リバーストライクってどんな車?
トライクは元々「トライサイクル」の略で、いわゆる「三輪車」全てのことを指します。真上から見たタイヤ位置が「二等辺三角形」であることが唯一の規定と言って良いでしょう。当初出現したトライクは二等辺三角形の一点側を進行方向としたものでした。今回リポートするリバーストライクは、二等辺三角形の二点側が進行方向になります。つまり従来の「リバース(逆方向)」であるという考え方です。(当記事は2020年1月11日時点の情報をもとに作成されております。)
リバーストライクの歴史について
まずはトライクの歴史から
日本ではかなり古くからバイクのようなバーハンドル方式の三輪車はありました。特に「オート三輪」と呼ばれるトラック系の三輪車は1930年代にダイハツのミゼットをはじめ、マツダやクロガネなど三大メーカーが評価を髙めました。戦後は大型化が進みましたが安全性の問題と、モータリゼーションの変革と共にやがて衰退しました。その後軽三輪のブームも到来しましたが、1972年、最後のメーカー、ダイハツの撤退で終焉を迎えました。そして現在はバイクの後輪を二輪にした三輪バイクをトライクと呼び、新たな三輪ブームが起こっています。
リバーストライクの出現は2007年
それまで三輪は後二輪が当たり前だったものを、カナダの航空機メーカー、ボンバルディア社が前二輪の「カンナム・スパイダー」を2007年に販売し始め、リバーストライクとして認知させました。三輪の構造上、前二輪の方が安定することは分かっていましたが、オートバイの延長として作られてきたトライクは後二輪が当たり前と考えられてきました。以降前二輪のリバーストライク車が各社で製造されるようになりましたが、日本では法整備がまだ追いついていない状態だと言われています。
リバーストライクの免許について
普通運転免許で乗れるリバーストライク
トライクの規定は3輪であることが最低限の決まりになりますが、構造上(走行安定感由来)普通自動車運転免許証でほとんどのトライクは運転できます。それは前二輪でも後二輪でも同じです。条件は横幅が460mm以上あり、ハンドルを切って旋回すること。つまりバイクのように車体を傾斜させない構造が必要です。また普通自動車の免許での乗車が可能ということで、バイクで言う「限定解除」扱いとなり、1200ccでも250ccでも排気量は関係ありません。
バイク免許が必要なリバーストライク
では車体を傾斜させてカーブを曲がるタイプのトライクはどうでしょう。こちらは「三輪バイク」のカテゴリーとなり、オートバイの免許が必要になります。普通免許で乗れるリバーストライクとバイク免許で乗れるリバーストライクは構造上の違いはもちろんですが、最大の違いは前者は「ノーヘルOK」であることです。また、どちらのタイプにも共通なのが、250cc以上の排気量を持つ車両には「車検」が必要になることです。250cc以上の車種をお考えの時には気を付けましょう。
リバーストライクの操作性について
操作性は抜群!
