はじめに
ナイロンとポリエステルの伸びや強度の違いは
綿や絹などの天然素材ではなく人が石油などから作り出すものが化学繊維。レーヨンやナイロン・ポリエステルといった名前を見たり耳にしたりしたこともあるでしょう。
その中で特に見分けが付きにくいといわれているのがナイロンとポリエステルのふたつ。衣服を購入しようとして素材確認をすると出てくるこれらの繊維の違いや特徴。
伸び・強度など繊維が持つ特徴を事前に知っていると、似ている製品のどちらを選んだ方が長持ちするのかすぐわかります。
ナイロン素材について
知っていそうであまりよく知らないナイロンという繊維について。ナイロンができた背景や名前の由来・別名からご覧いただきます。
ナイロンは世界初の合成繊維
今ではいろいろな種類の合成繊維(化学繊維)がありますが、その中で世界ではじめて作られたのがナイロンです。
利用目的は靴下や女性用のストッキングの強度をあげるため。それまで絹などの高級素材が使われており価格は高く生地強度は低かったためすぐ破れて多くの人が悩んでいたものがナイロンの発明により化学繊維への関心が一気に高まる理由となりました。
ナイロンの正式名称はポリアミド
素材いろいろ物語、ナイロン!
— PREPPY (@Mark20130309) March 29, 2015
ナイロンは石炭、水、空気でできてポリアミドと欧州では呼ぶ。
語源は伝線=ランしないストッキングからノーラン。それがナイロンへ。
1940年には4日間で500万足のストッキング完売。
面白い逸話ですね… pic.twitter.com/XhH8wtWyAQ
ナイロンと書かれていたり目にしたりしますが、この名前は実は登録商標だとご存知でしたか?
科学的な名前はポリアミド。ナイロンの製品化の方が先ですでに有名になっていたことから、その後次々と開発されるポリアミド製品の総称としてナイロンが一般的な名称として使われるようになりました。
ナイロンの名前の由来は伝染しないという意味
ナイロンの名前の由来で1番有力なのがno run(ノーランがなまってナイロン)というもの。これはストッキングが伝線しないという意味と伝えられているのですが、現在のナイロン製ストッキングもしっかり伝線するのはもうご存知ですね。
これは繊維の編み方の問題で今のナイロン繊維が粗悪品などではないので、伝線よりも破れにくいといったイメージにとらえておくと良いでしょう。
ポリエステル素材について
ナイロンとは違い綿との合繊としてよく目にすることが多いポリエステルという合成繊維。最近人気の衣類にも使われています。ポリエステルを素材とするその人気の衣類とはなんでしょうか?
ポリエステルは綿を目指した化学繊維
ポリエステル素材のシャツブラウス♪
— スタッフちゃん/神戸の気楽な洋服屋 (@Staff_citron) October 30, 2019
今の季節ならアウター代わりに羽織っても良さそうです( ^ω^ )#シャツ #ブラウス #シンプル #ドロップショルダー #ゆったり pic.twitter.com/RT296l3vt1
ナイロンが靴下のために発明された繊維であるのと同様に、ポリエステルもある目的で開発されました。
それは綿の代用品。綿花は絹と比べると育てるのも植物で生産量もあるので高価なものではありませんが、洗濯すると乾きにくいという欠点がありました。その綿のデメリットを補う素材となったのがポリエステルです。
ポリエステルはフリースの素材としても有名
綿のほかよくみるポリエステル製品といえばフリースがあります。軽くて暖かく安価で手に入るフリースは今では冬を代表する被服製品といえます。今の冬の快適な暖かさはポリエステルの開発があったからともいえるでしょう。
ナイロンもポリエステルもデュポン社の製品
世界中にいろいろな化学繊維を開発・製造販売している会社がありますがナイロンもポリエステルもどちらもアメリカデュポン社の製品です。
ポリエステルを開発したのはイギリスのJ.R.ウィンフィールドとJ.T.ディクソンですが、戦後に商品化して販売したところあっという間に広まったものです。
ナイロンとポリエステルの違い比較1.性質
繊維ができた背景や名前・意外と知らない人気生地という基本情報を見てきたところで、さっそくふたつの化繊の違い比較を見ていきましょう。まずはそれぞれの糸としての性質の特徴から。
ナイロンの性質の特徴
ナイロンは元々絹を目指して作られた化繊なので、とてもなめらかな肌触りを持っています。シワになりにくく弾力性があるという性質も持っています。また耐熱性はナイロンもポリエステルも両方強さを持っています。
ポリエステルの性質の特徴
ポリエステルの優れた性質といえば速乾性があげられます。元々ほとんど吸水性がない素材なので、水を含むことがありません。
しかし吸水性素材と合わせることにより吸水性を持ったポリエステル製品もありますので、衣類などでは一概にポリエステルは水を吸わないとはいいきれないのが実状です。
ナイロンとポリエステルの違い比較2.見分け方
それぞれの化学繊維の比較には目でわかる見分け方も重要になってきます。素材タグがついていないような古着や小物類ではそれが何でできているかを判別するのは見た目に頼るのが一番。誰でもすぐわかるおすすめの見分け方を紹介しましょう。
見分け方は燃やすのが一番
繊維は似た物が多いですが、見分け方はとても簡単でどれも同じです。方法は燃やしてみること。繊維類の萌え方はそれぞれ特徴があり①炎があがるか②溶けるか③煙の様子や色④においで簡単にわかります。
燃やした時にわかるナイロンの見分け方
ナイロンを燃やそうと炎を近づけるとまず溶けます。そのあとその溶けたものに炎が近づいている時のみ燃えますが離すとすぐにその火は消えてしまいます。
