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外来種鯉と在来種鯉の共通点
1.身近な魚、「鯉」の生態とは?
鯉は日本全国の淡水域に生息する魚です。諺や行事にも登場し、日本では馴染み深い魚でしょう。現在でこそ食用としては海産魚にその座を譲っていますが、かつてはタンパク源として重要な地位にあった種類の魚です。
日本には、大きく分けて外来種と野生種の2種類の鯉が生息しています。外来種鯉と野生種鯉を区別する前に、2種類の共通点から鯉の全体像に迫って行きましょう。
2.鯉の分布
鯉の生息域はもちろん淡水域です。河川では中流域から河口付近まで広く生息しています。他には、湖沼や農業用水路などにも生息。時には公園の池で飼育されていることもあり、目にする機会は実に多いでしょう。あらゆるところに生息できる生命力の高さは、特筆すべきものがあります。
3.濁りに強いのは生命力の証!
『魚が棲めるほど水質が良い』と言われることがよくありますが、鯉にとっては別。元々、鯉という種類は澱みや低酸素に強いのが特徴です。むしろ、多少水質に汚れがあったほうが餌が多い傾向があります。
そのため、綺麗でない水質の方が生き生きとした姿も見られるほどです。生命力が強いといった印象も、このような生態から来ていると考えられます。
在来種鯉と外来種鯉の呼び方を整理
野鯉と真鯉・ヤマトゴイ?
ここで各鯉の名称を確認しておきましょう。まず、日本在来種である野生の個体が野鯉と呼ばれます。次に真鯉、これは外来種の鯉です。また、真鯉はヤマトゴイと呼ばれることがあります。
ヤマトゴイと呼ばれているので誤解しやすいですが、元来は日本の歴史が始まる以前に持ち込まれた外来種の鯉です。
2.ヤマトゴイ命名の地とは?
外来種であるヤマトゴイの鯉の名は、金魚で有名な奈良県大和郡山市に由来。ヤマトゴイの「ヤマト」は日本の古い名称を指す大和ではなく、大和郡山市から来ています。また大和郡山市では金魚の養殖も盛ん。ですが、同時に鯉の養殖も行っています。
飼育対象は錦鯉で、金魚と共に観賞魚用として養殖。釣堀を兼ねたレジャー施設としての営業を行う業者も存在します。
外来種鯉の生態を解説
1.外来種の特徴
鯉として一般的に想像されるのが、外来種の鯉です。先の解説の通り、真鯉やヤマトゴイと呼ばれます。本来のルーツはユーラシア大陸ですが、現在では移植によって世界中に生息するようになりました。
熱帯や温帯に定着しやすい他に、冷水にも強いので北米大陸や欧州にも広く生息しています。養殖も盛んで、欧米人にとっては日本と同じく馴染みのある魚です。
2.真鯉・ヤマトゴイの外見的特長
外来種の鯉の特徴は、野生種の鯉と比較して体高が高いことです。体型はやや扁平した紡錘形をしています。全長は大型だと60cm、最大で1m以上。口には歯がありませんが、咽頭に強靭な歯が生え揃っています。
また、真鯉(ヤマトゴイ)は尾柄が短く尾ヒレの下半分が赤い個体が多いのも特徴です。
3.外来種鯉の種類
現在のところ、鯉は分類学的に一属一種。しかし外来種の鯉には、観賞用の種類としての錦鯉や鱗の少ないカワゴイ、各ヒレの付け根にだけ鱗のあるウロコゴイ、各ヒレと側線上にのみ鱗があるウロコゴイなどが存在しています。
いずれも品種改良が人の手で行われているので、外来種の鯉は飼育種と呼ばれることも。また、ドイツではカガミゴイをさらに改良した「革鯉」がおり、これは鱗が存在しない種類の鯉です。
野生種鯉の生態を解説
1野生種(在来種)鯉の特徴
野生種(在来種)の野鯉は体型の平たさが無く、外来種の真鯉(ヤマトゴイ)と比較すると「丸太」の様だと形容されます。これは扁平していないので、体高が低いためです。真鯉よりも体色が黄味がかっているものが多く、腸が短いなどの細かな差異も存在しています。