前二輪でも後二輪でも3輪の乗り物であることから当然2輪のバイクとは比べ物にならない安定性と操作性があります。バイクには必須のスタンドが要らないことからもそれは分かるのですが、逆に4輪の自動車より安定性も操作性も悪いことは自明ですね。では前二輪と後二輪ではどうでしょう。ほとんどがFR車で後輪1輪が駆動して走るため、コーナーでの後輪の滑りには気を付けなければなりませんが、オーバースピードでない限り直線やスラロームでもリバーストライクの方が操縦性は良いようです。
バックギアもあります
バイクの後輪を2輪に改造しただけのトライクと違い、新しい設計の多いリバーストライクはかなりの確率でバックギアが付いています。これは操作性にとってはとても重要なことです。2輪バイクでさえ狭い駐輪場に頭から突っ込んでから車両を引っ張り出すのに苦労することがあるのに、大きな車体のトライクではバックギアが付いていなければよほど考えて駐車しなければなりません。バイク自体に慣れていない方などはバックギア付きの車両を探すといいでしょう。
リバーストライクの安全性について
走行中は膨らみに気を付ける
リーン(傾斜)させて走らせる「リーニングトライク」ではないリバーストライクは3輪がシャーシ固定(もちろん独立懸架はありますが)されているため、ハンドルを切って曲がって行きます。直進中に急なハンドル操作をすると当然遠心力が外に掛かり、曲がりきれない(アンダーステア)場合があります。
身体はむき出し
曲がりきれない場合は無理にコースに戻そうとすると片輪が浮くなどの危険があります。無理なスピードは出さないに越したことはありませんが、できればヘルメットは被りましょう。自動車登録ですのでヘルメットの着用義務はありませんが、事故以外にも「囲われた空間での移動では無い」ので、他車からの石はねや倒木枝などに掛かる危険もあります。自動車登録ではありますが、体感はバイクであることをきちんと把握して安全に配慮しましょう。
リバーストライクのメーカーについて
カナダ「ボンバルディア」社
ボンバルディア社は航空機メーカーとして有名ですが、実はスノーモビルなどのメーカーとしても世界的にシェアを持っています。そのノウハウを活かして作られたのが「ボンバルディア・リバーストライク・カンナム」です。2007年に市場に出されたカンナムは現在日本をはじめ世界中で好調な売れ行きを示しています。その卓越した技術と、リバーストライクの牽引役として良品を続々と発表しているメーカーです。お値段は日本円で180万円ほどから280万円ほどと、購入しやすい価格帯になっています。
国産「ウロボロス」
「日本発×日本初」を謳うオートスタッフ末広が世に送り出したのが、「ウロボロス」。ボディーデザインは「ツナグデザイン」が担当し、重量感のある仕上がりになっています。エンジンは応相談でいろいろなエンジンが乗りますが、基本はヤマハの4気筒1000ccエンジンが使われています。エンジン価格が車両本体価格に直接関わってくるために詳しい基本価格表などは出回っていませんが、350万円前後からの仕様になっているようです。日本の道は日本のメーカーが安心かもしれないですね。
リバーストライクの購入について
オプションが豊富
日本ではまだまだ市民権を得ていない感のあるリバーストライクですが、オプションは驚くほど多く販売されています。スマホ(ナビ)やレーダーホルダー、ドリンクホルダーやキャリアなど周辺オプションもさることながら、ボンバルディア社のカンナム系列の車両などは足の不自由な方でも操作できるよう、両手だけでアクセルやブレーキを操作するオプションまであります。オプションの価格はバイクの物に比べどれも多少お高いですが、多数用意されています。
信頼性の高いメーカーのものを
世界中が注目しているリバーストライクですが、安価なアジア製リバーストライクもあります。通称「中華トライク」と呼ばれている車両ですが、信頼性が低いのでおすすめは致しません。圧倒的な低価格でかなりの台数が販売されていますが、口コミを調べてみると「走行中にワイヤーが切れた」などの低評価が目立ちます。このワイヤーはアクセルワイヤーやブレーキワイヤーのことで、直接安全にかかわる部品です。250cc未満の車両ですと車検もありません。信頼のおける販売店での購入をおすすめします。
リバーストライクの維持費について
購入までの費用