ナイロンは燃えているようで単体では燃えないという見分け方ができます。燃やしたときのにおいは化学繊維独特の臭さがあります。
燃やした時にわかるポリエステルの見分け方
燃え方はポリエステルもナイロンと同様で単体で燃えるということはなく他から火を近づけられたときだけ炎が出る繊維。違いが大きく現れるのは燃やしたときのにおいと煙で、臭いは芳香臭。ナイロンとはまったく違います。また燃やしたときに黒い煙が立ち上るのもわかりやすい見分け方。
ナイロンとポリエステルの違い比較3.伸び
衣類やバッグなどの小物類に加工されたとき大切になってくるのが繊維の伸び具合です。着心地や使いやすさに大きく関わってくる繊維の伸びの観点からふたつの糸を見比べてみましょう。
ナイロンの伸びの性質
製品化されたものは編地によって伸び方に違いがでてきますが、糸そのものの伸びが良いのはナイロンの方がすぐれています。ニットのような編地ではなく平織りで布にした場合、それだけで伸びるのはナイロン製になります。
ポリエステルの伸びの性質
一方まったくといっていいほど伸びないのがポリエステルの特徴。
衣服にした場合ある程度伸びた方が着心地がよく感じる人も多いでしょう。逆にバッグなどにした場合はあまり伸びてしまうと型崩れの原因となりあまり好まれません。伸びに対する違いは製品化される際に結構重要なポイントです。
ナイロンとポリエステルの違い比較4.強度
アウトドアウェアなどにもよくつかわれるふたつの化繊。ハードな場面で活躍するにはその強度も気になります。強度とひとくちにいっても可燃性やひっぱる力に対する耐性、破れやすいか否かなどいろんな強さがあります。
ナイロンの強度の性質
ナイロンの登場において日本では「戦後女性と靴下が強くなった」という言葉が生まれたほどそれまでの天然素材と比較して強度の高さを誇るのがこの素材の特徴的な性質です。特に摩擦や耐アルカリ性に優れていて衣類にして着用においても洗剤での痛み具合でもナイロンの強度の良さを実感できるでしょう。
ポリエステルの強度の性質
伸びやすく摩擦に強いナイロンと比べて、生地にしたときにしっかりとしていて変形しづらくショックに強いのがポリエステルの強度の性質です。また温度や熱に対する耐性がナイロンよりあるので、熱強度はポリエステルに軍配があがります。
より強度が高いのはナイロン製品
強度の違いには一長一短もありますが、トータルして引っ張っても伸びて切れにくいので繊維の強さでいえばナイロンの方が優れているといわれています。
繊維で強くても製品にしてそれがその物に向いているのかというのはまた別の話です。それぞれの強度の違いを把握することが大切でしょう。
ナイロンとポリエステルの違い比較5.製品
ナイロンとポリエステルは耐水性や耐湿性に優れているので雨の日のアウターなどに使われることが多いですが、そのほかにもいろいろなものとして製品化されています。
優れた人気繊維なのでその数は数え切れないほどですが、ここでは特に目立って多く活用されている製品をあげてみましょう。
ナイロンがよく使われる製品
ナイロンといえばロープを思い出す人も多いでしょう。適度に伸びて雨などの水分をほとんど吸わない性質をもつ材質が好まれる理由です。この吸水性の低さがポイントとなりよく作られるナイロン製品がバッグ。
外側からの濡れや中に入れておいた液体が漏れたときにもバッグの反対側には染み出してこないでしょう。
ポリエステルがよく使われる製品
一方ポリエステルはそれ単体で使われることがなく他の材質と合わせて糸として加工され衣服などに多く使われます。一見綿のシャツのように見えて実はポリエステル〇〇%と書いてあるものがほとんどでしょう。
ナイロンとポリエステルの違い比較6.メリット
ナイロンのメリット
ナイロンは吸水性・吸湿性がポリエステルよりも優れているため、肌に直接触れるような製品にしたときに大変肌触りが良いです。ナイロンがストッキングに使われることからもわかるでしょう。
ポリエステルのメリット
製品に加工したときに伸び縮みが少ないので形が変わりにくい。カビや虫の害も受けにくいのでお手入れが楽。コシのある素材なので形を整えやすい。洗濯しても型くずれがしづらいとこちらもメリットがたくさんあります。
ナイロンとポリエステルの違い比較7.デメリット
ナイロンのデメリット
化学繊維だといってもよいところばかりとは限らずデメリットも存在します。ナイロンは太陽光に弱くて変色や劣化してもろくなりやすいというネガティブな面が。
合成繊維全体のデメリットなので両者に共通するのですが静電気が起こりやすく冬場の持ち物・衣類としたときにパチパチ感が不快に感じることも多いでしょう。
そしてこれは繊維としての価格ですがナイロンはポリエステルに比べて高価であることから製品も値段が高くなってしまうのも大きなデメリットといえるでしょう。
ポリエステルのデメリット
ナイロンと同様に静電気が起こりやすいのがデメリットなポリエステル。フリースの静電気の起こりやすさを考えるとイメージがつきやすいでしょう。また毛玉になったり臭いがつきやすいということもあまりよろしくない点。
まとめ
ナイロンとポリエステルの特徴を把握して活用しよう
よく似た化学合成繊維であるナイロンとポリエステルの違いや強度・伸びの比較。すぐわかる見分け方や代表的製品と紹介してきましたがいかがでしたか?
アウトドアやDIYシーンでもよく見かけるポピュラーな繊維ですのでナイロンとポリエステルについてその性質や特徴が理解でき、製品を買う時の参考にしていただけたなら幸いです。
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