越後の名山「苗場山」
苗場山は、上信越高原国立公園内に位置している、山頂周辺は広大なシラビソの樹林帯で覆われ、頂上部分には周囲約4kmにも及ぶ、景観の美しい高層湿原の広がりが見られ、特別保護地域にも指定されています。
苗場山は、たくさんの池糖が展開していることも、稀有な山容といえます。高山植物の宝庫でもあり多種の植物群は生育しており、初夏から秋の紅葉時期まで素晴らしい景色を眺めることができます。
日本百名山にも選ばれている苗場山は、山頂付近に点在する池糖に7月頃になると、ミヤマホタルイなどの水生植物が一斉に芽吹き、その様子が田植えを終えた水田に見えたことから“苗場”と名付けられたといわれています。
苗場山への登山
苗場山山麓には複数のスキーゲレンデが造成されていることから、登山よりもスキーリゾートとして有名です。山頂付近の湿原など、いわゆる“天空の楽園”と言われるほどの自然景観の素晴らしさから、苗場山には多くの登山者が訪れます。
苗場山への登山ルートは複数ありますが、主要ルートは、ほとんどが日帰り可能なコースとなっています。自然保護の観点から登山道は木道などが敷かれているなど、良く整備されているのが登山者にとっては有難く、初心者からベテランにも愛されている苗場山です。
苗場山登山は、慌ただしく日帰りするのではなく、山頂に建つ「苗場山自然体験交流センター」に泊まって、美しい光景を見せる広大な湿原地帯をゆっくりと散策することをおすすめしたいですね。
苗場山登山の装備と服装
装備
苗場山は標高2,145m、長野県、新潟県の境の信越国境に位置し、冬季は豪雪地帯となりますので、6月頃まで雪が残り、登山適期となるのは6月下旬から10月中旬頃までとなります。登山道はコース距離も長く、気候の変動などで濃霧の発生もしやすいことから、道迷いしやすいので、地図・コンパスは必携。夏の時期はブヨなど虫刺されに対処する薬剤も携帯すると良いでしょう。初夏の時期と、10月には降雪もありますので軽アイゼンの用意も必要となります。
服装
比較的歩きやすい登山路ですが、足首を痛めない様にトレッキングシューズはハイカットモデルが良いですね。着衣は速乾性と保温性の良い化学繊維の衣類がベストです。また、山の天気は変化しやすいことを念頭に、登るにつれて体感温度も変化しますので、アンダーウェアなどの替え、保温着、アノラック及び雨具など登山の基本的な服装は必ず用意しましょう。
苗場山の登山ルート4選
1,登山ルート【日帰り】/祓川コース
登山口へのアクセスも良く、苗場山登山ルートでは多くの登山者が利用するクラッシックコースです。登山路は歩きやすく、危険個所も少ないことから、初心者向けの日帰りルートと言えるでしょう。
かぐらスキー場から舗装された林道を歩いて和田小屋に向かいます。和田小屋から“かぐらみつまたスキー場のゲレンデ内の登山路を進みます。広葉樹林帯の中、熊笹が繁っていることから、岩場には湿り気があって滑りやすい登山路を登ります。
上ノ芝から雷清水
下ノ芝から展望が良くなり、休憩場所のある中ノ芝に着いて休憩。振り返ると谷川連峰の山並みが望めます。秋の時期には紅葉の景色が見られる上ノ芝へと整備された木道を歩き、小松原コースとの分岐点に到着。
苗場山方面への稜線を進み、股スリ岩という、ちょっとした岩場を通り、神楽ヶ峰のピークを下って、途中“雷清水”という水場を過ぎて苗場山との鞍部に到着。ここは初夏の時期には高山植物のお花畑となります。
苗場山山頂
お花畑から痩せた岩稜と笹薮の“雲尾坂”と呼ぶ登山路を進みます。途中ロープの架かる急登の箇所もありますが、3点確保をしながら気を付けて登りきると、所々に池糖が点在する広大な台地が広がる高層湿原地帯に出ます。
尾瀬ヶ原湿原の様に木道が続き、苗場山の山頂はまさに天空のオアシスと言っても過言ではありません。山頂部分だけは樹林に囲まれていて、展望はあまり良くありません。苗場山自然体験交流センターで休憩し、往路を戻って下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR越後湯沢駅よりバス利用約20分 車:関越道湯沢ICより約15分(駐車場有り) |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆☆★★ 体力度:☆☆☆★★ |
アクセス情報 | 距離:13.5km 累積標高差:上り・下り1,303m 地図上標準所要時間:約7時間45分 |
