アイスクライミングは積雪期登山の一技術
アイスクライミング(ice climbing)は文字どおり、氷壁を登ることが目的のウィンタースポーツです。夏に岩場を登る"ロッククライミング"や屋内の人工壁を登る"ボルダリング"の冬版と考えるとよいでしょう。
基本的には冬、しかも危険度の高い氷壁がフィールドのため、初心者には難易度の高いスポーツです。しかし初心者向けツアーもあるため、関心のある人は始め方の情報としてご参考にしてください。(この記事は2021年12月22日時点の情報です)
本来は積雪期の登山に必須のスキル
現在はアイスクライミング自体が目的のスポーツになっていますが、本来は積雪期の登山において短時間で山頂を目指すための高度な技術です。雪山登山は遭難や滑落の危険性を回避するテクニックが必須ですが、さらに短時間で山頂までの氷壁ルートをよじ登るアイスクライミングのテクニックも求められます。
危険性が高いためアイスクライミングをするときは、基本的には2人以上でパートナーを組み、滑落を避けるためにお互いを命綱となるロープで結んで登ります。
アイスクライミングの3つの魅力
氷ならではのスリリング感
アイスクライミングの魅力は、夏期のクライミングよりもさらに高度なテクニックが必要とされる氷壁や氷柱というフィールドで展開される点です。高度であればあるほどに氷壁や氷柱を登り切ったときの達成感は高く、何とも言えない喜びに包まれるといわれています。
極限の状態から解放されたときの高揚感に包まれるそうです。一度アイスクライミングを体験してみないとわかりませんが、アイスクライミングの魅力とはスリリング感の大きさにあるといえます。
自由な登り方ができる
次の魅力はアイスクライミングとロッククライミングにもいえることですが、自分の好きなように自由に登れる点があげられます。クライミングは、ウィンタースポーツも含めて他の多くのスポーツとは異なり、決まったフォーム(型)がない点が最大の特徴です。
どんな登り方でもどんな動き方でも上に到達できればよいため、自分らしく登れるのがアイスクライミングの大きな魅力といわれています。
冬ならではの景色を堪能できる
アイスクライミングでは氷壁と氷柱が中心の景色を楽しめ、通常の雪山登山とは全く異なるものといえます。氷壁や氷柱が織りなす景色は圧巻されるほどに美しいと感じる人が多く、まさにその景色と一体になれる点が魅力的に思えるようです。
氷壁も氷柱も単なる白一色ではなく、青白く光るように観えることもあります。美しい氷壁や氷柱を目前にしながらのアイスクライミングは、冬ならではの魅力的なウィンタースポーツなのです。
アイスクライミングは人工氷瀑から始める
人工氷瀑とは安全に体験できるスポット
人工氷瀑とは「安全にアイスクライミングを体験する」ことを目的に造られた場所です。アイスクライミングは、初心者がいきなり氷壁や氷柱を登れるレベルのウィンタースポーツではないため、アイスクライミングの始め方としては人工氷瀑からが安心です。
国内にはいくつかの人工氷瀑スポットがありますが、最近のアイスクライミング人気の理由は、人工氷瀑スポットの増加といわれています。人工氷瀑があるスポットでは、初心者向けの体験レッスンに参加するのがベストです。
天然氷瀑はツアー参加がおすすめ
天然氷瀑は自然にできた氷壁や氷柱のことを指し、人工氷瀑に比べて非常に難易度の高いフィールドとなります。充分な経験とテクニックが必要なため、人工氷瀑でアイスクライミングに必要なテクニックを身に着けてから挑戦してください。
しかし初心者も参加できるアイスクライミングの体験ツアーを実施している場合もあります。単独では危険ですが、ベテランガイド同行のため安心して挑戦できるため、自然のフィールドで楽しみたい人におすすめです。
アイスクライミングの服装や装備・道具
アイスクライミングに必要な服装
アイスクライミングに必要な服装は、積雪期の「登山ウェアと登山靴」です。登山ウェアの下には、発汗性と透湿性のよい下着やフリースなどが着用しましょう。
登山ウェアなどの服装は、体験スポットがある場所でも自分で用意するのが基本となります。体験ツアーの場合はレンタル品が用意されていることもあるため、予約の際に確認をしておきましょう。
上記以外に用意する持ち物
