味とは
牡丹桜の花言葉である「豊かな教養」や「善良な教育」は、何重にも重なった花びらを人々の積み上げられた知識や教養になぞらえてつけられました。
「しとやか」は、春の季節を迎えるとソメイヨシノなど他の桜より少し遅れて咲き始め、時期が来るとひっそりと散ってゆく様子が奥ゆかしいことからつけられています。「桜」は日本の国花で日本人の品格や美しさを表しているので、牡丹桜もまた同様の意味を持つのですね。
桜には怖い物語がある?!
桜の女神で名前の由来と言われるコノハナノサクヤヒメ。とても美しい女神で天皇の祖先神であるニニギノミコトに見初められ結婚します。その時女神の姉神イワナガヒメと共に嫁ぐのですが、イワナガヒメは美しくなかったため追い返されてしまいました。
それに怒った女神の父は、2女神がいれば永遠の命が得られたのに、とニニギノミコトに桜の花のように命が散ってゆく定めを課しました。それが人に寿命がある由来と言われています。
牡丹桜と文化
昔から日本人に好まれた牡丹桜
牡丹桜はその豪華な美しさから、日本人に古くから愛されてきました。平安時代には和歌の題材として用いられ、宮中で牡丹桜を受け取る役目を担った女官が即興で詠んだ「いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」が有名です。
さらに当時、宮仕えの女性の衣装に桜色を使うことを「八重桜」と言っていました。当時すでに改良された里桜も存在していたので、きっとたくさんの美しい牡丹桜が見られたことでしょう。
あんぱんにのっている牡丹桜
真ん中に桜の塩漬けが乗ったあんぱんが明治天皇に献上されたのは、明治8年のこと。現在も続く老舗パン屋木村屋が考案した桜あんぱんです。実はその塩漬けの桜は牡丹桜が使われています。花びらが多いのでボリュームが出ていいアクセントになっていますよね。
また、お祝いの席などでよく出てくる、塩漬けの桜が浮かぶ桜茶も、牡丹桜が使われているのです。牡丹桜の花はいろいろな楽しみ方があるのですね。
日本の桜は絶滅しかけた歴史がある
日本人に愛された牡丹桜を始めとする桜の花は、江戸時代には300種類にもなりお屋敷や寺社仏閣にたくさん植えられていました。ところが明治の世になると武家や寺社は様変わりして桜は荒廃してしまいます。
桜を守るため、植木職人高木孫左衛門は街中から桜の枝を集め、さらに荒川堤に植樹します。その時、牡丹桜である御衣黄などが救われたのです。そこから小石川植物園や新宿御苑などに移植され、再び桜が広まっていきます。
救われた牡丹桜
しかし第二次世界大戦で、日本中の桜の木々は伐採され薪にされてしまいます。戦後、日本から桜が消えてしまいますが、かつてアメリカに渡った桜を植樹することにより復活したのです。
その後一度はまた全滅してしまいますが、1981年、荒川区役所が再び荒川堤を桜の名所にすべく、里帰り桜を植樹して育てたおかげで、再び桜の咲く日本を取り戻したのです。関山、一様、御衣黄など現在よく目にする牡丹桜もこの時救われました。
まとめ
日本人は昔から桜が大好き。早咲きの桜、ソメイヨシノ、そして牡丹桜とその時期ごとの花を楽しむことで、私たち日本人は四季を感じ、自然の美しさを楽しんできました。
一口に牡丹桜と言っても、ご紹介したようにその種類はたくさんあり、それぞれ花びらの数や色、形が異なっていますので、牡丹桜を見かけたらぜひその花や葉をじっくり見てみてください。牡丹桜の種類がわかれば、これまでよりももっとお花見が楽しくなるはずです。
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出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/857757?title=牡丹桜&searchId=4085587622