コースタイム | かぐらスキー場町営駐車場スタート⇒(30分)和田 小屋⇒(70分)下ノ芝⇒(60分)上ノ芝⇒(30分) 神楽ノ峰⇒(70分)苗場山⇒(70分)神楽ノ峰⇒ (30分)上ノ芝⇒(40分)下ノ芝⇒(50分)和田 小屋⇒(20分)かぐらスキー場町営駐車場ゴール |
2,登山ルート【日帰り】/小赤沢コース
苗場山西麓、秋山郷の小赤沢登山口から登る日帰りルートです。コースタイム共に長い距離を歩くため早朝に出発します。小赤沢バス停から小赤沢川に沿ってしばらく歩き、駐車場のある三合目に着きます。
三合目からは樹林帯のなか、緩やかな登りの登山路を進みます。水場のある四合目の道標を過ぎ、五合目辺りから斜面が少し急になり、滑りやすいぬかるみに注意。クサリの設置されている急斜面もあります。
九合目坪場から苗場山
七合目からは急登となり、クサリ場が連続する岩場をしっかりホールドしながら登ります。九合目坪場に到着すれば展望が開け、池糖が点在する湿原は心も身体も洗われる心地がします。
そこからしばらく木道を歩きながらシラビソの樹林帯に入り、やや歩きづらい露岩の登山路を登ります。苗場山神社の祠がある赤湯方面からの分岐を過ぎ、また湿原の木道を歩いて行くと樹林に囲まれた苗場山山頂に到着です。周囲の爽やかな景色を楽しんで休憩したら、往路を下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR飯山線森宮野原駅よりバス利用約1時間30分 車:関越道塩沢石打ICより約1時間40分 (駐車場:三合目に駐車場50台有り) |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆★★★(中級) 体力度:☆☆★★★ |
アクセス情報 | 距離:約17.5km 累積標高差:上り964m・下り961m 地図上標準所要時間:約9時間25分 |
コースタイム | 小赤沢バス停スタート⇒(100分)三合目登山口⇒ (160分)九合目坪場⇒(30分)苗場山神社(分岐) ⇒(30分)苗場山⇒(20分)苗場山神社(分岐)⇒ (25分)九合目坪場⇒(120分)三合目登山口⇒ (80分)小赤沢バス停ゴール |
3,登山ルート【1泊2日】/昌次新道~苗場山~赤倉山
苗場スキー場近くの平標登山口から、秘湯“赤湯温泉”を経て昌次新道を進み苗場山に登頂後、龍ノ峰から赤倉山へと進み、昌次新道との分岐、赤湯温泉に戻って平標登山口に下山する、1泊2日の周回コースです。
距離が長くコースタイムも長時間となりますので、前夜泊をして早朝に出発します。日程に余裕があれば、赤湯温泉にも宿泊する2泊3日の行程を計画すると余裕のある山行ができます。基本装備・服装をチェックしてスタート。
赤湯温泉から昌次新道
平標登山口から浅貝川に架かる鉄橋を渡り、ドラゴンドラを見上げながら林道を歩き、赤沢を渡渉して小駐車場があり、清津川に架けられた小日橋に着きます。しばらく歩いて林道終点を過ぎて、また鉄橋を渡ります。
鷹ノ巣峠、見返りの松を過ぎて、ようやく赤湯温泉に到着です。歩きやすい登山路はここまで。赤湯温泉から一旦河原を歩き、鉄橋を渡ると赤倉山からの分岐を昌次新道へと向かい、また直ぐに鉄橋を渡ります。
フクベの平から苗場山
広葉樹林のなかの急斜面を登っていきます。六合目の先に水場があり、ジグザグの急登を登りきると“フクベの平”という平地に出て、緩やかな登山路をしばらく進むと、徐々にきつい登りとなります。
七合目あたりから展望が開け、谷川連峰などが望めます。登山路は険しくなってきて、八号半の深穴岩を巻いて進み、シラビソ廊下と呼ぶ登山路を進むと九合目半はもうすぐ。クサリ場のある難所を乗り切れば苗場山山頂の湿原地帯です。
苗場山から赤倉山
時期が合えば、ミツバアオイ、イワカガミ、シラネアオイなど、湿原に咲く可愛い山野草の花々を眺めながら歩けます。苗場山神社の分岐を赤倉山に向かい、しばらく気持ちの良い木道を歩いて行きます。
龍ノ峰を過ぎると尾根道を進みます。展望は良いのですが、ぬかるんだ道もあるので滑らない様に気を付けましょう。赤倉山手前の鞍部から登り返し、展望のきかない赤倉山頂に到着。ミズナラなどの樹林帯の登山路を赤湯温泉に下り、平標登山口に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR越後湯沢駅よりバス利用約35分 車:関越道湯沢ICより約30分(駐車場有り) |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆☆★★★ |
