たんぽぽについて
たんぽぽは、キク科タンポポ属の多年生で、主にユーラシア大陸に自然分布しています。中国名は、蒲公英(ほこうえい)。学名のタラクサクム(英語: Taraxacum)は、ギリシャ語が起源の「苦痛を癒す」という意味ですが、アラビア語の「苦い草」に由来する説も。
江戸時代に日本で育種、改良された園芸植物
古典園芸植物の一種で、江戸時代末期には数十種類が園芸化されています。日当たりと水はげの条件さえそろえば根を長さ1㎝ほどに切って、土に埋めておけば根から発芽し、簡単に増やすことが出来ます。もちろん種からで簡単に増殖出来ます。
基本情報
学名 Taraxacum
英名 Dandelion
和名 タンポポ(蒲公英)
科 キク科
属 タンポポ属
たんぽぽの綿毛/たんぽぽの正式名称は
「たんぽぽ」の正式名称とは
「たんぽぽ」という名前の由来はいくつかあり、一つには花後の姿が綿を丸めて布で包んだ綿球のタンポに似ていることから「タンポ穂」とよばれたとする説。2つ目はたんぽぽの茎の両側を細かく裂くと、反り返って鼓のようになるため、鼓草(つつみぐさ)と呼ばれ、「タン、ポンポン」という、鼓をたたいたときの音が名前の由来になったという説。また、江戸時代にツヅミグサ(鼓草)と呼ばれていたものが変化して、植物もたんぽぽと呼ばれるようになったという説などがあります。
英語名の由来は
たんぽぽの英語の正式名称をdendelion(ダンディライオン)といいますが、フランス語にdent-delion(ダンドリオン)というよく似た言葉があって、「ライオンの歯」という意味があります。たんぽぽのギザギザした葉がライオンの歯をイメージさせることからこの名が付いたと言われていて、英語の正式名称もこのフランス語が由来と言われています。
「たんぽぽ」は「タンポポ属」の総称
たんぽぽは、正式名称というよりキク科タンポポ属の全体としての呼び名になっています。そして在来たんぽぽの正式名称は日本タンポポ。外来種の正式名称をセイヨウタンポポと呼ばれているようです。
たんぽぽの綿毛/たんぽぽの特徴
たんぽぽは非常に生命力が強く、狭いアスファルトの隙間でも生える事があり、中には50㎝から長いもので1m以上になる根を持つものもあります。葉や花の特徴などを見ていきましょう。
たんぽぽの葉の特徴
たんぽぽの葉は、育つ場所によって形が変わってきます。その理由は太陽の光をたくさん浴びるためです。日陰が多い場所では葉の数を少なくしますがその理由も太陽の光をより多く浴びるためです。また葉の面積を増やすために切れ込みもあまり多くありません。逆に、日当たりのよい場所では、切れこみを深くします。理由は葉が重なっても下の葉にも太陽光が差し込むようにするためです。
夏の葉のでき方
背が低いタンポポは、元気に育つ他の植物に光をさえぎられて、光合成を行うことができないので葉の数を減らして夏をやり過ごします。
冬の葉のでき方
冬のたんぽぽはロゼットの形をして、冬を越します。その理由は茎が短いので、葉が根元に集まり地面に貼りつくことによってあまり強く風に当たらなくて済むからです。外側の葉が枯れても、枯れた葉が内側の葉を覆って中の葉を寒さから守ります。
花の特徴
花のでき方は、黄色から白色の花を1つ付けますが、花びらが細長い舌の形をしている舌状花で、その小さな舌状花が多数集まって、全体が1つの花のように見える頭状花序になっています。舌状花の下端には子房がありその上に萼(がく)が変形した冠毛と呼ばれる突起があり、これがその後に風によって飛び、種子を飛び散らす役割をします。
たんぽぽの綿毛/綿毛のでき方
開花してから、その後綿毛になるまでのでき方や仕組みは、タンポポが開花し、その後14日ほどで綿毛になりますが、花の期間は短く、日数は5日程度です。3日から7日間くらい咲いたその後はすぐにしぼみ、綿毛になる支度にとりかかります。綿毛のでき方の仕組みなどを見ていきましょう。
綿毛のでき方の仕組み①
開花が終わったその後は、花の周りが覆いかぶさってしぼみ、つぼみの形に戻って、茎は倒れるように地面に横たわります。なぜ横たわるのか不思議ですが、理由は貴重なエネルギーを、種を作ること以外は節約しようとするためではないかといわれています。
