インゲンとは
原産地が中央アメリカのインゲンは、食物繊維やミネラル分が多く含まれた栄養価の高い野菜( 果菜)です。日本へは17世紀に中国の禅僧の隠元(いんげん)によって伝えられました。日本で主に栽培されるインゲンは、実が大きくなる前にサヤごと食べる「サヤインゲン」ですが、完熟した豆を食べる品種(インゲン)もあります。豆を食べる品種での完熟した豆はインゲン豆と呼ばれ、豆菓子や煮豆などに加工されることが多いですが、海外ではスープ料理にも使われます。
インゲンのいろいろな品種
この記事ではサヤインゲンを対象にして解説していきますが、サヤインゲンにもいろいろの品種があります。まず、つるあり種とつるなし種があります。つるなし種は種まきから収穫まで50~60日と短かく栽培しやすいです。また、以前はスジがある品種が主でしたが品種改良が進み現在ではほとんどがスジなし品種になっています。インゲンのサヤの形については、断面が丸い「丸さや」と平べったい「平さや」などがあります。
三度豆
インゲンは温暖な気候を好み寒さには弱いですが、4月末頃に種まきをして花が咲いたら次の種まきをするようにすれば連続して収穫できます。1年に3回も収穫できるので、関西ではインゲンのことを「三度豆」とも呼んでいます。
インゲンを栽培する畑の準備
インゲンを地植えする場合の畑の準備について説明します。直まきの場合は種まきの2週間以上前に、ポットまきの場合は育てた苗を定植する2週間以上前に苦土石灰を1平方メートル当たり2握り/約100gを撒いて、30cm程度の深さまでよく耕します。1週間前には牛糞などの堆肥を1平方メートル当たり約3kgと化成肥料3握り(約150g)を撒いてよく耕しておきます。
つるありインゲンの畝立てと種まき
畝立て
インゲンの畝立ては水はけを良くするため、高め(20cm~25cm)にして、畝幅は2列植えの場合は100cm程度にします。マルチはしなくてもよいですが、インゲンは寒さに弱いため防寒対策として張った方がベターです。
種まき
2列植えで列間30cm、株間30cmとして株の位置を中心にして直径7cm程度の穴をマルチにあけます。そこに3cmの深さのくぼみをを作り、3~4粒の種を点まきにして2cmほど土をかぶせます。種まきが終わったら水やりをします。水はけが悪い場合は水をやりすぎると種が腐ることがありますので注意してください。種まきの時期は遅霜の心配がなくなってからということで、4月下旬から5月初旬が良いでしょう。
つるありインゲンの栽培管理
間引き・つるの管理
つるありインゲンはつるが長く伸びるため支柱が必要となりますが長期間収穫できて収量はつるなしインゲンより多くなります。種まき後発芽して本葉が2枚になったら間引きして1か所2本立ちにします。発芽しない場所や生育の悪い株があれば間引きした株を補充しておきましょう。本葉が4枚まで増えるとつるが伸び始めますので、1か所に1本の支柱を立てるか、四隅に支柱を立てて上部と下部に横に支柱を通して固定し、キュウリ用のネットを張ります。支柱は2m程度の長さのものを使用します。
追肥
花が咲き始めたら1回目の追肥をします。化成肥料を1平方mあたり1握り(30~40g)株の周りにバラ撒き、鍬などで土と軽く混ぜます。以降は2週間に1回程度の追肥を行います。2回目の追肥は収穫を始める頃になります。
摘芯とつるの誘引
つるが支柱の先まで達したら摘芯します。それ以上高くなると収穫作業がしにくくなります。また、日常的につるを誘引する必要はありませんが、つるの絡み合いがひどい場合には、日光の当たり方がアンバランスになりますので、つるの配置が均等になるように誘引します。
つるありインゲンの収穫
つるありインゲンは種まきから収穫まで65~70日で、収穫が始まると1カ月間くらい続きます。花が咲いてから2週間程度して、実のふくらみが見えてきたら収穫です。収穫は枝を痛めないように気を付けながら、ハサミで切り取るか、左手でつるを持って右手で実を引っ張って収穫します。収穫時期が遅れるとさやがかたくなり、株に負担を与えますので、早めの時期の収穫をおすすめします。