2.野鯉(在来種)の分布
様々な水域に移植されている真鯉とは異なり、在来種型の野鯉の生息地は限られます。分布は関東平野や琵琶湖、淀川水系、岡山平野、四万十川などの大型河川。
かつては様々な水域に野鯉が生息していたものの、河川工事や飼育された種類の鯉の移入により在来種の野鯉は大きく数を減らしています。
日本の固有種である在来種野鯉の群れは、絶滅の危機が懸念されているのが現状です。
3.野鯉(在来種)と真鯉(外来種)の区別は近年
在来種である野鯉と外来種である真鯉(ヤマトゴイ)は種レベルで異なることが明らかになっています。種とは生物分類学上で最小の単位です。発見のきっかけとなったのは2006年に野生の野鯉が大量死。野鯉のサンプルが多く手に入ったことで調査が行われ、発覚に繋がりました。
錦鯉(外来種)の特徴や種類を解説
1.錦鯉の定義
錦鯉とは観賞用に品種改良された鯉の総称です。人為的に改良されているため、分類は野生種ではなく飼育種(真鯉・ヤマトゴイ)。赤や黄、白などの色合いを持つ鯉を色鯉、黒褐色を真鯉と呼んで区別しています。
色鮮やかな模様が水面に栄えるため、観光地などで目にすることもしばしばです。
2.錦鯉の種類をご紹介
錦鯉の品種は実に様々。赤と白だけの配色ながら一番人気の「紅白」。「紅白」に黒の混じった「大正三色」、黒の割合がより多い「昭和三色」も有名で人気があります。
加えて、黄鯉に金属光沢を与えた「山吹黄金」や「プラチナ」なども高級感ある錦鯉の種類も存在感抜群です。また「秋水」はドイツ鯉との交配種で、鱗の無い魚体は今までにない色合いと美しさを表現しています。
3.目が飛び出るほど高価な錦鯉!
錦鯉は北米やヨーロッパ、東アジアの各地で人気があります。そして錦鯉の約70%は輸出用。欧米の富裕層が嗜むガーデニングで整備した池で飼育されています。また、錦鯉はアジア圏の富裕層にも人気。錦鯉同士では互いに争わないため、平和・幸運のシンボルとして扱われています。
人間と鯉の関わりを知ろう
1.催事の鯉のぼりは生命力のシンボル
日本人と鯉の関わりには歴史深いものがあります。例えば結婚式などの慶事・祝い事に供される料理が有名。また、端午の節句には生命力と出世のシンボルである鯉のぼりが揚げられます。タンパク源が貴重な頃は、海産物を冷蔵する技術が乏しく、鯉は鮭や鰤と同程度の地位を持っていました。
2.鯉養殖で有名な地域
現在でも鯉養殖で有名な地域はいくつかあります。新潟県小千谷市・長岡市では、錦鯉の養殖や品種改良が盛んです。これは時の藩主が鯉養殖を奨励した歴史が背景にあります。
収穫後の休耕田を利用すれば大型化する鯉でも飼育でき、持ち前の生命力で人間の残飯も餌に利用できたためです。
他に鯉の養殖で有名な土地は山梨県佐久市。江戸幕府が開かれるより以前から、鯉の養殖が続く地域です。
日本国外の鯉との関係
1.鯉は聖なる食材
中欧から東欧地域にかけて、鯉はよく食卓に上ります。ウクライナやポーランド、スロバキア、ベラルーシなどがその代表。クリスマスイヴには不可欠の神聖な食材です。また、東欧系ユダヤ教徒は安息日に鯉をフライにして食べます。
2.ドイツ・チェコでは料理の種類も豊富
チェコでは、クリスマスイヴに鯉の唐揚げをポテトサラダと共に食べる習慣があります。ドイツではゲバケネ・カープフェン(カープフェンは鯉の意味)として、丸ごとフライに。
かつてはクリスマスや大晦日に食べられる季節限定の品でしたが、現在では時期を問わず食べられています。
鯉の伝説や伝承を紹介
1.鯉の滝登りは事実?