綿毛のでき方の仕組み②
種が成長し、その後綿毛が出来てくると、葉っぱのような個所がじょじょに開き、萎んでいた花びらの個所も上がっていき、とれていきます。横たわっていた茎も再び起き上がり、その後綿毛が見えてきます。茎は開花していた時よりも更に高く立ち上がりますが、その理由はより高い位置から遠くへ種子を飛ばそうとするためです。
綿毛のでき方の仕組み③
綿毛が全てひらいて、その後成長して風にのって飛距離を伸ばしますが、そのために開花から14日間かけてじっくりと、綿毛が飛ぶための秘密の仕組みを整え、そしていっせいに散らばっていきます。
たんぽぽの綿毛/綿毛の飛距離
では綿毛が風に乗って飛ぶ飛距離は?いったいどこまで飛ぶことが出来るでしょう。綿毛は非常に軽く、飛ぶ仕組みも整っているので微風でも飛距離を伸ばすことが出来ます。ほぼ無風に近い0.5mの微風があれば綿毛は飛ぶので全く無風にならない限りどこまでも宙に浮いていることが出来ます。気流に乗り10キロ以上の飛距離の記録も伝えられており、その時の状況の理由により平均的な飛距離は言えませんが、数メートルから数百メートルの飛距離が出るといわれています。
綿毛が長い時間飛ぶ事が出来る理由
たんぽぽの種のまわりの空気は、冠毛から少し離れたところは渦状になっていて、冠毛を通じて上向きに流れる空気は渦のまわりを流れるが、渦の端で綿毛と接するところでは、摩擦が生じて回転し、低気圧性の渦になり、気圧の低いところへ移動しようとするために、たんぽぽの冠毛を上へ吸い上げる仕組みになり、たんぽぽの種が空中に安定して浮いていられるという仕組みが出来あがります。
たんぽぽの綿毛/たんぽぽの種類
たんぽぽは世界中で2,000種類ほどの品種が存在し、主に北半球に多く生息しています。日本ではかつては100種類ほどに分類されていましたが、その分類は難しく、学者によって異なり、現在の分類は20~30種類になっています。大別して「在来種」と「外来種」に分けることが出来、「在来種」は日本原産の日本タンポポ、「外来種」はヨーロッパ原産のセイヨウタンポポです。
「在来種」の代表的な品種
カントウタンポポ
日本でも代表的な種で、関東を中心に、太平洋側に広く自生しています。特徴は、花びらの付け根を包んでいる緑色の部分を総苞(そうほう)といいますが、総苞片がまっすぐ立ち、先端が角のように突き出ています。
カンサイタンポポ
日本に古くからある在来種で、主に西日本で多く見られます。特徴は総苞片の幅が狭くセイヨウタンポポと比較してひとまわりほど花が小さめです。
シロバナタンポポ
関東より西側に自生し、花の色が白色で、たとえ郊外でもなかなか見ることが出来ない種です。総苞片の先が、カギ状に曲がっています。
エゾタンポポ
北海道や中部地方以北に多く分布しています。総苞片は短毛状に細かく裂け、角状突起はないか、あっても小さめです。
外来種のたんぽぽの種類
セイヨウタンポポ
市街地でよく見るたんぽぽで、原産地がヨーロッパ。明治の終わりごろ北海道に野菜として入って来て、その後全国へ広がりました。日本タンポポよりもひとまわり花が大きく、咲いている期間も長く、総苞片が下を向いて反り返っています。
アカミタンポポ
セイヨウタンポポより少し遅れて帰化したヨーロッパ原産の品種で、葉に切れ込みがたくさんあります。都市部に多く生息し、存在感がありますが、セイヨウタンポポとの区別がつきにくく、どうやって見分けるかといいますと、冠毛をつけた種の色が赤っぽければアカミタンポポです
たんぽぽの綿毛/在来種と外来種の違い①
春になると普通に見かける身近な存在のたんぽぽですが、日本たんぽぽと西洋たんぽぽの見分け方となると一見して区別がつきにくいものですが、でも注意してみると色々特徴が見えてきます。
日本たんぽぽと西洋たんぽぽの見分け方
総苞片で見分ける
花びらの付け根の総苞片が閉じているのが日本たんぽぽ、総苞片が反り返っているのが西洋たんぽぽです。これはつぼみや綿毛の時も必ず違っています。まれに交雑種のたんぽぽがあり、この場合は、特徴がわかりにくいものもあります。
繁殖方法の違い
