はじめに
薬師岳は、3,000m級の山が連なる北アルプスの中でも比較的登りやすい山のひとつです。そのため、夏の登山シーズン最盛期になると、さまざまなレベルの登山者が毎年数多く訪れます。特に、薬師岳に最も近い登山口である折立には、薬師岳登山者の大部分が集中します。しかし、人気のわりに折立に関する情報はそれほど多くはありません。そこで今回は、折立へのアクセス方法と周辺情報を中心に詳しくまとめてみました。折立からの薬師岳登山をお考えの方は、ぜひ一度ご覧ください。(当記事は2019年9月30日時点の情報をもとに作成されております。)
折立へ車でアクセス
富山方面からアクセス
北陸自動車道の立山ICから県道6号線へ入り、約20km走ると有峰林道小見線の亀谷料金所に到着します。そこから、有峰林道をさらに約23km南下したところが折立となります。所要時間の目安は、立山IC~亀谷料金所間が約30分、亀谷料金所~折立間が約40分です。亀谷料金所にて、有峰林道の通行料1,900円(普通車)が必要です。なお、有峰林道小見線の開設期間は例年6月上旬から11月中旬までとなっています。また、開設期間中も夜間(20:00~6:00)は通行できませんのでご注意ください。
松本・名古屋方面からアクセス
松本方面から見座へ
国道158号線から471号線を経由して、見座へと向かいます。(*2019年9月30日現在、災害により有峰林道東谷線は通行できません。したがいまして、見座は通過して東海北陸自動車道または国道41号線を迂回ルートに利用し、富山方面からアクセスしてください。)
名古屋方面から見座へ
東海北陸自動車道の飛騨清見ICから県道90号線と75号線を経由して、国道471号線に入り見座方面へ向かいます。飛騨清見IC~見座間の距離は約55km、所要時間は約1時間となります。(*2019年9月30日現在、災害により有峰林道東谷線は通行できません。したがいまして、飛騨清見ICでは降りずに立山ICまで行くか、または飛騨清見ICから県道90号線を通り国道41号線を経由して、富山方面からアクセスしてください。)
見座から折立へ
見座から飛越高原天の夕顔の道へと入ります。そこから約30km北上すると、有峰林道東谷線の東谷料金所に到着します。東谷料金所からさらに約23km走行したところに折立があります。所要時間は、見座~東谷料金所間・東谷料金所~折立間ともに約1時間と見ておくとよいでしょう。東谷料金所では、有峰林道の通行料1,900円(普通車)が必要です。有峰林道東谷線の開設期間も小見線と同様に、例年6月上旬から11月中旬までとなっています。開設期間中も夜間(20:00~6:00)は通行禁止です。(*2019年9月30日現在、災害により有峰林道東谷線は通行止となっており、このルートは利用できません。)
折立へ電車・バスでアクセス
電鉄富山駅から直通バスが運行
富山地方鉄道の電鉄富山駅から折立まで、期間限定で直通バスが運行しています。7月中旬から8月中旬までは毎日運行しており、行きが5~6時台の2便と帰りが11~12時台の2便です。8月下旬の毎日と9月上旬から10月中旬までの金・土・日・祝は、行きが6時台の1便と帰りが12時台の1便になります。所要時間は約2時間で、運賃は3,500円となっています。乗車は予約制で、乗車日の1ヶ月前から予約可能です。予約受付・問い合わせ先は富山地鉄乗車券センター(TEL:076-442-8122)で、受付時間は9:00~17:00です。当日空席があれば、予約なしでも乗車できます。
有峰口駅から路線バスに乗り継ぐルート
富山地方鉄道の電鉄富山駅から立山線で有峰口駅まで行き、そこから路線バスの有峰線で折立まで行くこともできます。電鉄富山~有峰口間の所要時間は約35分、運賃は1,020円(特急料金は110円)です。有峰口~折立間の所要時間は約55分、運賃は2,450円となります。路線バスは、7月中旬から9月下旬まで運行しています。
折立へタクシーでアクセス
電鉄富山駅から快適に登山口へ
電鉄富山駅から折立までをタクシーで行くと、所要時間約80分で到着します。また、料金は普通車で計19,100円(運賃17,200円+通行料1,900円)となります。配車手配・予約・問い合わせ先は、富山地鉄タクシー(TEL:0120-21-4200)などがあります。
有峰口駅から登山口へは貸切料金で
有峰口駅から折立までは、貸切90分のコースがあります。料金は普通車で計12,400円(運賃10,500円+通行料1,900円)です。配車手配・予約・問い合わせ先は、協和タクシー(TEL:076-463-3939)などがあります。
下山時の配車手配は太郎小屋からが必須
折立登山口周辺は、携帯電話が使用できず公衆電話もないので、帰りの配車手配は必ず太郎小屋から行ってください。連絡すれば、折立で待機していてもらえます。また、有峰林道は夜間通行止め(20:00~6:00)になるのでご注意ください。
折立ヒュッテに関する情報
折立ヒュッテとは?
