まずは金時山について
箱根火山のカルデラ外輪山の中で北方に位置して周辺の外輪山よりひときわ高い金時山/公時山(きんときやま、標高1212m)は金太郎伝説で有名になりました。初心者でも日帰りで簡単に登れ、頂上からは富士山をはじめ360度の絶景が楽しめて箱根の山々の中では人気の高い山です。
山頂からは箱根外輪山の尾根が東西に繋がっていますが、北の方角にも別の尾根が伸びています。外輪山から北に向かう尾根には金太郎が暮らした足柄の山々が、その先には足柄峠が続くのです。
箱根火山と陥没カルデラ
箱根火山とは古くから噴火を繰り返してきた神山、駒ヶ岳、二子山などの火山群の総称であり、箱根山という山はありません。約18万年前箱根火山のマグマたまりが空洞化し全体が大きく陥没して東西8km、南北12kmの大きなカルデラが誕生しました。
この時にカルデラの周囲に取り残されたのがカルデラ外輪山と呼ばれる山々です。なお、カルデラ内にある芦ノ湖は最後まで活動を続けていた神山火山が約3000年前に爆発した時に神山の北西山腹が崩壊してできました。
まさかりかついだ金太郎伝説
金太郎は足柄山の麓で生まれ、山の動物たちを相手に足柄山周辺で遊びまわり、ときに金時山まで出かけました。たくましい青年に成長した金太郎は足柄の地蔵堂と言う所で源頼光 に出会い、その家来になって坂田金時(古くは公時)と改名して京の都に行きます。
頼光の四天王の一人として大江山の酒呑童子退治をして有名になりました。なお、足柄山とは、金時山から足柄峠までの周辺の山々をまとめてそう呼んだのであって、足柄山という単独の山はありません。
金時山登山の日帰りルートはいろいろ
金時山日帰り登山ルートはいろいろあり、初心者が比較的簡単に登れるルートは金時山の西側に1本 南側3本の計4本 あります。登山のスタート地点は西側から乙女峠入り口、乙女口、公時神社、金時登山口です。
これ以外に距離が長かったり、はしごや鎖場があったりして初心者には向かない日帰りルートもあります。金時山北東部の地蔵堂から登る金太郎ルート、北西部のJR足柄駅からの足柄峠ルート、南西部の登山鉄道強羅駅からの明神ヶ岳~金時山縦走ルートなどです。
日帰り金時山登山:初心者向きルートおすすめ3選
この記事では、初心者が簡単に登れる日帰りルートのうちから、乙女峠ルート、金時登山口ルート、公時神社ルートをおすすめベスト3として選んで解説します。登り口はいずれも国道138号線上にあります。
3ルートの位置関係が良くわかるマップがありますのでご紹介しておきましょう。但し、乙女峠ルートの峠より西の部分は載っていません。環境省箱根ビジターセンターHPの中の「ハイキングコース」の中に金時山コースとして紹介されています。
日帰り金時山登山:初心者向きおすすめルート1.乙女峠ルート
登山口と頂上の標高差は400m程度で少ないのですが距離が長いルートで、富士の絶景を楽しむにはベストのルートといえましょう。長尾山の先にはクサリ場やロープを張った所が数カ所あります。
標準的な頂上までの登りの コースタイムを下に示しますが、登りの合計タイムは1時間40分です。下りについては同じコースで下るとして合計1時間20分になります。
乙女峠入り口(35分)→乙女峠(20分)→長尾山(45分)→金時山
ルート説明1.スタートから乙女峠まで
箱根登山バス停留所「乙女峠」からトンネル側に5分ほど歩くと左手に「乙女峠入口」の案内板が見えます。そこがスタート地点の登山口です。登山口から5分ほど歩くと、乙女ハイキングコース「乙女峠、金時山」の案内板があり、その先の細い階段から登山道らしい道になります。
最初は整備された階段の登り坂ですが、途中から階段は無くなり岩が顔を出したり、急な登りが現れたりします。登山口から35分ほどで乙女峠に到着です。ここから富士山や御殿場の市街を見渡せます。
ルート説明2.乙女峠から金時山頂上まで
乙女峠からはゆるやかな登り坂になり、右側には神山や芦ノ湖が見えます。20分ほどで長尾山(1144m)の山頂に到着です。平坦な広場がありますが木に囲まれて見晴らしはよくありません。長尾山からは下りになり、鞍部には鎖場があります。
登りになってしばらくすると大きな岩が転がった急な登りになります。金時山山頂の近くなると岩場にロープが数カ所設置されいますが、やがて一気に視界が開け、金時山山頂が見えてきます。山頂までは長尾山から45分ほどです。
