初めに
大台ケ原山は「日本の山百選」の山
近畿の尾根と言われる大台ヶ原山は「日本の山百選」にも選ばれた山で、三重県と奈良県の県境にある面積2000ヘクタールにも及ぶ台高高原です。その年間の降雨量が5000ミリ。山頂には日の出が美しい台高高原の最高峰日出が岳や、昭和34年の伊勢湾台風で無残な姿になった正木ヶ原があり、紅葉シーズンには地図を片手のハイキング客や多くの登山客が大蛇嵓へと詰めかけます。
大台ケ原山は山上から大パノラマを望める
台高高原の最高峰の日出が岳の展望台からは、標高を生かした360度の大パノラマを我がものとできます。眼下には黒潮洗う尾鷲湾の磯や出漁する船が見え、天気の良い日には遠く富士山を望むことができます。日の出ともなれば、漆黒から群青やがてオレンジ色に海原を染めながら水平線から昇る朝日が拝むことができます。巨岩の大蛇嵓(だいじゃぐら)で見る紅葉は超一級で、大台ケ原登山の魅力となっています。
大台ケ原山とは
大台ケ原山は日本有数の多雨の山
紀伊半島の尾根と言われている大台ケ原山は、年間雨量は5000mmとも言われており、日本有数の雨の多い山として有名。その大台ケ原山の東斜面にある尾鷲もまた有数の多雨地帯として知られています。尾鷲の雨の多さ激しさの特徴を表すものとして「尾鷲傘」が有名で、この傘は普通のものより2本多く「傘の骨」が付けられているのが特徴です。
大台ケ原山には「東大台」と「西大台」がある
大台ケ原山は吉野熊野国立公園の代表的な山で、2,000ヘクタールに及ぶ高原は「東大台」「西大台」とに分けられ、それぞれにハイキングに最適な周遊コースがあります。大台ケ原山は台高山脈の中でも山頂までバスでアクセス出来る珍しい山で、登山シーズンには地図を片手の登山客やハイカ―で大変な賑わいを見せるでしょう。
大台ケ原山は山上までバス!
大台ケ原山登山の魅力は、山頂近くまでバスで簡単にアクセスできハイキングできる事です。この山へのアクセスは、大阪阿部野橋駅から近鉄南大阪線と吉野線急行を利用すれば、大和上市駅までは1時間30分で到着します。大和上市駅から大台ケ原山行きの奈良交通バスを利用し、終点の大台ケ原山駐車場に1時間40分で到着できます。
大台ケ原山へは日帰り登山ができる!
初心者でも大阪市内から3時間10分と短時間で山頂にアクセス出来るため日帰り登山が可能です。大台ケ原山登山のおすすめのシーズンは、冬季を除き、季節ごとに楽しめる為大勢のハイキング客が訪れます。4月はマンサク・5月はゴヨウツツジ・シャクナゲなどの花が咲き、10月はブナ・モミジ・ウルシなどを中心に11月には山全体が色づきます。
大台ケ原山登山コース3選
大台ケ原山登山⒈初心者向け日帰りルート
初めに近鉄吉野線も大和上市駅からバスを使って、標高1570mにある大台ケ原山バス駐車場まで一気にアクセスするコースを紹介します。このルートを使えばハイキング客はもちろん、登山初心者も安心して日帰りの登山が出来、大台ケ原山の魅力と美しい景色を十分に満喫できます。
大台ケ原山登山ルート「ビジネスセンター~尾鷲辻」
登山のスタート地点は、大台ケ原山ビジネスセンターに左に案内板があり、ここからが『大台ケ原山登山』のスタート地点となります。スタートすれば、いきなり道は苔むし、モミジなどが多い平たん路が続きます。やがて道は大きく右に回り、5月ごろともなれば白い花が満開を誇る「ゴヨウツツジ」の群落の景色を目に当たりにします。
大台ケ原山登山ルート「尾鷲辻~日出が岳山頂」
