藻岩山は札幌の絶景一望スポット
藻岩山の山頂展望台(標高531メートル)からは、空気が澄んでいる季節の晴天時には近郊の山はもちろん、200キロメートルも離れた大雪山も眺望できます。夜景も昔から有名で、2018年の夜景サミットでは新日本三大夜景に認定されました。山頂展望台へはロープウェイなどで行けますが、自然を満喫しながらの所要時間2時間ほどの登山もおすすめです。
藻岩山の登山の魅力
住宅地が近いのでさみしくない
札幌中心部からも眺められる藻岩山は、山の中腹まで住宅街が続いているため登山の初心者が感じやすい、さみしい雰囲気はありません。難易度やアクセスのしやすさに違いがあるコースが5つもあり、札幌市民には身近なレジャースポットとして親しまれています。特に初心者や観光客は、事前に調べて無理のないコースを安全に登りましょう。
シーズンを通して登れる
藻岩山のシーズンは、北海道の積雪期でも登山者が多くて道が付けられていることから、一年中といえます。3月になると雪解けが進むため、初心者でも長靴を履けば快適に春に移行する景色を楽しめます。特におすすめシーズンは4月から5月の、スプリングエフェメラルにたとえられるエゾエンゴサクやニリンソウが咲くころです。赤や黄色が美しい10月の紅葉シーズンも感動することでしょう。
動植物の観察ができる
藻岩山では、四季を通してさまざまな動植物の観察がおすすめです。特に、カツラやミズナラなどの広葉樹が残る北側の原生林は、気候や山の大きさの割には世界的に珍しいとの評価を受けています。モイワナズナやモイワシャジンなどの新種植物、エサを頬張ったリス、ドラミングする天然記念物のクマゲラなどを探しながら、ゆっくり登ってみましょう。
冬は動物の足跡も楽しめる
冬の登山道近くの雪原では、点々と続く動物のかわいらしい足跡を探すのも楽しみのひとつです。いろいろな足跡から、エゾユキウサギやキタキツネ、シマリスやエゾリスの歩き方をチェックしてみましょう。特に新雪が降った早朝は、真新しい足跡を見つけられるはずです。冬も楽しめる藻岩山の登山は、200万人が住む大都市ながらも自然の豊かさに気づかせてくれます。
ヒグマ出没情報に注意
背後に広大な森林がある藻岩山は、小動物だけではなく北海道固有種のヒグマの目撃情報もあります。その場合は札幌市で入山禁止などの措置が行われますが、登山者は目撃情報がない場合でも注意が必要です。藻岩山は気軽に登れるとはいえ、念のために熊鈴の用意をおすすめします。食べ残した携行食を置いてくることも、絶対しないようにしてください。
火山の跡を観察できる
藻岩山は、400万年前ころに噴出した溶岩がつくった火山のため、火山岩や薄くはがれる板状節理などの火山の跡を観察できます。溶岩は、山頂部から札幌中心部の南東に向けて流れ下り、2つの稜線をつくりました。5つの登山コースのなかに、溶岩流がつくった稜線を活かした登山道を歩けるコースがある点も魅力です。
コンパクトな装備と持ち物でOK
藻岩山登山の装備や持ち物は、初心者でも冬以外のシーズンで安定した天候であれば、コンパクトでもよいでしょう。3月も過ぎると装備は、動きやすい服装と歩きやすいスニーカーでよく、携行食は軽食やおやつのほかにペットボトル2本分の飲料水があれば十分です。ロープウェイに接続する山頂展望台には、飲料水の自動販売機やレストラン・売店などがあるため、持ち物が不足した場合は購入できます。
ナイトハイクで夜景観賞ができる
最近の藻岩山での登山は、暗闇の中から現れる夜景を楽しむナイトハイクが人気です。少しどきどきしながら登ったあとの山頂展望台からの札幌市内の夜景は、より美しく感じられることでしょう。ナイトハイクでは、季節を問わずに防寒グッズや温かい飲み物、ヘッドライトは必須ですし、単独行も避けて必ず数名で登ってください。
藻岩山の登山コース①:慈啓会病院前コース
初心者におすすめのコースは、藻岩山の登山コースで最も人気がある慈啓会病院前コースです。札幌中心部から近く、住宅街から続く登山口がある点や20台ほど停められる駐車場がある点から、安心感と利便性があります。最近人気のナイトハイクでも、一番利用されるコースです。登山後は、おしゃれなカフェやベーカリーショップなどが並ぶ山麓通でグルメも満喫しましょう。
距離・所要時間・難易度・持ち物
慈啓会病院前コースの距離は約2.9キロメートルで、半分ほどの馬の背まで1.8キロメートル、馬の背から山頂までは1.1キロメートルです。山頂までの所要時間は、ゆっくり登って1時間半ほどと考えるとよいでしょう。山頂近くはきつい部分もありますが、ほとんどが整備されて歩きやすく、持ち物が最低限でも心配ないので初心者・初級者向けです。