購入は「車両本体価格」+「オプション」に消費税を足し、登録諸費用を足したものです。これは車種によって元の金額が異なるため一概には言えませんが、排気量250cc未満の場合は自動車税(1年)3600円と自賠責保険料(12ヶ月)8650円が登録諸費用になります。これに新車購入の場合は重量税4900円が必要になります。250cc以上の場合は自動車税6000円に自賠責保険料(24ヶ月)11520円、重量税(2年)3800円がかかります。ちなみに自動車登録ですが、車庫証明は必要ありません。
購入後の維持費(250ccが分岐点)
実はリバーストライクのネックは維持費ではないかと思います。例えば250cc以上のリバーストライクには車検が必要です。カンナムスパイダーのオーナーさんの口コミによりますと10万円から30万円ほどと幅はあるものの、軽自動車以上の金額がかかるようです。また後輪タイヤ1本交換するのにも4から5万円かかるそうです。オイルとエレメント交換(3000から4000㎞)でも2万円ほどかかります。特殊な車両ですので維持費が高いのは仕方ありませんが、維持費がネックで手に入れにくいのも確かです。
Spyder RT Limited所有しています。 6月に購入から3年目の初回車検を購入正規ディーラーで通しました。 車検時に支払ったのは30万ぐらいです。
これは調べた維持費の口コミでの最高値でした。安全のためとはいえちょっとお高い感はいなめません。ちなみに最安値は9万円弱でした。総合的に見て維持費の分岐点は車検の発生する250ccだと思われます。
おすすめのリバーストライク①
カンナム「スパイダー」
やはりおすすめの一番手は「カンナムスパイダー」でしょう。何と言っても長年この業界を引っ張ってきた信頼があります。特におすすめするのは「RT」というタンデム仕様車になります。スパイダーは収納スペースが大きいとはいえそこは3輪車です。ソロでツーリングするにも一人分の座席が有るのと無いのとは大違いです。またパワーステアリングやセミオートマチックギアなどが標準装備なども嬉しいですね。
カンナムスパイダーの概要
ここでは最大の「カンナムスパイダーRTリミテッド」のスペックを紹介しておきます。全長は2833mmで一般的な軽乗用車より500mmほど短いのですが、横幅がなんと1554mmと、例えばダイハツのミラなどよりも大きいんです。収納は177Lと大容量で、ツーリングやキャンプなどにも充分耐えられます。販売価格(2020年1月11日現在)は一番の廉価版(F3)で189万円からとなっており、最上級モデルでも277万円と意外に価格は良心的に思えます。維持費さえ押さえられれば一番のおすすめ車両になります。
おすすめのリバーストライク②
カンナム「ライカー」
カンナムからもう一台。カンナムスパイダーの廉価版とも言うべきカンナムライカーもおすすめです。こちらは「ライダー」と「バイカー」の造語で、ずばり「走り」に徹した作りになっています。配給エンジンは600ccと900ccの2種類で、メーカー推奨のラリーエディションではかなりのダートも攻められる仕様になっています。ラリーモードにするとトラクションコントロールが鈍感になり、車体をスライドさせながらコーナーを攻めるなどということもできます。バイクではなかなかできない芸当ですよね。
カンナムライカーの概要
サイズ的にはスパイダーに比べ500mmほど全長が短いのですが、横幅は1509mmとほとんど変わりません。総重量285kgに83馬力エンジンの組み合わせはオーバーパワー気味とさえ思えますが、スポーツ性の高いライカーにはぴったりです。ミッションはセミオートマチックで、オートマ限定の免許区分で乗車可能です。販売価格は最上級車でも170万円台(2020年1月11日現在)と、大型バイクに比べてもそう高いものではありません。メーカー標準収納が7Lしかないのがちょっと残念です。
おすすめのリバーストライク③
ヤマハ「トリシティ」
国産のリバーストライクの中で一番認知率の高いのがヤマハ「トリシティ」でしょう。国産メーカー車ということもあって何か困ったことがあってもサポートは万全ですし、250cc以下の車両ですので車検もいりません。維持費も安いですし、気軽に乗り出せるリバーストライクだと言えます。ただしこの車両は「リーニングリバーストライク」ですので、普通乗用車の免許証だけでは乗ることができません。(2020年中には欧州販売車両として300ccが販売される予定)
ヤマハトリシティの概要