数本の沢を横切り、石の階段道をわずかに登っただけで「尾鷲辻」方面の分岐に出ます。目の前は展望台になっており、ここから熊野灘、尾鷲湾、志摩半島、知多半島や鈴鹿山脈までの景色が一望できます。時に天候によっては遠く富士山まで望める分岐を「日出ヶ岳0.2km」方面に左にとり、階段道・木製階段を挟んで再び階段道を登りきって標高1695mの「日出ヶ岳山頂」に到達します。
大台ケ原山登山ルート「日出が岳山頂~正木ヶ原」
大台ケ原山から、東は富士山や木曽駒ケ岳、北には生駒山から吉野山、西には大普賢岳や山上ヶ岳を望むことができます。展望台の下が小屋になっており、いったん登ってきた道を戻り尾鷲辻方面へ。木道を登りきるとベンチやテーブルがあり、ここでお弁当を広げることができます。木道を登り始めると景色は一変し、トウヒの立ち枯れた特異な光景が一帯に広がり、石コロの多い緩やかな登りが「正木ヶ原」まで続きます。
大台ケ原山登山ルート「牛石ケ原~大蛇嵓」
ゆっくりと下ると尾鷲辻で、この辻を「牛石ケ原0.9km」の方向に左折し、苔むした原生林を見ながら平坦道を進みます。すると突然、右手に大きな『神武天皇像』が現れるはず。左に牛石・右には御手洗池などが見える場所が、伝説に彩られた牛石ケ原です。樹林帯に入るとすぐに『シオカラ谷の分岐』ですが、やり過ごして大蛇嵓へと進みます。左手には樹齢数百年のブナの原生林が広がり、新緑や紅葉の頃のの眺めは素晴らしくまさに絶景そのものです。
大台ケ原山登山ルート「大蛇嵓~シオカラ谷」
少し道を下ると、そこが絶景中の絶景『大蛇嵓』があります。ここからの眺める景色は息を飲む美しさで、紅葉の頃ともなれば、岩塊と白糸の滝のコントラストが抜群です。ハイキング初心者の多くが感嘆の声を上げるなか、景色を十分に堪能したあと、分岐まで引き返しシオカラ谷へと下ります。この付近はシャクナゲの群生地となっており、沢のような道を一気に下ります。
大台ケ原山登山ルート「シオカラ谷吊り橋~大台ケ原山駐車場」
岩場の急な坂を下ったところが『シオカラ谷釣り橋』です。一転して厳しい急な坂を登り、水平な道になると左にブナの林が広がります。再び急な石段登りを行うと、水平な道が大台ケ原山駐車場のあるバス停までと続きます、日帰り客はここからバスで下山となり、山上で一泊する登山客は大台山荘や大台山の家にリュックを下ろします。
大台ケ原山登山ルートの行程概要&標高差
大台ケ原山バス停 | スタート | 1570m |
展望台 | 30分 | 1650m |
日出が岳 | 5分 | 1695m |
尾鷲辻 | 35分 | 1580m |
シオカラ谷分岐 | 20分 | 1650m |
大蛇嵓 | 5分 | 1579m |
シオカラ谷吊り橋 | 40分 | 1420m |
大台ケ原山バス停 | 35分 | 1570m |
大台ケ原山登山⒉「小処温泉への西大台ルート」(中級者向け)
大台ケ原山登山「大台ヶ原駐車場~松浦武四郎の碑」
大台荘を出て駐車場入り口より道標に従い、西大台教会の前から西に進むと、右上に向かう枝道があります。直進して道標のある分岐まで行くと、周りはブナの深い森の樹林に包まれます。分岐を右に進み、七ツ池経由のコースを進みます。ブナの林の切れている場所で明るい河原に出ます。バイケイソウの群落を左右に見ながらナゴヤ谷の渓流を渡れば、すぐ上の台地には大台ケ原山開拓の父と言われた「松浦武四郎」の碑があります。
大台ケ原山登山「涸谷~開拓跡」
沢に沿った道から静かな山腹を伝い、石畳の残る涸谷を2つ3つ横切って行きます。中ノ谷の源流を渡ると水音も遠ざかり、トウヒやブナの原生林へ。平坦になった尾根を超えると七ツ池の湿地が現れ、坂道を下りカエデ、ナナカマドの多い沢沿いの道を進みます。やがて固定ロープが張られたカツラ谷を横切って少し行けば、開拓跡と呼ばれる平地に到着です。
