冬タイヤの歴史
スタッドレスタイヤとは冬用タイヤの種類のひとつです。かつて、冬用のタイヤと言えばスノータイヤという種類としてタイヤメーカーから発売されていました。その後、1970年代に入りスノータイヤにスタッド(鋲)を打ち込んだスパイクタイヤが急速に普及し、スパイクタイヤがスノータイヤの代名詞となりました。ところが、スパイクタイヤは圧雪路や氷上では非常に効果があるのですが、雪のないアスファルトや冬以外でのスパイクタイヤ走行がアスファルトを削り取るため、粉塵などの環境破壊として徐々に社会問題になりました。
スタッドレスタイヤの誕生
スパイクタイヤがアスファルトを削り取る影響は、交通量の多い降雪都市では粉塵公害として悪い風評となりました。そんな中、1980年代になりミシュラン社がスパイクを打たないタイヤ、つまり鋲(スタッド)のないタイヤ=スタッドレスタイヤを日本に持ち込み、それが一気に人気となったのです。こうして、冬用タイヤといえばスタッドレスタイヤが主流となりスタッドレスタイヤは性能と評価をどんどん上げ、今に至るまでタイヤメーカー各社は競い合うようにスタッドレスタイヤの性能をコスパが高くなるよう開発していったのです。
スタッドレスタイヤの構造
このように一気に冬用タイヤの人気となったスタッドレスタイヤですが、一体どのような構造になっているのでしょうか?スタッドレスタイヤのトレッド面には、ギザギザのようなパターン溝があります。スタッドレスタイヤが圧雪路で雪を踏み固めようとする時、雪がこの溝に入り込んでパターン状の雪柱を作り出します。その後接地しているタイヤが地面から離れるときにパターン溝にできた雪柱が掻き出され、その時に駆動力が生まれるため雪上や氷上でも車が滑ることなく走ることができるのです。
おすすめ冬タイヤのメーカー別特色①
スタッドレスタイヤは、国内外合わせて10社以上のメーカーから出ています。スタッドレスタイヤの性能をメーカー別に比較すると大雑把ではありますが、大きく4種類の性能に分けられます。この4種類に分けた代表的な性能をメーカー別に言うならば、まず、ブリヂストンとヨコハマタイヤは「吸水系」、ダンロップ、グッドイヤー、トーヨータイヤ、ナンカンタイヤは「撥水系」、そして、ファルケンは「密着系」となります。
おすすめ冬タイヤのメーカー別特色②
さらにミシュランタイヤとピレリの欧州系は、最後の4種類目である「高速安定性重視系」に分けられます。このように各社ともに性能特色は違いますが、それぞれが自社の強みを活かして開発し力を入れている人気ブランドを中心に、毎冬のように性能をブラッシュアップさせることでコスパを高めているのです。さて、ここでは、そんな特色あるメーカーを代表的なブランドとともに順番にご紹介していきます。
メーカー別おすすめ冬タイヤ①ブリヂストン
まずはじめに紹介するのは日本を代表する人気メーカー、ブリヂストンです。ブリヂストンのスタッドレスタイヤと言えば種類で分けるなら吸水系なのですが、特に凍結路面での性能に定評があり北海道や東北で人気でした。ブリヂストンのスタッドレスタイヤと言えば今では人気のあるメーカーとなっていますが、作り始めの頃は他メーカーと比較して性能で劣っておりとても苦労した下積み時代でした。スタッドレスが浸透し始めた当初のブリヂストンは、「ホロニック」というブランド名で凍結路面に強いタイヤとして大々的に売り出されました。
ブリザック
ところが、実際に比較すると、言うほど性能が良くなく特に氷上での性能は他メーカーよりも1歩も2歩も劣っていると言われていました。そんな反省を踏まえ、ブリヂストンはその後、氷上性能をとことん追求した「ブリザック」というブランド商品を開発、今度は氷上路面でNo.1の人気を得るようになり見事大成功を収めたのです。こうして、ブランド力をあげたブリザックは、コスパは決して高いとは言えませんが、スタッドレスタイヤと言えばブリザックと言われるくらい確立された人気ブランドになったのです。
