まず、八ヶ岳について知ろう
八ヶ岳とは、特定の一つの山の名前ではなく、長野県と山梨県にまたがって連なるいくつもの山々の総称なのです。八ヶ岳の中の最高峰は標高2899mの赤岳であることは間違いないのですが、八ヶ岳はどの山からどの山までの範囲を指すのかは諸説があります。夏沢峠から北を北八ヶ岳、南を南八ヶ岳と呼ぶことが多いのですが、北八ヶ岳には蓼科山を含めるかどうかで説が分かれます。また、南八ヶ岳だけを八ヶ岳とする説もあるのです。
これらの山々は八ヶ岳の山
八ヶ岳の範囲には諸説がありますが、標高2700m以上の山々、硫黄岳(2,760 m)、横岳(2,829 m)、阿弥陀岳(2,805 m)、中岳 (2,700 m)、赤岳(2,899 m - 最高峰)、権現岳(2,715 m)は八ヶ岳に含まれることは確かです。これらはいずれも南八ヶ岳の山々です。
権現岳は八ヶ岳のどこにある
八ヶ岳のマップを見て(下のリンク参照ください)権現岳がどこにあるのか調べてみましょう。権現岳は、南八ヶ岳の北から南へ硫黄岳、横岳、赤岳と続く主脈稜線上の南端にある山です。すぐ西側に西ギボシ、東ギボシの双峰が、近くには西岳、編笠山、三ツ頭がそびえています。また、権現岳は八ヶ岳の南端の山ですので、権現岳から15kmほど南方はもう平野です。そこにはJR中央本線、JR小海線、中央自動車道が走っています。さらに南方には南アルプスがあります。東方には清里高原があり、JR小海線が 野辺山の方へ伸びています。
権現岳への日帰り登山ルートは3つ
権現岳へ日帰りが可能なルートは3つありますが、それぞれ登山口は異なります。権現岳への登山口としてよく使われているのは観音平登山口(上の写真)と天女山登山口です。観音平登山口は権現岳の南方にあり、小淵沢方面から北上してアクセスできます。編笠山を経由する登山ルートです。天女山登山口は権現岳の東南部にあり、JR小海線の甲斐大泉駅方面から北上してアクセスできます。 前三ツ頭と三ツ頭を通るルートです。
もう一つの登山口は三ツ頭登山口
もう一つの3ツ目の登山口は三ツ頭登山口(甲斐小泉口とも言う)です。この登山口は利用する人が少なく駐車場も5台分程度のスペースしかありません。登山口の場所は観音平登山口よりもさらに南(南東)に位置し、JR小海線の甲斐小泉駅方面から北上して八ヶ岳横断道路と合流したところにあります。登山マップ上では(下のリンク参照ください)この自動車道のT字合流点に「三ツ頭登山口」と記され、ここから北方へ歩道が伸びています。その先は八ヶ岳横断歩道を横切って三ツ頭へと続いています。その先に権現岳があるのです。
権現岳日帰り登山について
これから、権現岳(上の写真)への日帰りルートをご紹介します。いずれのルートも楽な日帰りコースではありません。紹介するルートは、登山技術としては初心者レベルでも可能ですが全くの初心者では難しいルートや箇所も含まれています。また、どのルートも往復の歩行距離は10kmを越えて、往復の所要時間は7~8時間以上とかなりの体力が必要となります。初心者が権現岳日帰り登山を計画する場合は体力をつけて、安全なルートを選ぶようにしましょう。それでは「観音平ルート」からご紹介していきます。
権現岳日帰り登山:観音平ルート
観音平ルートでは編笠山を経由するルートと編笠山をトラバースするルートがあります。今回は急な登りを避けてトラバースするルートを紹介します。また青年小屋(上の写真:後ろはギボシと権現岳)から権現岳の間には鎖場やザレ場のトラバースなど全くの初心者には難しい箇所もあります。タイトルにある「初心者も楽しめるルート」という意味では三ツ頭を経由する天女山ルートのほうがおすすめです。登山マップは下のリンクを参照ください。
観音平から青年小屋
スタート地点の観音平登山口からは森の中の山道を進みます。50分ほど登ると見通しの良い「雲海」という休憩に適した場所につきます。晴れていれば富士山が望めます。さらに40分ほどで「押出川」に到達します。編笠山へ向かう道と直接青年小屋へ向かう道の分岐点です。編笠山への道は傾斜の急な登りが続き、青年小屋への道は編笠山の東斜面をトラバースします。今回はこのトラバースするルートを採ります。コケやキノコ類もみられる原生林の道を70~80分進むと居酒屋の提灯がかかった青年小屋につきます。
青年小屋から権現岳
青年小屋からは樹林帯の道を進みますが、30分後には展望が開けた「のろし場」(上の写真)という所につきます。ここからはこれから登る「西ギボシ」の岩壁が目の前に見えます。ザレ場のゆるい登りから始まりますが、頂上に近づくと岩場になって傾斜もきつくなり鎖場も現れます。鎖場を越えると再びザレ場になり西ギボシ頂上はすぐです。