大台ケ原山登山「わさび谷~三差路」
道の左に、この地名のいわれを書いた案内板があります。高野谷を飛び石伝いに対岸に渡って行くと、わさび谷に出合います。固定ロープで対岸に渡れば指導標があって、右の方に進めば、道は経ヶ峰にへと続きます。左に道をとりクマザサを分けると三差路に出て、左に行けば大台ケ原駐車場へと戻る周回コースです。
大台ケ原山登山「三差路~笙の峰」
三差路を直進し、階段状の道を展望台に上ります。ここからは東方の展望が開けた大蛇嵓、千石嵓をはじめ「中の滝」の勇壮な景観が楽しめます。展望を楽しんだ跡は直進して逆峠に向えば峠から先の尾根道は通行止めになっており、整備された迂回路は右に下り山腹を絡んでいます。この先の笙の峰(しょうのみね)を絡み終えると道は尾根上に出ます。
大台ケ原山登山「笙の峰~小処温泉」
周囲は自然林からスギ・ヒノキの植林帯となっており、緩やかな坂道を下れば林道に着きます。林道を進めば、イチクボで木和田への山道が左右に分かれます。林道をさらに下っていくと小さな道標があって、右の杉林の中に『小処温泉』へのショートカットの道があります。そのまま、下りきると温泉は直ぐ目の前です、山の温泉気分を味わい、予約しておいたタクシーで河合へと向かいます。
大台ケ原山登山「小処温泉への西大台ルート」のルート・タイム
大台荘 | 40分→←1時間 | 1570m |
七ツ池 | 50分→←1時間 | 1490m |
三差路 | 30分→←25分 | 1305m |
展望台 | 25分→←20分 | 1380m |
逆峠 | 1時間15分→←2時間 | 1411m |
林道出合 | 55分→←1時間30分 | 1090m |
小処温泉 | タクシー利用25分 | 500m |
河合 | 奈良交通バスで杉の湯乗り換1時間42分 | |
大和上市駅 | 上記の→←は、登りと下りの所要時間 |
大台ケ原山登山⒊「大杉谷ルート」(中級者向け)
大台ケ原山登山 1日目「大台ケ原山駐車場~シャクナゲ坂」
大台ケ原山駐車場から周遊路に入り、日出が岳へ向かいます。右手にシオカラ谷の流れが上がってきて、石段を登ると鞍部に出ます。左側に10分登ると日出が岳の山頂に到着し、ここの展望台からは熊野灘が望め、西の方角には大峰山系の素晴らしい眺めが見えます。ここから三重県側に伸びる尾根を下って降ります。この坂はシャクナゲ坂と呼ばれ、5月中から下旬になると一帯はピンクに彩られます。
大台ケ原山登山 1日目「堂倉小屋~榮倉滝」
この坂を下っていくと、林道の手前に堂倉避難小屋があり、避難小屋の前から石段を下ります。大台林道に出たら右折してすぐの分岐で左の林道へ向かいます。この林道を左に行った先には粟谷小屋があります。ここから堂倉滝へ降りる道は急な坂が長く続き、大変な悪路を進むことになります。その長い悪路の先で西谷との出合にある、堂倉滝の前面に下りることができます。滝の落差は18mで、滝前には絶好の広場があって憩いの場所となっています。
大台ケ原山登山 1日目「堂倉滝~光滝」
堂倉滝の前の堂倉滝吊り橋を渡り岩壁沿いに進むと、対岸に3段になって流れ落ちる『与八郎滝』が目の前に現れます。この滝は40mもの落差があり登山者の目を楽しませてくれます。まもなく歩くと5分ほど歩くと「隠滝」が現れ、吊り橋を渡り岩壁に沿った道を下って行くと、ほどなく左手に40mの落差のある「光滝」が現れてきます。裾広がりに堂々と飛散する見事な滝で、滝の前面ま近寄ることができます。
大台ケ原山登山 1日目「光滝~桃ノ木山の家」