メーカー別おすすめ冬タイヤ②ヨコハマタイヤ
ヨコハマタイヤは、はじめ「ガーデックス」というブランド商品を作り、売り出しました。ヨコハマタイヤもブリヂストン同様、種類で言えば「吸水系」と呼ばれるスタッドレスタイヤでした。でもヨコハマタイヤがブリヂストンと比較して違うのは、トレッド面を丸くして氷上での横滑りを極力防ぐことに成功したことです。こうしてヨコハマタイヤは「ガーデックス」というスタッドレスブランドに吸水系だけに留まらず「横滑りしない」付加価値も付け、コスパと人気を高めたのです。
アイスガード
ガーデックスは登場以来、毎冬ごとにバージョンアップを繰り返し氷上性能を高め、最終的にはアイスガードというブランドとして生まれ変わりました。こうして、アイスガードはブリザックと比較しても引けを取らない氷上性能を得ただけでなく、ドライ路面でもしっかりグリップして走ることができるスタッドレスタイヤとして認知されていったのでした。アイスガードは、ブリザックに引けを取らない人気ブランドにもかかわらず比較的安価で手に入れることができ、そういう意味ではコスパの良い製品と言えるでしょう。
メーカー別おすすめ冬タイヤ③住友ゴム
住友ゴムは、80年代後半にグラスピックというブランドで、いわゆるスノータイヤを改良したスタッドレスタイヤを開発しました。グラスピックは、ギザギザディンプルと呼ばれるギザギザ面を作ることで、タイヤ自体の給水効果と氷上から氷をひっかき出す効果で氷上でのグリップを確保しようとしていました。その後ワイパーのようなパターンで氷を引っ掻き出すように改善するなどのバージョンアップを繰り返しました。
ウィンターマックス
住友ゴムは、スタッドレスタイヤの開発コンセプトを氷上のひっかきではなくコンパウンドの表面のみが軟化するようなコンパウンド成分の調整を行いました。こうして、住友ゴムは密着による摩擦で氷上のグリップを得るスタッドレスタイヤを開発したのです。その後、アイスピックというブランドはウインターマックスというブランド名に変更され、コスパ性能とともに冬用タイヤ市場での人気を高めていったのです。
メーカー別おすすめ冬タイヤ④トーヨータイヤ
トーヨータイヤは、スタッドレスタイヤのコンパウンドにくるみの殻を混入させてひっかき性能を得ようとしました。くるみの殻は、氷よりも硬くアスファルトよりも柔らかいためアスファルトを傷つけることなく氷上の氷だけを引っ掛けることができます。また、くるみの殻は植物なので氷上路面に散らばっても自然に還ることができるため環境にやさしい種類のタイヤとして評価されたのです。
ウインタートランパス
トーヨータイヤが2009年に発売したブランド、ウインタートランパスは吸水性をさらに高めるためにコンパウンド成分に竹炭を入れるなどして冬のドライ路面での性能を高めました。こうして、ウインタートランパスは、ドライ路面でのタイヤ性能評価も高めることで、冬になり雪は降るけど積守ることがあまりない地域でとてもコスパの高いスタッドレスタイヤとして人気を得たのです。
メーカー別おすすめ冬タイヤ⑤ファルケン
ファルケンは、もともとオーツタイヤからダンロップファルケンになった、言わば住友ゴムから派生してできたメーカーです。しかし、ファルケンはスノータイヤの終焉期からスタッドレスタイヤ出始めの時期にかけていち早く開発を始めており、キャラメルパターンの目の粗い種類のタイヤを特徴としていました。そんなファルケンのスタッドレスタイヤは冬の圧雪されたスノー駆動力に優れたタイヤとして評価を得たのです。
エスピア
