三輪バイクが注目の的
一時のトライクブームはひと段落したものの、ヤマハがトリシティに引き続きNIKENを発売するなど、これまでと異なる構造を持った三輪バイクが登場し、新たなムーブメントを生み出しつつあります。三輪バイクを取り巻く状況や気になる免許制度、国内外のおすすめ三輪バイクなど、三輪バイクに関するすべてのことをいっきにご紹介します。
三輪バイクの種類とは?
バイクが前輪と後輪の2つのタイヤを持つ二輪車であるのに対し、三輪バイクは文字通り3つのホイール、3つのタイヤを有するバイクです。
タイヤの配置は左右対称な二等辺三角形であることが定義されており、いわゆるサイドカーはこの定義にあてはまらないため、カテゴリーからははずされます。三輪バイクはタイヤの配置や構造により以下の形式に分けられます。
トライク
フロント一輪、リヤ二輪で後輪駆動の構造を持つ三輪バイクです。両側の車輪の幅が460ミリ以上あるものは法律上クルマとみなされるため、普通免許でヘルメットなしで運転することができます。
大型バイクをベースに作られたものも多く、積載量や安定性の面でメリットがあります。乗り味はやや自動車に近く、開放感はあるものの、車体を傾けてコーナーを駆け抜ける感覚などは味わうことができません。
リバーストライク
フロント二輪、リヤ一輪タイプの三輪バイクがこれにあたり、カンナムスパイダーが特に有名です。通常のトライクと同様に、車体をリーンさせずにハンドルを切ってコーナーを曲がるので、どちらかと言えばスノーモービルの操作感に似たものになります。
大型バイク並みのボディに自動車のような安定感があるため、バイクの爽快感は味わいたいけど、転倒が心配という人にもおすすめです。
リーニングトライク
ヤマハのNIKENに代表されるような、車体を傾けてコーナーを曲がるタイプの三輪バイクです。通常のトライクに比べ軽快にコーナーを曲がることができる上、車体をリーンさせるバイク独特の感覚を楽しむことができます。
タイプも小型のものから大型のものまで幅広く、エンジンなど車両のスペックもスポーツバイク並みのものも多く存在します。安定したコーナーリングでスポーツライディングを堪能できるバイクとして注目されています。
三輪バイクに関する法規
道路運送車両法
車両の検査や登録に関する法律である道路運送車両法では、三輪バイクは”側車”いわゆるサイドカー付きのバイクの扱いになります。そのため250cc以下であれば車検は不要、250cc超の場合は通常のバイクと同様に車検が必要となります。バイクの扱いになるので必然的に車庫証明も不要で、保険も基本的にバイクの金額が適用されます。
道路交通法
道路交通法では、当初は三輪バイクをすべて自動車とみなしていました。そのため普通自動車免許で運転でき、ヘルメットの装着も不要でした。
ところが三輪バイクの事故の増加などを受け、左右対称の三輪で、タイヤの幅が460ミリ未満、なおかつ車体を傾けて旋回するものに関しては「特定二輪車」の扱いとなりました。そのためこれに該当するピアッジオMP3やヤマハNIKENなどは、運転に自動二輪免許が必要で、ヘルメットの装着も義務化されました。
おすすめ三輪バイク①
ヤマハ NIKEN
ヤマハが販売する大型三輪バイクであるNIKENは、前輪が二輪、後輪が一輪のいわゆるリバーストライクに分類されます。三輪バイクでありながら、コーナーリング時にライダーが体を傾けてカーブを走行する構造のリーニング・マルチ・ホイール(LMW)を代表するモデルです。
同じヤマハのLMWであるトリシティと異なり、MT-09ベースの3気筒ハイパワーエンジンにマニュアルトランスミッションを搭載し、本気で走りを楽しめるスポーツバイクです。
スペック
カテゴリー:リーニングリバーストライク
必要免許:大型自動二輪免許
ヘルメット着用義務:有り
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列3気筒
排気量:845cc
最高出力:115ps/10,000rpm
最大トルク:8.9kgf・m/8,500rpm
全長×全高×全幅:2,150mm×1,250mm×885mm
シート高:885mm
車両重量:263kg
おすすめ三輪バイク②
ヤマハ トリシティ125
ヤマハが前二輪、後一輪の三輪構造を持ちながら、コーナーリング時にはバイクのようにリーンして回るリーニング・マルチ・ホイール(LMW)として、NIKENに先立って投入したのがトリシティです。
