白馬岳はどんな山
北アルプスの北部にあって標高2,932mの白馬岳は後立山連峰の最高峰です。中部山岳国立公園内にあり長野県と富山県の県境に位置します。杓子岳、白馬鑓ヶ岳と共に“白馬三山”と称し日本百名山に選ばれています。夏季シーズンには高山植物の宝庫で、希少な花々が咲くのが見られることから花の百名山にも選ばれています。また、日本三大雪渓と言われる“白馬大雪渓”が存在しることはあまりにも有名で多くの登山者が訪れています。この大雪渓の東側は急峻な斜面となり、反対の越中側は緩やかな山容を見せている非対称山稜と呼ばれています。
白馬岳の名前の由来
昔の呼び名として、長野側では「西山」と呼ばれ、越中側では山稜の連なりが馬の背の様に見えていたことから「上駒ヶ岳」や、蓮の花にも例えられて「大蓮華岳」と呼ばれていました。いつの頃からか、山に積もった根雪が春遅く溶け出して、岩肌が露出して“代掻き馬(しろかきうま)”の形を表すことから苗代を作る頃合いの目印としたことによって「代馬岳(しろうまだけ)」と呼ばれていましたが、明治時代に測量が行われた際に“代”を“白”に置き換えて「白馬(はくば)」と呼ばれる様になったのです。
白馬岳登山で注意すること
白馬岳の一般的な登山シーズンは6月~10月頃になります。特に7・8月は大雪渓を登って白馬岳を目指す登山者と大雪渓までの日帰りトレッカーでラッシュ状態となります。白馬岳は夏でも気温が低く、標高800m付近になると平地よりも4~5度ほど気温が下がります。登山には十分な装備と服装など防寒対策が必要です。また、高山では天候の急変により遭難事故が起きますので必ず天候の様子を確認することが大切で、自己のレベルに応じた登山計画をたてることも重要です。
無理のない登山計画を
白馬岳山頂までの登山ルートはどのルートも距離が長く時間も要します。累積標高差が1,500m以上もあることから体力、技術を求められ、日帰りするには余程の健脚者でない限り困難です。基本的には、時間的にも無理のない登山ルート歩行のペースを保って山小屋での宿泊がベストの選択です。特に初心者はベテランの同行か山岳ガイドを伴っての登山を計画しましょう。
登山装備と服装
白馬岳登山には山行の計画(季節、日程、コース、時間)に適した登山用具(装備)を整えます。1~2泊の山小屋利用の場合にも備えましょう。重要なのが登山靴です。長い距離を歩きますので、履きなれたもので底が厚く、足首をホールドできるもので、靴紐の予備もお忘れなく用意。マップ・コンパス、水筒、ヘッドランプ、非常食、救急用品、できればトランシーバー、雪渓を歩くための軽アイゼン、登りにも下りのも足の疲労度を軽減できるトレッキングポールなどの装備は必需品です。
登山に適した服装
登山での服装では雨具は必携です。日帰りではなく山小屋宿泊を前提とした装備や服装の用意が必要です。必ず下着やシャツは替えを用意。綿製品よりも保温性があり速乾性もある化学繊維のものがベスト。山の天候は変わりやすいので、防寒着として薄手のフリースかウールのセーターを持参。ウィンドパーカー、オーバーズボンが有れば尚可です。帽子、手袋も忘れずに用意。初心者はベテラン経験者にアドバイスを受けるのが一番良いでしょう。
白馬岳登山ルート①/猿倉~大雪渓~白馬岳往復
大糸線白馬駅からバスまたは車で猿倉までアクセスしてスタート。複数ある登山ルートのなかでも可憐な高山植物を多く見られ、何といっても夏山シーズンには大人気の白馬大雪渓を登る白馬岳登山では最短のコースで、健脚者であれば日帰りも可能ですが、山小屋泊の1泊2日が一般的です。初心者向けにおすすめルートですが、装備・服装も万全に、初心者は登山経験者の同行がベストです。
ルート概要/その①
猿倉をスタート。白馬尻までは砂防工事の専用道路が通じていて歩きやすい道程です。白馬尻から約15分ほど登ると大雪渓の取り付きです。注意すればアイゼンなしでも登れますが、初心者は必ず軽アイゼンを装着します。雪渓の終点近くになると落石などに注意しましょう。雪渓を登り終えたら小休憩しながらアイゼンを外します。ちなみに、初心者は猿倉から大雪渓の取り付きまで到達したら猿倉まで引き返すトレッキングであれば日帰りコースとして悠々のコースタイムです。
ルート概要/その②