上記の服装以外で自分で用意する持ち物は、以下のものがあげられます。各自必要な持ち物を事前にリストアップしておくとよいでしょう。
ヘルメットの下にかぶる「二ット」・防寒性と防水性の高い「グローブ」・雪と太陽の光から目を保護する「サングラスまたはゴーグル」・「使い捨てカイロ」・「日焼け止めクリーム」、そしてアイスクライミングスポットまでこれらの持ち物を携帯していく「リュック」です。
アイスクライミングに必要な装備・道具
アイスクライミングに必要な装備と道具は以下の4つとなります。体験ツアーではレンタル品を用意していることもあるため、初心者はもちろん自前の装備や道具がない人は予約の際に装備などの持ち物の確認をしておくとよいでしょう。
手に持って氷に引っ掛けながら登る「アックス」(別名でクランポン)・登山靴に装着する爪の付いた「アイゼン」・氷壁や氷柱から落下したときに頭を保護する「ヘルメット」・落下防止の身体をつなぐ命綱である「ハーネス」です。
アイスクライミングの基本的な登り方
二等辺三角形の姿勢を維持する
アイスクライミングの始め方として登り方のポイントも頭に入れておきましょう。アイスクライミングはアックスとアイゼンに体重を預けながら登るため、安定感を感じにくいようです。そこで意識するのが姿勢を二等辺三角形にすることにあります。
両足のアイゼンを氷にしっかり刺し、足元を安定させてからアックスを打ち込んでください。基本はこの動作を繰り返しです。初心者はつい両手で身体を引き上げる力技をしてしまいがちですが、事故の原因になるため注意しましょう。
両手同時にアックスを打ち込まない
アックスは左右交互に片手で打ち込むことで、理想的な二等辺三角形のフォームができます。両手を同時に打ち込んでしまうと腕や足に余分な力が入ってしまい、疲労が加速する原因になるのです。必ず左右交互に片手でアックスを打ち込み、力を分散させて登るのが必須のテクニックとなります。
アイゼンのよい刺し方
アイゼンは、氷壁に対してなるべく直角になるように、前部の爪全体を刺し込むのも必須のテクニックとなります。初心者がやりがちなのが、アイゼンの先端だけしか刺していないことです。アイゼン全体が刺さっていないために安定性が悪くなってしまい、滑落の危険性が高まります。
アックスのよい持ち方
アックスの持ち方のテクニックは、必ずグリップエンドに小指が接するようにして持つことです。小指が接していることでアックスを振る際に小指が支点になり、人差し指までがスムーズに動かしやすくなります。それから打ち込む瞬間に、すべての指に力を入れてグリップを握ってください。
ロープに打ち込まないように注意
アックスは、くれぐれもロープに打ち込まないように注意しなければいけません。万が一アックスをロープに打ち込んでしまうとロープが切れやすくなり、滑落の危険性が高くなります。
またアックスがロープをまたがることのないように、ロープの位置は常に身体の中心になるようにしてください。右手のアックスはロープの右側に打ち込み、左手のアックスはロープの左手に打ち込むことを意識します。
アイスクライミングの安全な降り方
基本の降り方は「歩く」
アイスクライミングの降り方はいくつかありますが、アイスクライミングに限らず人工壁のクライミングでも、登り方よりも降り方が難しいといわれています。
最も安全で安心な降り方は「単純に歩いて降りる」となり、よほどのベテランでない限りは歩いて降りてください。人工氷瀑の場合は歩いて降りられるように造られているため、降り方の心配をする必要はありません。もちろん通常の雪山登山の場合でも、登山ルートを使って下山するのがベストです。
「懸垂下降」は極めて高度なテクニック
高度なテクニックが必要な降り方が「支点から懸垂下降する」と「V字スレッドを作って懸垂下降する」となります。これらは登り方よりもさらに高度なテクニックが必要なため、アイスクライミングの初心者は人工氷瀑でも体験することはないようです。
アイスクライミングの降り方をマスターしたい人は、登り方で十分な経験を積んで上級者レベルになってから挑戦することが多いようです。
アイスクライミングのおすすめ体験スポット
①層雲峡氷瀑まつり(北海道)