折立ヒュッテは、薬師岳の登山口である折立に建てられた山小屋です。折立バス停を降りてすぐのところにあります。宿泊はできず、休憩所としての利用のみになります。営業期間は7月中旬から8月中旬までです。利用料金は無料ですが、公衆電話・売店・食堂・入浴施設はありません。
折立ヒュッテ周辺情報
折立ヒュッテ周辺には、約100台分の無料駐車場があります。混雑時には仮設の駐車場も開設され、約300台が停められるようになります。また、公衆トイレと自動販売機もありますが、公衆電話はなく携帯電話も使用できません。ヒュッテにはキャンプ場が併設されていますが、宿泊・入浴施設はありません。さらに、食料品店や飲食店なども存在しません。
折立キャンプ場に関する情報
テントを張って宿泊可能
折立ヒュッテに併設されているこちらのキャンプ場は、テント約50張分の広さがあり、車を横付けできるスペースもあります。また、炊事場があり簡単な調理ができるほか、自動販売機もあるので飲料水の確保にご利用ください。
早朝出発拠点の最有力候補
折立キャンプ場は薬師岳の登山口に位置しており、早朝から登山を開始できるというメリットがあります。登山予定日当日に折立へアクセスするとなると、有峰林道が通行時間規制を行っているため、どんなに早くても午前7時前後からの登山開始になってしまいます。そのため、より早い時間に薬師岳山頂付近の山小屋へ到着したい方や、折立を拠点とした日帰り登山を行いたい方にとっては、折立キャンプ場での宿泊が最善の選択となりえるでしょう。
折立から最寄りの宿泊施設「有峰ハウス」
折立までは車で10分
有峰ハウスは、折立から約5km離れたところにある県の宿泊施設です。もともとは、有峰青少年の家として運営されていましたが、現在は森林文化活動拠点として利用されている施設になります。周辺には遊歩道が5か所整備されていて、ブナ林散策や薬師岳・有峰湖などの展望を楽しむことができます。
ゆったり寝泊まりしたい方におすすめ
有峰ハウスでは食事や入浴もできるので、キャンプ場でテントを張れない方やより快適な夜を過ごしたい方は、こちらの施設がおすすめです。営業期間は6月上旬から11月中旬までで、事前に宿泊予約することも可能です。バスでアクセスする場合は、有峰記念館前で下車すれば徒歩1分で到着します。駐車場もあるので車で行くことも可能です。
薬師岳の見どころ
薬師岳の基礎知識
薬師岳は、北アルプス立山連峰の中でも剣岳・立山とともに最もポピュラーな山の1つで、日本百名山にも選ばれています。標高は2,926mで、東斜面の巨大な4つのカール(北カール・金作谷カール・中央カール・南陵カール)が薬師岳圏谷群として国の天然記念物に指定されています。
薬師岳の魅力
山頂付近からは、北アルプスの山々が一望できるほか、条件がそろえば雲海や満点の星空に富山の夜景など、美しい風景が楽しめます。また、登山道一帯ではさまざまな高山植物が観察でき、運がよければハイマツ群の間から雷鳥も見つけられるでしょう。
折立からの薬師岳登山ルート
登頂ルートは1泊2日が基本
折立からの薬師岳登山ルートは比較的難易度も低いので、初心者の方でも十分に登頂できます。ただし、このルートは標高差1,850m・歩行距離約20.1kmで、標準コースタイムが12時間40分とかなり長い道のりになっているので、ある程度体力が必要です。そして、例えば折立を早朝4時に出発したとしても、日帰りで山頂までのルートを往復するとなると時間的にかなり厳しくなるので、太郎平小屋か薬師岳山荘で1泊するのが基本となります。