スクータータイプのバイクを前二輪に改造したようなフォルムのトリシティ。現在日本で販売されているものは155ccと125ccの2機種。この2車種はエンジン性能以外はほぼ同じものです。全長(1900mm)も全幅(750mm)も全高(1210mm)もすべて同じです。販売価格44万円(2020年1月11日現在)と全幅750mmのコンパクトさ、維持費の安さが相まって、通勤や通学の足として、また楽しい街乗りの足として人気を博しています。(2020年中には250ccバージョンが発表されるのではと言われています)
リバーストライクのメリット①「特殊なフォルム」
安定の前二輪
リバーストライクの最大のメリットはその安定操作性にあります。物理的に無理をしなければ転倒の無いトライクを前二輪にしたことでその安定性はさらに増しました。そのためノーヘルでも乗れる自動車登録車となりました。オープンフォルムのために乗りたい時にさっと跨るだけで即発進できるメリットもあります。
注目度MAXのフォルム
四輪の良いところと二輪の良いところを合わせた前二輪のリバーストライクですが、その数はまだまだ少なく、街なかで見かけることもあまりありません。衝撃的なフォルムであることもあり、目立つことは間違いありません。保有者の中には行く先々で声を掛けられるのがうれしいという方もおられます。注目される一台を持つこともメリットの一つだと思います。
リバーストライクのメリット②「免許区分」
対象者は8200万人
日本全国で普通自動車免許証を保有している人の数は約8200万人です。それに比べて普通自動二輪免許証の保有者数は約14万人強しかいません。いままでバイクに乗りたくても乗れなかった方達でも普通自動車免許で乗車できるリバーストライクは、14万人のバイカーを8200万人に増やしました。
ハンディがあっても
8200万人の中には身体に不自由な部分を持ち、足を使う自動車には乗れない方達もおられます。そんな方達にも移動の自由を与えられる可能性がリバーストライクで出てきました。まだまだ維持費や価格全般が高額な物が多いリバーストライクですが、普通自動車免許さえ取得していれば色々な方が移動の自由を手に入れられます。今後250cc以下クラスのリバーストライクが増えてくればその可能性がもっともっと増えてくると思います。
リバーストライクの注意点
安全対策はしっかり!
2輪バイクよりも操縦安定性が良く、安全な乗り物とされているリバーストライクですが、何度も書いているように密閉空間内で移動できる乗り物ではありません。「規格は4輪、体感は2輪」です。ヘルメットやグローブ、できれば脊椎パッド入りの革ジャンにブーツなど、安全対策はしっかりとしましょう。半袖短パンなどはもってのほかです。「安全だけどひっくり返らないわけでは無い」ことを肝に銘じておきましょう。ちなみに高速道路での最高速度は80㎞(バイクは100㎞)です。
練習はしっかり!
オートマチックの車両も数多く販売されていて、オートマ限定の免許で乗れることもあり、安易な乗り物だと考える方もおられます。しかし実際はコーナーで外に振られるアンダーステアの出やすい構造です。また、このタイプの車両自体が多く走っているわけではありません。自分はもちろん対向車や後続車なども「車幅」を見誤ることがあります。他車との接触や狭い道などでの脱輪など、車両感覚を養ってから乗車する必要があります。レンタルなどで操作の基本を磨いてから乗りましょう。
リバーストライクで風を切ってみよう!
前二輪の3輪車。新感覚の乗り物「リバーストライク」。まだまだ知名度は低いですが、逆に街なかで注目を浴びることは必至です。これからさまざまなメーカーからさまざまな価格帯のものが販売されていくことが予想されます。操作も楽で安全性も高いリバーストライク。先駆けとして風を切って走ってみませんか。
三輪バイクに興味を持たれた方はこちらもチェック!
操作・安全性に優れたリバーストライク。しかし国内で購入できる三輪バイクはまだまだたくさんあります。「暮らし~の」のサイト内にはそれらを紹介した記事がございます。購入や維持費のヒントが得られると思いますので、是非そちらもごらん下さい。
三輪バイクが熱い!人気を集める新ジャンルの特長とおすすめ車種を紹介!
ヤマハNIKENに代表される3つのタイヤで走るバイクである三輪バイクが今、話題です。さまざまな三輪バイクの種類や特徴と気になる免許制度、各メ...