つるなしインゲンの畝立てと種まき
畝立て
つるありインゲンの場合と同様に高め(20~25cm)の畝にします。畝幅は75cm程度にします。マルチは張らなくても栽培できますが、発育初期の地温を高める効果が期待されるため表面に黒マルチを張ることをおすすめします。
種まき
種まきは2列植えで列間は25cm、株間を25~30cmとします。つるありインゲンの場合と同じくマルチに穴をあけ、3cmの深さのくぼみを作って3~4粒の種をまき、2cmほど土をかぶせます。そのあとで軽く水やりをします。種まきの時期は4月下旬から5月初旬が良いでしょう。
つるなしインゲンの栽培管理
間引き・防虫ネット
種まき後発芽して本葉が2枚になったら間引きして1か所2本立ちにします。発芽しない場所には間引きした株を補充しておきます。つるが伸びませんので支柱は必要ありませんが、地面への倒伏を防ぐ対策は必要です。区域の4隅に短い支柱を立てて区域の外側をひもで囲うと良いでしょう。また、花が咲き始める時期からは防虫ネットのトンネルをしてカメムシなどの害虫を防除しましょう。
追肥
花が咲き始めたら追肥をします。化成肥料を1平方mあたり1握り(30~40g)株の周りにバラ撒き、鍬などで土と軽く混ぜます。以降2週間に1回程度同じように追肥します。
つるなしインゲンの収穫
つるなし種は種まきから収穫まで50~60日ほどです。収穫が始まると一斉に実が付きます。具体的には花が咲き終わってから10日ほどで、豆のさやが10~15cmほどになったら収穫です。清潔なハサミで、インゲンの付け根から切り取りましょう。早めに収穫しましょう。
プランターでのインゲン栽培
プランター栽培は「つるなし」で
インゲンは、畑がなくても、家に広い庭がなくても、またマンション住まいのベランダでも、プランターを用意すれば作れます。これからプランターでのインゲンの育て方を解説します。インゲンには、「つるあり」と「つるなし」がありますが、プランターでインゲンを育てるには、背丈が低く、短期間で収穫できる「つるなし」インゲンが向いています。
プランター栽培で準備すべきもの
プランターでつるなしインゲンを栽培するためにまず準備しなければならないものは、プランター、培養土、鉢底石、種でしょう。
プランター
プランターのサイズ、規格にはいろいろとありますが、インゲン栽培には長方形で幅が72cm、高さ26cm、奥行き39.5cm、容量48L程度、或いはそれ以上のサイズの大型で深型のプランターが良いでしょう。サイズが小さいと土が乾燥しやすく、また根がプランターの中できゅうくつになり、生育が悪くなります。このプランターで25~30cm間隔で3か所に2株づつ栽培できます。
土(培養土)
プランターでは限られた量ですのでできるだけ質の良い土を用意しましょう。赤玉土などの土、腐葉土、堆肥、ピートモス、元肥や苦土石灰などがあらかじめブレンドされた野菜用の培養土が市販されていますのでこれを使いましょう。
鉢底石
鉢底石はプランターの底に敷き詰める石のことで、水はけをよくするために用いられます。また、プランターの底から空気を取り入れる役割も持っています。鉢底石がないと鉢の底が密閉状態になり、排水性や通気性がなくなるため根腐れが起きやすくなります。石以外の軽い材質を使って同じような機能を持たせたものも売られています。さらに最近では鉢底石と同様の機能を持たせた特殊な「すのこ」を付属品としてつけたプランターも売られています。これらの製品を利用するのもよいでしょう。
栽培するインゲンの種類
つるなしインゲンの種は多くの種類が出ていますが、この中にはプランターでの栽培に適しているものもあります。その中からいくつか紹介しておきます。さやが平たい品種で「つるなしジャンビーノ」と「つるなしモロッコ」、さやが丸い品種で「サクサク王子」と「初みどり2号」です。「つるなしジャンビーノ」と「初みどり2号」は種まきから53~55日で非常に早く収穫できる特徴があります。「つるなしモロッコ」は作りやすく、収量が多いという特徴があり、「サクサク王子」はサクサクとした食感に特徴があります。
