はじめに
ジュズダマとは
数珠玉というとお葬式や法事、お墓参りに手にするお数珠のことをイメージしますが植物にもジュズダマと呼ばれるものがあります。子どもの頃にアクセサリーを作ったり、お手玉の中に入れたりして遊んだことがある方もいるでしょう。植物としてのジュズダマはイネ科ジュズダマ属の多年草植物ですが、寒い季節には枯れて一年草となります。東南アジアが原産で日本では本州から沖縄の水辺に生息します。
数珠玉(ジュズダマ)の特徴
見た目の特徴
茎が束になって直立し、草丈は1~2mにもなります。開花の季節は夏から秋で白や褐色の花を付けます。一番の特徴は実で、直径が7mm、長さが10mmくらいの卵型で光沢があります。とても硬いですが、中に空気を含んでいるため水に浮き、水の流れに乗って子孫を残すため水辺に生息します。よく似た植物にハトムギがあります。ハトムギは園芸用に改良された植物で、ジュズダマの実が硬くまっすぐと上を向いて実るのに対し、ハトムギの実は手て潰すと潰れ、垂れ下がって実るのが大きな違いです。
育て方の特徴
ジュズダマは、野草・雑草とされているため栽培の仕方についてはあまり知られていません。しかし、種から育ててもそれほど難しくはなく湿った場所である程度の肥料があれば問題なく育てられます。雑草というイメージから一度植えるとはびこって大変だと思われがちですが、同じ場所では繰り返し育たたない連作障害を引き起こすことや、風に乗って種子を飛ばさないという特徴から大繁殖することはありません。
数珠玉(ジュズダマ)の育て方①種まき
種をまく季節
種まきの時期は4月中旬~5月上旬です。発芽するためには土の中の温度が15度以上必要なため最低気温が10度以上になってから種まきをしましょう。そのままの状態でまいても大丈夫ですが、一晩20度のぬるま湯に浸けておくと一斉に発芽し生長します。気温が20度以上で生長し始めるので水ではなくぬるま湯に浸けるところがポイントです。ただし、暑い季節になってからの種まきは生長しきらないうちに開花時期を迎えるため、タイミングの見極めが必要です。
苗を作って栽培する
苗を作る時は、透明のプラスチックのコップへの種まきをおすすめします。根が水に浸かった状態でも問題なく育つので水抜きの穴が必要ないためと、植え付ける際に根の張り具合が確認できるためです。ただし、種の時は常に水に浸かっていては芽が出ず、酸素が必要なので土が乾いたら水やりをする程度にしてください。地中深くに種をまくと途中で力尽きてしまうため、約1cmの深さにまきます。10日ほどで芽を出し、ここからは根が急速に伸びていきます。
地植えで栽培する
地植えで栽培する場合、一つの穴に複数の種をまかずに、三角形になるように3cmずつ離して3カ所にまいてください。これは一つの株の根元から新芽が株分かれして伸びてくることがあるからです。一緒の穴にまくと別の株か同じ株かが見分けにくく、同じ株を間違えて間引いたり、間引くべき株を間引き損ねたりすることを防ぐためです。葉が3枚くらいになったら、お互いを邪魔したり栄養を奪い合わないように間引いて元気のよい一つに絞ります。
数珠玉(ジュズダマ)の育て方②植え付け
植え付け時期と方法
葉が4~5枚になり、苗を抜いた時に土が崩れないほど根が張った時が植え付け時期です。透明のプラコップを使用していれば、根の張り具合を確認して植え付け作業をしましょう。土をほぐさないように土ごと植え付けるよう注意します。苗は30cm間隔で植え、日当たりが良く、湿った場所が適しています。土が乾かないように管理してください。
数珠玉(ジュズダマ)の育て方③育てる場所
畑で栽培
地植えでは盛り土をすると水はけが良くなってしまい湿った土の状態を保てないので平地に植えます。畑でたくさん栽培する場合、湿った土をキープするためには水やりの手間がかかります。そのため畑に植える時でも畝には植えず、平地や畝の谷間に植えましょう。そうすると畝からの水が流れてくるので水やりの手間を省けます。植える場所も元々田んぼだった所を選んで植えると良く育ちます。
プランターで栽培
プランターでの栽培で注意することは直射日光の当たる場所に置くことです。根は15cmくらいしか伸びず、たとえ根がそれ以上に伸びたとしても曲がって伸びていくので深いプランターを使わなくても大丈夫です。水を抜く穴が必要ないのでプランターがなければバケツでも育てられます。逆に素焼きの鉢は乾燥しやすいため避けてください。培養土は乾きにくくするために腐葉土を混ぜるとよいでしょう。
温室で栽培
東南アジア原産ということで気温が高い方がより育つ理由から、ビニールやガラス張りのや温室で育てる方法もあります。温室栽培では寒い季節でも枯れずに冬を越せるというメリットはありますが、直射日光が必要なので、直射日光の当たる室内でなければ育ちません。光の透過率のよいものを使用したり、ガラスやビニールの汚れで直射日光を遮ってしまわないように注意しましょう。また、風で受粉するので風の当たらない場所で育てる場合は開花する季節に扇風機や送風機で花粉を飛ばさなければなりません。
数珠玉(ジュズダマ)の育て方④開花から越冬
開花時期と花の特徴