光滝から約1kmの間は右岸を伝って行き、七つ釜吊り橋を渡り岩壁内の小道を絡んで下りれば、滝前にある休憩所へと到着します。この「七つ釜滝」は三段になって白水を落としている美しい滝で神秘的です。この滝からは、今夜宿泊する桃ノ木山の家まで約25分の行程です。この場所はこの渓谷ではとても有名な場所で、夏ともなればサツキツツジが、秋にはカエデの見事は紅葉が見られます。
大台ケ原山登山 2日目「桃ノ木山の家~ニコニコ滝」
山の家の前から桃ノ木吊り橋を渡り、右手に大台林道へ上がる小道を、そして左手方向には不動谷出合を見送りながら進みます。涸れ谷に架けられた『嘉茂助吊り橋』を渡れば、行く手前方に『平等嵓』がそそり立っている見事な光景が現れます。その前面を通過して歩いて行き、吊り橋を左岸に渡れば、美しい飛瀑を持つニコニコ滝が現れます。
大台ケ原山登山 2日目「ニコニコ滝~千尋滝前休憩所」
このニコニコ滝の落差は50mもあり、2段になって落ちています。この場所で休憩して10分ほど下ると河原に出て、少し歩けば猪ヶ淵(ししがふち)に到着します。白い河原に、碧く澄んだ水が映える光景を見れば一息つくことができます。岩のトンネルをくぐり抜け、左岸の高みで上下を繰り返しながらたどれば、『千尋滝』が天空より玉すだれをかけたような姿で現れてきます。
大台ケ原山登山 2日目「千尋滝前休憩所~宮川第一乗船場」
この『千尋滝』の落差は160mとされ、大杉谷での最大の滝で、ここからは下るのみの行程が続きます。いったん河原に出て地獄谷吊り橋を渡り、『大日嵓』の岩壁内につけられた小道を踏んで行けば宮川第3発電所に到着します。ダム渕を見ながら500mも歩けば宮川第一乗船場に到着。ここからは所要時間15分の遊覧でバス停のある大杉に出ます。
大台ケ原山登山「大杉谷ルート」の詳細
このコースは、中級者向けのコースです。大台ケ原山から流れてくる豊かな水が刻んだ大杉谷は、原生林の中を約9kmにわたって連続している滝と渕や大岩壁が存在します。中でも三段に落ちる『七ツ釜滝』や、天空から160mを落下する『千尋の滝』は見ものです。この大杉谷ルートのアドバイスは、本来渓谷歩きは下流から遡行することに意義があります。初心者以外の脚に自信がある方は、宮川ダムから逆コースをとって登る事をおすすめします。大杉谷ルートの岩壁を絡む危険箇所にはクサリがつけられていますが、谷側は急な断崖になっている為に慎重を要します。
大台ケ原山登山「大杉谷ルート」コースタイム
榮倉小屋 | 50分 | 1170m |
榮倉滝 | 1時間20分 | 850m |
七つ釜滝 | 25分 | 560m |
桃ノ木山の家(宿泊) | 1時間10分 | 470m |
猪が渕 | 50分 | 350m |
千尋滝前駐車場 | 2時間 | 370m |
宮川第3発電所 | 10分 | 289m |
宮川第一乗船場 | 船で15分 | 285m |
大杉三重交通バス停 | 三重交通バス・三瀬谷乗換え1時間45分 | |
近鉄松阪駅に到着 | 1日目4時間45分、2日目4時間15分、全行程9時間 |
まとめ
近畿の尾根、大台ケ原山登山の記事を書きましたが、最後までお付き合い頂きありがとうございます。今回は奈良の吉野からバスでアクセスして「日帰り」のルートと、山上で一泊し下山は西大台を経て「小処温泉」に下るルート、そして三重県側の「大杉谷」へと下山する3つのルートを紹介しました。しっかりと山情報を確認し大台ケ原山登山を楽しんでください。
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