つるなしインゲンの育て方
種まき
準備したプランターの底に鉢底石を約2cm並べます。次いで培養土をプランターの深さの8分目くらいまでいれます。表面を平らにならして25~30cm程度の間隔をあけて3か所に直径7cm程度、深さ25cmのくぼみを作ります。1か所に4粒ほどの種を間を空けてまき、上に1~2cm土をかけて軽く手で押さえます。最後に水をかけます。発芽するまでは土を乾かさないようにします。
間引きと土寄せ
発芽して本葉が2~3枚出てきた時点で間引きします。生育の悪いもの、葉の形の悪いものを間引きして1か所に2本ずつ残すようにします。残した2本の苗の周りに土を寄せて、しっかり、まっすぐ立つように軽く押さえておきます。
追肥
花が咲き始めたら、追肥をします。プランターの縁及び株間に浅い溝を作り、化成肥料を適量まきます。肥料の上に土をかぶせます。化成肥料の代わりに市販の液肥を使用してもよいですが、希釈倍率を正しく守ってください。2週間に1回の割合いで与えますが、葉が茂りすぎている場合は肥料の与えすぎですので、中止するか1週間遅らせます。
収獲
さやの長さが10~15cmになり、さやの中の実が少しふくらみかけたら、収穫時期です。やわらかいうちにインゲンのつけ根からハサミで切り取ります。取り遅れると実が育ちすぎて固くなります。
インゲン栽培の病虫害
害虫
インゲンの主な害虫はアブラムシ、ハダニ、カメムシなどです。アブラムシは株の栄養を奪うほかに、ウイルス性のモザイク病を媒介します。アブラムシを見つけたら野菜用の殺虫剤で早めに駆除します。ハダニにはカメムシ類にも効果があるマラソン乳剤を散布して駆除します。なお、つるなしインゲンの場合は6月ごろからカメムシが発生しやすいので、花が咲始める時期からは防虫ネットで防ぐようにしましょう。
病気
インゲンの病気の主なものは、カビが原因で起きるさび病と炭そ病、ウイルス性のモザイク病です。カビが原因の病気は低温・多湿の条件が続くと出やすく、また連作した場合も出やすいといわれています。水はけのよい畝作りと同じ場所では3年以上空けて栽培することに心がけましょう。ウイルス性の病気はアブラムシによって媒介されることが多く、一度発生すると薬剤での治療ができませんので、感染した株は根元から引き抜いて早期に処分します。
インゲンの種まきで発芽しない場合
インゲンの種まきでは1箇所に4粒ほど種をまき、2株を残しますので発芽しないものが多少あっても、通常は間引きしたもので補充ができます。ただし何らかの問題があってほとんど全滅状態になった場合には、種を撒き直す必要があります。インゲンは7日間くらいで発芽しますので、8,9日経過してもほとんど発芽しないような場合は、植え付けの適期を逃さないように早めに植えなおした方が良いでしょう。その場合は発芽しない原因を考えて、対策をしてから撒き直しましょう。
発芽しない主な原因
まず、種まきの後の水やりが少なすぎる場合が考えられます。ただし、排水の悪い畑の場合やプランターの場合は水のやりすぎが発芽しない原因にもなりますので要注意です。次は、種まきの後にかぶせる土の厚さです。2cm程度が適当で、厚すぎても薄すぎてもよくありません。古い種を使用した場合や種まき時の土温度が低すぎたり高すぎる場合なども原因となります。インゲンの発芽適温は約23~25℃とされています。
おわりに
ここまでインゲンの育て方についてお読みいただき有り難うございます。いかがでしたか?
インゲンのゴマ和えはおいしいですね。炒め物や天ぷらなど、レシピが豊富な野菜です。畑のない方もプランターで栽培できます。春になったらインゲン栽培にTRYしてみては?
インゲンの育て方が気になる方はこちらをチェック!
インゲンの育て方を解説した記事がいろいろあります。読み比べてみるとお互いに補完しあって、より良い育て方ができると思います。参考になりそうな記事を2ツ紹介します。

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