葱平(ねぶかっぴら)からは花期シーズンであればたくさんの高山植物が鑑賞できます。葱平から避難小屋を過ぎると村営頂上宿舎までは初心者にはきつい急登になりますが、杓子岳や白馬鑓ヶ岳などが眺められ気分が安らげます。頂上宿舎からは北アルプスの山容の絶景を眺めながら白馬山荘に到着して宿泊。次の日に白馬岳登頂。往路を戻り猿倉に下山します。
アクセスルートDATA
【登山ピーク時期:6~9月、1泊2日、難易度☆☆☆★★】
【アクセス情報:距離約13.1km、累積標高差:登り・下り1,805mm】
【ルートマップ参考所要時間:約10時間40分】
【1日目コースタイム:約6時間】猿倉スタート⇒(70分)白馬尻⇒(150分)葱平⇒(120分)村営頂上宿舎⇒(20分)白馬山荘(宿泊)
【2日目コースタイム:約4時間40分】白馬山荘⇒(15分)白馬岳山頂⇒(25分)村営頂上宿舎⇒(80分)葱平⇒(100分)白馬尻⇒(60分)猿倉ゴール
白馬岳登山ルート②/猿倉~白馬岳~栂池自然園
猿倉から白馬大雪渓を進み、シーズン中のお花畑や北アルプスの山並みの絶景を堪能しながら標高2,932mの白馬岳に登頂後白馬山荘宿泊。標高2,766mの小蓮華山を経て神秘的な山の湖でクロサンショウウオが生息しているという白馬大池へと進み、標高2,437mの乗鞍岳、天狗原から栂池自然園に下山するルートで1泊2日の行程です。約16kmの山行ですので、初心者は特に装備・服装のチェック、天候の確認をしておきましょう。ちなみに、栂池自然園から白馬大池までの往復であれば日帰りは可能です。
ルート概要/その①
装備・服装をチェック、登山者カードを提出して猿倉をスタート。白馬尻から葱平(ねぶかっぴら)までの白馬大雪渓を標高差約770m、約2時間半ほどをかけて登ります。浮石が多いため落石に注意して登ります。7~8月のシーズンは高山植物のお花畑の美しい風景を楽しめる葱平から村営頂上宿舎までは急登です。約20分ほどで収容人員600名という日本では一番と言われる大規模な白馬山荘に到着し宿泊します。日帰りでは味わえない満点の星空を仰ぎ見る喜びがありますよ。
ルート概要/その②
早朝に白馬山荘を出発して標高2,932mの白馬岳山頂に向かいます。白馬岳から三国境までは馬の背と呼ぶ痩せた岩場ですので注意が必要です。三国境分岐から小蓮華山から白馬大池間では白馬岳や鹿島槍ヶ岳が望めます。また、雷鳥坂と呼び、運が良ければ雷鳥(らいちょう)に遭えるかも知れません。白馬大池から乗鞍岳は岩場の登山道を進み、湿原の天狗原は木道を歩き栂池自然園にゴールします。
アクセスルートDATA
【登山ピーク時期:6~9月、1泊2日、難易度☆☆★★★】
【アクセス情報:距離約15.6km、累積標高差:上り2,054m、下り1,459m】
【ルートマップ参考所要時間:約11時間】
【1日目:コースタイム約6時間】猿倉スタート⇒(70分)白馬尻⇒(150分)葱平⇒(120分)村営頂上宿舎⇒(20分)白馬山荘(泊)
【2日目:コースタイム約5時間】白馬山荘⇒(20分)白馬岳山頂⇒(40分)三国境(分岐)⇒(30分)小蓮華山⇒(80分)白馬大池⇒(80分)天狗原⇒(50分)栂池自然園ゴール
白馬岳登山ルート③/蓮華温泉~白馬岳~猿倉
蓮華温泉からオオサンショウウオの生息するという白馬大池を経て、時折雷鳥が姿を見せる雷鳥沢を歩き小蓮華山から三国境分岐を過ぎて白馬山登頂。白馬山荘に1泊して白馬大雪渓を下り猿倉へ下山するコースで、爽快な気分を味わえる稜線歩きとシーズンのお花畑が楽しめます。ちなみに、蓮華温泉から白馬大池を経て栂池自然園コースは初心者でも日帰りが可能でしょう。
ルート概要/その①
蓮華温泉をスタートして蓮華の森、栂の森を過ぎて天狗の庭からは雪倉岳や朝日岳の展望が望めます。清々しい天然の唐松林の樹林帯を歩いて白馬大池に到着、白馬大池山荘で休憩。雷鳥沢から小蓮華山への稜線は、以前NHKのドラマで放映された「坂の上の雲」のエンドロールの背景に使用された場所でトレッキングルートの醍醐味を味わえます。標高2,766mの小蓮華山からは白馬三山の雄大な山容が望めます。夏季シーズンには咲き乱れる高山植物に出会えます。三国境分岐を白馬岳方面に進みます。
ルート概要/その②
馬の背と呼ぶ狭い稜線の岩場の登山道では初心者は特に注意しながら辿り、途中のコブを過ぎると白馬岳への登山道が続いているのが見え、白馬岳の南側には広がる山並みが見えてきます。白馬岳山頂に登頂して大展望を堪能したら白馬山荘に宿泊。次の日は村営頂上宿舎分岐を左に向かい、夏季シーズンには花盛りとなる高山植物のお花畑を眺めながら葱平へ下り、白馬のシンボル大雪渓を慎重に下って猿倉へゴール。