日帰り金時山登山:初心者向きおすすめルート2.金時登山口ルート
金時登山口ルートは登山路が良く整備されていて、景色の良い尾根歩きが楽しめることで人気があります。なお、このルートは矢倉沢峠を経由することから矢倉沢ルートと呼ばれる事も多いです。
標準的な頂上までの登りの コースタイムを下に示しますが、登りの合計タイムは1時間15分、下りについては同じコースで下るとして合計1時間になります。標高差は約500mです。
金時登山口(35分)→矢倉沢峠(20分)→公時神社分岐(20分)→金時山
ルート説明1. スタートから矢倉沢峠まで
箱根登山鉄道の「金時登山口」バス停がスタート地点です。バス停近くのラーメン店「蔵一」の向かい建つ金時山ハイキングコース看板(上の画像)の矢倉沢口の矢印に従い山側への舗装された道に入ります。
舗装路を10分ほど歩くと「金時山矢倉沢口」に到着します。ここから階段の登山道が始りますが、良く整備された登山道です。30分ほど森の中を進むと矢倉沢峠に着きます。ここは分岐になっていて左に行けば金時山、右に行けば明神ヶ岳です。
ルート説明2. 矢倉沢峠から公時神社分岐まで
矢倉沢峠からは尾根道ですが道の両側を笹などに遮られて見通しが良くありません。しかし時折視界が開けることがあって、その時は素晴らしい景色が見えるのです。南に大涌谷の白煙がみえたり、東に明神ケ岳へ続く尾根道がくっきりと見えたりします。
道のすぐ横に巨大な岩があるので、上に登ってみると箱根カルデラを取り囲む外輪山の山々が見えるのです。そうこうするうちに公時神社からの登山道と合流します。峠からは30分ほどです。
ルート説明3. 公時神社分岐から金時山頂上まで
ここから頂上までは急峻な岩場ののぼりがあったり、頂上付近にはロープを使わなければあがることができない場所などもありますが、ゆっくりと気を付けて登れば特に危険を感じるところはありません。
最後は木の枝が両側から張り出ていてトンネルのようになった箇所を通り抜ければ頂上です。「天下の秀峰金時山」と書いた頂上標識、営業中の2軒の茶屋「金太郎茶屋」と「金時茶屋」、晴れていれば富士山の絶景、などなどが迎えてくれます。
日帰り金時山登山:初心者向きおすすめルート3.公時神社ルート
金太郎(坂田公時)を祀り、こどもの神様、健康の神様として親しまれている公時神社の参道を通って登っていきます。公時神社ルートには登山口に無料駐車場があり、金時山への最短のルートのため非常に多くの登山者が利用するルートです。
標準的な頂上までの登りの コースタイムを下に示しますが、登りの合計タイムは1時間15分です。下りについては同じコースで下るとして合計55分になります。
バス停「公時神社入口」(55分)→公時神社分岐(20分)→金時山
ルート説明1. スタートの公時神社入口から車道まで
スタート地点のバス停「金時神社入口」から山側に入るとゴルフ練習場があり、その先に30台ほどの無料駐車場があります(無料駐車場が一杯の場合は手前のゴルフ練習場の有料駐車場も利用できます)。その先の公時神社入り口から神社に入り参道を進みましょう。
坂田金時を祀る神社だけに金時にゆかりのあるマサカリやら、金時手鞠石、金時蹴落石などが道の左右の周辺に配置されています。これらを過ぎるとすぐに広い車道との出会いです。
ルート説明2. 車道横断から公時神社分岐まで
車道を横切ってしばらく登ると神社の奥の院や金太郎がその下で夜露をしのいだという「金時宿り石」(上の画像)があります。ここから若干急になりますが、やがて展望がひらけ、金時山登山口からの登山道と合流する公時神社分岐に着きます。スタートから55分ほどです。
分岐から先は金時登山口ルートと同じですので省略します。なお、このルートは公時神社分岐に到着するまでうっそうと茂った杉林の樹林帯を登るため景観を楽しむことは出来ません。
金時山山頂の様子
標高1,212mの金時山山頂からは360℃見渡せる大パノラマが素晴らしく、西に富士山が、南のカルデラ内には仙石原と芦ノ湖、大涌谷の噴気が眺められます。また東の方向には丹沢山塊、房総半島、三浦半島が望めるのです。
金時山の山頂は広くはありませんが、飲食ができる「金時茶屋」と「金太郎茶屋」の2軒が営業していますし、バイオトイレ(100円)も利用可能。山頂はシーズンの土日祝は混雑するため、昼時には多くの登山者が山頂の斜面で昼食をとる姿がみられます。