アクセス情報 | 距離:約20.1km 累積標高差:上り・下り2,443m 地図上標準所要時間:約16時間55分 |
コースタイム(1日目) | 【約8時間25分】 平標登山口スタート⇒(140分)林道終点⇒ (100分)赤湯温泉⇒(90分)フクベの平⇒ (150分)九合目半⇒(25分)苗場山山頂・苗場 山自然体験交流センター(泊) |
コースタイム(2日目) | 【約8時間30分】 苗場山⇒(20分)苗場山神社(分岐)⇒(130分) 赤倉山⇒(120分)赤湯温泉⇒(90分)林道終点 ⇒(150分)平標登山口ゴール |
4,登山ルート【1泊2日】/和山温泉~苗場山~赤湯温泉
山懐に抱かれた秘湯“和山温泉”登山口から平太郎尾根を登って苗場山山頂を目指し、下山路は昌次新道を辿り、赤湯温泉を経て平標登山口に下山。苗場山頂に建つ”苗場山自然体験交流センター”に1泊するコースです。
和山温泉登山口から平太郎尾根の登山ルートは、難路と急登が続き、初心者には難易度がハードで、ルート・ファインディングの技術も要する、中・上級者向けのコースです。装備・服装の再チェックをしてスタートします。
平太郎尾根
登山道入口から歩いて栃川に架かる小さな仮橋を渡ると、登山道の取り付きが分かりづらいので注意。直進してカラマツの林のなか、草付きの荒れた登山路を注意しながら登り、四合目手前で栃川を渡渉します。
ロープが架かる滑りやすい岩場を登ります。草藪に覆われた急登に難儀しながら、四合目の標識がある地点に辿り着き、緩やかな痩せ尾根の登山路をしばらく進みます。五合目からは湿り気のある樹林帯の急登となります。
九合目坪場から苗場山
沢を渡渉する個所があり、クサリに頼って一旦下ります。渡り終えると、夏時期に咲く種々の高山植物の花々が見られるでしょう。樹林と湿原を繰り返す細い登山路を歩き、シラビソの林を進むと小赤沢コースの九合目坪場分岐に到着。
展望の良い九合目坪場から、またシラビソ林を歩き苗場山神社から、陽の光と青空を映して水面をきらめかせる、池糖の点在する湿原の木道をさらに進んで苗場山山頂に着きます。設備の整った苗場山自然体験交流センターに宿泊がおすすめ。
赤湯温泉から平標登山口
赤湯温泉を目指して下山します。九合目半からの急斜面の岩場に注意して下降。シラビソの樹林帯のなか昌次新道を辿り、平地にブナ林が広がるフクベの平で休憩します。六合目手前の水場を過ぎてひたすら下ります。
赤倉山方面への分岐手前の鉄橋を渡り、分岐から赤湯温泉に着いて一呼吸します。見返りの松、鷹ノ巣峠を過ぎて林道を歩き、ドラゴンドラの架線の下を過ぎたら、まもなく元橋から平標登山口に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | 【和山温泉】JR越後湯沢駅よりバス乗り継ぎ利用で約2時間 車:関越道塩沢ICより約1時間45分(駐車場有り) 【平標登山口】JR越後湯沢駅よりバス利用約35分 車:関越道湯沢ICより約30分(駐車場有り) |
山行 | 1泊2日 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆★★★★ |
アクセス情報 | 距離:約22.2km 累積標高差:上り2,243m・下り2,268m 地図上標準所要時間:約13時間20分 |
コースタイム(1日目) | 【約5時間50分】 和山温泉入口バス停スタート⇒(130分)四合目⇒ (170分)九合目坪場⇒(25分)苗場山神社(分岐) ⇒(30分)苗場山山頂・苗場山自然体験交流センター(泊) |
コースタイム(2日目) | 【約7時間30分】 苗場山自然体験交流センター⇒(20分)九合目半⇒ (110分)フクベの平⇒(80分)赤湯温泉⇒(90分) 林道終点⇒(150分)平標登山口ゴール |
まとめ
スキーリゾートとして有名な苗場山ですが、なだらかな山容と、一部ルートを除いてはそれほどの難所もなく、苗場山山頂付近の高層湿原の見事な風景を堪能でき、登山口へのアクセスも良く、低レベルの難易度で、初心者でも気軽に日帰りができるコースがあることから、年齢を問わず、苗場山には多くの登山愛好家が訪れています。
登山の装備・服装についてのチェックは!
登山に必要な装備や服装については、特に初心者は経験者の助言を受けるか、ネットでも検索できますので参考にすると良いでしょう。「暮らし~の」のWEBマガジンでも登山に用意すべき基本装備や服装などの詳しい記事がご紹介されています。