アクセスルートDATA
【登山ピーク時期:6~10月、1泊2日、難易度☆☆★★★】
【アクセス情報:距離約15.9km、標高差:上り1,806m、下り2,050m】
【ルートマップ参考所要時間:約10時間30分】
【1日目:コースタイム約6時間30分】蓮華温泉スタート⇒(100分)天狗の庭⇒(80分)白馬大池⇒(110分)小蓮華山⇒(30分)三国境⇒(60分)⇒白馬岳⇒(10分)白馬山荘(泊)
【2日目:コースタイム約3時間50分】白馬山荘⇒(20分)村営頂上宿舎⇒(60分)葱平⇒(90分)白馬尻⇒(60分)猿倉ゴール
白馬岳登山ルート④/猿倉~白馬三山~鑓温泉周回
本格登山ルートですので装備・服装を十分にチェックし猿倉登山口を起点にしてスタート。人気の白馬大雪渓を登り、高山植物の群落を眺めながら白馬山荘に1泊して白馬岳に登頂。白馬岳から白馬三山と呼ばれる杓子岳、白馬鑓ヶ岳と縦走して鑓温泉分岐を鑓温泉方向に向かい、白馬鑓温泉小屋に宿泊し、猿倉に戻る初心者には難易度の高い2泊3日の周回コースです。猿倉から白馬鑓温泉小屋までの往復は日帰り可能ですが、標高2,100mにある雲上の露天風呂からの眺望は抜群ですので、登山初心者は特にゆっくりと1泊することをおすすめします。
ルート概要/その①
装備・服装をチェックし、登山者カードを提出して猿倉をスタート。白馬尻から大雪渓を歩くために軽アイゼンを装着し落石に注意して登ります。葱平から村営頂上宿舎もでは岩場の急登です。シーズン中はお花畑を楽しめます。白馬岳登頂後白馬山荘に戻って宿泊。次の日は早朝に出発して白馬岳登頂後いよいよ白馬三山縦走です。
ルート概要/その②
村営頂上宿舎分岐まで戻り杓子岳方面に向かいます。標高2,768mの丸山からは劔、白馬の山容が眺められます。アップダウンのあるガレ場の登山道を注意しながら歩き杓子岳手前の頂上へと巻き道の分岐を標高2,812mの山頂に登頂。富士山、槍、穂高の北アルプスの名だたる山容など360度の大パノラマを満喫。杓子沢のコルまで小石の多い道を注意しながら下ります。西側斜面には夏季シーズンに咲くコマクサを見ることができます。
ルート概要/③
標高2903mの鑓ヶ岳手前には高山植物の群落があります。鑓ヶ岳から鑓温泉分岐を左に向かい大出原では9月中頃までのシーズン中に咲くチングルマやハクサンコザクラのお花畑が点在しています。鑓温泉分岐からの下り登山道はかなりハードとなります。白馬鑓温泉手前の鎖場を慎重に下って白馬鑓温泉小屋に宿泊。翌日猿倉へ下山します。
アクセスルートDATA
【登山ピーク時期:6~10月、2泊3日、難易度☆★★★★】
【アクセス情報:距離約20.9km、累積標高差:上り・下り2,829m】
【ルートマップ参考所要時間:約16時間10分】
【1日目:コースタイム約6時間30分】猿倉スタート⇒(70分)白馬尻⇒(150分)葱平⇒(120分)村営頂上宿舎⇒(40分)白馬岳山頂⇒(10分)白馬山荘(宿泊)
【2日目:コースタイム約5時間40分】白馬山荘⇒(100分)杓子岳⇒(70分)鑓ヶ岳⇒(20分)鑓温泉分岐⇒(150分)白馬鑓温泉小屋(宿泊)
【3日目:コースタイム約4時間】白馬鑓温泉小屋⇒(120分)小日向のコル⇒(120分)猿倉ゴール
白馬岳登山ルートについて
ご紹介した白馬岳への登山ルートは他にも八方尾根から唐松岳、難所と言われる不帰キレットを通り白馬岳への縦走ルートや、欅平から清水尾根を経て白馬岳へのルートなどバリエーションルートが複数あります。2020年度は白馬大雪渓が雪不足などから崩落が断続して起こり、通行が不可能ということから9月19日をもって通行止めとなっています。また、ご紹介した鑓温泉ルートも未整備ということで通行止めとなっており、白馬鑓温泉小屋は現在営業休止になっています。
まとめ
白馬岳は大雪渓を登るルートが大人気です。幾つものルートがありますが白馬岳を目指すルートには日帰りコースはありません。各ルートには山小屋が整備されていますので、無理のない計画で装備や服装も整えて無事な登山を楽しんで欲しいと思います。唯一連なる山のひとつ唐松岳へは白馬八方スキー場から雄大な景色を楽しめる八方尾根を通っての日帰り登山が楽しめます。唐松岳山頂から白馬三山の景観を眺めるのも爽快ですよ。
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