困難を乗り越えて成長する例えに、「鯉の滝登り」や「登竜門」といった言葉が使用されます。この諺から、鯉は泳力が高く川を遡上するイメージがありますが、実際はそれほど泳ぐ力はありません。
小型の鯉であれば2m程度ジャンプする姿が見られるものの、どちらかといえば鯉の生命力を物語る故事です。
2.体力作りの栄養源に
鯉にはタンパク質、ビタミンB1・D・Eが豊富に含まれており、滋養食品として古くから食べられてきました。妊娠中や病後の体力回復にももってこい
日本では産後の肥立ちが悪い女性に鯉を食べさせると、体調が回復する。もしくは、鯉を食べると母乳の出が良くなるといった伝承が語られています。
これも鯉の生命力にあやかった伝承の一つだと考えられますが、実際栄養素は豊富。タンパク質やビタミンが不足しやすかった時代では、供給源としての価値も高かったのでしょう。
鯉の種類で釣り方を工夫しよう!
1.野生種鯉と外来種鯉で釣り方が変わる?
鯉には、野生の野鯉と外来種の真鯉(ヤマトゴイ)や錦鯉などが存在することは既に解説した通り。ですが、釣りのハウツー本や図鑑などには両種類の区別が記述されていない場合があります。
両種は性質が異なるため、釣り方も異なってくる部分があります。大きな違いは無いものの、知識があれば生態への理解も深まるでしょう。
2.外来種(真鯉・ヤマトゴイ)の活動範囲
外来種の真鯉(ヤマトゴイ)は河川内の縄張りを回遊しながら餌を取ります。泳力もそれなりにあり、流速がある河川や浅瀬でも遊泳が可能です。そのため真鯉釣りでは竿を何本か置き竿にし、回遊ルートに餌を仕掛けておくと効率的な釣りができます。
3.野生種鯉の活動範囲は狭い
行動範囲の広い飼育種に対して、野生種の野鯉はあまり移動することがありません。主に流れの緩い河川の深みに潜んでいることがほとんどです。
「鯉はカーブを釣れ」と聞くことがあるかもしれません。これは、野鯉の習性に照らし合わせた釣り方だと考えられるでしょう。回遊自体は行いますが、気配に敏感なので静かに鯉を待つような釣り方が求められます。
鯉釣りに役立つ習性をご紹介!
1.警戒心の原因!ウェーバー器官とは?
ウェーバー器官とは、音による振動を耳内で増幅する機能を持つ器官のことです。骨鰾類と呼ばれる種類の魚が持っていて、野鯉や真鯉もその中に含まれます。
真鯉や錦鯉はこの器官があっても警戒心が薄いですが、野鯉の場合は元来の警戒心も相まって音には敏感です。そのため、捕獲するためには騒音を出さない様に心がける必要があるでしょう。
2.恐怖物質に注意!
骨鰾類は皮膚に恐怖物質と呼ばれる化学成分を持っています。これは皮膚に傷を受けたときに流れ出し、水と混ざって魚の群れを緊張状態にさせるものです。
釣り針に掛かった鯉を放流する際に、手荒に扱ってしまうと皮膚が傷ついてしまいます。魚体を優しく扱うことで、魚が釣れにくい状況を防止できるでしょう。
外来種も食べよう!鯉の下処理の知識
1.苦玉に注意!
苦玉とは内臓の種類の一つで、胆のうのこと。鯉の解体時にこれを潰してしまうと、身が緑色がかって苦くなってしまいます。解体のコツは頭部の付け根から3cm離し、背側から刃を入れることです。
この3cm以内に苦玉があるため、身の一部ごと切り取ってしまえば苦玉を潰すことがありません。
2.大型鯉は骨にも注意!
野鯉や真鯉の種類を問わず、鯉は大型より中型程度の方が食べやすいと評されます。これは味の面もありますが、血合い骨が邪魔になることが一番の理由です。
大型の鯉は血合い骨が発達していて、茨のように張り出しています。鯉を釣って食べるなら、大きくとも中型の鯉を持ち帰ると良いでしょう。
3.数日間は泥抜き
鯉は基本的に白身の美味な肉質です。しかし、泥ごと餌を食べる摂食様式を持っているので身が泥臭くなることがあります。これは野生種の野鯉も外来種の真鯉も同じです。水質の良くない水域で取れた鯉を調理する前には、数日から一週間ほど綺麗な水で泥抜きを行うと良いでしょう。
在来・外来種共通!鯉の料理方法を解説
1.淡白な白身は様々な料理に!