開花時期は7月から10月頃までで、色は白色や褐色などです。ジュズダマの花は普通の花とは違い、少し変わった形をしています。雄しべと雌しべは同じ株にありますが、苞葉鞘(ほうようしょう)というツボの中に雌しべがあり、その先に雄しべが垂れ下がっています。苞葉鞘とは花びらの元の部分に付いている葉が変形した部分のことで、ジュズダマの場合これが実となります。雌しべ(雌花穂)は白色や褐色のモールのような糸状のもので、麦の穂ようなものから覗いている黄色いのが雄しべ(雄花穂)です。
結実
受粉の時期になると雌しべはツボの中から柱頭だけを出します。受粉を終えると雄しべが枯れ落ち、ツボは固い殻に変化し実となります。受粉前は黄緑色でしたが熟すと黒や灰色に変化します。アクセサリーやお手玉の中身などに使用するならしっかり熟したものを採取した方がよいですが、タイミングが遅いと実が落ちてしまいます。栽培のために採取する場合は色づき始めたら早目に採って乾燥させます。
休眠時期
寒さに弱いので寒い季節には枯れます。霜に弱く当たると葉、茎、根、すべて枯れるのが越冬できない原因です。逆に霜に当たらなければ寒い地域でも越冬できるので、株を休眠させたい場合は霜よけをしたり室内やハウスで管理します。種は霜に当たっても大丈夫です。
数珠玉(ジュズダマ)の育て方⑤病気
いもち病
いもち病とはイネに発生するカビが原因の病気です。農薬を使わないと撃退できず対処しなければ毎年発生します。ジュズダマのいもち病に関しては詳しい研究はされていませんが、発生すると葉に白色や褐色の病斑が現れ枯れていきます。また、穂に浸食すると実の表面にくぼみができたり、穴が開いたりして実が使い物にならなくなります。いもち病は日照不足や冷夏の年に発生しやすいと考えられています。被害にあったら放置せず早めに処分することが大切です。
連作障害
毎年同じ場所で育てていると生長が悪くなり育ただないことを連作障害といいます。特定の野菜に現れる障害ですがジュズダマにも連作障害が発生します。これにはいくつかの原因があり、土壌内の栄養の偏りや病害虫の増加、自家中毒といったことが考えられます。植える場所や使う土を毎年変えて防ぎます。同じ株で翌年も栽培を続ける場合、2~3年は育ちますが徐々に育ちが悪くなります。
数珠玉(ジュズダマ)の育て方⑥害虫
アワノメイガ
ほとんど害虫はつきませんが、近くでトウモロコシが栽培されているとアワノメイガという蛾の幼虫の被害が見られます。アワノメイガとは体長5mm~2cmほどの黄白色のイモムシで茎の芯を食べるので被害にあうと食べられた部分から上は枯れてしまいます。枯れた株を見つけたら茎を半分に切ってみて、アワノメイガがいたら食害部分の下を切って駆除します。放置すると被害が広まる上に茎の中で越冬し繰り返し発生するため注意が必要です。
数珠玉(ジュズダマ)の楽しみ方
アクセサリー
実が収穫できたら、しっかりと乾燥させて首飾りやブレスレットなどのアクセサリーを作ってみましょう。糸と針があれば簡単にできます。芯を針でつついて出すと、針が通るくらいの穴が明くのでそこに針に付けた糸を通して繋いでいきます。適当な数を繋いだら固結びをしてできあがりです。100円ショップなどで伸びるビーズ糸を購入して通せばブレスレットも作れます。
ドライフラワーや切り花
ドライフラワーにすると実がポイントになって可愛いです。一緒にほおずきや唐辛子を飾ると素敵ですね。ドライフラワーは早く刈り過ぎると実が熟さず、遅いと実が落ちてしまうなど刈り取るタイミングが難しいので、早めに刈り取って切り花にするのもよいですね。水揚げがあまり良くないので1~2日で枯れてしまいますが、懐かしい雰囲気を感じられます。刈り取ったらすぐに水に浸けておきましょう。
薬用
ジュズダマの実は川穀(センコク)という漢方薬となります。実を炒って固い殻を割り、麦茶のように煮出してお茶にして服用します。利尿、解熱作用の他、美肌効果やイボにも効くと言われています。根は川穀根(センコクコン)と呼ばれ、神経痛の他肩こりリュウマチなどに効きます。残念ながら日本ではあまり使用されず、ジュズダマの園芸品種であるハトムギが使われます。ハトムギはお茶として飲まれる他、ヨクイニンというイボに効く漢方薬でも知られていますね。
まとめ
ジュズダマを育ててみよう
ジュズダマは身近な植物ですが、その育て方はあまり知られていません。実のなる季節になると田んぼの畔で発見することもありますが街中では見つけることも難しいです。ジュズダマの開花はとても複雑で面白く、育てていないとなかなか見られるものではありません。上手に育てられたら1株から300個から1000個の実が採れるので、子どもと一緒にアクセサリーやお手玉を作って遊んだり、数珠玉細工のような素敵な工芸品作りに挑戦してみるのも面白いですね。
ジュズダマを使ったお手玉の作り方はこちらをチェック
ジュズダマを使ってお手玉を作りたい方はこちらを参考にして、素敵なお手玉を作ってみてください。
手軽でおしゃれに!手縫いで仕上がる手作りお手玉の簡単な作り方講座!
お手玉の作り方は手縫いで簡単にできるかわいいハンドメイド。自分で作ればサイズも布も形もお好みでできます。お手玉の作り方を縫い方から布の選び方...