見どころ・おすすめシーズン
慈啓会病院前コースの最大の見どころは、ところどころで市街地や夜景が一望できる点です。西国三十三観音が安置されており霊山としてのおもむきも感じられます。三十一番観音の近くでは、火山の跡である板状節理を観察できます。藻岩山は天然記念物にもかかわらず、進駐軍専用として造られた日本初のスキーリフト跡もあります。シーズンは、冬も安心して登山できるため一年中おすすめです。
アクセス
アクセスは、バスがおすすめです。自動車は、駐車場が広くないため停められない場合もあります。地下鉄東西線「円山公園」駅から乗車し、JRバス「循環円10・11ロープウェイ線」に乗り継いで「慈啓会前」で下車。登山道入り口までは徒歩約2分。
藻岩山の登山コース②:旭山記念公園コース
2番目の人気コースは旭山記念公園コースで、登山口と駐車場は2つあります。奥にある旭山記念公園のすぐ近くに第一駐車場、その手前に第二駐車場があり、山頂に近いのは第二駐車場の登山口です。第一駐車場周辺は、標高137.5メートルからの札幌市街地の展望と手軽な森林散策を楽しめます。レストハウスには売店もあり、おやつや飲み物も買えます。
距離・所要時間・難易度・持ち物
旭山記念公園コースの距離は約4.0キロメートルで、慈啓会病院前コースよりも1キロメートルほど長いのです。T6分岐までは2.4キロメートル、慈啓会病院前コースと合流する馬の背までは500メートルあります。山頂までの所要時間は、ゆっくり登って1時間半から2時間ほどでしょう。距離が少し長い分、山頂近くが少しきつく感じられますが、初心者も最低限の持ち物でも安心して登れます。
見どころ・おすすめシーズン
旭山記念公園コースの見どころは、登山道がやや狭いために樹木を間近に観察できる点でしょう。シーズンは、4月から5月の芽吹きの時期だけではなく、さまざまな広葉樹の紅葉が鮮やかな10月もおすすめです。慈啓会病院前コースと比べるとやや起伏に富んでいる点や、T6分岐前に市内の景色や夜景を眺められる場所が出てくるのも魅力です。
アクセス
アクセスは、自動車とバスがおすすめです。自動車は、第一駐車場か第二駐車場をご利用ください。バスは、地下鉄東西線「円山公園」駅からJRバス「円13旭山公園線」に乗車し、「旭山公園前」下車。登山口入り口までは徒歩約2分。
藻岩山の登山コース③:市民スキー場コース
市民スキー場コースは、5コースのなかで馬の背を経由せずにまっすぐ山頂に登ります。火山の溶岩流がつくった2つの稜線のうちの1つ、市街地側の稜線を歩くコースのため、火山の跡をじっくり観察したい人におすすめです。登山口は住宅街から離れていますが、スキー場にあるため駐車場が広く、台数を気にせずに停められます。
距離・所要時間・難易度・持ち物
市民スキー場コースの距離は約2.5キロメートルと短く、山頂までの所要時間は1時間半ほどです。短いながらも難易度は初心者には少しきつい部分もありますが、ゆっくり登れば問題ありません。なだらかな広いスキー場を左手に見ながら広葉樹林帯を登ります。やがて見えてくるのは名物の、大きなすり鉢のような傾斜地、スキー上級者向けの「兎平コース」です。持ち物は、軽食やおやつ、ペットボトル2本で十分です。
見どころ・おすすめシーズン
市民スキー場コースの見どころは、兎平からの札幌市内の眺望で、晴天時には噴煙を上げる恵庭岳が見えるときもあります。溶岩流がつくった稜線を歩きながら火山の跡を観察するなど、自然のパワーを感じるのもおすすめです。おすすめのシーズンは、兎平付近は勾配がややきついため、無雪期の4月・5月から秋にかけてとなります。
アクセス
アクセスはバスがおすすめです。JR札幌駅前バスターミナルから、じょうてつバス「南55もいわ線」に乗車し「南34条西11丁目」下車。登山口入り口までは徒歩約20分。
藻岩山の登山コース④:北の沢コース
北の沢コースの登山入口は静かな住宅街の奥にあり、利用者が少ないことから落ち着いて登山できます。登山道入り口脇に1台ほど車を置けるスペースはありますが、駐車場ではないため、最寄りの交通機関を利用してください。幅の狭い登山道や沢形に下る階段などが本来の山らしい雰囲気ですが、各所に案内板があるため初心者でも迷うことはないでしょう。
距離・所要時間・難易度・持ち物
