イシナギの種類と生息する海
あまり知られていないようですが、実はこのイシナギには世界の海域で2種類が確認されています。日本でよく見かけるタイプは何か、他の種類はどこにいるのかは気になるところです。
オオクチイシナギ
ちまたで頻繁に流通する種類と言ったら、代名詞的に取り上げられているオオクチイシナギ。その名の通り口が大きく、サイズも180cmを越えるまで巨大化します。日本の四方の近海なら比較的どこでもにいるので、釣りのお目当てとなりがちです。本記事では主にオオクチのほうを取り上げています。
コクチイシナギ
一方でコクチと名が付いたほうのイシナギは、あんまり馴染みがない種類です。主にアメリカのカリフォルニア沖合で釣れる種類で、日本では殆ど生息しないか、まったく存在しないともされるからです。コクチというように口が若干小さい特徴がありますが、体長はオオクチと変わらず巨大化します。
イシナギの生態
普段は水深400mの海にいる
地魚であるとはいえ、水深400mという若干深めの海に生息しています。海底で石がゴロついているような、岩礁地帯を好んで根城にする傾向があります。イシナギは夏から冬にかけての長い期間この水深に留まるので、この時期に釣りをするにはあまり向いていません。
春の産卵期に浅い海に向かう
繁殖をするのは、海が暖かさを増す5~6月の頃。この時期は陸に近くてより温暖な海域での産卵をするために、イシナギの群れが水深150mの地点まで移動して来ています。生息エリアが浅くなることによって、春の時期は大物を求める釣り人が、船からひっきりなしにアタックする光景が見られます。
幼い個体は縞模様
実は幼い頃と成長の後では、見た目にかなり違いがある魚です。生まれてから間もない時には、イシナギの体には横向きの白い帯状模様が出ています。岩場に棲んでいる幼いイシナギの保護色の役割を果たしている模様です。徐々に成長するごとに、この縞模様は消えてしまいます。
イシナギのとんでもない大きさ
大きいイシナギの日本記録
JGFAが発表するイシナギの日本記録は、2017年に釣れたという184cm、101kgという力士級の個体。これが現時点でも世界一大きいサイズと認定されています。釣りなどの団体が主催する大会や漁協などで計測され、写真などの記録がきちんと残ってこそ、公式記録として認定されます。
個人で釣り上げた場合の記録は?
ところが公式に掲載されない記録のほうが、釣り人の話題に上がったりするのがイシナギです。なんと196cmもの個体が、近年に釣れているというのです。その映像や写真もネットで見ることができます。ただ大きいイシナギが釣れても、個人公表だけでは非公式となるので、記録を残すなら注意が必要です。
大きいほど釣りも運搬も料理も大変
世の中大きいことは良いことだと聞きますが、イシナギが大きすぎると困ってしまう面もあります。まず釣り上げるのは大変で、バランスを崩せば命がけ。また運搬についても大変で、船から下ろしたり運ぶことも一苦労。個人で料理する場合、三枚におろすだけでも汗だく状態です。
大物1匹で料理200人分
仮に丸々とした100kgのイシナギが1匹手元にあったら、家族だけで食べるのは無理で、冷蔵庫にも収めることが不可能です。だいたい100kgで鍋200人分と言われているためです。そのため大きいイシナギが釣れたら、大勢の鍋や刺身のパーティーをしたり、魚市場やスーパーなどに売却する手段もあります。
イシナギの別名
別名のモロコはクエと間違える
昔から地域によって別名も存在しているのですが、特にモロコと呼ぶ人もいるのがイシナギです。これは諸々の子という意味なのだとか。気をつけたいのは、同じくモロコと呼ばれることのある高級魚のクエです。クエは見た目もイシナギに似ているので、度々混同してしまうことがあります。
全国の別名
もし漢字で表すならば、いつの頃からか石投と書かれるのが普通です。これは元々イシナギと呼ばれていたところに、石投という漢字が当てられたものと見られます。北陸の富山のほうでは、大魚を意味するオイボ。青森のほうではオヨ、オウヨなどとまるで違う名前も存在しています。
イシナギは高級魚
どうして高級魚?