東ギボシはトラバース
続いて東ギボシの東面をトラバースするように回り込み、鎖場を超えて稜線に出ます。稜線を進むと先に権現岳の尖がった頂上が見えてきます。頂上の手前に50人収容の小さい権現小屋があり、小屋から頂上まで10mほどの岩場急登がありますが足場がしっかりしていますので、注意深く登れば問題はありません。ノロシ場から頂上までは1時間前後です。上の写真は東ギボシ東面のトラバースルートです。東ギボシの先、右側に権現岳山頂が見えます。
権現岳山頂
火砕岩の鋭く尖った権現岳山頂の岩に剣が刺し込まれ、八雷神(やついかずちのかみ)の権現社が祀られています。頂上からの展望では、北方のキレットから天狗尾根の岩峰の先にある赤岳やその西側にそびえる阿弥陀岳の姿が最高です。
復路は往路と同じルート
権現岳からの帰路はいろんな選択が可能です。同じ道を戻る,網笠山を通ってもどる、三ツ頭ー天女山コースをとる,甲斐小泉口へ向かう、など。しかし、往路で正味4時間以上、復路でどのルートを通っても正味3時間以上を要します。休憩食事などを含めると8-9時間以上の行程となりますので、まずは無事に日帰り登山を完結させることを考えて、様子のわかった往路と同じルートを戻る事をおすすめします。復路を自由に選択するのは、何回か権現岳に登り経験を積んだ後にしましょう。
権現岳日帰り登山:天女山ルート
天女山駐車場から前三ツ頭
天女山は山頂まで車が入れますが、その駐車場が50台程度の駐車スペースで用意されています。ここが権現岳登山の天女山ルートのスタート地点です。駐車場から天女山を背にして三ツ頭への緩やかな登山道を歩き始めます。15分ほどで「天の河原」につきます。テーブルやいすが置かれていて眺望の良い場所です。八ヶ岳横断歩道への分岐点がありますがこれを左側に見て三ツ頭方面へ進むと50分ほどで標高1,800mを示す石柱が立った場所につきます。
前三ツ頭
緩やかだった登山道はやがて傾斜がきつくなり、ロープが付けられた場所も出てきます。やがて稜線上の開けた場所に出ます。ここが前三ツ頭ですが、はっきりしたピークはなく、単なる稜線上の開けたガレ場です。1800mの石柱から2時間程度です。
前三ツ頭から権現岳
前三ツ頭からは樹林帯のなだらかな登り道を進みます。三ツ頭の南面を巻くように登ると三ツ頭の山頂に出ます。山頂の少し手前で左側から登ってくる甲斐小泉口ルートの登山道と合流します。三ツ頭山頂からは稜線上を下り、やがて平坦になって登り返しとなります。ザレ場の登山道を進むと小ピークにつきます。小ピークからは権現岳直下の急登になります。鎖場が1か所ありますが、危険なことはありません。桧峰神社の祠を過ぎると権現岳山頂はすぐです。前三ツ頭から権現岳頂上まで1時間半前後です。f権現岳山頂の様子は紹介済ですので省略します。
復路
観音平ルートの時と同じ理由で、復路は往路と同じ道をとります。このルートでは往復の歩行距離はおよそ10km、所要時間は休憩など含めるとい9時間程度かかります。上の画像は帰路に三ツ頭から見えた南方の景色(富士山)です。
権現岳日帰り登山:甲斐小泉口ルート
三ツ頭登山口からヘリポート
三ツ頭登山口からは樹林帯の中の長い緩斜面が続きます。途中で八ヶ岳横断歩道を横切り、北上を続けるとやがて「延命水」につきます。登山口から50分前後です。ベンチがおいてあり、風通しもよいので休憩には良いでしょう。延命水からしばらく進むと次第に傾斜が急になります。樹林帯の道で見通しもなく、きつい登り道です。やがて見通しが開けてヘリポートへ到着です。延命水から1時間強かかります。ヘリポートでは南面の眺望が良く、富士山も見えます。上の画像はヘリポートからの雲上の富士山です。
ヘリポートから三ツ頭
ヘリポートから再び樹林帯の道に入ります。しばらく登ってダケカンバが目立ってきて木戸口公園に着きます。ヘリポートから20分程度です。木戸口公園は標高が2,240mの小さな休憩場所ですが特別なものは何もありません。木戸口公園からも樹林帯の尾根道で、しばらく歩くと視界が開けてきて、編笠山から権現岳にかけての稜線が見えてきます。やがて傾斜が急になり、ハイマツが多くなって右方向から前三ツ頭からの登山道(天女山コース)が合流します。ここからは10分ほどで三ツ頭の山頂です。ヘリポートから1時間半程度です。
三ツ頭から権現岳&復路