金時山頂で尾根が3方向に分岐
山頂からは南東、南西、北の3ツの方向に尾根が伸びていて、南東側の尾根は外輪山の稜線で矢倉沢峠、火打石岳、明神ヶ岳、大文字焼きで有名な明星ヶ岳(別名、大文字山)へと連なります。そして、南西側の尾根も外輪山の稜線で長尾山、乙女峠、丸岳、三国山と連なり、国道1号の箱根峠へ至るのです。
北側の尾根には金太郎が動物たちと遊んだといわれる足柄山地があり、その先の足柄峠、さらにその先の金太の生誕地とされる地蔵堂地区へとつながっています。
日帰り金時山登山:登山口までのアクセスと駐車場
マイカー利用でのアクセス
御紹介した3ルートの登山口までのアクセスは東名道を御殿場ICで降りて138号線に入ります。138号沿いに乙女峠入り口、金時神社入口、金時登山口があり、同名のバス停を目印にすれば簡単にアクセス可能です。
駐車場
無料駐車場は金時神社入口のみです(30台)。乙女峠ルートの場合は乙女峠バス停の向いのFUJIMI CAFEの駐車場(有料)が使えます。金時登山口の場合は金時神社入口の無料駐車場に止めて15分ほど歩いて金時登山口へ移動しましょう。
公共交通機関利用でのアクセス
公共機関を利用してアクセスする場合は箱根登山鉄道の「箱根湯本」駅から箱根登山バスを利用します。「御殿場行き」に乗車すると、「金時登山口」「金時神社入口」「乙女峠」の各バス停がありますのでそのバス停で下車して下さい。
金時登山口と金時神社入口の場合は、「箱根湯本」駅から箱根登山バス「桃源郷行き」に乗車して「仙石」バス停で下車し、そこから徒歩で簡単に移動できます。金時登山口まで5~10分程度、金時神社入り口まで25分程度です。
バスの運行本数に注意
「箱根湯本」駅から箱根登山バスを利用する場合にはバスの運行本数に注意が必要です。桃源郷行は本数が多いのですが、御殿場行きは本数が非常に少ないので、事前に最新のバス時間を良く調べた上でどちらのバスを利用するか決めておく必要があります。
下に御紹介します2021年1月23日改定の箱根湯本駅バス停時刻表を参照ください。
日帰り金時山登山:登山時期と装備
金時山の登山時期
金時山の登山は1年中可能ですが、冬は積雪が多く山頂周辺では凍結することもあり、中級者以上の山になります。初心者に向いた登山時期は冬を除いた春から秋の季節、4月から11月の時期です。
登山者が多いのは夏休みの期間と10月下旬〜11月上旬の山頂付近で紅葉が見頃になる時期。紅葉シーズンの土日祝日は混雑しますので可能であれば避けたいですね。なお、仙石原のススキ観光も有名で金時登山口ルートの紅葉と兼ねる登山者も多いです。
金時山登山の装備と服装
装備について
金時山の登山道は全般的によく整備されている方ですが、山頂付近にはクサリ場やロープが張られた箇所があります。軽装ではなく、2000メートル級の登山装備をしてください。
靴はスニーカーなどは避け、登山靴(トレッキングシューズ)を履き、天気予報にかかわら水と雨具は携帯しましょう。マップと磁石も登山には必携品です。ロープやクサリ場を通りますのでしっかりした素材のグローブ、日よけと防護のための帽子もぜひ加えてください。
服装について
山頂は夏の季節でも風にさらされて寒いことが多いので体温を調節しやすい服装にしましょう。またウィンドブレーカーなどの防寒具は持参ください。ズボンは綿以外の素材の速乾性、伸縮性があるものがが適しています。ジーンズは適しません。
下着については、汗をかいた時に体を冷やしてしまうことがない様に、吸汗性速乾性の良いものがおすすめです。綿素材は極力避けたいです。綿は、吸湿性は良いのですが、保水力があって乾きが遅いため登山用には向いていません。
おわりに
ここまでお読みいただき有り難うございます。いかがでしたか?
金時山は古くはその山頂の形から猪鼻嶽(いのはなだけ)と呼ばれていましたが江戸時代に金太郎伝説ができてから公時山(金時山)と呼ばれるようになったのです。現在では坂田公時を祀った公時神社だけが「公」を使っています。
おわりに、この記事を書くための資料集めの時に非常に気になることがありましたので下に記させていただきます。皆さんはどう思われれうでしょうか?
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