常に美味しい魚は引っ張りだこですが、イシナギも味わいから高く評価されています。そのため高級料亭、日本料理店や寿司店などでは重宝され、価格もそれなりに釣り上がります。価格は見た目が似たクエほどではないですが、全国的に高級魚として扱われるのが一般的です。
イシナギの価格
あちこちの魚市場のセリで価格が決定しますが、イシナギは流通する数が少ないので取引の価格も高めです。60kgを越える大きい個体は、春なら市場での取引価格も5万円以下ですが、その他の季節では10万円以上の価格まで跳ね上がります。お店に出回れば、輸送費や人件費込みで価格も割増しです。
イシナギは昔から人気の魚だった
縄文人も食べたイシナギ
今のような釣り技法は無かった古代にも、イシナギを何らかの方法で捕獲していたようです。羽根尾遺跡は神奈川を代表する縄文遺跡のひとつですが、ここでイシナギの骨が出土しているのです。水深150mまで人が潜るのは不可能なので、浅瀬に寄ってきた弱ったイシナギを捕獲したのかもしれません。
羽根尾遺跡情報
【所在地】神奈川県小田原市羽根尾(西湘テクノパーク・工業団地内)
【時代】縄文時代前期(5500年前)
江戸時代も人気の魚だった
一気に価格が釣り上がった時代は定かではないですが、食文化が多様化を進めていた江戸時代には、イシナギはすでに料亭の高級魚としての地位を確立していたようです。特に江戸時代には伊豆半島や三浦半島のあたりが、イシナギの産地として知られていました。
イシナギの釣り
春の産卵期の船釣り
ひたすら巨大魚を求めている釣り人にとっては、イシナギが季語になるのが春の季節。産卵を目的として浅い海域までやってくる大きいイシナギに、老いも若きも狙いを定めています。おかっぱりからの釣りは不可能で、各地の釣り船に乗り込んで海上からのアタックが基本です。
船での釣法
揺れる船の上では、代表的な釣り方といえば泳がせ釣りです。これは水深150mでヒットしたイシナギをとことん泳がせて、疲れさせて釣り上げる方法です。体力をすり減らすことでずっしり重たいイシナギも釣り上げやすくなりますが、釣り上げるほうも体力をすり減らしてグッタリするのは確実です。
イシナギのよくあるタックル
耐久性のあるタックルを揃えるのが基本です。イシナギ釣りの専用ロッドは1.7~2m程度の短いタイプで、電動リールを準備、それ以外は個人の趣向にもよります。道糸は150m下のイシナギのいる岩場まで届く、耐久性のあるPE8~10号がおすすめです。ハリはクエ用を使ってみても構いません。
イシナギ泳がせ釣りのタックルの例
【ロッド】パワーファイターゴング、リーディングネライなど
【リール】シーボーグ300J、シマノ電動丸3000Hなど
【道糸】PE8~10号
【仕掛け】幹糸、クレン親子サルカン、オモリ150号、クエ用ハリ
イシナギの毒
厚生労働省で注意を促す魚
絶賛される味わいをもたらす高級魚ですが、実は綺麗なバラはトゲあり的に危険な一面も併せ持っています。一見して料理しても美味しそうなイシナギの肝臓が、とんでもない毒だとして知られているのです。これは食品衛生法でも食用を禁止するほどで、厚生労働省で食べる時に注意を促しています。
肝臓の毒の正体
皮膚や細胞の健全さを保つとして、不可欠なのがビタミンA。実はイシナギが持つ毒の正体は、このビタミンAだというから仰天です。肝臓にはあまりに膨大なビタミンAが蓄積されることで、毒として作用します。食べることで食後からすぐに食中毒を発症し、頭痛や嘔吐に悩まされることになります。
イシナギの捌き方
大きいほどに解体は大仕事
キッチンで高級魚が手に入ったと、小躍りして喜んでばかりもいられません。イシナギは価格もうなぎのぼりな大きいサイズになるほど、解体の苦労があるからです。内蔵を取り出したら、巨大なイシナギの場合、全体のうろこは皮ごと削ぎ落とすのが一般的です。その後は頭を落として三枚におろします。
小骨を削ぐ
お腹の中の血合いも、包丁によって気合いを入れて処置しておきたいポイント。さらに三枚に下ろしたイシナギは、内側に張り付いている小骨も、小さいとは言えないほどに大きい骨が並んでいます。特に刺身として食べるなら、包丁を使って綺麗に削ぎ落とすことが求められます。
イシナギの食べ方①刺身
イシナギの刺身の魅力