小型自動二輪免許が必要ではあるものの、シフトチェンジの必要のないスクータータイプで、転倒のリスクも少ない構造の三輪バイクとすることで、ヤマハのバイクならではの軽快なコーナーリングも楽しむことができます。
スペック
カテゴリー:リーニングリバーストライク
必要免許:小型自動二輪免許
ヘルメット着用義務:有り
エンジン形式:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
排気量:124cc
最高出力:12ps/7,500rpm
最大トルク:1.2kgf・m/7,250rpm
全長×全高×全幅:1,980mm×1,210mm×750mm
シート高:765mm
車両重量:159kg
おすすめ三輪バイク③
カンナムスパイダーF3
カナダのスノーモービルメーカーとしても有名なBRPが販売するトライクがカンナムスパイダーです。同社が”ロードスター”と謳っている通り、大型のボディにハイスペックなエンジンを搭載し、トラクションコントロールやABSなどの自動車並みの安全システムも装備しています。
ノーヘル、普通免許で運転可能で、乗用車感覚でバイクの開放感を味わえる乗り物として高い人気を獲得しています。
スペック
カテゴリー:リバーストライク
必要免許:普通自動車免許
ヘルメット着用義務:なし
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列3気筒
排気量:1,330cc
最高出力:ps/rpm
最大トルク:kgf・m/rpm
全長×全高×全幅:2,642mm×1,099mm×1,497mm
シート高:675mm
車両重量:386kg
おすすめ三輪バイク④
ピアッジオ MP3 250
イタリアのバイクメーカーとして有名なアプリリアの親会社でもあるピアッジオの三輪バイクがMP3です。
フロント二輪、リヤ一輪のリバースリーニングトライクの構造を持ち、スクーターを操る感覚でライディングを楽しむことができます。フロント二輪がもたらすコーナーリング時の独特の安定感が、見た目以上にハイレベルなスポーツ走行を可能にしてくれます。
スペック
カテゴリー:リーニングリバーストライク
必要免許:普通自動二輪免許
ヘルメット着用義務:有り
エンジン形式:液冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
排気量:244cc
最高出力:16.5kW/8,250rpm
最大トルク:21N・m/6,750rpm
全長×全高×全幅:2,130mm×ーmm×745mm
シート高:780mm
車両重量:204kg
おすすめ三輪バイク⑤
ジレラ フォコ500ie
同じイタリアの三輪バイクとして比較されるピアッジオMP3より大型の500ccの排気量がもたらす、余裕のエンジンパワーで走りを楽しめるのがフォコ500ieです。
フロント二輪、リヤ一輪の3点支持構造がもたらす安定感で、オフロードでも不安を感じずに走行できます。イタリアンデザインらしい個性的なルックスも他にはないオリジナリティとして人気です。
スペック
カテゴリー:リバースリーニングトライク
必要免許:大型自動二輪免許
ヘルメット着用義務:有り
エンジン形式:液冷4ストローク単気筒
排気量:493cc
最高出力:39.4ps/7,250rpm
最大トルク:4.74kgf・m/5,250rpm
全長×全高×全幅:2,210mm×ーmm×790mm
シート高:780mm
車両重量:253kg
おすすめ三輪バイク⑥
ハーレーダビッドソン トライグライドウルトラ
ハーレーダビッドソンの大型三輪バイクが、トライグライドウルトラです。普通免許で乗車可能でヘルメットも不要なため、乗用車感覚でバイクならではの開放感を満喫することができます。ツアラータイプのボディにトライクならではの安定感を生かし、タンデムでの長距離旅行などにもおすすめです。
スペック
カテゴリー:トライク
必要免許:普通自動車免許
ヘルメット着用義務:なし
エンジン形式:空冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒
排気量:1,745cc
最高出力:ー
最大トルク:151N・m/3,250rpm
全長×全高×全幅:2,670mm×ーmm×ーmm
シート高:735mm
車両重量:564kg
おすすめ三輪バイク⑦
ゴードン マジェスティ250トライク
トライクの製造・開発からカスタムまでを手がけるゴードンが、ヤマハのスクーターであるマジェスティをベースに作ったトライクです。ビッグスクーターの快適性はそのままに、リヤ二輪のトライク構造の安定感で、クルマ感覚でライディングを楽しむことができます。