日帰りするなら太郎平小屋までが無難
折立を拠点に日帰りで薬師岳登山を楽しみたい方は、太郎平小屋までの往復ルートが基準となります。登山口から太郎平小屋までの標準コースタイムは、休憩時間を含めると約5時間です。これを単純に2倍しても、約10時間は必要となりますが、折立を早朝に出発すれば余裕をもって日帰り登山が満喫できます。
太郎平小屋
標高2,330m、折立登山口から徒歩約5時間のところに位置する山小屋です。薬師岳が一望できるほか、周囲には高山植物のお花畑が広がっています。営業期間はGWと6月上旬から10月下旬までとなります。収容人数は150名で、食事と宿泊が可能でトイレと水場もあります。携帯電話は、auとdocomoのみ通話可能です。予約・問い合わせ先は、五十嶋商事有限会社(TEL:076-482-1917)となります。
薬師岳山荘
標高2,701m、折立登山口から徒歩約7時間のところに位置する山小屋です。ここから薬師岳山頂までは約40分となります。東側は雲ノ平・奥穂高岳・槍ヶ岳など、西側は富山平野・日本海を一望できます。営業期間は6月第2土曜日と7月上旬から10月中旬までです。食事と宿泊が可能でトイレもありますが、水場はないので有料の飲料水を購入する必要があります。携帯電話は、auとdocomoのみ通話可能です。予約・問い合わせ先は、自宅事務所(TEL:076-451-9222)または山荘直通(TEL:090-8253-2523)となります。
折立から行く登山後の温泉おすすめ3選!
温泉のおすすめ①
癒やしの湯宿 クレヨンハウス
立山山麓にあるこちらの温泉は、ナトリウム炭酸水素塩泉の「美人の湯」として知られています。24時間入浴可能な大浴場では、アロマテラピーと癒やしの音楽により旅の疲れを一気に吹き飛ばせます。日帰り入浴も可能です。
店舗の基本情報
【住所】〒930-1455 富山県富山市本宮4-23
【連絡先】076-482-1515
【アクセス】立山駅より車で3分(送迎可)
温泉のおすすめ②
里の湯 雷鳥
外観は古びた建物の温泉ですが、内部はきれいで清潔感があります。肌がすべすべになるとうわさの立山山麓温泉で、ゆったりと浸かれる広いお風呂が特徴的です。日帰り入浴にも対応しています。
店舗の基本情報
【住所】〒930-1454 富山県富山市原11-3
【連絡先】076-482-1733
【アクセス】立山駅より車で4分
温泉のおすすめ③
ペンション ホワイトベル
こちらのペンション内には、岩風呂と桧風呂の露天風呂が特徴の天然温泉があります。自然のぬくもりが、ささやかな安らぎを与えてくれます。日帰り入浴には対応していません。
店舗の基本情報
【住所】〒930-1454 富山県富山市原56
【連絡先】076-481-1016
【アクセス】立山駅より車で5分(送迎可)
まとめ
折立へのアクセスは、有峰林道の通行規制もあり想像以上に大変です。また、折立周辺も宿泊施設などが充実しているわけではなく、水や食糧も手軽に調達できません。そのため、事前にしっかりと計画を立てて入念に準備することが大切です。薬師岳への登山も、時間に余裕をもって行動することで、不慮の事故や遭難を防止できます。みなさまにとって、この記事が登山後の充実感や楽しい思い出を残す手助けになれば幸いです。
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