三ツ頭から権現岳までの様子は天女山コ-スで紹介済ですのでそちらを参照してください。またこのコースでの往路、三ツ頭登山口から権現岳頂上までの正味所要時間は4.5時間程度です。復路に同じルートをとれば、正味2時間半から3時間です。食事、休憩など含めた合計所要時間は9時間前後でしょう。したがってこのルートについても紹介済の2ツのルートと同様に復路は往路と同じルートをとることにします。
権現岳ー赤岳、山小屋1泊の縦走登山
権現岳への単独登山ではなく、八ヶ岳最高峰の赤岳まで縦走したい登山者のために、観音平登山口から権現岳へ登り、キレット、旭岳を経て赤岳まで縦走し、行者小屋経由で美濃戸口へ降りる山小屋1泊の縦走ルートを紹介します。2日間の時間配分、山小屋の設備など考慮して、キレット小屋に宿泊するものとしました。なお、このルートは初心者向けとは言えませんので初心者の場合はベテラン登山者と同行する様にしてください。コースマップは下のリンクを参照ください。
キレット小屋営業期間
キレット小屋は7月上旬~10月中旬の期間しか山小屋の営業をしていませんので注意してください。下のHPに情報や、問い合わせ先が載っていますので、確認の上予約しておくとよいでしょう。
権現岳からキレット小屋
観音平登山口から権現岳頂上までは、観音平ルートを参照して下さい。ここでは山小屋の権現小屋近くにある赤岳方面への縦走路と権現岳頂上への分岐点からキレット小屋までの縦走ルートを紹介します。
縦走路ーゲンジー梯子ーキレット小屋
権現岳からキレット小屋までは標高差275mを下ります。権現岳直下の縦走路の最初にあるのが61段のゲンジー梯子(or源治梯子)とよばれるはしごです。ケンジー梯子を終えてさらに下ったところが権現岳と旭岳の鞍部です。ここから少し登り返したところで旭岳の西面をトラバースです。トラバースを終えて灌木帯を下ればコマクサが群生していて眺望の良い「ツルネ」です。ここから岩の多い道を下ったところがキレットの底部でそこに山小屋、キレット小屋があります。登山口からすでに7時間以上歩いており今日はここで泊まります。
キレット小屋から赤岳
キレット小屋から赤岳頂上までは標高差459mを登ります。山小屋からしばらくは樹林帯の登りですがやがて傾斜がきつくなり、岩稜の登りになります。梯子があったり、50mに及ぶ鎖場のトラバースがあったりする要注意区間です。トラバースが終わると天狗尾根の頭です。しばらく進むと稜線に出て、要注意区間は終わりです。ここからは眺望が開けて難所もなく真教寺尾根分岐、竜頭峰を経て赤岳山頂につきます。ここまでキレット小屋から2時間半程度でしょう。
赤岳から美濃戸口
赤岳山頂で景観を満喫した後は、美濃戸口の最終バス時刻を頭に置き、休憩時間などを調整しながら下ります。まずは赤岳山頂から文三郎尾根を目指します。この尾根を下りきると行者小屋(上の画像)につきます。ここで一服してから南沢を下り美濃戸口まで歩きます。赤岳ー行者小屋は1時間30分、行者小屋ー美濃戸口は1時間40分程度かかります。美濃戸口発JR茅野駅行バスの最終は16:20分ですが、直近の資料を下のサイトで確認してください。
権現岳登山口へのアクセス
観音平登山口へのアクセス
車での観音平登山口へのアクセスは、中央道小淵沢インターで降ります。約10分ないし15分ほどで観音平登山口の駐車場へ到着します。駐車場は無料で50台ほど駐車できます。電車利用の場合はJR中央本線小淵沢駅で降ります。バス便はなくタクシー利用で約15分ほどです。
天女山登山口へのアクセス
車の場合は中央自動車道の長坂ICで降ります。県道32号線、28号線を通り、天女山方面へ約20分ほどで天女山駐車場です。駐車場は無料で30台ほどが駐車可能です。電車の場合はJR小海線の甲斐大泉駅で降ります。タクシー利用で10分ほどで天女山登山口に到着です。
三ツ頭登山口へのアクセス
車の場合は、中央道小淵沢インターで降ります。15分程度で八ヶ岳横断道路(八ヶ岳高原ライン)の小荒間の信号にある三ツ頭登山口につきます。5台程度の駐車スペースがあります。無料です。ここから登山する人は少なく駐車スペースが一杯になることはあまりありません。電車利用の場合はJR 小淵沢駅で下車してタクシー利用で15分程度です。
おわりに
権現岳は半日ほどで簡単に往復できる山ではなくて、どのルートを登っても歩行距離、所要時間ともにたっぷりありますね。皆さんが権現岳登山を計画する場合にこの記事が少しでもお役に役に立てば幸いです。
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