鯉は種々の調味料の風味を損なわない白身。そのため、刺身や煮込み、揚げ物など多彩な調理法があります。刺身にするなら、氷水に切り身を晒した洗いがおすすめです。また、筒切りにして甘辛く煮込んだものも美味。丸揚げにし、甘酢あんを掛けた中華風も非常に美味です。
2.泥臭さには酢
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鯉の泥臭さの原因はゲオスミンと呼ばれる化学物質です。泥臭さが抜けないうちに鯉を捌いてしまった場合は、酢を使えば泥臭さを緩和できます。鯉こくや煮付けにする場合は、事前に用意しておくといいでしょう。
外来種鯉が破壊する生態のバランス
1.外来種鯉による固有種・在来種の食害問題
おもに水草や珪藻類を食べものにしますが、小型の水生昆虫も食べます。
鯉釣りに多くの種類の餌が使われる事が示すように、鯉は非常に雑食性が強い魚です。
小魚からエビ・カニなどの甲殻類からタニシなどの貝類、植物性では水草類や水苔まで口にします。
目に付くものを食い荒らすため、周囲の環境を悪化させる原因にも。時にはその水域の固有種や在来種も食べてしまうので、鯉の存在は環境を激変させる危険性があります。
2.生命力の強さも問題に…
鯉は釣り上げてからも濡れタオルを被せておけば、1時間近く陸上でも生存させる事が可能です。
鯉の生命力を物語っていますが、外来鯉の駆除といった観点からは厄介な問題となります。
魚体も大型化すると敵になる者がおらず、自然の駆除力・淘汰も期待できません。人間による捕獲も減ったために個体数が減らず、生態系のバランスを崩す原因になってしまいます。
3.海外での駆除の動き
日本国内で鯉の移入が問題視されるように、日本国外でも鯉の放流禁止や駆除を行う動きがあります。鯉は2~3回の産卵を行い、その卵は20~60万個以上。
鯉本体の生命力も強く、在来種・固有種を食い荒らすために侵蝕するスピードは他に類を見ないほど。北米大陸では五大湖の支流にも進出しつつあり、駆除の対象です。
また、同じ鯉科の種類であるハクレンやコクレンの姿もあり、駆除の対象となっています。
外来種鯉の放流で起きる問題
1.放流問題と駆除の難しさ
先ほどは鯉による被害を解説しました。この害は他の水域に鯉が移植されることで起きます。鯉の放流事業は、自然保護運動や水質改善の立証などによる名目で行われるものです。
しかし、鯉の危険性に理解が及ばないまま、放流元の固有種・在来種の生物に混じって放流されてしまうことも少なくありません。
貴重な生物が食害で減ってから駆除を始めても、手遅れになる事態も考えられます。
2.固有種・在来種との交雑の可能性
近年では、野鯉と外来種の真鯉の特徴を合わせ持つ鯉が発見されています。これは、野生種と外来種間で交雑が起きていることを示すもの。これも他水域からの放流が原因です。
在来種である野鯉や固有種の魚とも交雑して、遺伝子的な汚染を引き起こしています。やはり遺伝子多様性の観点から見ても、在来種や固有種の棲む水域に放流を行うべきではありません。
3.固有種・在来種鯉が大量死する危険性
放流による食害で、在来種・固有種を駆逐する問題や遺伝子汚染の問題の他にも、病気による野生種の野鯉の大量死も問題に挙げられます。
野鯉が棲む水域に外来種の真鯉や錦鯉が放流されることで、鯉ヘルペス感染症の流行が懸念されます。
現に野生の野鯉が大量死している事実があるので、野鯉の生息地に真鯉などを放流することは危険です。
在来・外来鯉の種類や生態解説:まとめ
放流と駆除は鯉の責任ではなく、人間の責任
『鯉(コイ)って外来種なの?種類や生体を解説!日本固有種は絶滅寸前?』は以上です。野鯉と真鯉が明確に区別される以前から、鯉は人間との関わりが深い生き物。
ですが、一方で人間の自然破壊や生態系破壊の一端を担っています。世界的にも放流禁止・駆除の動きが活発化し、鯉は人間の都合に振り回されているのが現状。
これ以上駆除による不幸を生み出さないためにも、鯉をはじめとする動物への正しい知識を身に付けることが大切です。
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