ファルケンのスタッドレスタイヤのブランドはエスピアと言います。エスピアは、もともと多孔質構造の軽石や鶏卵の殻など、環境に優しい素材を用いてひっかきと吸水の両面からの効果を狙ったコンセプトを持っていました。しかし、比較的効果が出なかったのか最新のエスピアでは住友ゴムのように吸水とひっかきではなく、大きな接地面積で氷上に密着する、いわゆる「密着系」にシフトしたのです。
メーカー別おすすめ冬タイヤ⑥グッドイヤー
グッドイヤーのスタッドレスタイヤは、日本の代表的冬用タイヤメーカーであるブリヂストンやヨコハマタイヤとは違い、いわゆる密着系と呼ばれています。日本のメーカーでは、住友ゴムがどちらかと言えば密着系であり、他メーカーとは違う種類の言わば独自のトレッドパターンを用いて性能をアピールしていました。
アイスナビ
そんなグッドイヤーのスタッドレスタイヤは、アイスナビというブランドで開発されました。アイスナビは、独自のトレッドパターンを左右対称にデザインしているので、偏摩耗時にはローテーションすることができるのです。そうすることで、タイヤを効率よく無駄なく使い切ることができるのでスタッドレスタイヤとしての寿命は他メーカーのタイヤよりも比較的長く使えるためコスパの高い種類のタイヤとしてブランドを確立できたのです。
メーカー別おすすめ冬タイヤ⑦ミシュラン
ミシュランは、独自に開発したコンパウンドに「Mチップ」と呼ばれる表面再生ゴムを用いることにより、氷面の水膜を除去することで密着度を上げています。こうした特殊な技術により従来のタイヤよりも5%近く制動距離を縮めることに成功したのです。また、ミシュランはフランスメーカーらしく、冬道での高速安定性も重視したスタッドレスタイヤ作りをしていることでも有名です。
エックスアイス
ミシュランのスタッドレスタイヤは、エックスアイスというブランド名で開発されています。エックスアイスは、なんと溝が50%磨耗した状態でも新品とさほど変わらない性能を発揮できるのも特徴です。またミシュランのタイヤはスタッドレスのみならず回転方向が一定方向に決められているので、溝が摩耗しても性能を維持できているとも言えます。ミシュランのスタッドレスタイヤは、寿命が比較的長いタイヤが多く、こちらもコスパの高い種類のタイヤを作るメーカーと言われています。
メーカー別おすすめ冬タイヤ⑧ピレリ
ピレリのスタッドレスタイヤは、主に欧州向け、つまり欧州車向けに作られています。そのため日本のタイヤメーカーに比べて冬の圧雪路での性能は日本メーカーに劣る部分が少なからずあると言われていました。しかし、欧州メーカーらしいところは、スタッドレスでありながら若干のスノー路面や乾燥路での冬道の高速安定性には非常に優れており定評を得ているのです。
ウインター・アイス・アシンメトリコ
ピレリのスタッドレスタイヤのブランドは、ウインター・アイス・アシンメトリコという名前である。先述したようにウインター・アイス・アシンメトリコは、乾燥路での高速走行を非常に重視して開発されており、普段は非スノー路面の走行ばかりだが、ウインタースポーツのためにたまに積雪地域に行く人にとってはとても適したスタッドレスなのです。
メーカー別おすすめ冬タイヤ⑨コンチネンタル
日本は、北の北海道と南の沖縄と比較すると平均気温が格段に違います。言い換えると、雪が降る地域、つまりスノータイヤやスタッドレスタイヤが必要な地域と言っても全体の半分にも満たないのです。また、スノータイヤが必要な地域の中でも、雪は降るけどすぐに融ける地域やそのまま根雪となる地域、さらには凍結が日常化している地域など地域によって環境が環境が全然違います。コンチネンタルのスタッドレスタイヤは、そんな日本の冬の多彩な環境に万遍なく対応できる冬用タイヤを開発していると言われています。
ノースコンタクト