北の沢コースの距離は約2.4キロメートルで、登山道入り口から馬の背まで1.3キロメートルと、5コースでは最短です。片道の所要時間は1時間ほどで、なだらかなので難易度は初心者でも難しくありませんが、道幅が狭い点や利用者が少ない点から数名での登山がおすすめです。持ち物は、軽食やおやつ、ペットボトル2本で十分ですが熊鈴もあるとよいでしょう。
見どころ・おすすめシーズン
北の沢コースは、反対側の慈啓会病院前コースや旭山記念公園コースとは違う眺めを楽しめます。登山口からは、南方向にある空沼岳、札幌岳、恵庭岳などを遠望できます。見どころはスプリングエフェメラルとたとえられている春の植物で、おすすめのシーズンは雪解け後の4月から5月です。ほかのコースも植物は咲きますが、利用者が少ないためじっくり植物を観察できることでしょう。
アクセス
アクセスはバスがおすすめです。地下鉄南北線「真駒内」駅から、じょうてつバス「南97北ノ沢線」に乗車し「北の沢会館前」下車。登山口入り口までは徒歩約23分。
藻岩山の登山コース⑤:小林峠コース
小林峠コースの距離は最長で、札幌の真駒内と西野を結ぶ小林峠に登山口があります。人気のない場所にあるため、静かに登山を楽しみたい人におすすめですが、クマの出没情報も多いため注意が必要です。自動車は、小林峠の駐車帯に数台停められるスペースがありますが、駐車場ではないため最寄りの交通機関を利用しましょう。
距離・所要時間・難易度・持ち物
小林峠コースの距離は約4.5キロメートルあり、5コース中で一番長く、旭山記念公園コースのT6分岐までは約2.9キロメートルです。山頂までの所要時間は、2時間から2時間半ほど見るとよいでしょう。難易度は決して難しいわけではありませんが、距離の長さと利用者の少なさから、初心者は経験者同行での登山をおすすめします。持ち物は、軽食やおやつ、ペットボトルが2本以上と熊鈴があると安心です。
見どころ・おすすめシーズン
見どころは植物で、おすすめのシーズンは4月から5にかけて、登山口からT6分岐まではエゾエンゴサクやイチゲなどの群落が見られます。サイハイランや珍しいキツネノサカズキなども目撃情報もあり、植物好きな人は喜ぶことでしょう。紅葉も美しく、色づいたブドウのツルが、クルクルとほかの樹木に巻き付く様子も風情があってすてきです。
アクセス
アクセスはバスがおすすめです。地下鉄南北線「真駒内」駅から、じょうてつバス「もいわ線」に乗車し「山水団地前」下車。登山口入り口までは徒歩約23分。
藻岩山の登山は縦走もおすすめ
5コースある藻岩山は、別なコースに縦走するのもおすすめです。その場合は、アクセスする交通機関の時間帯を前もって調べておき、時間を管理して計画的に登りましょう。おすすめは、利用者の少ない小林峠コースや北の沢コースから登り、住宅街に近い慈啓会病院前コースや旭山記念公園コースに下山するケースです。
1日かけて5コースを縦走する
体力に自信がある人は、5コースを1日かけて縦走するのもおすすめです。市民スキー場コースから登って旭山記念公園コースに縦走し、車道を歩いて慈啓会病院前コースから登って小林峠コースへ縦走します。また車道を歩いて北の沢コースから市民スキー場コースに縦走するのです。実際に、この通りに縦走したすごい人もいます。
藻岩山の登山はロープウェイも利用しよう
藻岩山登山の魅力は、山頂展望台に登山者休憩所のほかに、リフトとロープウェイ、レストランや売店があることです。万が一体調が悪くなったり食料や飲料水が足りなくなったりしても安心できます。登山後にビールで喉をうるおしたいのであれば、夜景をレストランでも堪能し、さらにリフトとロープウェイで夜景を満喫するのもよいでしょう。
藻岩山の登山は手軽に楽しもう
北海道の札幌を一望できる藻岩山は、初心者や観光客でも通年で気軽にアクセスと登山ができる山ですが、いくつかの注意点があります。初心者は、5コースで難易度が低めの慈啓会病院前コースか旭山記念公園コースを利用しましょう。シーズンは通年で、注意すれば積雪期も楽しめますが、やはり3月・4月・5月がおすすめです。夜景を楽しむナイトハイクも人気なので、ぜひ経験者同行で、持ち物もきちんと用意してお楽しみください。
札幌の温泉が気なる方はこちらをチェック!
藻岩山で登山を楽しんだあとは、札幌市内や近郊の温泉で冷え切った身体を温めましょう。札幌市内には、露天風呂も楽しめておいしいお料理も堪能できるレストラン併設の日帰り温泉が多くあります。泉質やグルメなどの詳しい情報を紹介してあるので、ぜひ参考にしてください。
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出典:ライター撮影