縞模様の若魚と育ちきった成魚では、食べる時の味覚も見た目も異なるのがイシナギの刺身。若魚はクセがなくてさっぱりとした味わいで、成魚は脂が乗ってまったりとした食感があります。料理として刺身は手間のかからない食べ方ですが、若魚は鮮度が落ちやすいので早めの食べ方が求められます。
刺身の調理
三枚におろしたイシナギの身は、小さめサイズなら皮が付いた状態でも美味しくいただけます。刺身は薄手か厚手かによって食感も違ってくるので、調理で厚みを工夫しても良さそう。刺身のツマはお好みで大葉やわさびを用意します。調味料では定番の醤油のほか、酢味噌を用意してみるのもおすすめです。
料理の材料
【イシナギ】人数分
【ツマ】大根、大葉、わさび、生姜など
【調味料】醤油、酢味噌
イシナギの食べ方②鍋
イシナギ鍋の魅力
凍える日に温まるような食べ方を求めているなら、イシナギは鍋として食べるのが一番です。鍋料理の食べ方としては味噌仕立てが一般的ですが、カレー鍋やキムチ鍋などにアレンジもできます。材料を用意すると一気に作れるので調理も刺身並みに簡単で、大勢で高級魚を食べるときにも欠かせません。
イシナギ鍋(味噌仕立て)の調理
どんな魚の鍋でも味噌仕立てがぴったりしますが、イシナギでも同じです。鍋はかつおだしとお好みの味噌を加えて、味を整えておきます。鍋には不可欠となる白菜や長ネギ、しいたけや豆腐などを切りそろえて一緒に煮込んだら、イシナギのダシも出て味わいはまろやか。食べると温まること間違いなしです。
料理の材料
【イシナギ】人数分
【材料】水、しいたけ、長ねぎ、はくさい、豆腐など
【調味料】味噌、かつおだし
イシナギの食べ方③フライ
イシナギのフライの魅力
白銀メシに合わせたオカズを望むのならば、じゅわっとフライにする食べ方もあります。身がぷりっとしたイシナギのフライは、ソースをかければアジフライとは違う高級感に満たされています。ポテトフライや唐揚げと一緒に一口サイズに一緒に調理すれば、酒の肴としての役割も完璧です。
フライの調理
うろこを取ったイシナギは、アジフライと同じようにして調理を進められて、特別な知識は必要としません。小麦粉、たまご、パン粉の順番に付けて、中火できつね色になるまで揚げるのみです。ソースはとんかつソースで構いませんが、玉ねぎのタルタルソースを使うことで美味しくなります。
料理の材料
【イシナギ】人数分
【材料】小麦粉、卵、パン粉、サラダ油
【調味料】とんかつソース、タルタルソース
イシナギの食べ方④煮付け
イシナギの煮付けの魅力
一昔前と変わらぬ食べ方を希望するなら、イシナギの煮付けが注目どころ。煮付けてみれば脂身の多いイシナギはぼそぼそとせず、切り身を大きく出来るのでしっかりとした食べごたえもアリです。調理は調味料さえ揃えて極めて短時間でできるので、刺身と一緒に作って食べるのがおすすめです。
煮付けの調理
手元の鍋などに、必要とする調味料をすべて混ぜあわせて加熱しておきます。お好みなサイズのイシナギを煮ますが、これは大きいお頭の部分や、三枚におろした真ん中の骨の部分も使えます。生姜を淹れることで、味が引き締まって美味しさを増します。落し蓋を使って弱火で15分も煮たら出来上がりです。
料理の材料
【イシナギ】人数分
【材料】水、しょうが
【調味料】醤油、みりん、酒
イシナギの食べ方⑤焼き物
イシナギの焼き物の魅力
たぶん縄文人もこの食べ方をしたのではないかと、想像ができるのが塩焼きです。自宅のグリルを使っても良し、七輪やBBQコンロを使用する炭火焼きなら、お頭焼きを一層美味しく食べることも叶います。素材そのものの味を確認できる意味で価値があり、刺身と共に優先してみたい調理法です。
焼き物の調理
切り身には焼く前に塩をすり込むことで、イシナギの自然な味を引き出します。炭火でもガスでの調理でも、その火加減が一番に大切なところ。弱火から中火の加減でじわじわ焼き上げます。お頭焼きの場合には火が通りにくい場所があるので、焦げ付きに気をつけ、こまめに返すのがポイントです。
料理の材料
【イシナギ】人数分
【材料】グリル、炭火コンロ(お好み)
【調味料】塩
イシナギを食べてみよう
今夜のおかずにイシナギ
この上なく新鮮な刺身で味わいたいイシナギは、単に大きいだけではない魅力の塊でした。買うと価格が高い高級魚で、釣ると大変な思いもするので入手は困難ですが、時々食べるならば満足度も高めです。スーパーに行ったら、イシナギに目を付けてみませんか。
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