北海道の大雪山国立公園内にある層雲峡温泉では、毎年1月下旬~3月中旬まで氷瀑まつりが開催されています。まさに氷瀑をテーマにしたイベントとなり、用意されている氷柱でアイスクライミングを楽しまない手はありません。
開催時間は日中となり、道具のレンタル代5,000円で初心者も体験できるスポットとなり、完全予約制で5日前までに申し込みが必要です。体験後は近くに層雲峡温泉もあるので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
層雲峡温泉の基本情報
層雲峡温泉
- 住所北海道上川郡上川町字層雲峡
- 電話番号01658-2-1811
- 公式サイトURLhttps://sounkyo.net/
②赤岳鉱泉アイスキャンディ(長野県)
長野県の赤岳鉱泉は月に3~4回、アイスクライミング初心者用の体験講習会が開催されているスポットです。八ヶ岳の眺望も楽しめる通年営業のキャンプ場には、アイスクライミング専用の人工氷瀑(アイスキャンディ)が設けられています。
頂上にロープがあらかじめ設けられてある"トップロープクライミング"で、アイスクライミングの登り方を体験してみましょう。道具のレンタルもでき、近くに宿泊施設もある便利なスポットでお楽しみください。
赤岳鉱泉の基本情報
赤岳鉱泉
- 住所〒391-0213
長野県茅野市豊平 - 電話番号090-4824-9986
③荘川ICE FACE(岐阜県)
「荘川ICE FACE(アイスフェース)」は、岐阜県高山にあるアウトドア体験施設「ODファーム荘川」のアイスクライミング専用の人工氷瀑です。
高さ約8メートル×幅16メートルのアイスクライミングは、2時間1,000円・1日2,000円で体験できますが、利用するためには安全技術を保持しているクライミング経験者が随行し、道具などの持ち物は各自用意となります。
ODファーム荘川の基本情報
ODファーム荘川
- 住所〒岐阜県高山市荘川町牧戸395-1
- 公式サイトURLhttps://www.odss.co.jp/
OD-FARM荘川のアイスクライミングはこちら!
④雲竜渓谷(栃木県)
雲竜渓谷(うんりゅうけいこく)は、落差120メートル・幅100メートルほどにまで成長する巨大天然氷瀑として知られる、経験者に人気なアイスクライミングのスポットです。テレビCMや雑誌などでも紹介されたことから知名度も高く、多くのアイスクライミングファンには名所として位置づけられています。
日光駅から登山口まで送迎付きの体験ツアーが開催されているので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
雲竜渓谷アイスクライミング体験ツアーはこちら!
⑤霜降の滝(栃木県)
霜降の滝は、華厳ノ滝・裏見ノ滝と合わせて日本三大名瀑の一つとされています。上が25メートル・下が26メートルの2段になっており、高さが75メートルです。
こちらのフィールドでは、初心者も挑戦できるアイスクライミング体験ツアーがあります。しっかり基礎を学んだあとに初心者向けのコースでアイスクライミングを体験できるので挑戦してみてはいかがでしょうか。アイスクライミングで非日常の気分を味わえるフィールドです。
日光霜降アイスクライミング体験ツアーはこちら!
この冬はアイスクライミングに挑戦しよう!
アイスクライミングは高度なテクニックが必要なウィンタースポーツですが、初心者も参加できる体験ツアーがあります。しっかり基礎を学べば人工氷瀑だけではなく天然氷瀑でも楽しめるので、アイスクライミングの始め方として参加してみてはいかがでしょうか。
アイスクライミングの服装は雪山登山用のものの他に、サングラスなどの小道具も必要です。アイゼンなどの装備は体験ツアーでレンタルもしています。関心のある人はインターネットの専用サイトで検索してみましょう!
雪山登山が気になる人はこちらをチェック!
アイスクライミングの始め方をチェックしたあとは、雪山登山についても確認しておきましょう。雪山では夏とは違った楽しみが体験できるので、新たな喜びが見つけられるかもしれません。こちらの記事では必要な装備や持ち物についてご紹介してあります。
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出典:asoview.com