スペック
カテゴリー:トライク
必要免許:普通自動車免許
ヘルメット着用義務:なし
エンジン形式:水冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
排気量:249cc
最高出力:19ps/6,500rpm
最大トルク:2.2kgf・m/5,000rpm
全長×全高×全幅:2,450mm×1,200mm×1,470mm
シート高:ーmm
車両重量:ーkg
おすすめ三輪バイク⑧
ホンダ ジャイロX
ホンダが1982年から販売している歴史ある三輪バイクがジャイロXです。フロント一輪、リヤ一軸二輪の構造を採用し、スクーターの軽快さに三輪の安定感をプラスした”スリーター”という造語を生み出しました。荷物積載時の安定感の高さから、レジャーだけでなくビジネスバイクとしても活躍しています。
スペック
カテゴリー:リーニングトライク
必要免許:原付免許
ヘルメット着用義務:有り
エンジン形式:水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒
排気量:49cc
最高出力:4.6ps/7,500rpm
最大トルク:0.45kgf・m/7,000rpm
全長×全高×全幅:1,700mm×1,405mm×665mm
シート高:735mm
車両重量:113kg
おすすめ三輪バイク⑨
カンナム ライカー
カナダの三輪バイクメーカーとして人気のカンナムが、フロント二輪、リヤ一輪のリバーストライク構造で2019年春に発売予定の新型トライクがライカーです。
オートマチックトランスミッションの採用と三輪構造がもたらす安定感で、AT普通免許のみの所有者でも気軽にバイクの爽快感を味わえるのが魅力です。ロータックス製のハイパワーエンジンを搭載し、フロント二輪ならではのドリフト走行など、スポーツライクなライディングも楽しむことができます。
スペック
カテゴリー:リバーストライク
必要免許:普通自動車免許(AT限定も可)
ヘルメット着用義務:なし
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列3気筒
排気量:900cc
最高出力:57.5kW/7,100rpm
最大トルク:7.75kgf・m/6,300rpm
全長×全高×全幅:2,352mm×1,062mm×1,509mm
シート高:597mm
車両重量:280kg
おすすめ三輪バイク⑩
ホンダ ネオウィング
ホンダが2015年の東京モーターショーに参考出品した三輪バイクがネオウィングです。前二輪、後一輪の構造で、独自のアクチュエーター制御技術によって、二輪のバイクのように車体をリーンさせコーナーリングする大型二輪のような走行フィールを実現しています。
エンジンは水平対向4気筒とモーターのハイブリッド構造で、大型バイクを凌ぐハイスペックなパワーを生み出します。今のところコンセプトモデルですが、ライバルのヤマハも三輪バイクに力を入れており、ホンダブランドの三輪バイクの発売が期待されます。
三輪バイクの注意点
転倒しないわけではない
三輪バイクが安定しているといっても、決して転倒しないというわけではありません。過度なスピードでコーナーに進入したりすると、バランスを失って重大な事故につながりかねませんので、カーブではしっかりと減速することが大切です。
コーナーリングの注意
車体を傾けずに曲がるタイプでは、ハンドルを切って旋回するその独特の操作感に戸惑うはずです。小回りも効きづらい傾向にありますので、十分な慣れが必要です。またリーニングタイプの場合も、通常のバイクのコーナーリング感覚とは若干異なります。はじめのうちは特に気をつけてカーブを曲がることが大切です。
ヘルメットをかぶりましょう
車体をリーンさせないタイプの大型トライクは、ヘルメットの装着義務はありません。でもライダーの体がむき出しで、ベルトで固定されていないことには変わりなく、転倒した場合やバランスを崩して落車した場合、深刻なダメージをこうむる場合があります。
着用義務の有無にかかわらず、三輪バイクに乗車するときはヘルメットの着用をおすすめします。
三輪バイクで走りだそう
話題の三輪バイクについてご紹介してきました。三輪バイクの魅力はバイクならではの開放感と、三輪ならではの安定感にあり、各メーカーがそのメリットを生かすこだわりのモデルを展開しています。今、注目の三輪バイクにあなたも一度チャレンジしてみませんか。