日本たんぽぽは自分以外の株の花粉を受粉しないと種子ができないため、蜂などの昆虫の手助けが必要ですが、西洋たんぽぽは自分で種子を作ることが出来るため、受粉の必要は無く、自分だけで種(クローン)を作り、増えることが出来ます。
種子の違い
日本たんぽぽは種子の数が少なく、1粒1粒が大きく重いのでなかなか遠くまで飛ぶことが出来ませんが、西洋たんぽぽは種子が小さくて軽く、種の数も日本たんぽぽの倍以上あるので、風にのってたくさんの種が遠くまで飛ぶことが出来、飛距離を伸ばすことが出来ます。
開花時期の違い
日本たんぽぽは、まれに冬に発芽する種類もありますが、基本的に開花時期が春の短い期間に限られ、春にしか開花しませんが、西洋たんぽぽは一年中いつでも花を咲かせることが出来ます。
たんぽぽの綿毛/在来種と外来種の違い②
西洋たんぽぽにも弱点が
西洋たんぽぽは繁殖方法などから日本たんぽぽよりも環境適応力が強いようにみえますが、一年中発芽できても、クローンで大量に増える事は環境適応力が高いとは言えません。夏に発芽した場合など背の高い植物の日陰になって順調に育つことができないなど、環境の変化に対応できず、他の植物との生存競争には厳しいものがあります。そのため、他の植物が生えないような都会の環境で育つことが出来ても豊かな自然環境で育つのは非常に困難なのです。
日本たんぽぽの生存戦略とは?
一方日本たんぽぽは、繁殖力は弱いのですが、受粉によって多様な個体が生まれるので、気温や、病害虫などの影響で全てが絶滅してしまう危険が少なく、また春の開花後は種を飛ばした後は自らの葉を枯らして根だけを残し、秋に再び葉を広げて越冬し、自然環境に合わせた生き方をしています。一方風に乗って飛ばされた種子は落下しても秋になるまで発芽しない性質を持っています。このように日本たんぽぽは、日本の自然環境に添った生存方法を身につけています。
たんぽぽの綿毛/花言葉と綿毛の恋占い
たんぽぽの4つの花言葉
たんぽぽには4つの花言葉があります「真心の愛」「愛の信託」「神のお告げ」「思わせぶり」などです。これらは占いにまつわる花言葉といわれています。ヨーロッパでは古くから、たんぽぽの綿毛で恋占いをしていたことから、神様がたんぽぽを通して占いの結果を告げたと考えられています。
白色たんぽぽの花言葉は?
たんぽぽと言えば黄色のイメージですが、たんぽぽの中でも珍しい白い花を咲かせる「シロバナたんぽぽ」もあります。そんな貴重な白いたんぽぽの花言葉はイメージどおりの「私を探して!そして見つめて」です。とてもロマンチックな花言葉ですね。
綿毛の花言葉
綿毛の花言葉は「別離」です。綿毛が飛び立っていく様子に由来しています。卒業や進学、就職で旅立つ人へ応援のメッセージとしてふさわしい花言葉ですね。
たんぽぽ占い
古くからヨーロッパでやっていたたんぽぽ占いは「好き、嫌い、好き…」と交互に唱えながら綿毛を吹いていき、吹き切った時に綿毛がどっちになるかという恋占いです。また、こんな占いもあります、最初のひと吹きで綿毛を一気に飛ばすことができれば「情熱的に愛されている」、少し残れば「心が離れる予感がある」、たくさん残れば「相手はあなたに興味がない」というものです。
まとめ
たんぽぽについてお話してきましたがいかがでしたか。在来種も外来種も小さいながらもそれぞれの生を一生懸命生きている姿を感じて頂けたのではないでしょうか。都市部で見かけるのはほとんどが外来種で、在来種が滅びてしまうのではないかと一時は危惧されたのですが、実は在来種が生えにくい都市部に外来種が生えているだけで在来種は減少したわけではなく、そこに外来種がプラスされたようなもので、全体的に増えているという事なのです。
交雑について
在来種と外来種は別の種類ですが、研究の結果交雑が起こっていることが報告されています。例えば総苞片が一部だけ反り返っていたり、在来種の特徴である茎の背が低いにもかかわらず、外来種の特徴である総苞片が反り返っていたり、また、開花時までは在来種のように茎の背が低く、綿毛として種子を飛ばす段階になって外来種のように茎を伸ばすなどです。このような交雑種が増えていくと何年か先には在来種の存続に少なからず影響が出るとの報告もあります。
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