コンチネンタルのスタッドレスタイヤの代表的なブランドは、ノースコンタクトと言うブランドです。このノースコンタクトは、コンパウンドに耐寒性ソフトジェルを均一にミックスさせて低温耐性を比較的高めた製品に仕上げています。そのため日本国内のいろんな種類の環境がある中でも、特に凍結路面を一番カバーできる性能を高めて開発しているのです。
メーカー別おすすめ冬タイヤ⑩ナンカン
ナンカンは、台湾のメーカーで最も歴史のあるタイヤメーカーです。しかし、冬でもほとんど雪の降らない台湾のメーカーは、スノータイヤの生産経験がほとんどなく台湾国内では性能を高める実地検査ができませんでした。そのため、ナンカンタイヤと言わても、スタッドレスタイヤはおろかスノータイヤとしての基本性能にさえ不安を抱かせるイメージのメーカーでした。ところが、ナンカンは実際の冬の日本各地の路面を徹底的に研究と実験を重ね、凍結路面を入念に想定した冬タイヤ作りを実行したのです。
ESSN-1
こうして、ナンカンのスタッドレスタイヤは性能をどんどん向上させ、日本のタイヤメーカーと比較しても遜色ない性能評価を得るまでになったのです。ナンカンのスタッドレスタイヤは、国内メーカーのスタッドレスタイヤと比べるととても安価で購入できるため、今となってはととてもコスパの高いおすすめスノータイヤでありスタッドレスタイヤと言えるのです。
おすすめ冬タイヤ性能評価
スタッドレスタイヤの性能評価と一言で言っても、氷上か雪上か、ドライ、ウェットなのか、いろんな条件があります。ですので、それぞれの条件において一番性能のよいスタッドレスタイヤ(メーカー)はどれなのか?ということだけをここでは挙げることにします。
氷上性能評価の高いタイヤメーカー
氷上性能を重視するなら、種類で言うと一般的には「吸水系」が良いと言われています。冒頭にも述べたように吸水系の性能を一番アピールしているのはブリジストンとヨコハマタイヤです。日本の冬は降雪があっても少し溶け始めた後にグンと気温が下がり路面が凍結してしまう、つまり氷上の走行が多くなりがちです。そんな日本の凍結路面を前提としたスタッドレスタイヤの開発ができるのはやはり、日本を代表するブリヂストンやヨコハマタイヤだったのです。
雪上性能評価の高いタイヤメーカー
氷上性能が高いのは吸水系という種類でしたが、雪上性能が高いのは撥水系と言う種類に強いメーカーです。つまり、撥水系を重視して開発されたスタッドレスタイヤメーカーは、グッドイヤーやダンロップ、トーヨータイヤと言われており、これらのメーカーのスタッドレスタイヤは氷上性能よりも雪上性能に優れていると言われています。
ドライ・ウェット性能評価の高いタイヤメーカー
スタッドレスタイヤと言うと、どうしても氷上や雪上の性能で評価しがちですが、日本の冬の路面は地域にもよりますが、結構ドライやウェット路面で走る時間や期間も多いものです。そんな日本の路面でのスタッドレスタイヤを評価する場合は、どうしてもドライ、あるいはウェットな路面での評価も必要です。そうなると、ドライヤウェット路面に強いメーカーと言うと、欧州系のミシュランやピレリに一日の長があるのです。
まとめ
さて、国内外合わせて10メーカーのスタッドレスタイヤを紹介しましたが、いかがでしたか?スタッドレスタイヤは、1980年代に登場して以来今では当時の品質とは比べ物にならないほどの進化を遂げました。また、各タイヤメーカーは、用途別・特定性能別に多くの種類のスタッドレスタイヤを開発してきました。スタッドレスタイヤは、もともとは海外メーカーが送り込んできたことで人気が高まりましたが、日本のメーカーはそれに改良を重ね、コスパと性能を高めたのです。日本のスタッドレスタイヤ市場では、目的を絞って探すことにより自分の車に合ったコスパの高いスタッドレスタイヤが見つかるはずなのです。
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